ブルーアーカイブ Last on Kivotos   作:ヴィーナス

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第15話:私たちの先生

ホシノの心が、先生を「新しい仲間」として受け入れた、その瞬間。

彼女を縛り付けていた「『守る』ことしかできない呪い」は、音を立てて砕け散った。

 

代わりに、彼女の心を満たしたのは、もっと純粋で、力強い意志。

 

――仲間を、守る。

 

「いくよ、先生!」

 

彼女の体から、悲しみや怒りではない、澄み切った蒼いオーラが、天を突く光の柱となって立ち上る。

天空の神ホルスの神性が、完全にコントロールされた形で解放されたのだ。

 

王の治癒は、国の再生へと直結する。

ホシノが盾を構えると、降り注いでいたカイザーの飽和攻撃が、まるで嘘のように、その一点に吸い込まれ、霧散していく。

 

「ホシノ先輩…!」

遠くで孤軍奮闘していたシロコの目に、その光景が映る。

 

「…すごい」

彼女は、ホシノを守るように立つ、記憶のない男の背中を見つめていた。

過去の幻影ではない。周囲の評判でもない。

ただ、一人の生徒のために、命を懸ける、あの姿。

 

長老の言葉が、脳裏に蘇る。

(…そうか。見るべきは、どこから来たかじゃない。どこへ向かおうとしているか、なんだ)

 

彼女の心の中の、最後の迷いが、完全に消え去った。

「ん。私たちの先生」

シロコは、力強く頷くと、反撃のために銃を構え直した。

 

その時。

アビドスの司令部で、通信機が、激しいノイズと共に起動した。

モニターに映し出されたのは、キヴォトスの外にいるはずの、十六夜ノノミの姿だった。

 

『セリカちゃん! みんな! 信じてたよ!』

彼女の声は、喜びと安堵に満ちていた。

『追加の支援、最大船団で今、そっちに向かわせてるから! だから、絶対に、生きて帰ってきてね…!』

 

モニター越しに仲間たちの奮闘を見届け、後方支援を完璧にこなしていたセリカは、ノノミからの声援に、力強く頷き返した。

「当たり前でしょ! 誰に言ってるのよ!」

彼女の目には、涙が光っていた。

 

アビドス全員からの、そして、遠く離れた仲間からの「承認」。

その想いが、一つの奇跡を呼び起こす。

先生の胸ポケットで、埃をかぶっていた一枚のカードが、眩い光を放ち始めた。

それは、まるで心臓のように、温かく、力強く、脈打っている。

 

その光景を見ていた黒服が、陽動の戦場の片隅で、面白そうに呟いた。

「ふむ…これは興味深い。どうやら『そのカード』は、他者からの信頼や承認といった、形のない概念を物理的なエネルギーに変換する、一種の特異な『触媒』のようですねぇ」

 

先生は、光り輝くカードを、強く握りしめた。

脳内に、直接、力が流れ込んでくる感覚。

今なら、できる。

 

「来いッ! シロコ! シロコ*テラー!」

 

先生の叫びに呼応するように、二人の少女が、光と共に彼の眼前に転移する。

二人は、先生の目を見て、確信する。

 

「うん、やっぱりあなただね、先生!」

シロコが、満面の笑みで言う。

 

「…礼は、後で言う」

シロコ*テラーもまた、静かに頷いた。

 

アビドスの三人の神性が、新しい指揮官のもと、初めて心を一つにする。

ホシノが、最強の盾として全ての攻撃を受け止め。

シロコとシロコ*テラーが、最強の矛として、その両翼を担う。

 

「全軍、反撃開始! 目標、カイザーの多脚戦車! 一気に叩き潰すぞ!」

 

先生の指揮が、戦場に響き渡る。

その力は、カイザーの軍勢を、圧倒した。

 

爆炎と閃光が、砂漠の夜を、真昼のように照らし出す。

それは、アビドスが10年ぶりに手にした、本当の勝利の光だった。

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