ランナーズハイ   作:どんとろりんと言葉が溶けていく

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毎日投稿を優先してクオリティを落としてはいけないと思ったのでクオリティ優先で不定期になります。

ウマ娘からみたアホのすがた。


血を揃えて骨を生やせ

足りねぇ。足りねぇ。こんなもんじゃ足りねぇんだよ…!

 

真夜中、走り込みをずっと続けている。泊まることになった皇帝サマにも、いつもより口うるさい使用人にも、無理してやがるジジイにも止められたが一向に答えが出ないままでいることの方が我慢できなかった。

 

息が切れる。心臓も肺もなにもかもが爆発しそうなほど追いつめている。それでも脳裏に過るはアイツの姿で。どうしても届かない。アイツが一歩先を行っている。現実には私はアイツより速いだろうがそう言う事じゃない。

 

まだ、アイツがいる場所まで、足りない。足りないのだ。

 

苦しいという想いも休みたいという気持ちも全部ねじ伏せて、また一歩踏み込む。地面の感触を味わうように。これが最後だと思うように。

 

時間がねぇんだよ。私には時間がねぇんだよ…!

 

喘いで、息を荒げて、それでもフォームを崩さないように一歩、一歩を踏み込んでいる。必要なことだ。自分に叩き込まないといけないからだ。

 

アイツの技術は二種類の走法を必要とする。そのためにはせめて元々の走法を自分の身体に定着させないといけない。そのために必要なのは、どれだけ疲れていても、どれだけ焦っていても

 

自分で決めたフォームを貫き通す胆力と定着。日常レベルで浸透した身体が必要だ。

 

目を逸らさず自分の身体を見た時、私の走りという土台は酷く不安定で脆い足場のように感じた。

 

「こんなんで走って技術をパクるなんざ、そりゃ舐められたって思うだろうなぁ…っ!」

 

走る。走る。それしかできないようにする。

 

走りながら、頭の隅をずっと占領する思考に意識を寄せた。

 

アイツは、なんであんな走りに殉ずるような真似をするんだろうと。

そりゃアイツが走るのが好きだからだ。でも、アイツはそこまでバカじゃないことはとっくにわかっていた。トレーナー試験を主席で合格して、アイツは私の走りの問題を指摘した。十二分に頭が回るだろう。

 

それなら、アイツはなんでこの世界で、ウマ娘という種族が居る世界で、走るということに執着するのか。気づいてたはずだ。いや、それ以上に…

 

「なんでアイツは…私らを見る時あんな悲しい目をしてやがる…!」

 

気になっていた。ずっと。ずっとだ。私らをふと見る時、そこに混じる憐憫と悲観に。私が走った時だって、ゴール地点を踏んだ時のあの横顔がずっと、ずっと頭から離れねぇ。

 

どうしてそんなツラするんだよ。なんでそんな色を浮かべんだよ。

 

まるで、親においてかれた迷子みたいな

 

「あぁぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

性に合わねぇ。感情を踏み潰すように駆け出していく。そうしなきゃ、もうどうにかなりそうだった。

 

ずりぃだろうが!そんな目で見られたらよォ!私だって好きでウマ娘に生まれたワケじゃねぇ!テメェだって好きでヒトに生まれたワケじゃねぇだろうが!ただの我儘で、ただの未練で…

 

それでも追い求めたのがわかるから、テメェの前であんなクソみたいな走りをしたのが許せねぇんだよ!

 

それでも、それでもって走り続けたテメェに、努力した、頑張ったなんて言葉は通用するワケねェ。才能がなんだ。練習量がなんだって。そう言えるだけの権利がアイツにはある。有ってしまう。それがわかるだけの積み重ねたものがあると

 

()()()()()()()

 

そんな自分が許せねぇ。そんな軽々しくわかっていいものじゃねぇだろそういうのは…!

 

走れば走るほどわかってしまう。アイツが踏んでいった轍をなぞっていくほどに苦悩と後悔がわかってしまう。ウマ娘とヒトという種族の差以上に

 

 

足りないものを追い求める人間の試行錯誤と苦悩の歴史が。

 

 

我慢ならなかった。走って、走って。駄々をこねる子供みたいに情けないものだった。誰にも見られなかったのが幸いだったが、抑えきれるものでもなかった。こんなの、こんなのが許されていいのかよ…!

 

頭に浮かぶは三女神の像。

 

おざなりに感謝していた三女神さえ、今では

 

八つ当たり染みた憎悪しかなかった。

 

「どうして私をウマ娘にした!?どうしてアイツはヒトにした!?…アイツが積み重ねたものは私に劣るのか!?劣っていいわけねぇだろ!なんで…!」

 

止まらなかった。とめどなく溢れ出る感情を抑える術を持たなかった。

 

「おかしいだろうがッ!あれだけ積み上げたものがあるって半端な私だってわかるんだぞ!そんなのが本格化前のウマ娘といい勝負ってどういうこったよ!?それだけやってもそこまでなのかよ!?」

 

アイツの走りに見た、敬意を、踏みにじる事なんざできなかった。

 

「ヒトで、あれだけの肉体に仕上げて、走りの技術と、考えられるだけの知識を取り入れたアイツでも…」

 

自覚した。自覚したんだよ。私が自分のものにしてきた技術には、血が通っていたことに。誰かの苦悩があったことに。

 

「それだけやって、ようやくスタートラインなのかよ…!」

 

おかしい。今までこんなこと思った事もなかった。全部、全部全部利用して頂点に立つって。なんでも利用して皇帝サマに勝つと言ってたのに。

 

苦しい。苦しいが、苦しくても走らないといけない。

 

前を見る。脚は動くか?震えている。オーバートレーニング気味だ。

 

頭はどうだ。酸素は供給されている。視界が明滅しているような感覚はない。

 

感情はどうだ。やる気は十分だ。こんなんで折れていたら皇帝サマにもアイツにも見せる顔がねぇ。

 

「足りねぇ。こんなんで追いつけるはずもねぇ」

 

アイツはヒトであそこまでいった。ならウマ娘の私が折れる理由なんざねぇ。

 

種族も、生まれも、才も、経験も、そのどれもが言い訳にならねぇ。

 

私だけの、ひたすらに追い求めるウマ娘(シリウスシンボリ)の走りを極めなきゃならねぇ。

 

見返そう。今までものにしてきた技術も、経験も。全部だ。そんで、考えろ。

 

試行錯誤にこそ、私が求める私がいる。

 

走りながら、私は漠然と理解した。私自身の本質を。言葉にするならそれは

 

「飢えなきゃ、勝てねぇ」




ウマ娘のそれぞれのモチーフはふんわりしてますが、シリウスシンボリとミスターシービーだけ明確に決まっています。ジョジョ7部のジョニィとジャイロです。世界の頂点を追い求め、飢え続ける者と自由とは何かを問い、自分なりの答えに納得する者、飢えと納得が基盤テーマです。
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