茂山影男   作:ピンチャンよ永遠なれ………

50 / 60
50話 総力戦

【────我々は超能力結社、『爪』である。私は『爪』のリーダー、鈴木統一郎だ】

 

 

 男の顔がスクリーンに映し出され、ノイズ交じりの声が響く。

 

 

【我々は現在、超能力を用いて公共の電波をジャックしている】

 

 超能力?

 何かの番組の企画か?

 鈴木統一郎って…まさかあの鈴木統一郎?

 眉毛ヘンじゃね?

 

 街中ではざわざわと声が上がった。

 

 

【これは我々の力の一端に過ぎない。だが、いきなり『超能力』と言われても、信じることができない者がほとんどだろう】

 

 

 鈴木は今、特に若者の間で話題になっている謎のメールについて触れた。

 

 

【あのマークには特殊な細工がしてある。力を体験したくば、体のどこでもいい。印を描け】

 

 

 聞いていたものの一部は、面白半分で手の甲や腕に印を書く。

 瞬間、その模様が赤く光り、書いた者たちは明らかな体の変化を感じた。

 エネルギーのようなものが、体から湧き上がる感覚。しかしその不可思議な感覚はすぐに無くなった。

 

 

【それが超能力だ。我々『爪』は超能力で世界を征服し、すべての人類──無能力者たちを支配下に置く。まずその第一歩として、この日本を解体する】

 

 

 ざわつきが大きくなる。すでにSNSではこの電波ジャックの放映に対してハッシュタクがつけられ、加速度的につぶやきがなされている。

 

 

【この国を憂へる者たちよ。『爪』が力を貸そう。旧態依然の古くさい価値観を壊し、共にこの国を下し、新たな世界を築き上げようではないか】

 

 

 未だこの発言を信じぬ者もいた。

 一方でテレビにしがみつき、目にギラついた色を浮かばせる者もいた。

 

 

【翌日の12月25日正午。我々はこの国への攻撃を開始する。場所は五か所────東京、仙台、名古屋、大阪、福岡だ。ともに戦う意思のある者はこの印を肉体に刻み、戦場に向かえ】

 

 

 では、と鈴木は締め括──ろうとして、わざとらしく「おっと」と声を上げる。

 

 

【私からのクリスマスプレゼントだ。名は五条悟。この者の首を捕った者には100億を与えよう】

 

 

 画面に白髪の目隠しをした男が映し出された。

 

 

 くしくもこの放送は、九十九が夏油と影男と出会ってからわずか数日後の出来事だった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 世情が騒いでいる一方、高専と政府はてんわやんわの事態だった。

 あらかじめ入国審査などに制限をかけていたが、それも失敗に終わった。

 

 電波ジャックについては術式によるものだと断定された。

 

 高専側は鈴木が日本にいるとして、はたして呪印の効果が彼の述べた五つの都市──仙台、東京、名古屋、大阪、福岡に及ぶのか疑念を抱いた。(テロの可能性のある動きを注視していた際、この五つの都市は集中して不穏な動きが確認されていた場所だった)

 

 ──そんな中、もしかしたら結界術の技術が応用されているのではないかとの意見が出た。

 

 挙げられた五つの都市は、仙台を除けば五大都市に数えられる。そのうち北海道の札幌は対象外となっている。この札幌はアイヌの呪術連の結界が張られており、天元の結界外となっている。

 そこまで考えつくと、呪印が天元の結界を利用しているのではないかと考えつく。

 

 呪印は鈴木の呪力と繋がる役割を果たしている。「呪印=携帯電話」のようなものだ。

 その電波が弱まわらないよう、天元の結界の「結界術全般の底上げ」を利用して、遠隔まで繋げるようにしたのかもしれない。

 

 政府は直ちに記者会見に追われた。

 我が政府は毅然とテロに立ち向かう──と、総理は語る。

 

 しかし記者会見中、警備の一人が突如壇上に現れ、総理に触れたかと思えばそのまま総理とともに忽然と姿を消した。

 

 

 

 日本は一夜にして、混乱の渦へと巻き込まれていった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

「いやぁ〜一夜にして、僕も有名人になっちゃったねぇ」

 

 軽い調子でそう言うのは五条悟その人である。

 

 

 場所は東京校。九十九由基の情報が夏油伝いに高専に共有され、その対策が練られていたところに宣戦布告の通達である。

 

『爪』がわざわざ最初に日本を襲ってきたのも、一番最初に厄介な存在を片付けたかったからに違いない。

 

 その厄介な──とは、言わずもがな五条悟だ。

 

 賞金をかけたのは彼を動きにくくするためだろう。

 100億という大金を欲しさに、高専の内部でも彼の命をねらう者が現れる可能性もある。

 

 雑兵で五条や他の術師の動きを鈍らせ、その隙に本陣は政府を潰す算段なのか。

 五条のことは確実にボスが狙うはずだ。タイミングは不明だが、その場合は呪力の一極集中が起こる。雑兵が捨てられる瞬間だ。

 

 

「戦う相手が呪霊ではなく、対人というのがな…」

 

 夜蛾が苦い顔でつぶやいた。

 

 

 OB・OGには近場の都市、もし可能ならば手薄の都市に力を貸すよう要請が出された。

 

 東京校は生徒含め、五大都市でも心臓的な場所である東京の守護に当たる。仙台はアイヌの呪術連に協力を得られるか取り急ぎ協議がなされている。大阪は京都校を中心に。福岡は福岡分校が。そして名古屋は九十九由基が配置されることになった。

 

 大阪、福岡、名古屋は御三家の協力が得られ次第、不足分の人員を配置する手筈になっている。

 

 五条家からはすでに快諾が出た。こちらはテログループに並々ならぬ怒りを覚えているご様子。そしてこれまた意外なことに、禪院家からも大幅な人員が割かれることになった。

 

 すぐに参加の意を示した直毘人はともかくとして、この裏には直哉が「兄さん方」を煽った経緯があった。烏合の衆に恐れている云々──と。直哉の煽りに兄さん方の怒りが爆発し、続々と参加を表明した。

 

 なお、直哉は彼らを意図して煽り、参戦させる流れを作ったわけではなく、ただ単純にその性格の悪さで煽っただけだったりする。

 

 加茂家についてはまだ返答がない。しかして五条家、禪院家が交戦の構えのため、御三家の矜持として加茂家も協力に出ると考えられる。

 

 戦闘が想定される場には、避難勧告も出された。アイヌの呪術連や加茂家の協力も決まった。

 各都市には増援として夏油の操る呪霊も送られることになった。

 

 

 鈴木の居場所については、呪印で鈴木と呪力が繋がっているならば、それを辿れば鈴木の潜伏先が分かるのではないかと考えられた。

 

 しかし、五条曰く。

 

 

「ワイヤレスイヤホンみたいなもんだね。一度目の時に繋がりが可視化されていたなら、その時点で追って突き止められてたよ」

 

 

 厄介な点は他にもあり、呪力が鈴木のものであるため、六眼には同じ呪力が至るところにあるように映るらしい。一応その人物の元の呪力もうっすらと混ざり込んでいるため、完全にすべてが同じなわけではないようだが。

 

 要は六眼に依存した鈴木の捜索は難しいということだった。

 

 

 そもそも向こうには瞬間移動系の術式を持つ術師がいる。その者が鈴木の側にいる場合は、逃げられてしまう可能性が高い。

 的である五条が目に見える位置にいれば、鈴木も出てくるだろう。相手のねらいは雑兵を使い、五条を疲弊させることだ。

 

 ボスを倒さなければ使い捨ての兵士がいくらでも生まれ、そのボスを倒すためには探す手段がない以上、目立って向こうからやってくるのを待つしかない。

 

 そしてこれが長期化するほど、高専も政府も疲弊し、国の混乱が広まっていく。

 

 参ったなあ、という状況だった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 その日はクリスマスだった。

 そんな特別な日に起こったテロ宣言。街中に漂っていた甘いムーヴはたちまち消え去った。テロに賛同する者の中には、「リア充爆発」を掲げた者がいるかもしれない。

 

 

 

 深夜の高専。──のはずだが、至るところの明かりが点けられており、人の声が飛び交っていた。

 高専生は明日に向けて、十分な睡眠をとるように言われている。

 

 一人の生徒、乙骨はしかし眠ることができず、寮を抜け出していた。教室のある建物は明るい。遠目でも人の声が聞こえた。

 彼は人の気配がある方を避けるように、暗闇へ紛れた。

 

「僕は………」

 

 真希たちも今回の戦いに駆り出される。しかして乙骨は待機が命じられていた。その原因はやはり、姉妹校戦で里香が暴走してしまったことが原因だろう。

 

 彼自身、あれ以来里香を制御できるように──そして解呪できるように努力はしてきた。

 

 呪霊が相手であれば彼も駆り出されただろう。ただし相手はテロに同調しているとはいえ、人。そこに里香の暴走が起こってしまった場合、数十、数百の死者が生まれる可能性がある。

 

「……いや、僕にもできることはある」

 

 夏油の腕を治そうとしてから、乙骨は里香の力を借りてではあるが、反転術式が使えるようになった。それも複数人の治療を可能とする。

 

 戦えなくとも、別の戦いをすることはできる。そんな、拳を握りしめた彼の後ろから声がかかった。

 

 

「夜更かしかい、憂太?」

 

「五条先生…!」

 

 

 五条は手に紙パックのいちご牛乳を持っていた。ストローに口を付けた彼はズゾッ、と誤った吸引力で秒で空にする。

 

「その……色々考えてたら、眠れなくなっちゃって」

 

「──の割には、このGLGが出るまでもなく、解決してそうだね」

 

「……そうですかね?」

 

「あぁ、今の憂太はいい顔をしてるよ」

 

 乙骨は後悔し、悩みながらも里香と向き合い続けている。何度も挫けそうになりながら、しかし野ばらに咲いた草花のように踏みつけられてもまた立ち上がる。

 その裏では仲間や、五条の支えもあった。だからこそ彼は進めている。一歩ずつ、着実に。

 

 

「憂太は、今回の任務に参加したいかい?」

 

「……はいっ」

 

()()、覚悟はできてる?」

 

「────はい」

 

 

 五条は口角を上げる。やさしい笑みだった。

 

 

 乙骨憂太は、この人が自分の『先生』でよかったと思った。

 

 

 

 

 

 かくして乙骨は人員を考慮し、出身地でもある仙台へと向かうことになった。

 

 

 そこで彼は、『超能力者』をブン殴る少年と出くわすことになる。

 

 

「君………名前は?」

 

「俺? 俺は虎杖悠仁だけど…どこかで会ったことあったっけ?」

 

 

 少年は乙骨から視線を外すと、ケガをし泣いている幼子の元へ向かった。

 乙骨もまた非術師と思えぬ虎杖の身体能力の高さに驚きつつ、幼子のケガを治し、虎杖から「まさか……オマエも超能力者なのか?」と驚かれることになった。

 

 


 

 ・仙台組

 〈※避難が遅れている人間も有〉

 

 アイヌの呪術連+乙骨に、通りすがりの虎杖(主人公)が参戦。多分「超能力者見に行ってみようぜ!」って残った学校の後輩が心配で向かっている。爺ちゃんは別の病院に移送済み。

 

 非術師なのに真希ちゃんにみたいに身体能力高いな……と思う乙骨。一応「術師」ではなく、「超能力者」ってことで誤魔化す。

 

 虎杖は虎杖…パワーッ!!(きんに君)で陰キャの乙骨を攻略していき好感度を稼ぐ。

 

 乙骨→シンプルに人を助けようとする虎杖に真希に懐いたような尊敬の念を懐く。

 虎杖→呪いを知る。呪いの王の指を食わずに【高専への道】の選択肢が出現する。

 

 主人公のダブルタッグ。

 乙骨が『爪』のメンバーに狙われた末に虎杖が重傷を負って覚醒。

 虎杖の実直なまっすぐさに感化されていた彼は里香とまっすぐに向き合う。

 そうして帰ったら解呪イベントが発生する。

 

 野薔薇もばっちゃに連れられて仙台にいるかもしれない。いた場合、二人とは遭遇しない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。