前回のミッションで評価が上がった様で、レインの下には、GAから新たな依頼が舞い込んで来ていた。
今回の撃破対象は鹵獲されたGA製量産型AF『ランドクラブ』二機、及びその周辺に展開するノーマル部隊。
量産型とはいえ、相手はAF2機、1機で戦うには少々無理がある。
そこでレインは、GA側から提示された僚機を雇うことにした。
選んだ僚機はメリーゲート。
カラードランク18、メイ・グリンフィールドが駆る機体で、実弾防御に優れた重量二脚型のネクストで、豊富なミサイル弾幕と、バズーカによる火力支援を得意としている。
ヘリに吊るされ、戦闘領域まで輸送されている間、挨拶でもしておこうかと思ったレインは、メリーゲートに通信を繋ぎ、声を掛けた。
「始めまして、メイ・グリンフィールドさん。レイン・ヘイズです。今回はよろしくお願いしますね」
「……!?……え、ええ……よろしく……。」
ほんとに子供なのね……と、メイが小さく呟いたのに気付いたレインは、自分の年齢を思い出し、確かに若すぎるか、と苦笑しながら伝えた。
「年齢とかは、気にせずにしてもらえると助かります。ちゃんと仕事はしますから」
「……あの怖いオペレーターに脅されてとかじゃないのよね……?」
「いい加減にしろ、もうすぐ作戦領域につくぞ」
セレンの苛立った様な口調の通信が、レイン達の会話を途切れさせる。
流石に自分のことを脅迫犯だと思われるのは心外だったか、とレインは軽く笑い、ネクストをヘリから切り離し、戦闘モードを起動した。
ミッション 「リッチランド襲撃」
「ミッション開始。AF、ランドクラブを確認。情報通りだな、量産型とはいえAFだ。
正面から当たるのは愚の骨頂、主砲の射線に入らぬように回り込め」
リッチランド農業プラント。山に囲まれた其処に広がる、コジマ粒子とはまた違う、緑色のプラントと、プラントの外側の、砂漠化した土壌の白さ。
その中にあるセンターピポット式灌漑農業の特徴である、円形に広がった農地が、レインの目の前を埋め尽くしていた。
円形に白くなっているところがほとんどなので、もう収穫は終わっているのだろう。
おかげで何も気にせずネクストを使える。
「正面から行くわ。細かいのは性に合わないの。注意は引き付けるから、後はお願いね」
メリーゲートからの通信を合図にするかのように、ストレイドはランドクラブの射線を避け、地面を這うような形でオーバードブーストを吹かし、高速でランドクラブに接近していった。
「リンクスだ!2機来るぞ!」
「臆するな!こっちはAFが2機もいるんだぞ!負けるわけがない!」
「……侮られているな……まあいい、舐めてかかったことを後悔させてやれ」
「……了解」
レインは通り道にいるノーマル部隊を撃ち抜き、オーバードブーストを吹かしたままメリーゲートの様子をうかがう。
メリーゲートはノーマルからの射撃をものともせず、ダメージが大きいランドクラブの主砲だけを、クイックブーストで避けていた。
「ミサイルロック完了……今!」
メリーゲートの背部に積まれている、垂直ミサイルと32連装ミサイルの発射管が一気に開かれ、凄まじいミサイルの弾幕と、その煙が空を彩る。
ミサイルは一部のノーマル達とランドクラブの動力部、そして主砲に集中的に撃ち込まれ、一機目のランドクラブは、瞬く間に戦闘能力を削がれていった。
「今よ!行って!」
メイの掛け声に呼応するように、ストレイドはオーバードブーストで、一気にランドクラブの側面を駆け上った。
ミサイルで損傷した主砲に被せるように、グレネードを何発か打ち込む。
グレネードの爆発と衝撃で傷口をを更に広げ、トドメに損傷したランドクラブの装甲の隙間に、ライフルを両方とも差し込み、ブルバースト。
GA側から提示された弱点である、内部にある弾薬庫を破壊したのか、主砲から火が漏れ、ランドクラブは大きく爆発した。
GA製らしい堅牢な装甲は、ランドクラブ自体の崩壊は引き起こさなかったが、煙を吐いて沈黙している様子から、戦闘能力がなくなったのは明らかだった。
「何で砲撃が当たらない!こっちはAFなんだぞ!?」
「ノーマルは何やってる!こっちに近づけさせるな!」
「……だいぶ混乱しているようだな……いい気味だ……残りもさっさと片付けてしまえ」
セレンが敵を嘲笑う声を聞きながら、レインはストレイドを残った敵に向けた。
残敵は少数のノーマル部隊と、健在なもう一機のランドクラブ。
瞬く間に戦力の大多数がやられたのを見て、ようやく脅威度を引き上げたのか、ランドクラブは残ったノーマル達を、名称の元になったのであろう、その多連脚の隙間に庇い、防衛線を構築しようとしていた。
だが、防衛線を構築するためにノーマルを集めることは、相対していた2機のネクストにとって悪手だった。
特にメリーゲートは、集団の制圧力に優れているのだ。
滑るようにほぼすべての射撃を回避しながら接近するストレイドと、装甲に物を言わせて多少の被弾を許しつつも、強引に押し進んでいくメリーゲート。
この2機は、動きは対象的だったが、息はどこまでも合っていた。
メリーゲートがミサイルでノーマルの群れを薙ぎ払い、そこにストレイドが突っ込んで行く。
ランドクラブは必死に射撃を加えるが、ストレイドは主砲の射線を切るように接近し、ついでとばかりにノーマルの集団にグレネードを打ち込まれてしまえば、残ったノーマルたちは、それだけで全滅してしまっていた。
残るはランドクラブ1機のみ、しかもストレイドはランドクラブの下部の入り込んでいて、主砲は届きようもない。
苦し紛れに下部砲台が火を吹くが、それは焼け石に水といった惨状で、すぐに下部砲台すらも全て仕留められてしまい、もはやランドクラブは、ストレイドに対する攻撃手段を全て失っていた。
正面にいるメリーゲートも、そもそも砲撃に当たらなければ、当たったところで致命傷にできるはずもなく、ランドクラブにできることは、もうなくなっていた。
「こ……降参だ!降参する!助けてくれ!」
もう勝てないと悟ったのか、ランドクラブは射撃を止め、オープン通信で命乞いをしてきた。
鹵獲してもいいが、あくまで企業からの依頼内容は撃破。
だがGAも、ランドクラブが帰ってきて、更には捕虜もついているとなれば、それに越したことは無いだろう。
もしかしたら追加報酬が出るかもしれない、という期待も込め、レインはセレンに確認を取った。
「……どうするの?」
「待て、相手に確認を取ってみる」
そうして暫く待っていると、セレンからの通信で、GAからの返答を伝えられた。
「……回収部隊を送るそうだ、着くまで待機していろとさ。
ランドクラブの状態次第では、追加報酬も検討するそうだ、よくやった」
その言葉にレインはふぅっと息をついた。
流石に無抵抗の相手を殺すのは憚られたのだ。
待機中、停止しているストレイドに、メリーゲートが近づいてきた。
ぼーっとしていたレインが、そちらに視線を向けると、メリーゲートはストレイドの近くまで移動し、通信を繋いできた。
「今回の依頼、助かったわ、ありがとう。相性がいいみたいね、貴方とは」
「あ、いえ、こちらも助かりました」
律儀な人だ。
レインはメイに対し、そんなイメージを抱いた。
「それにしても、本当に子供なのね……ランク2もそうだけど、あまり子供には殺し合いをしてほしくないわ、そういうのは大人がやっていればいいんだから」
「そうかもしれません……でも、目的があるんです。そのためなら、僕は何だってやります」
「……そう……なら私から言えることは何も無いわね……応援してるわ、あなたの目的が叶うことを」
メイは悲しそうな顔をしたが、それ以上踏み込むことはなかった。
関係ない人が言うことでは無いと感じたのだ。
だから、せめてその目的が叶うようにと祈った。
『こちらGAの回収部隊、現場に到着した。君たちの仕事はこれで終わりだ、ご苦労だった』
GA回収部隊が、AFを伴ってやってくるのが見え、ようやくかとレインは背伸びをして、ストレイドの向きをメリーゲートの方へ向けた。
「……終わりましたね、行きましょうか」
「……ええ、そうね」
2機揃って回収地点へと向かい、ヘリに繋がれる。
特に会話することもなくカラードに着き、機体に付着したコジマ粒子を洗浄した機体から降りたところで、メイは、再度レインに声をかけた。
「今日はありがとう。次があったら、そのときはよろしく。またね」
「はい、頼りにさせてもらいます。さようなら」
レインはそう返し、別れようとしたが……
「……ん?」
「……あれ?」
……どちらも同じ方向に足を向けていた。
「………もしかして、貴方E地区?」
「………意外と近いところに住んでたんですね」
同じ居住区に住んでいても、意外と会わないものなのかと思った二人だった。
ランドクラブの弱点云々は捏造です。
今回はちょっと短かったですね。大体5,000文字位を目安にしているのですが、今回は3,500位でした。