カラフル・リコイル!(仮題)   作:砂上八湖

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そういえばオリ主が出てくる二次創作って初めてかもしれない……?

※設定などを改訂、加筆修正しました。


プロローグ

 

──001──

 

 残念ながら、世界は悪意と欺瞞で満ちている。

 

──002──

 

《本部よりグリーン(ワン)

 目標は『ラジアータ改』の予測ルートを誤差なく通過中。

 接触まで90》

 

 短く細かいノイズの直後、オペレーターリコリスからの秘匿通信が耳元に届く。

 小さい鼻息を溜め息の代わりに漏らすと、襟元の校章に模した通信機へ口を寄せる。

 

「グリーン1、了解。

 ……ねぇ、もう少し恰好良いコールサインにしない? 

 ()()()()()()()()()()()()()、そのまんますぎてヒネりが無いと思うんだよね」

 

《あの、一介のオペレーターに言われましても……》

 

「いや、今こそコールサイン革命を引き起こそう!

 名乗りを上げても恥ずかしくない、むしろ聴いた人間の心を痺れさせるほど恰好良いコールサインを我らの手に!」

 

《──思慮の足りない革命は弾圧されるのが人類史の常だ。

 当然、貴様の要求は弾圧(きゃっか)する。

 無駄口を叩いてないでコールサインらしく『安全(グリーン)』に処理しろ。

 カウント20だ》

 

「へーい」

 

 オペレーターとの回線に直属の上司からの通信が割り込んできたので、意識を仕事モードへと切り換える。

 ブラブラと所持していたマテバ2006M(6インチバレル)を胸元へと引き上げ、特別製の減音器(サプレッサー)を取り付けた。

 

 本来リコリスには45口径のグロック21が標準支給されているのだが、彼女は特別に許可を貰って自費で購入・維持管理している。かといって支給品を使わないのかといえばそうでもない。

 せっかくなのでサブウェポンとして背中の学生カバン(防弾仕様)に収納している。もったいない精神というやつだ。

 ただマテバとは使用弾の互換性がないので、グロックの弾は本体に装填してあるマガジン1本ぶんのみ。主に使用するのはマテバ用の.357マグナム弾である。

 

 そこまでマテバに固執するのは、別にグロックと比較して性能が良いからというわけではない。

 むしろマテバは「扱いづらい」等と評判の、欠陥が多い銃なのだ。

 では何故?

 

「(いやまあでも、やっぱ使うならマテバでしょ)」

 

 撃鉄(ハンマー)を起こしながら、彼女は心の中で持論を展開する。

 

「(援護を頼まれた時に『マテバで良ければ』って言いたいし、マテバを批判されたら『わたしはマテバが好きなの!』って言いたいじゃんね!)」

 

 物凄く下らない理由だった。

 

《カウント、ゼロ》

 

 オペレーターの幼い声が(とき)を告げる。

 

 同時に少女が何事かを唇の動きだけで呟く。

 身体の中で何かが減る感覚。

 

 その瞬間、()()()()()()に身を包んだ少女は遮蔽物にしていた自動販売機から素早く躍り出る。

 

 目の前には、ちょうどの道の曲がり角から歩いてきた観光客風の集団──スーツケースを引いた体格の良い西洋系の男性ばかりが6名──が姿を現した。

 突然姿を現した女子中学生に驚いた様子を見せたものの、その手に拳銃が握られているのを素早く確認するとスーツケースから手を離し、緊張感と殺気を放ちながら全員が一斉に武器を隠してある場所へと手を伸ばす。

 

「(判断が早い!)」

 

 しかし(あらかじ)め銃を抜いた上で奇襲をかけてきた少女の方が先にイニシアチブを得た。男達の前を斜めに横切るように駆けながらマテバを構え、狙いを定め、引き金(トリガー)を引く。

 サプレッサーによって「バスンッ、バスンッ、バスンッ」と低く抑えられた音が、意外に重く大きく周囲を震わせる。

 

「ギャッ」

 

 短い断末魔と共に、3人の男の頭部─額や鼻や左目と着弾位置は様々だが──から血飛沫(ちしぶき)が、出来の悪い花火のように(くう)を舞う。

 

「Fu*k!」

 

 以降は永遠に転倒したままになるであろう3人が道路へと崩れ落ちていく中、ようやく残された男達が抜き終えた武器を翠の少女へと構える。

 短銃身のリボルバー、マカロフ、投げナイフと種類はバラバラだ。

 

「(ここで投げナイフの選択は渋いな!)」

 

 少女は足を止め、投げナイフの投擲準備に入っていた男を優先して標的に選ぶ。

 とある漫画からの知識だったが、銃は「構えて」「狙い」「撃つ」という3つのアクションを必要とするが、ナイフは「狙って」「放つ」の2アクションで良いのだ。

 だから処理するなら一手早いナイフ使いの方だと少女は判断する。

 事実、少女がトリガーを引くより速く男の手からナイフが射出された。

 瞬時に少女の顔面へと飛来するナイフ。

 しかし少女に動揺はない。

 

 少女の眉間をナイフが串刺しにしようとして。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ッ!?」

 

 眼前でいったい何が起きたのか全く理解できず、目を大きく見開き硬直するナイフ使い。

 その右目に少女は容赦なくマグナム弾を叩き込む。

 ナイフの奇怪な挙動に驚き動揺したのは、右目と脳を同時に砕かれ即死した彼だけではなかった。

 戸惑いは腕に伝わり、短銃身リボルバーとマカロフの銃口が少女から僅かにブレる。

 その隙を黙って見逃すほど少女の経験値は低くなかった。

 

 バスンッ バスンッ

 

 この短時間で聞きなれた音が男2人の耳に届く。

 それは同時に自身の頭部に穴が開いた音でもあった。

 

 6人の男全員が道路に倒れ込んだのを確認すると、少女はマテバの弾倉(シリンダー)を開き、ポケットから取り出した予備の弾丸を込め直していく。

 ちゃんと空薬莢は専用の袋で回収しておくのも忘れない。

 再装填し終わると、少女は警戒しながら男達の(もと)へと近付き──その頭部へ1発ずつ撃ち込んだ。

 

「追い打ちゴメンね、オジサン達。

 まあでも日本で爆弾テロなんて起こそうとするからだよ?」

 

 テロリストや犯罪者を確実に殲滅するのがDA──治安維持組織「Direct Attack」の職務とはいえ、さすがに最後の確殺行為には罪悪感を覚えたのか、肩をすくめつつ謝罪と言い訳を骸に投げ落とす。

 

「グリーン1より本部~?

 状況終了~、処理班の方よろしくね?」

 

《本部よりグリーン1。了解。お疲れさまでした》

 

《グリーン1。

 本部に帰投後、すみやかに私の所へ出頭しろ》

 

 オペレーターからの労いに一時(ひととき)の癒しを感じていると、冷水のように上司の命令が浴びせかけられた。

 思わず「うええ」という声が(まろ)び出る。

 

「え、今回わたしミスしてないですよね?

 それともまさか革命未遂で処分対象に……!?」

 

《いっぱしの革命家を気取りたいなら一般教育カリキュラムをサボるな馬鹿者。

 それともポル・ポトでも目指してるのか貴様は。

 ……つべこべ言わずに出頭しろ、以上だ》

 

 無駄話が過ぎたという自覚があったのだろう、やや誤魔化すような沈黙の後に改めて出頭命令を下す直属上司。

 

「わっかりましたぁ」

 

 処理班を乗せたマイクロバスが近付いてくるのを確認しながら命令に了解を示し、通信を切る。

 そして深く長い溜め息を吐き出すと、思わず空を見上げた。

 

 深夜である。

 地上の煌々とした星に炙られて、天の星々はその輝きを減じていた。

 しかしそれでも月は夜の女王の如く夜に座している。

 月は全てを見ていたわけだ。

 いつか月に裁かれる日が来るのかな。

 そんな馬鹿なことを少女は考える。

 

 DAにる情報工作によって一帯を封鎖された下町の商店街。その一角。それが今回の戦場だった。

 

「(今回のターゲット、やっぱりあのナイフ使いが一番の手練(てだ)れだったかな。

 通常のチームだと下手したら返り討ちにあってたかも)」

 

 穏やかな風が商店街の寂れた通りを吹き抜け、セミロングの黒髪が揺れる。

 血の臭いが鼻腔を刺激し、(おのれ)が何をしたのかを嫌でも自覚させてきた。

 しかしそれで動じることはなかった。

 

「すっかりリコリスとしての活動にも慣れちゃったなあ」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そう遠くはない月日を振り返りながら、どこか諦めたかのように少女は呟く。

 その遠くない月日、()()()()()()()()()()()()()()()()()()にも思いを馳せつつ。

 

「(しかし、まさか『リコリス・リコイル』の世界に転生するとは思わなかったよ……)」

 

 DA所属のファーストリコリス、水火月(みかづき)真濁(まだく)は──改めて自身に置かれた異常性を胸の内で反芻してしまう。

 

 『仕事』を終えると、(たま)にこうした複雑な想いが去来するのだ。

 軽い現実逃避に近い。

 しかし今は感慨に耽るより、直近に待つ未来に頭を悩ます必要があった。

  

「休む間もなく次の任務かなあ……休暇欲しいなあ……」

 

 前世も今生もブラックな仕事場とかヤダよぉ……

 

 嘆きを夜空の薄い星へとこぼす。

 霞む星は勿論、夜空に君臨する女王も、相棒のマテバも慰めてはくれなかった。

 

 

 

   




初回は6話連続投稿です。
そのあとは体調を窺いながら更新します。
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