「よかった、全員とりあえずは無事みたいですね」
頭部カメラ越しに見える若葉さんたち。
五人は私の操縦するガンダム ジークアクスの両腕の上で生存していた。
私がガンダムで結界を抜けた直後に、獅子座型 レオ・バーテックスの攻撃で杏ちゃんたちが炎に巻かれる姿が見えた。
あせったけど、海に落ちた四人はそれが逆に、体についた火を消して
四人を拾い上げて、若葉さんも攻撃を受ける前に助けることができてよかった。
五人とも、服が焦げてるし体のあちこちから血を流してるけど、ジークアクスのセンサーで見る限り、命には別状ないのは幸運だ。
私の──未来の勇者服には精霊が自動的に張ってくれるバリアがあるけど、この時代にはまだそんなものはない。
その代わり、大社のアップデートで精霊のパワーを生命エネルギーに変えることで、回復のための力が増しているようだ。
これは今、私が出撃前に知ったことで、最新の改良で備わった機能らしい。
「樹ちゃん、なんでここに……?」
「未来に帰ったと思ってたぞ」
杏ちゃんと球子さんが言う。
二人とも、たぶん他の三人も、私が元の時代に戻ることを望んでいた。
それは、ひとえに優しさの一言だろう。
こうなったのも私に原因があるのに、誰もそれを責めようともしなかった。
そのことへの感謝、それとも懺悔、もしくは責任感から?
どれとも違う。私は、ただ──
「私、みなさんのことが好きです」
『へっ?』
話しの流れを無視したような、突然の私の告白で五人は変な声を上げた。
「みなさんも、この世界も……この世界に今、生きている人たちも、みんなのことが好き」
「樹ちゃん……?」
だから
「私、この西暦の時代に残ります! それで、みなさんと一緒にこれからも闘います!」
元々は、お姉ちゃんと勇者部のみんなを生き返らせるために始めたことだった。
けどこの世界で、この時代の勇者のみんなと触れ合って、ここにもみんなが守ろうとしているものがある。
それを知ったなら、もう放ってはおけないよ。
ガンダムも、そうしたいならそうすればいい、と言ってくれてる。
きっとお姉ちゃんも、先輩たちも……
「樹……本当にいいのか?」
「はい、覚悟は決めました」
若葉さんの問いに強く答える。
「それに、なんとなく……お姉ちゃんたちには、またいつか……遠い未来のどこかで、もう一度会える。そんな気がするんです」
「……そうか」
私の発言で、それ以上の言葉をかけるのはいらない、と若葉さんは思ったんだろう。
他の四人からも、必要以上の慰めの言葉はなかった。
「……! みんな、見て!」
「バーテックスが、完全体になった……!?」
友奈さんの声で、意識が戦場に引き戻される。
千景さんの言うようにレオ・バーテックスの虫食いのような穴が塞がれ、その姿は私が未来で見た
獅子座は未来で私と勇者部が戦って、まったく勝ち目のなかった相手だ……。
でも、今は違う。
ジークアクスの操縦レバーを強く握れば、私の想いにガンダムが応えてくれるのがわかる。
「みなさん、いきましょう!」
コクピットのモニターに映し出されるジークアクスの機能表示に、変化が起きる。
スコーピオン・バーテックスに感染させられたウイルスが逆に、クアックスのプログラムの制限を外すきっかけになったんだ。
ウイルスは大社の人たちの頑張りのおかげで、キレイに除去されている。
ジークアクスの封印されていたメカニズム、『オメガ・サイコミュ』が解放される。
「うわっ、なんだ!? ガンダムの頭が変形するぞ!?」
外にいる球子さんが、目を開いて驚いているのが見なくてもわかる。
コクピットのモニターでも、ジークアクスの頭部を拘束して機能制限をかけていたブレードアンテナのロックが外れ、展開されていくのが映っている。
「これがオメガ・サイコミュ。この子の、ジークアクスの本当の姿です」
ガンダム、その名前を与えられた証の素顔。
オメガ・サイコミュと、今回の戦いを前にアップデートされたみんなの勇者システムがリンクする。
「……なに? 服が、変わった……?」
「うわぁ、なんか豪華になったよ!?」
千景さんと友奈さんの声につられるように、他の人たちの勇者服もその姿を変えていく。
それぞれのモチーフの花を前面に出したカラーリングから、神聖さを感じさせる白を基調とした色味に。
色だけじゃなく、形もより優雅な、それでいて戦闘的なするどさもあわせ持つ、バトルスーツ。
「神世紀の私たちが使えなかった『満開』と、この時代の『精霊降ろし』の状態を組み合わせて、デメリットをジークアクスがサイコミュで抑え込んでいるものです」
「なんかよくわからんが、それっていいとこどりってことか?」
「はい。その代わり、使える時間は数分しかありません」
球子さんとのやり取りの間にも、タイムリミットは迫る。
「なので、一気にみんなで、あの獅子座をやっつけます!」
「これぞ千載一遇の好機。いくぞ、勇者たちよ!!」
アクセルを踏み込んで、ジークアクスを発進させる。
若葉さんも勝どきを上げ、みんながそれに続いた。
レオ・バーテックスも力を溜め込んで、太陽のように巨大な火の玉を生み出し始める。
あれがまともに撃たれたら、不完全な今の結界は簡単に破られて、四国が危ない!
「ここから居なくなれぇーッ!!」
ぶつかり合う力と力。
衝撃。
光が広がる。
──キラキラと星が輝く宇宙のような、それでいて、それとはまったく違う空間に私の意識は浮かんでいた。
『お姉ちゃん……?』
キラキラの
友奈さん、東郷先輩、夏凛さんたちの姿も。
みんななにも言わずに、けれども、柔らかな笑みを浮かべて──
『さようなら、みんな。私は、ここで生きていくよ』
遠くへ去っていく四人の背中に、私はそう投げかけた。
キラキラの向こうには、きっと本物の宇宙が広がっている。
そして、そこは敵──天の神の手のひらの中。
『いつか、本物の宇宙を──人の手に、本当に輝く自由なソラをとりもどす──!!』
それが、私の願い。
この時代の五人の勇者と、生き残ったすべての人々の願い。
◇ ◆ ◇ ◆
無限の闇黒、その真空のなかでうごめく、一つの人工物があった。
この機械は、かつて大いなる古の時代、驕りに満ちた人間を粛清するために造りだされた処刑マシーン。
機械は思考する。今のままでは、自分に敵対する兵器たちはたおせない。
ゆえに生み出すことにした。
敵対者──「ガンダム」の力をコピーした新兵器を。
Gの名を持つ複製体、『
◇ ◆ ◇ ◆
春の日の、暖かな光のもとに、その子は生まれた。
「今日から、あなたは『お姉ちゃん』よ」
母親の言葉で少女は、自分にも守らねばならない存在ができたことを自覚する。
姉となった少女は、妹になる赤ん坊の小さな手を、壊れないよう優しく包んで、こう言った。
「はじめまして、いつき。うまれてきてくれて、ありがとう!」
祝福の言葉の意味もわからないであろう赤子は、無邪気な笑顔を姉である少女に向けるのだった。
あんずんがガンダムと勇者の連携攻撃のMAV戦術を編み出してジフレドに対抗する、って流れもあったんですが差しはさむ余地がありませんでした。
書いててずっと、これ樹ちゃん主役にした意味ある?ガンダムとクロスさせた意味ある?とスランプに悩まされ、実際ジークアクスはロクな活躍をさせることができなかったため、ガンダム要素を求めてた人にはすいませんな出来でしたね…。
元々は10話でプロットを組んだんですが、そっちはなんか書いてる内に郡ちゃんがメインになって彼女の周りのあれやこれやを解決するだけに終始してしまい、これじゃダメだと作り直したのが本作なんですが、それでもやっぱり色々と不完全燃焼な感じとなり、読んでくれた人には重ね重ねすいません…次の作品はもっと頑張る(小並感)