そして少々性的な描写を含む文章があります、苦手な方は注意を。
早朝。
少年は普段の習慣によって形作られた体内時計が導くまま、パチリと目を開けた。
身体を起こそうとした所で引っ掛かりを覚え、寝ぼけ眼で横を見ると、自分の身体と少女の身体が密着しており、その柔らかな感触と、微かに漂う少女らしさを纏った特有の香り。
それは少年の意識を叩き起こすのには十分な衝撃だった。
「───ッ!」
急激に覚醒した頭脳は、その優秀な記憶力を存分に発揮し、昨晩のやりとりの記憶を鮮明に思い起こした。
所謂深夜テンションと言うやつで、全くもってそんなつもりは無かったのに、己の弱みを曝け出してしまった事に気がついた少年は、思わず羞恥で顔を赤くした。
悶々としながら腕から抜け出そうとすると、急に少女の腕の力が強まり、身体の方に引き寄せられる。
本人に意識は無かったものの、少年が一瞬動いて腕から抜け出そうとした事に酷く不満を覚えたらしく、隣の少女は腕の力を増し、逃がさないとばかりに少年の身体をギュウギュウと締め付けていた。
少年は先程までよりも更に全身に感じるその感触に、ドギマギとした感情に襲われ、固まったまま完全に動けなくなってしまっていた。
そんな少年の様子に、少女は抱き心地に満足したのか、ムフーと可愛らしく鼻息を立て、少年の首元に顔を埋めながら、再度気持ち良さそうに寝息を立て始めた。
少年は暫くモゾモゾ動いていたが、結局諦め、大人しく少女の抱き枕に甘んじることにした。
セレンにご飯を作らなければならない時間だが、これでは出来そうにもない。
そうして暫く呆けていると、少年は、心の中に沸々と不満が湧き上がって来るのを感じていた。
そもそもこの状況に陥っているのはセレンのせいだ。
本人はうっかりだの何だのと言っていたが、あれは間違いなくわかってやっていた。
そんなやつにご飯を作ってやる道理などあるものか。
偶には飯抜きとか言う奴を味わってみればいいのだ、一人寂しくレーションでも齧っていろ。
少年は虚空に向かってそう言い訳し、再度目を閉じて微睡みに身を任せた。
※ ※ ※
ぼやけた意識の中、少年は身体を起こし、
ドアを開け、廊下を歩き、階段を下る。
その先にあったドアを押し開ければ、
少年は困惑することも無く、その二人に声を掛けた。
「おはよう、先生、おじさん」
「おはよう、レイン。貴方は早起きできて偉いわね」
「よう、今日は世話になるぜ」
二人も平然と挨拶を返し、少年も椅子に腰掛ける。
「ね、おじさん。今日は一日中暇なんでしょ?また歌教えてよ」
少年が歳相応の無邪気さでおじさんと呼ばれた男ににじり寄ると、男は苦笑しながら側に置いてあったギターを手に取った。
「お前も物好きだねぇ。こんな旧世代の遺物を好むなんてな、何時の間にかコード進行まで覚えやがるんだから、なあリザ?」
リザと呼ばれた女性も穏やかな笑みを浮かべる。
「良いじゃない、この子が音楽に興味を持つって事は、この世界がまだ平和だって証なのよ?少し前まではリンクス戦争で大変だったし、何時また戦争が起きてもおかしく無い、今のうちにこういうのは覚えさせた方が良いのよ。きっとね」
「……そうかい」
男は静かに頷くと、ギターを弾き始める。
「
「………ちょっと待ちなさい」
とんでもなく物騒な歌詞に思わず女性がツッコミを入れる。
「……何だよ」
不満そうに手を止める男に、女性は額に手を当て、溜息をつきながら続けた。
「歌詞が過激すぎよ、思想教育は結構だけど、ここではやめてちょうだい」
「歌を教えろって言ったのはお前だろう」
「それとこれとは話が別、もうちょっと優しい曲にしてちょうだい」
少年は、恋人であろうその二人がじゃれ合う景色を眺めながら、ふと違和感を覚えた。
自分は居住ブロックの一室で寝ていたはずで、こんなところにいるはずがない。
それに、今までこんなところに来た覚えはないし、居住ブロックのセキュリティを考えると、誘拐されたなどということも考えづらい。
更に、自分の身体が、自分の意志で全く動かないのだ。
そこでまで考えたところで、思い当たる事があった。
明晰夢。
自分が夢を見ていることを自覚している状態。
そして夢とは記憶の整理や深層意識を映し出すと言われている。
ともすればこれは自分の深層意識、つまり失われた記憶の内のいくつかなのではないか。
そしてそれが本当なら、自分が失った記憶を取り戻す手掛かりになりえるかもしれない。
そこまで思い至った所で、突然ぐるりと景色が入れ替わった。
少年は孤児院の玄関に立ち、先程の女性が何処かへ出かけるのを見送っていた。
これも何かの記憶なのだろうか、自分の意志に反し、体は口を開く。
「先生、ほんとに大丈夫なの?クレイドルにみんなを乗せてってくれるなんて……ありがたい話だけど、何か怪しいよ、嫌な予感がする」
少年の必死の呼びかけを、女性は笑って受け流した。
「大丈夫よ、もし乗せてもらえるならそれで良いし、危なくなったらちゃんと逃げるから」
行ってくるねと足を進めるその背中を、少年は不安そうな表情で見つめていた。
これは記憶の追体験のようなものなのだろうか、少年の中では、
また景色が入れ替わる。
そこは荒れ果てた孤児院の中だった。
少年は悲しげな表情で、孤児院の金庫を眺めていた。
「このままじゃ蓄えもなくなっちゃう……どうしたら……先生……」
涙を流す少年の肩に、そっと手が置かれる。
「お兄ちゃん……大丈夫……?」
幼い少女が不安そうにしているのを見て、少年は慌てて表情を取り繕った。
「大丈夫、なんでもないよ、あっちでみんなと遊んできな……」
少女を見送り、何かを決意した表情で、少年は呟いた。
「そうだ、僕が……僕がなんとかしないと……」
少年の記憶が徐々に、少しずつ蘇ってくる。
そうだ、先生はあの後帰ってこなくて、おじさんもそこからおかしくなって、何処かに消えてしまった。
あのおじさんが大きなパトロンだったのだろう。
それが無くなり、保護してくれる大人もいなくなった子供達は、経済的に困窮した。
少年はあの中で最年長だった。だから金を何とか工面しようとしたのだ。
しかしそう簡単に仕事が見つかるなら誰も苦労はしない。
そして、子供でも十分に妹弟を養う為の金を得ることができる仕事は、女のような顔と身体を持つ少年にとって、たった一つだけだった。
景色が入れ替わる。
ケバケバしい明かりが光る建物の中で、少年は薄着でベッドに座っている。
するとドアが開き、見知らぬ中年の男が部屋の中に入って来た。
男は興奮しているのか息は荒く、少年の肢体を舐め回すように見つめている。
少年は何処か諦めたように笑みを浮かべ……飛びかかってきた男にベッドに押し倒された。
身体をまさぐられている少年は恥辱に耐えかね、それを見ないように、顔を逸らせようとする。
しかし男はそれを許さず、顔を押さえつけると、少年のその瑞々しい唇に吸い付いた。
服を剥ぎ取られ、伸し掛かる男の息の匂いに顔をしかめ、これから起こる痛みを想像し、恐怖で目をぎゅっとつぶり───────
「ぁぁあああああっ!!」
少年はベッドから飛び起きた。
隣では大声に驚いたのか、少女が目を丸くしながら、少年の事を見つめていた。
「はっ…はっ…はっ…」
荒く息を吐く。
心臓は激しく脈打ち、血液が今にも動脈を突き破って飛び出すのではないか、と思える程だった。
「レ……レイン、大丈夫ですか?何処か痛みますか?何か悪い夢でも?」
「レイン!!」
少女が優しく肩に手を置こうとした所で、ドアがバンと音を立てながら開き、セレンが部屋の中に飛び込んできた。
「セ……セレッ……」
狼狽した様子の少年を全身で抱きしめ、セレンは絞り出すように告げる。
「大丈夫……大丈夫だ……それは悪い夢、夢だ。思い出すな、すぐに忘れるさ……」
セレンは何度も何度も頭を撫で、少年に言い聞かせるように言葉を紡いだ。
セレンに抱かれていると、少年は落ち着きを取り戻したのか、一粒の涙をこぼしながら、再び静かに眠りについた。
セレンはそれを優しくベッドに戻し、指で涙を拭う。
傍から見れば、それは美しい家族愛だったのだろう。
「セレン様……貴女は一体何を……」
しかし隣で見ていた少女はそれを見て、困惑した様にセレンに問いかける。
そしてセレンは、少女のその視線から逃げるように、そっと目を逸らし、誤魔化す様に左手を背中に隠した。
少女は見ていたのだ。
少年を抱きしめた時、頭を撫でて少年の意識を逸らしながら、セレンの左手が、首筋に何かを注射していたのを……。
thinkerはクソほど意訳してます。多分オールドキングが歌っていた時はこんな感じの意図だったんやろなぁ的な。
アンケートの結果で結末が変わることはないのでご安心を、話の進み方に違いが出るだけです。
これからの話にVD要素が少しだけ出てくる予定で話を考えていますが、あんまり混ぜ混ぜするのも良くないかと迷っています。そこでせっかくなので皆さんに決めて貰おうと思います。回答よろしくお願いします。
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VD要素があった方がいい
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VD要素はあってもいい
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VD要素は無い方がいい