便利屋Zan   作:えるらるら

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続けて投稿。


プロローグエピソード-2

 かつて人類が栄えた頃に現れた現象。現在では"ホロウ"と呼ばれる球体領域による災害。これにより都市や国家は滅亡した。

 

 外部から見ればカラフルなノイズを帯びたブラックホールの様にも見えるソレは、内部に異空間が広がっており"エーテル"と名付けられた未知のエネルギーで満たされていた。

 更にホロウの特徴として、内部へ入ること自体は容易であるが、広がる異空間は無秩序に連結されていることもあり方角というものに意味はなく、別の場所に繋がる通称"裂け目"という現象が存在することもあり手がかり無しでは非常に脱出は困難なものとなっている。

 

 加えて異空間内部を満たすエーテルというエネルギー。

 ホロウに居続けた生物や自律機械などを侵食し、段階的進行ではあるが最終的にはヒトを容赦なく襲う"エーテリアス"という怪物へと変貌する。 

 他多数の危険性をにより人類が生きられる領域であるホロウは、多発的に、突発的に発生し、更には拡大していく災害であり、それは地上のみならず宇宙での発生も確認され、一昔前にはあらゆる土地を飲み込み文明崩壊の危機にまで至った。

 

 しかし人類も怯えるばかりではなくホロウへの対抗手段を模索し、エーテルというエネルギーを活用する技術を生み出し、新たな都であるエリー都の建創、都市機能の維持、文明社会を繋げる持ち直した。

 そのエリー都建創の際、ホロウ災害鎮圧等において多大なる活躍と功績を残したした七名は【虚狩り】の称号とともに讚えられ、まだ傷跡も生々しく残り旧都陥落と称されるホロウ災害後の現在でも語り継がれる存在となる。

 

 そして旧都陥落より十一年後の現在。新たに新エリー都を築き上げ繁栄した今は、人間、人間以外の生物の特徴と遺伝子を持つ種族"シリオン"、自我を持ちテストを合格した機械人形である"知能構造体"とヒトの幅を広げながら日々の生活を営む中の一つ。

 色々な者達が情報、助け、雑談相手などを求めて書き込みを行う匿名フォーラム。

 通称【インターノット】

 そんなインターノットにありふれた話題が落とされた。

 

 ――【決めるぜ!】結局誰が最強なのよ。――

 

 珍しさなどもなく、時折暇つぶしの様に上がる話題の一つ。結局は明確な答えが出ることはないと大体の者が把握してはいる。上がる名前もよくにた顔ぶれ。それでも何かと時間つぶしになる話題。

 今回もいつものような流れで、たまに白熱したり冷めたりを交えながらも進んでいく中、一つのコメントが書き込まれる。

 

『個人的には便利屋のザン』

 

 最強を上げる中では稀に上がるその名前。そのコメントに対する反応はスルーが半分を占める。反応した者の中でもいつの間にか生まれたテンプレの様な反応ばかりが返ってくる。

 

『都市伝説を持ち出すな』

 

 曰く、虚狩りと渡り合う実力者。

 曰く、ホロウ内に住む者。

 曰く、エーテリアスを肩を組んでツーショットを撮っていた者。

 曰く、最古のボンプを持つ者。

 曰く、瞬間移動ができる。

 

 その他にも荒唐無稽な曰くが足し引きされ、存在そのものがネタの様な者であり、コアなファンが無精髭の有無こそ好き好きに語るが共通するのはスキンヘッドに白いワイシャツに黒スーツと黒手袋。どんな乗り物でも乗り回す。

 更に便利屋ザンが都市伝説と呼ばれる最大の要因の一つ……それは、便利屋ザンの最初の活動はホロウ発生よりも前であり、語られる姿、取られる写真、残る記録に変化が一切のない。

 

 誰もが知る情報であり、誰もが嘘だと切って捨てること。

 たとえ現代において同じ看板を背負う便利屋が居たとしても、ゲン担ぎ程度にしか受け取られずにどこまで行っても都市伝説という枠組みに居座り続ける。

 

『都市伝説じゃないけどね。女癖は悪いけど、いい男だよ』

 

 そして今日も尾鰭を増やしながら便利屋ザンは都市伝説として広まっていく。

 

 

――

 

 ところ変わって、そこは未開発地域の郊外と呼ばれる地域。

 豊富な資源を巡り血生臭さもそこそこに、様々な組織が対立や競争を広げている場所よりも更に外れに、ポツンと二階建ての大きめな一軒家が建っていた。

 

 真新しいというわけではないが、郊外には似つかわしくない一軒家の寝室。

 ピピピッと時間を知らせるアラームで起きた家主は、勝手に上がり込みベッドにまで潜り込んで寝ている砂猫のシリオンを起こさないように寝室を後にする。

 リビングへの移動を終えるとテレビを付けてネットニュースを垂れ流しながら寝る前と同じく半裸のまま多くの古傷が残る身体を軽く伸ばし、日課にしているストレッチを行いつつ今日の予定を頭の中で整理していく。

 その後シャワーを浴び、小さめのテーブルの上に時計、ネクタイ、ハンカチと並べて準備を終え、用意されていた朝食に加えて出来上がったばかりのトーストとコーヒーをお供に一息。

 

 食事を終えておかわりのコーヒーを淹れた辺りで二階から方や眼帯、方やマスクを常に付け目つきなどの細部こそ違うが瓜二つの二人、寝室からは先程寝ていた人物が眠たそうにリビングへと集まりそれぞれが席に着けば、最後に空いていた家主の隣にはかぎしっぽの様な、角のような特徴ある耳を生やしたボンプが陣取る。

 そうして暫くすると、ぞろぞろと多種多様なボンプ達が「ンナンナ」と食べ終えた家主以外の朝食を並べていく。

 

「……ふふっ、都市伝説も大変だね」

 

「ん?」

 

 食事が並べ終わるまでと端末でインターノットを漁っていたシリオン――プルクラが家主に画面を見せれば、いつの間にか女癖が悪いことになっている自分の話が書かれており、プルクラが切り替えた画面はいつからかあること無いことを綴られている自分に関するサイトの最新項目にも【女癖が悪い】と追加されている。

 

 眉間にシワが深くなることが面白かったのか、クスクスと笑うプルクラから端末を借りて先程のインターノットへと戻って書き込みを遡れば原因であろう書き込みはすぐに見つかった。

 さらに言えば、その書き込みはをした"激ウマ量産型フライドポテト"なんて珍妙な名前にも心当たりがある。

 

「ツイッギー、エー」

 

「それはエーの書き込みよ」

 

「!?」

 

 名前を呼ばれた瓜二つの二人の内一人、眼帯をしたツイッギーがしらっとした顔で間髪入れずに答えれば、マスクをしたエーは驚きに目を見開いて慌てて首を横に振る。

 

「違うようだが?」

 

「嘘は良くないわ、エー」

 

「!?!?」

 

「書き込みは本当のことを書いているんだから、自信を持って頷いていいのよ」

 

「おい」

 

 家主のツッコミを華麗にスルーし必死に否定の意思を示すエーの隣で、ねぇ?としたり顔をプルクラへと向ければ、当人は気にした様子も無く用意されたミルクを味わい、鼻で笑って返した。

 

「おこちゃまの嫉妬は可愛いねぇ」

 

「は? 喧嘩なら買うけど?」

 

「ほら、ね。家主さんもそう思うだろ?」

 

「大方お嬢ちゃんがプルクラの家の鍵をぶっ壊したから此処に来たって所だろう? 勝手にベッドに入ってくるのはどうかと思うが、ツイッギーが考えるような関係じゃない」

 

「美容の為には質の良い睡眠も必要なの」

 

「穴でも掘って寝てなよ」

 

 なんてやり取りをしていると、テーブルの上には配膳を終えた朝食達が並んでいる。エーに関しては途中から山盛りフライドポテトに夢中でソワソワと落ち着きがない。

 

「はぁ、まぁいい。じゃれ合いも程々に、冷める前に食べろよ。俺は仕事に行っていくる」

 

 そう言って古くから伝わる都市伝説扱いされている人物。この家の家主にして、便利屋Zanの看板を掲げている男――ザンは、移動してきたっきり電源が切れたように隣に座っていたボンプの頭をぽふぽふと撫で、時計を着け、ネクタイを締め、今日の気分のジャケットを羽織り内ポケットにハンカチ。

 そしていつも使っているアタッシュケース片手に玄関まで行き革靴を履いて、最後に姿見の横にある引き出しから黒い皮手袋を取り出し鏡で確認を終え一言。

 

「いってくる」

 

「「いってらっしゃい」」「!」

 

 見送りを背にザンは家を後にした。






TIPS.虚狩り
・エース級のエージェントに与えられる称号。
・その昔、世界全土がホロウに飲まれ滅亡の危機に陥った際に災害鎮圧の要を担った【星見家三代目当主、ミス・サンブリンガー、導き手ジョイアス、ファルケンハイン傭兵団の長、ヴァイク大佐、ダン中佐、アーチ教授】の七名が起源とされている。
・直近では現在"対ホロウ事務特別行動部第六課の課長"であり、星見家三代目当主の子孫である【星見雅】が当代最年少の【虚狩り】として名を馳せた。





現在の虚狩りの称号持ちって他にいるんですかね?
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