愛し合う二人は平穏を求める   作:レイアズ

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06 オーダーマッチ

ミッションから帰ってきた後、レインは酷く消耗していた。

無理もないだろう、一般的なネクストでの戦闘時間を、大幅にオーバーしていたのだ。

 

本来ならネクストでの戦闘は、短くて10分ほどで、長くても20分を超えることはないのだ。

 

理由は幾つかあるが、大きくニつに分けられる。

 

 

一つはネクストの性能だ。

ネクストは、ミッションにそこまで時間がかからない。

 

AFやネクストが相手として出てこなければ、ネクストにとって、ミッションとは蹂躙だ。

時間がかかる方が未熟と見られる。

 

 

二つ目はリンクスへの負担。

ネクストの長時間搭乗は、高速戦闘による強烈なGに、長時間晒されることに他ならない。

レインを含め、多くのリンクスはその負担を避けるため、人体強化措置を受けてはいるが、それでも限度というものはある。

 

それに加え、レインは、穴が空いた装甲から入ってきた、高濃度のコジマ粒子にも晒され続けた。

本来コックピットブロックは、コジマ粒子やそれによる汚染を遮断するが、今回のミッションで、ストレイドは運悪くコックピットブロック付近を損傷し、そこからコジマ粒子が侵入してきていた。

 

重度の内蔵損傷にコジマ汚染、まさに死にかけだったレインは、ミッション後に集中治療室で除染と治療を行われ、暫くの間、絶対安静を言い渡された。

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

絶対安静を言い渡された後の病室で、ちょうどいいからとセレンは語りだした。

 

「お前がある意味軟禁状態のリリウムに会う方法は限られている」

 

リリウムは任務以外では、BFF本社から出て来ることはない。

 

だから会いたくても、王小龍を通さなければならない。

それに王小龍はそう簡単に面会を許可しないだろう。

 

「それに、お前に望みはただ一回会うってだけじゃないだろ?お前とリリウムがそう望むのなら、引き抜きをする必要がある」

 

セレンは、「リリウムに会いたい」と言ったレインの真意を正しく理解していた。

 

「まあ、考えがあるにはある」

 

セレンはレインの顔を見て言った。

 

「お前の有用性を証明してみせろ、企業共にな」

 

レインが疑問を顔に浮かべていたのが分かったのか、セレンは苦笑しながら付け足した。

 

「企業がお前を取り入れたい、と思わせるほどに有用性を示せば、多少の我儘は通る。

例えば、表向きはBFF所属のままでも、実際には独立傭兵にさせる、とかな」

 

レインはその言葉に目を見開いた後、笑みを浮かべた。

 

「なるほどね、じゃあ、実績はもう十分かな?だって……」

 

「ああ、十分だ、なんせ、お前はマザーウィルを撃破しているんだからな。

BFFにとっては、この上なく皮肉が効いた実績だろう?」

 

セレンは愉快そうに笑いながら続ける。

 

「後はカラードランクがまだ中位ランクなのが気になるな、ランクが一桁になれば、その時点で企業陣営はお前を引き入れようと躍起になるだろう。

一桁ランカーってのはそれだけの価値がある、我儘を通すならそのタイミングだ。」

 

そこでセレンは、表情を真剣なものに戻した。

 

「だが問題はそこだ、ランク一桁にするには、ランク9、ホワイトグリントを倒さなくてはならない。企業の下らんプライドでランクは9だが、奴の本来の実力は、ランク1を上回っているぞ」

 

その言葉に、レインは戦意を迸らせ、笑った。

 

「勝ってみせるさ、リリウムに会うためだ。」

 

レインは記憶を無くしてはいるが、リリウムが連れ去られた少し後までは記憶が鮮明に残っていた。

 

だからちゃんと覚えている。

 

抱きしめられたときの温かさや、愛していると囁かれたその言葉、楽しかった記憶も全て。

 

「はぁ……会いたいなあ………」

 

表情を一転させて頬を染め、窓の外を見つめるレインに聞こえないよう、セレンはボソリと呟いた。

 

「恋する乙女は美しいとはよく言うが……お前は男だろ……」

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

数週間後、言い渡された安静期間が終わったレインは、カラードマッチのため、カラード本部のシミュレーターの中にいた。

 

対戦相手はランク12、リザイア。

 

オーメルNO.2の女性リンクスで、水上戦が得意であり、レインと同じく、アームズフォートの単独撃破を達成している。

 

乗機ルーラーは、ライールフレームをベースに、補助ブースターを積み、さらに機体のチューンをQB推力に振り切っているため、フラジールという例外を除き、全リンクスの中でも屈指の機体速度を誇る。

 

更に同社NO.1リンクス、オッツダルヴァと異なり、EB−O700(居合型レーザーブレード)や、近距離用のショットガン、中距離用の散布ミサイルと、近接高機動というライールフレームのコンセプトにちゃんと沿わせた機体である。

 

『これより、オーダーマッチを開始します。対戦者はランク13、レイン・ヘイズ様、ランク12、リザイア様です。両者準備はよろしいですね?……では、オーダーマッチ、試合開始です』

 

アナウンスが響き渡り、機体のロックが解除される。

 

舞台は砂漠地帯。

砂が真っ白な光を反射し、レインはその眩しさに一瞬目を細めた。

 

近距離専用のルーラーは、距離があるうちに削れれば、大きなアドバンテージになる。

そう考えたレインは一旦距離を取り、遠距離用ではないFCSを補助するように、目測でANNAの弾を撃ち出した。

 

「……外れたか……やっぱり遠距離戦は苦手だ……」

 

遠目に着弾を確認したレインは、ANNAを捨て、格納ブレードを取り出した。

ANNAは汎用的に使えるが、流石に超近距離かつルーラー相手では荷が重い。

 

それにルーラーはブレードを使って来るだろう。

迎撃用にブレードを握っておいたほうが良い。

 

オーバードブーストで接近しながら、グレネードを連射。

 

一通り撃ったらグレネードも捨てる。

 

そうして限界まで機体を軽くしたストレイドは、ルーラーの懐に飛び込んだ。

ボウッという轟音と衝撃が砂を揺らす。

 

何度もQBが交差し、ブレードの鍔迫り合いで火花が散る。

 

ブレードがぶつかり合う場合、出力が高いストレイドの方が有利であるはずなのだが、ルーラーは、鍔迫り合いの為に至近距離に近づいた瞬間に、押し付けるようにショットガンを撃ち込み、不利を無くしていた。

 

それに加え、ルーラーの持つブレードはPA減衰力が高く、PAを切り裂いた瞬間にショットガンを撃ち込むことで、威力の強化も図っている。

 

レインはその動きに対し、ブレードを振る寸前にFCSの誘導を切り、振るった後隙を無くしながら、ショットガンの射線軸から機体をずらすことで被弾面積を減らしていた。

 

機動性はルーラーが勝っているものの、余計な武装を捨てたストレイドは相応に速く、得意な3次元での近距離戦闘だということもあり、ルーラーに対し優位に立ちながら動いていた。

 

 

「くっ……!」

 

リザイアはシミュレーターの中で唸った。

 

近接戦にまで持ち込めれば勝てると思っていた自分を殴りたい、という思考が頭を支配し、補助操縦桿を握る手が、ギシリという音を立てた。

 

EB−O700の特性である発生時間の短さを活かし、ストレイドに連撃を浴びせる。

そうしてPAを引き剥がし、ショットガンを撃ち放ち、ストレイドの横をすり抜けるようにQB。

振り返って散布ミサイルをばら撒き、再度QBで飛び込む。

そこに待ち構えていたとばかりに、ストレイドが振り被ったブレードが直撃した。

 

『AP、70%減少』「……ああもう!」

 

リザイアの口から思わず悪態が漏れる。

 

本来ならば今の一連の流れでごっそりとAPを持っていけるはずだった。

しかしショットガンは軸をずらされた上にミサイルも撃ち落とされ、爆風での微々たる損傷しか与えられていない。

一撃火力に頼っているルーラーにとって、その一撃をいなされるというのは致命的だ。

 

張り付くように向けられた銃口から機体を逸らす。

 

弾が機体の横をすり抜ける音を聞きながら、相手のMARVEは残り弾数が少ないはずだ、とリザイアは当たりをつけた。

 

張り付いていた時にあんなに際限なくばらまいていたのだ。

残っているのは一マガジン程だろう。

 

相手の弾が切れたら一気に引く。

そのまま中距離からミサイルでなぶり殺しにしてやる。

 

瞬き数回の間に思考を終わらせたリザイアは、半ば賭けになるが、わざと隙を晒しながらブレードを起動した。

 

そしてレインがその隙を見逃すはずがない。

ショットガンを喰らわぬように、軸をずらしながらMARVEを連射する。

 

「来た……!」

 

リザイアの狙い通り、MARVEの銃口がガチリと音を立てて沈黙し、その瞬間にリザイアはルーラーのオーバードブーストを起動し、ストレイドの横をすり抜けるように距離を取った。

 

振り返り、ミサイルをロックしようとしたリザイアの目に映ったのは、オーバードブーストを吹かしながらブレードを2本起動し、振りかぶったストレイドの姿だった。

 

「なっ……!」

 

リザイアは目を見開き、反射的にアサルトアーマーを起動した。

 

そう、起動してしまったのだ、『先に』。

 

ルーラーが放った青緑の輝きをかき消し、ストレイドの放ったアサルトアーマーがルーラーに直撃した。

 

オーバードブーストでPAが減衰していたこともあり、それが決着とはならなかったが、アサルトアーマーの光と、ロックオンが散らされた事により、リザイアは迫る刃に反応することができなかった。

 

「獲った!」

 

レインがそう声を上げるほどに、ブレードは綺麗にルーラーを切り裂いた。

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

「ふうっ……」

 

シミュレーター室の中で、リザイアは目頭を揉み、息をついた。

 

リザイアの敗因は単純なものだった。

 

「自分の得意距離を捨てて勝てるわけがない……か……」

 

リザイアはポツリと呟いた。

 

少なくとも、ミサイルを捨てて近距離戦を続行していたら、レインはもっと手間取っただろう。

それを理解していただけに、リザイアは重く息を吐いた。

 

「訓練し直さなければ……」

 

リザイアはレインがシミュレーターから出ていくのを見送りながら、訓練シミュレーターを起動した。

 

この立ち直りの早さも、リザイアがトップランカーの一人である所以だろう。

 

職員の噂では、その晩、ずいぶん遅くまでシミュレーター室の明かりは灯っていたそうだ。




ガチで遅くてごめんなさい、受験生なんです、ちょくちょく暇を見つけては書いていくので、どうかご容赦を。

次回は白栗戦です。多分更新遅いです。

後、お気に入り登録、感想、評価をお願いします。

大きなモチベーションになるのでぜひ。

これからの話にVD要素が少しだけ出てくる予定で話を考えていますが、あんまり混ぜ混ぜするのも良くないかと迷っています。そこでせっかくなので皆さんに決めて貰おうと思います。回答よろしくお願いします。

  • VD要素があった方がいい
  • VD要素はあってもいい
  • VD要素は無い方がいい
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