ランナーズハイ   作:どんとろりんと言葉が溶けていく

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ウマ娘の走りってヒトに当てはめるとまぁ無理な走り方だよなって(超前傾姿勢、人にない尻尾、謎加速、蹄鉄等々…)

土日はホントにやることあるので一話だけです。
注意 今回も前回同様トレーナーが割と酷い事を言いますがあしからず


喉元に牙を

「はっ?」

 

コイツは私に何を言った?

思わず立ち上がろうとする身体が止まる。燃え上がっていた心は冷や水をぶっかけられた。塗りつぶすような苛立ちに任せて叫ぶ。

 

「今の走りになんの問題がありやがる?!」

 

「言ったはずだ。お前の走りが見たいと」

「だから、私は」

「俺の走りを真似ただろう。その走りでなお、お前は一歩、たった一歩だけだが出来ていた。その点でいえば才能があると言えるが…俺が見たかったのはシリウスシンボリというウマ娘の走りだ。猿真似を見に来たわけではない」

「猿真似だァ?!アレは私がテメェを分析して欲しい技だから取り入れただけで、テメェの動きなんざ簡単に…!」

 

「二度言わせるなよ。シリウスシンボリ」

 

静かに吐き捨てられる言葉が急速に肝を冷やしていく。トレーナーを見上げれば表情が良く読めねぇその顔が、心底ゴミを見るような目をしていた。

 

「お前の走りを見せろと言った。それなのにヒトの技術を真似たのはお前だ」

 

「ならもう一周…!」

 

「いらん。猿真似とはいえ本気で走ったのなら今日に次はない。それとも、お前は余力を残していたのか?本気ではなかったのか?」

 

底冷えする声に二の句を継げなかった。確かにそうだ。これでもう一周を走るなんて言えば、今の走りに全力を出してなかったことになる。それこそ、コイツは許さない。

 

「なら明日…!」

 

「来週だ」

 

「…はっ?」

「来週に、もう一度用意をする。その時に()()()()()を見る」

「テメェ…!」

「自覚をしろシリウスシンボリ。俺は走ることが好きだ。だが、自分の走りに限界があることを知っている。自分だけの走りがあることを知っている」

 

「基本すら出来ていないのに、()()()()をしたのはお前だ」

 

「俺はトレーナーだ。ウマ娘に最適なフォーム、ペース配分、体力づくりは教えてやれる。もちろん、俺が教えられるものはなんだって教えよう。()()だからだ。だが、俺の技術を真似ることがそんなに良いことなのか?所詮、ヒト一人が積み上げてきたものを真似ただけだ。それでお前は満足するのか?当てつけに何の意味がある。ヒトに見せびらかす走りを誇りと宣うか?

 

そうだと思っているならお前とのトレーナー契約はなしだ」

 

私は。私は…!

 

「うわぁー…すっごいぼろくそ」

「…先生、さすがにそれは言い過ぎなんじゃないか?シリウスは先生に」

「エース」

「シービー!あんな…!あんな風に言わなくても!」

「エース、アタシに任せて。……先生はさ。あの走り、そんなにダメだったの?確かにシリウスは先生の真似?をしてたと思うよ。変というか…いつものシリウスじゃないのは事実だった。でも、新しいものを取り入れて自分のものにしようってのは悪いことなのかな?」

 

「悪くはない」

 

「なら…」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「っ…」

 

立ち上がる。ふら付くが気にしねぇ。ふらついたまま近づき、胸倉を両手で掴み上げる。シービーやエースが驚いてるが気にしてられねぇ。コイツは私を侮辱した…!

 

「テメェに、テメェに私の何がわかんだ!まだ会って数日のお前が私を語るのか!?語れるのかって…「語れる」

 

「あ?」

 

「語れると言った。」

「ンだってそんな自信満々なんだよテメェは!私の何を見て…!」

「お前自身」

 

胸倉をつかまれても平然と答えるコイツ。それから朗々と語られる言葉は間違いなく

 

「シリウスシンボリ。お前は脚に力を溜めるというクセが見られ、鍛えれば鍛えるほどその力が十全に発揮されるが、そのクセのために初動が遅れやすい。その溜めは差しや追い込みよりも先行向きだ。速度一点に使った方がより前に行く。溜め期間が必要だから逃げはやはり向いていない」

 

「足裏の安定感。指先の力、アキレス腱がおそらく一般的なウマ娘よりも強い。地面を強く抑えられる力がある。荒れたバ場でも走りやすい…。あるいは荒れたバ場を主戦場にしていたことがわかる」

 

「呼吸、テンションの上げ方。やはりエンジンが掛かり始めるのが少し遅い。だが一度掛かると本人すら止められない加速力が生まれる。肺が強い証拠だ。一度に吸う酸素が多くなるからスパンが長くなる。強い肺を持つがゆえに必要な呼吸量を一息で補おうとする。それが問題点だろう。長所でもあり短所でもあるから、そこをどう生かすか、直すかはお前次第だ」

 

「シリウスシンボリが積み重ねてきたものはその身体が教えてくれた。だから、あと見てないのはお前の走りだけだ」

 

「次は走れよシリウスシンボリ。俺は今の走りをお前の走りだとは思っていない」

 

私自身のものだった。

 

コイツは、さっきの走りで今のを理解したと?私の積み上げたものが数瞬で?

 

クールじゃねぇ。冷静になろうとしても動揺が勝つ。コイツにクソみたいに心を掻き回されていることが心底気にくわねぇ。私は走ってんだ。走ってたんだよ!あれが…

 

「私の走りだったんだよ…!」

 

「その程度かと言っている」

「私は『シンボリルドルフ(アイツ)』を塗りつぶすために…」

「授業の時言ったはずだ。勝つために走るのは邪念だと」

「私の覚悟が邪念なワケねぇ…!」

 

「なら走りで見せろ。シリウスシンボリ」

 

「来週、同じ時刻だ。猿真似じゃない、本物を期待している」

 

トレーナーが振りほどいて去っていく。私が?いつだって上にいた私が捨てられたのか?いやそうじゃねぇ。私が、私の走りが

 

「クソ情けねぇモンってことかよ…」

 

力が抜ける。手が震える。クソ。苛立ちが抑えきれねぇ。

トラックの芝を握りしめ、ブチリ、引き千切った。煮えたぎるほどの火が私のすべてを燃やしていく。私の覚悟を邪念だと?テメェみてぇな走ること=悟りを開くじゃねぇんだよ。私は世界のトップになるために走っている。手段と目的をはき違えるバ鹿がどこにいやがる。

 

だが、それ以上に許せないのは

 

その手をそのまま地面に打ち付け、ギラリと睨んだ。

 

アイツは私の選択を間違いだと切って捨てたことだ…!テメェの技術がどこでも通用する万能技術なんざ思ってねぇ。ただ1ピース、勝負する時1ピースが足りねぇってことがないよう欲しがっただけだ。皇帝との戦い、世界の戦いの時、あの時あぁしとけばよかったなんて後悔したくねぇから最善を尽くすんだよ…!

 

それが間違いな訳がねぇ…!

 

後悔させてやる…!私の選択を間違いと切ったことを!

私を一度捨てたということを()()()()後悔させてやる!

走るのにしか興味がねぇっていうなら、アイツが焦がれるほどの走りにしてやる!

私こそが正しいと認めさせてやる!

 

その全てを、私だけに向けさせてやる…!

 

「私の走りでテメェを殺してやる…!」

 

テメェを走りでブチのめして、喉元に刃を突きつけてやる。

 

覚悟しろ。トレーナーサマよぉ…!




曇らせ…曇らせ?

「曇らせタグ、一応で付けたヤンデレタグを生かそうとした」+「シリウスの根本をイベントで見まくって再現度上げた」=合体事故起こした感ある。


簡単、認識の違いコーナー
トレーナー:走るときは走ること以外考えんな。あとお前の走りが見たいっていうのにヒトの走りしてんじゃねぇ。次は期待してる
シリウス:トップになるために走るだけだ。目的と手段混同するわけねぇだろ。ヒトの走りを取り入れようとするのも私の走りに決まってんだろ。認めさせてやる
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