「こちらヨーロッパMS第2小隊クレイド・レイス。」
宇宙世紀0079年11月――
ヨーロッパ戦線は、降りしきる雪の下の大地に少しの緊張が走っていた。
旧ユーゴスラビア山間部。白く染まった針葉樹の森の中を、数台の補給車両と、それを護衛するジム4機が進行していた。
その中の1機、ジムのコックピットでクレイドは額の汗を拭っていた。
「初任務か……」
17歳の少年兵。士官学校を飛び級で卒業し、特別にこの護衛部隊へ配属されたばかりの新兵。だが、その両目は曇っていなかった。射撃成績、空間認識能力、索敵センス――いずれも連邦上層部の期待を集めた新人だった。
リオは戦場に淡い空想を抱いていたが、実際に来てみると高い緊張で何も考えられる余裕がなかった。
それが逆に、クレイドの警戒心を刺激していた。
その時だった。
――ズン!
地鳴りと共に、ジムの頭が吹き飛んだ。頭が天へ舞い上がり、周囲を警戒する。
「後方、二時方向より敵接近! ザクだ、二機確認ッ!」
「伏兵かッ! 応戦しろ!」
味方の通信が乱れ飛ぶ中、クレイドは咄嗟にマニュアルを閉じ、操作レバーを握った。
「……しゃっ、俺の“初陣”だぜ!」
最初の敵は、背後の岩陰から飛び出してきたザクIIだった。肩にシールドを備え、脚部のブースターを吹かしながら突進してくる。
リオは機体を伏せ、すかさず180mmキャノンを肩越しに構えた。
「……距離は450か?……よし」
トリガーを引いた。
「当たれぇぇ!」
――ズドォォン!
雪を跳ね上げる衝撃と共に、ザクの胴体が吹き飛んだ。爆発の閃光が、白銀の森を赤く染める。
「一機!」
――バコォォン!
「なッッッ!」
ザクにキャノンを撃たれ、咄嗟に盾を構えるが盾が吹き飛んだ。
ザクは2機いて、もう1機はマシンガンを構えている。
。
即座に180mmキャノンを撃つ。
――ズドォォン!バドバドン!
その一撃はザクの側の木に直撃し白煙をたてた。
白煙を目くらましにし、クレイドのジムは2機のザクをビームサーベルで切りつけた。
「大丈夫か新人?」
「はぁ、、はぁ、怖えぇ。」
クレイド手が震え、心臓の音が鳴るのを強く感じた。
ただしかし、命を奪った実感もない。ただ、敵を“処理した”という感覚が残るのみ。
人を簡単に殺してしまう戦場に恐怖した。
一方、遠く離れた山頂の影から、その戦いを監視していた一機のモビルスーツがあった。
ドム・スナイパー。
そのコックピットの中で、黒いスーツの青年が、モニター越しに白いガンダムを見据えて呟く。
「……あの目だ。やはり、戦場が“似合う”目だな」
その名は、レイド・イースト。
ジオンの“黒鷲”、狙撃の死神。その獲物は、白銀の森に咲いた新たな“標的”となった。