夜風がざわめきを運び、村の外れに立つ木々が、風に合わせて揺れる。
見張りの報告を受けて、カイたちは素早く装備を整え、村の北門へと向かっていた。
ユウ「どうやら本格的な襲撃じゃないみたいだな。盗賊の斥候か?」
ミレイナ「油断は禁物。数は少なくても、村人を狙ってるなら……」
カイ「俺たちが動く。村の兵力じゃ対応しきれない」
カイの言葉に、皆がうなずいた。その顔には迷いはない。
旅を通して築かれた信頼が、言葉の少なさを補っていた。
森の手前、黒い影が何体かうごめいていた。
鎧すら着けていない軽装の盗賊たち。だが、目には血の色が宿っている。
盗賊A「へへっ……この村、簡単に潰せると思ったが……面倒な連中が来てたか」
盗賊B「チッ、冒険者崩れか? ならまとめて始末してやるよ!」
カイは剣を構える。
リィナもすぐさま後方へ回り、魔法の詠唱に入った。
カイ「……ユウ、左から回り込め。ミレイナは中央突破だ」
ユウ「了解」
ミレイナ「一撃で片をつける」
二人が動いた瞬間、カイも突撃する。
剣の軌道はまっすぐで無駄がない。盗賊の刃をはじき返し、脇腹に一閃。
ユウの短剣は、敵の足を切り裂き、動きを止める。
ミレイナの剣術は鋭く、風を裂く音さえ生々しく感じられた。
一方、リィナの魔法は今や着実にその力を増していた。
リィナ「――火の精よ、紅き息吹を纏い、我が願いに応えなさい……〈火球・連弾〉!」
炸裂する火球が、敵陣を混乱に陥れる。
だが、そのときだった。
カイが一人、敵の大将格らしき盗賊と対峙していた。
相手は体格も大きく、斧を振り回すたびに風が鳴く。
カイ「……来い」
斧が振り下ろされた瞬間、カイは身体をひねってかわした。
しかし――
「っ!?」
腕に切り傷が走る。反応がほんの一瞬、遅れた。
盗賊の斧が浅く肩をかすめ、赤が飛んだ。
リィナ「カイッ!!」
魔法の詠唱を途中で止め、リィナが走り出す。
彼女の中で、理性より先に身体が動いていた。
盗賊「なんだ、お嬢ちゃんが飛び出してきたぞ?」
リィナ「――あなたは絶対、傷つけさせない!!」
掌から放たれた純白の魔力が、盗賊の身体を押し返す。
リィナの魔法には、今までになかった“怒り”と“守りたい想い”が込められていた。
戦いのあと、静寂が村を包んだ。
盗賊たちは倒れ、生き残った者も逃げ去った。
カイは応急手当を受け、焚き火の前で座っていた。
リィナ「無理しすぎ……また、傷ついたらどうするの」
小さな声だったが、震えていた。
膝を抱えるようにカイのそばに座る彼女の瞳には、わずかに涙が滲んでいた。
カイ「……ごめん。リィナ」
リィナ「謝ってほしいんじゃないの。もう、そんな風に自分を犠牲にしないで」
彼女の手が、そっとカイの袖に触れた。
リィナ「あなたが、私にとってどれだけ大切か……ちゃんと気づいてほしい」
一瞬、カイは何かを言いかけたが――やめた。
代わりに、静かに彼女の手を握った。
カイ「ありがとう、リィナ。……守ってくれて」
焚き火がはぜる音が、静かに夜に溶けていく。
月は静かに、二人を照らしていた。