異世界に召喚されたらしい俺とあいつ。
あいつは勇者で俺は縄師だ。
え、何この格差?

といいますか、縄師ってなんですか!?




(活動報告にあげたネタをやっと書き上げることができました。お目汚しになりますが楽しんでいただけたら幸いです)
(エっな描写が一部あります。タグにはR17.9とつけてますが、運営さまから警告されたらR18に移動します)

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色々だね人生は

 一人残された魔王城で

 

「どうした、震えているぞ」

 

 床に縛りつけられた魔王の冷たい声が広間に響いた。その身体には傷はないが、魔力を封じる枷が両手両足を縛りつけている。しかし抑えられる時間はそれほど残ってないだろう。

 魔王の仮面越しのその瞳には依然として凶暴な光が宿っていた。まるで獲物を前にした獣のように、俺を値踏みしている。

 

「震えてなんかいないさ」

 

 俺は強がって答えたが、声が少し上ずっているのを感じた。当然だ。本来なら勇者や仲間たちと一緒に対峙するはずだったのだから。

 

「勇者たちはどこへ行った?」

「さーてね、近くの町に楽しいショッピングにでも行ったんじゃないかな。例えばピクニックで食べるビスケットとワインを探しにとか?」

 

 魔王は低く笑った。

 

「あれほどの重傷で逃げたのだろう? おまえは仲間を逃がすために自ら囮になった」

 

 図星だった。勇者は確かに重傷を負い、三人の仲間たちも色々な意味で限界に近かった。勇者の傷は特に深刻で、一刻も早く治療が必要だった。だから俺が残ることにしたのだ。

 

「ああ、その理由は中々いいな。それだと俺が凄く恰好いい男前みたいだ」

「戯言を」

 

 魔王はあきれたように鼻を鳴らす。

 俺はゆっくりと部屋を見渡した。荒れ果てた魔王城の広間。この城に足を踏み入れたのはつい数時間前のこと

 思い返せば、この旅はあまりにも長すぎた。

 俺の脳裏にはあの日の記憶が鮮明に蘇った。

 

 石造りの部屋。床に描かれた複雑な文様。そして、点滅する魔法陣——

 

 

 

 

 ◇

 

 

「うわっ!」

 

 突然の眩しい光に目を閉じる。次の瞬間、重力が逆転したような感覚に襲われ、身体が宙に浮いた。足元を見ると、床が消えている。いや、床があったはずの場所には今、青白い光を放つ魔法陣が広がっていた。

 

「なんだこれ……夢か?」

 

 混乱しながらも必死に周囲を見回す。ここは学校の教室のはずだった。昨日の夜まではいつも通りの日常を送っていたのに。

 

「……ここは……異世界?」

 

 自分が何を口走っているのか分からなかった。でも直感が告げていた。これはまぎれもない現実だ。そして俺は今、どこか別の世界に連れ去られている。

 魔法陣から放たれる光が強くなるにつれ、頭の中に不思議な感覚が流れ込んできた。まるで膨大な情報が直接脳に書き込まれていくような……。

 

「おい、誰かいないのか!」

 

 叫び声と共に眩い光が収まり、ゆっくりと視界が戻ってくる。まぶしさに目を細めながら周囲を見渡すと、そこはまったく見知らぬ場所だった。石造りの壁に囲まれた部屋。天井からは不思議な輝きを放つ水晶が吊るされている。

 

「え?どこだここ……」

 

 混乱していると、隣から声が聞こえた。

 

「君も……僕と同じかな?」

 

 振り向くと、そこに立っていたのは俺と同じ日本人の少年だった。細身の体型に整った顔立ち、そして優しげな微笑み。学校では必ずクラスの人気者になっているだろうタイプだ。黒髪は綺麗にセットされ、服装もシンプルだが清潔感がある。彼の姿勢の良さや控えめな表情からは、育ちの良さが伺えた。

 

「えっと? 日本人?」

「うん見た目通りね。どうやら同じタイミングで召喚されたみたいだね」

 

 彼の声は落ち着いていて穏やかだった。こんな状況なのにパニックにならないで状況を把握できるくらい冷静なのは凄い。きっと頭が良いんだろうな。

 

「俺は佐藤健太。君は?」

「僕は神崎悠斗だよ。よろしくね」

 

 そう、俺と悠斗が握手しようとしたところで。

 

「二人とも無事に召喚されたようですね」

 

 突然部屋の奥から声がした。振り向くと、そこには信じられないほど美しい少女が立っていた。

 

 長い金色の髪が腰まで流れ落ち、透き通るような青い瞳は宝石のように輝いている。彼女が着ている白と金で縁どられたローブのようなドレスは繊細な刺繍が施され、動きに合わせて柔らかく揺れていた。まるで絵画から抜け出してきたかのような美しさだ。

 

「はじめまして、異界の勇者」

 

 少女は優雅にお辞儀をした。

 

「私の名はエルシリア。このアストリア王国の第一王女です」

 

 俺と悠斗は言葉を失った。目の前に立つ少女があまりにも、非現実的すぎて、そして自分が異世界に召喚されたという現実が徐々に実感として湧いてきたからだ。

 

「選ばれし方々。あなた方はこの世界を救うために呼び出されたのです」

 

 エルシリア姫の声は柔らかくも力強かった。その言葉には何か特別な響きがあり、自然と耳に入ってくる。彼女の微笑みには威厳と優しさが同居していた。

 

「え……本当に……?」

 

 悠斗がやっとのことで言葉を発した。彼の表情には戸惑いと興奮が混ざっている。

 

「はい。あなた方は伝説の勇者として、古より予言されてきた存在なのです」

 

 エルシリア姫は真剣な眼差しで続けた。

 

「この世界は今、暗黒の勢力に脅かされています。あなた方の力が必要なのです」

 

 俺はまだ状況を完全には飲み込めていなかった。ただ、目の前の美しくも高貴な少女の言葉に嘘がないことは直感的に理解できた。

 

「あの……僕たちみたいな普通の高校生が?」

 

 悠斗が不安げに尋ねる。

 エルシリア姫は小さく頷いた。

 

「あなた方には特別な力が宿っています。それがこれから分かるでしょう」

 

 こうして俺と悠斗は異世界の勇者としての運命を背負うことになった。そしてその傍らには、美しく優雅な王女エルシリアが立っていたのだった。

 

 ◇

 

 エルシリア姫に導かれ、俺たちは宮殿の奥へと進んだ。豪華な装飾が施された廊下を抜け、大きな扉の前で立ち止まる。

 

「ここが謁見の間です。お母様——女王陛下がお待ちです」

 

 深呼吸して心を落ち着けると、姫が扉を開いた。

 広大な広間の奥には高い玉座があり、そこには美しくも威厳のある女性が座っていた。エルシリア姫に似た金髪は年齢を重ねてもなお艶やかで、深い蒼色の瞳には王としての強さと知恵が宿っている。彼女が身に纏う紫色のドレスは、王の威厳と同時に優雅さも感じさせた。

 

「陛下、勇者様方をお連れしました」

 

 エルシリア姫が恭しく頭を下げる。

 

「ありがとう、我が娘よ」

 

 女王の声は柔らかくも力強く響いた。

 

「異界の勇者たちよ、よく来てくれた。私はアストリア王国女王、エリスナ・アストリア。そなたたちの力に期待している」

「陛下、ありがとうございます」

 

 悠斗が深々と頭を下げる。俺も慌てて同じようにした。

 女王エリスナは微笑んで立ち上がった。

 

「立ち話もなんだろう。座って話をしよう」

 

 広間の中央にある円卓へと案内されると、二人の少女が待っていた。

 

「彼女らが今回の旅に同行する者たちだ」

 

 そう、女王が紹介を始めた。

 まず最初に紹介されたのはエルシリア姫だった。

 彼女は魔法使いとして同行することになっているようだ。

 

「改めて、エルシリア・アストリアです。王女としてだけでなく、魔法使いとしてもお役に立てればと思います」

 

 彼女の長い金髪が肩にかかる。清楚な白地と金に縁どられたローブドレスは魔法使いらしい雰囲気を醸し出していた。

 次に紹介されたのは背の高い女性だった。凛とした佇まいと鋭い眼差しが特徴的だ。

 

「シルヴィア・ファルケンバーグだ。剣士として同行する」

 

 彼女の銀色の髪は首元で短く切り揃えられ、軍服と西洋甲冑をあわせたような戦闘服に包まれた体は引き締まっている。クールで冷静そうな雰囲気からは、頼りになる存在感が漂っていた。

 最後に元気いっぱいに自己紹介したのは小柄な少女だった。

 

「ボクはアリシア・ウィンザー! 弓使いだよ! よろしくね!」

 

 彼女の茶色の髪はポニーテールにしてあり、動きやすそうな軽装を身にまとっている。明るく活発そうな性格が一目で分かる。

 こうして俺と悠斗は、三人の美少女と共に異世界を旅することになった。まだ実感は湧かないけれど、これから始まる冒険への期待で胸が高鳴る。エルシリア姫の清楚で高貴な雰囲気、シルヴィアさんのクールな強さ、そしてアリシアちゃんの元気な明るさ——この個性的な三人の美少女と一緒に冒険できるなんて、想像しただけでワクワクしてくる。

 

「健太、顔がニヤけてるよ」

 

 悠斗が俺をからかうように言った。

 

「べ、別にそんなことないって」

 

 慌てて表情を引き締める。でもまさか異世界に来てこんな美少女たちと旅することになるとは思わなかった。

 エルシリア姫が俺たちの方へ歩み寄ってきた。

 

「不安もあるかもしれませんが、私たちが全力でお手伝いします。一緒にこの世界を救いましょう」

 

 その言葉に俺は大きく頷いた。そうだ、俺たちは選ばれし勇者なんだ。どんな困難が待ち受けていようと、みんなで力を合わせればきっと乗り越えられるはずだ。

 

 ◇

 

 城の訓練場は広く、天井が高く取られた空間には魔法の光源が灯っていた。俺たち五人はこれから始まる旅に向けて、それぞれのスキルを磨くための特訓を受けることになった。

 エルシリア姫は魔法の指導役を務める。彼女が唱える呪文と共に、空中に淡い光の球が浮かび上がった。

 

「これが防御魔法です。勇者である悠斗様も、この世界に召喚された際に知識を得て、基本的な魔法は覚えておられるでしょう?」

 

 悠斗が頷く。

 

「はい。でも実践するのは初めてです」

「では、一緒に練習しましょう」

 

 二人が魔法の練習を始めるのを横目に、俺は別のコーチに呼ばれた。それはシルヴィアだった。

 

「縄師としての基本を教えよう」

 

 彼女の声は冷静で、一切の感情が含まれていないように聞こえる。縄師って何するんだ? という疑問が頭をよぎるが、今は黙って彼女の指示に従うことにした。

 

「縄師の役割は捕縛や拘束だけでなく、結界の設置や罠の解除など多岐にわたる。まずは縄の扱いからだ」

 

 シルヴィアは一本の丈夫そうな縄を手渡してくれた。俺はそれを受け取りながら、自分の職業について考え始めた。

 勇者は世界を救うヒーロー。魔法使いは強力な魔法で戦う。剣士は剣で敵を倒し、弓使いは遠距離から援護する。それに対して俺は……縄師? 縄師ってなんかおかしくないか?

 

「どうした?手が止まっているぞ」

 

 シルヴィアの厳しい声に我に返る。

 

「あ、すんません」

 

 縄を握りしめながら、どうしても卑屈な気持ちになってしまう。だって俺の職業は明らかに他の四人に比べて格下に思える。俺がいてもいなくてもパーティの戦力は変わらないんじゃないか?

 訓練が一息ついたとき、俺は思わずため息をついてしまった。それを聞きつけた悠斗が心配そうに近づいてくる。

 

「健太、大丈夫?」

「大丈夫なわけないだろ……」

 

 俺は正直な気持ちを吐露した。

 

「俺だけ職業が微妙すぎるんだよ」

 

 だってさ、繩師だぜ?

 悠斗は少し考え込んでから言った。

 

「でも縄師って意外と重要な役割なんじゃないかな?」

「何が重要なんだよ?」

 

 俺は自嘲気味に笑った。

 

「勇者や魔法使いに比べたら地味すぎるだろ」

「でもさ」

 

 悠斗は真剣な表情で続ける。

 

「縄師って罠の解除とかできるって聞いたよ?それに敵を確実に拘束できるってことは、パーティーの安全を守れるんだし」

「そう言われてもな……」

 

 悠斗は少し笑って言った。

 

「もし誰かを捕まえる必要ができた時だって、ケガをさせずに拘束できるじゃないか。普通に考えてそれは凄いことだよ」

 

 悠斗の言葉に少し救われた気がした。でもすぐにまた不安が押し寄せてくる。

 そんな感じで悠斗と話しているとエルシリア姫が近づいてきた。

 

「健太様、何かお悩みでも?」

 

 彼女の優雅な仕草に思わず見とれてしまった。純白のローブが風に揺れ、金色の髪が太陽の光を反射して輝いている。

 

「あ、いえ……俺の職業が縄師なのがちょっと……」

 

 エルシリア姫は柔らかく微笑んだ。

 

「縄師という職業は侮れないものよ。確かに派手な戦闘向きではないけれど、パーティーの安全を守る上で非常に重要な役割を担っているわ」

「でも、他の皆は……」

「それぞれの役割が違うだけで、誰一人欠けてはならないのよ」

 

 エルシリア姫の声には温かみがあった。

 

「健太様には健太様にしかできないことがあるわ」

 

 その時、シルヴィアが歩み寄ってきた。彼女の銀色の髪は汗で額に張り付いていたが、表情は相変わらず冷静だ。

 

「縄師の技術は確かに特殊だ。我々ではできないことを健太にはできる」

 

 クールなシルヴィアの言葉に驚いた。彼女がこんな風に俺を評価してくれるとは思わなかった。

 

「健太さんはボクたちを守ってくれるんでしょ?」 

 

 アリシアもやってきて元気よく言った。

 

「ボクは遠くから弓を撃つのが得意だけど、近距離は苦手なんだ。だから足止め出来る健太さんが頼りだよ!」

 

 小柄な体を精一杯伸ばして話す彼女に思わず笑みがこぼれる。アリシアの天真爛漫さは不思議と人を明るくさせる力がある。

 俺は改めて周りを見渡した。イケメンの勇者悠斗、高貴な魔法使いエルシリア姫、クールな戦士シルヴィア、元気な弓使いアリシア——そして敵を拘束する縄師の俺。確かにバランスの取れたパーティーだ。

 

「ありがとう、みんな」

 

 俺の声は少し震えていた。

 

「俺が縄師で本当に良かったって思える日が来るかもな」

 

 悠斗が肩を叩いてきた。

 

「その通りだよ。僕たちのチームワークがあればきっと大丈夫さ」

 

 エルシリア姫が優雅に微笑む。

 

「健太様の能力は必ずや私たちの助けとなるでしょう」

 

 シルヴィアは無表情のまま頷いた。

 

「戦術の幅が広がる。頼りにしているぞ」

 

 アリシアは嬉しそうに飛び跳ねた。

 

「ボクたち最強のパーティーになるね!」

 

 その瞬間、胸の中に温かいものが広がった。不安や劣等感が完全に消えたわけではない。でも、この仲間たちと一緒にいるなら何とかなる気がした。

 

「よし!」

 

 俺は大声で叫んだ。

 

「縄師としての技術を徹底的に磨いてやる!」

 

 四人が俺を見て微笑む。その笑顔に背中を押されるように、新たな決意が湧き上がってきた。

 縄師としてできることを最大限に活かし、この仲間たちと共に世界を救う——そんな壮大な目標が現実味を帯びてきた気がした。

 

 

 ◇

 

 いよいよ出発の日が来た。城の正門前には女王エリスナ陛下と多くの兵士たちが見送りに集まっていた。

 

「勇者たちよ、この世界の未来はそなたたちの手に委ねられている」

 

 女王の声は厳かに響いた。

 

「旅の無事を祈っている」

「ありがとうございます、陛下」

 

 悠斗が代表して答える。

 俺たちは馬車に乗り込み、王都の外へと向かった。馬車の窓から見える街並みが徐々に遠ざかっていく。

 

「いよいよ始まるね」

 

 悠斗が緊張した面持ちで言った。

 

「そうね。でも心配しないで。私たちがいるわ」

「危険があれば私が前に出る」

「ボクも頑張るよ!」

 

 エルシリア姫が優しく微笑み、シルヴィアは静かに言いながら剣の柄に手を添えた。

 その二人を見ながらアリシアが元気よく拳を突き上げる。

 俺は黙って窓の外を見つめた。正直なところ不安しかない。でもみんなの前では弱音を吐けなかった。

 馬車は順調に進み、数時間後には最初の目的地である小さな村に到着した。しかし村に近づくにつれ、空気が重くなっていくのを感じた。

 

「何か変だわ」

 

 エルシリア姫が眉をひそめる。

 

「魔力の流れが乱れている」

 

 馬車が止まり、外に出ると村の入り口に一匹の巨大な狼型モンスターが待ち構えていた。全身から邪悪なオーラを放ち、鋭い牙をむき出しにして威嚇している。

 

「ディアウルフか」

 

 シルヴィアが低い声で言った。

 

「厄介な相手だ」

「ボクが先に行く!」

 

 アリシアが弓を構えると素早く矢を放つ。しかしモンスターの厚い毛皮に阻まれ、ほとんどダメージを与えられない。

 

「私の魔法で足止めするわ」

 

 エルシリア姫が呪文を唱え始める。

 

「氷結の檻!」

 

 魔法の氷がディアウルフを囲もうとするが、モンスターは素早い動きでそれをかわす。

 

「くっ……思ったより速いわ」

 

 エルシリア姫が一番危険だと判断したのか、ディアウルフが彼女に向って突進してきた。

 悠斗がエルシリア姫を庇うように剣を抜いて前に出た。

 

「僕が引きつける!健太、隙を作って!」

 

 突然の指示に戸惑いながらも、俺は持っていた縄を構えた。でも一体何をすればいいんだ?こんなデカいモンスターに縄なんて通用するわけないだろ!

 ディアウルフが悠斗に向かって飛びかかる。その瞬間、無意識に体が動いた。

 

「そいっ!」

 

 無我夢中で投げた縄が、信じられない軌道を描いてモンスターの足元に絡みつく。すると次の瞬間——

 時間が止まったかのようにディアウルフの動きがピタリと止まった。

 

「なっ……これは!?」

 

 エルシリア姫が目を見開く。

 

「縄が光ってる!」

 

 アリシアも驚きの声を上げる。

 悠斗が振り返って叫んだ。

 

「今のうちだ!みんなで攻撃を!」

 

 悠斗とシルヴィアが鋭い剣閃を放ち、アリシアの矢が正確に急所を射抜く。エルシリア姫の魔法がとどめを刺すと、ディアウルフはゆっくりと崩れ落ちた。

 戦闘が終わると同時に縄の光も消え、ただの縄に戻った。しかし俺は自分の手の中にある縄を見つめたまま呆然としていた。

 

「健太……今のは?」

 

 シルヴィアが問いかける。

 

「俺にも分からない……ただ夢中で……」

「それは単なる縄ではないわ」

 

 エルシリア姫が真剣な表情で続けた。

 

「恐らくあなたの『縄師』としての固有スキルよ。時間を止めたかのように相手の動きを完全に拘束する——『停止の縄』

 とでも呼ぶべき能力ね」

「そんな……俺が……?」

 

 信じられない思いだったが、手の中の縄を見つめているうちに不思議な感覚が湧いてきた。これが俺の力なのか?

 

「すごいよ、健太!」

 

 悠斗が駆け寄ってきた。

 

「まるで魔法みたいだったよ!」

「ほんとだよ!あんなことができるなんてすごい!」

 

 アリシアも目を輝かせている。

 シルヴィアは冷静な表情のままだったが、その声には敬意が感じられた。

 

「縄師という職業を甘く見ていた。見事な腕前だ」

 

 仲間たちの称賛に頬が熱くなる。まさか縄師の俺がこんなに褒められる日が来るなんて。

 

「いや、たまたま上手くいっただけさ」

 

 口では謙遜しながらも、内心は調子に乗り始めていた。

 

「謙遜することはないわ」

 

 エルシリア姫が優雅に歩み寄ってくる。

 

「あなたの力は間違いなくこのパーティーにとって大きな戦力になるわ」

 

 彼女の青い瞳に見つめられて、心臓が早鐘のように打つ。そう、実は俺は密かに彼女に恋心を抱いていた。高貴で美しく、それでいて強く優しい。完璧な理想の女性だ。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 声が上ずる。

 

「こちらこそよ。あなたがいなければ私たちの誰かが怪我を負ったかもしれない。本当にありがとう」

 

 エルシリア姫は柔らかく微笑んだ。お姫様に直接感謝されるなんて!俺の中で何かが弾けた。

 

「と、当然のことです!」

 

 思わず背筋を伸ばす。

 

「俺がいる限り、みんなに指一本触れさせません!」

 

 シルヴィアが眉をひそめ、俺の頭をこつんと叩く。

 

「調子に乗りすぎだ」

「まあまあシルヴィアさん。今日くらいはいいじゃない」

 

 アリシアが笑う。

 悠斗も苦笑いしながら言った。

 

「健太、縄師の力は本当にすごいけど、油断はしないでくれよ」

「分かってるさ!」

 

 俺は胸を張った。

 

「次の敵も俺の『停止の縄』で一瞬にして——」

「健太?」

 

 悠斗が俺の肩に手を置いた。

 

「変なフラグになりそうだからやめておこう?」

「あ、うん、そうだな……」

 

 しかし心の中では完全に舞い上がっていた。こんな風に美少女たちに囲まれて、しかもお姫様に認められるなんて。元の世界じゃ絶対に味わえない体験だ。

 

「さて」

 

 エルシリア姫が全員を見渡した。

 

「村に入りましょう。原因を調査しないと」

 

 俺たちは村の広場へと向かった。胸の高鳴りが止まらない。この調子でいけば、もしかしたら本当にエルシリア姫と——

 

「健太」

 

 悠斗が小声で言った。

 

「顔がニヤけてるよ」

「えっ!?嘘!?」

 

 慌てて表情を引き締める。

 

「大丈夫。みんな気づいてないよ」

 

 悠斗は意味深な笑みを浮かべた。

 

「応援はするよ。ただし、調子に乗って失敗しないようにね?」

「あ、ああ、分かってるって!」

 

 俺は悠斗にウインクして見せた。

 

「俺たちの友情に乾杯!」

「なんだよそれ」

 

 悠斗が呆れたように笑った。

 そんなやりとりをしながらも、俺の心は完全に浮かれていた。縄師としての自分に誇りを持てたのも初めてだし、何よりエルシリア姫に認められたことで自信がついた。

 これから始まる冒険の中で、もっと彼女と親しくなれるかもしれない——そんな淡い期待を胸に、俺は新たな一歩を踏み出した。

 

 

 ◇

 

 それからも冒険の旅は続き、小さな宿に泊まることになった。夕食後、悠斗に明日の予定を相談するために彼の部屋を訪ねることにした。

 

「悠斗?いるか?」

 

 軽くノックしながら呼びかけるが、返事がない。おかしいな。もう一度ノックしようとしたその時——

 

「んっ……あぁ……」

 

 部屋の中から漏れ聞こえてきたのは明らかに女性の声。それも普通の会話じゃない。甘く切ない、明らかに快楽の混じった喘ぎ声だった。

 俺の思考が一瞬で停止した。

 

 え?待て待て待て!

 

 悠斗の部屋から?しかもこの声……聞き覚えがある気がする。恐る恐る扉に耳を近づける。

 

「あぁ……もっと……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 間違いない。この声は……エルシリア姫だ⁉

 

 

 心臓が喉まで飛び出しそうだった。頭の中が真っ白になる。悠斗とエルシリア姫が?いつの間に?というかどうして?

 混乱したまま扉から離れた。何が起きているのか理解できない。友達だと思っていた悠斗が、俺が密かに想いを寄せていたエルシリア姫とこんな関係だったなんて。

 恐怖と好奇心が入り混じった感情で、俺はわずかに扉を開けた。隙間から見える光景に俺の全身が凍りついた。

 ベッドの上で悠斗と三人の少女たちが全裸で絡み合っていた。エルシリア姫、アリシア、そしてシルヴィアまで——俺が密かに尊敬していた三人の美少女が、悠斗と肌を重ねている。

 

「嘘だろ……」

 

 声にならない声が漏れた。頭の中が真っ白になる。自分が見ているものが現実とは思えなかった。

 エルシリア姫の白い肌が薄暗い照明の中でみだらに輝き、アリシアの小さな体が悠斗の腕の中で激しく揺さぶられている。いつも無表情だったシルヴィアも頬を赤らめ、普段からは想像もつかない女の表情を見せていた。

 その中央に悠斗がいた。イケメンで頼りがいのある俺の友人が、まるで王者のように振る舞っていた。

 

「あ……あ…」

 

 声にならない声が漏れる。

 これ以上見てはいけない。そう思うのに、体が動かない。まるで金縛りにあったかのように、その場に立ち尽くしてしまった。

 

 

 やがてエルシリア姫が俺の存在に気づいた。

 

 

 一瞬目を見開いた後、気まずそうに視線を逸らす。その仕草に胸が抉られるような痛みを感じた。

 

「あ……」

 

 我に返った俺は急いで扉を閉め、逃げるように廊下を走った。涙が溢れ出して止まらない。部屋に戻るまでの記憶は曖昧だった。

 自分の部屋に駆け込むと、ベッドに倒れ込んだ。シーツに顔を埋めて泣きじゃくる。

 

「どうして……どうして悠斗が……」

 

 あのイケメン野郎が全部持っていきやがった。俺が密かに憧れていたエルシリア姫も、元気で可愛いアリシアも、クールで凛々しいシルヴィアも——すべてが悠斗のものになっていた。

 友情だと思っていたものは何だったんだろう?一緒に冒険しようって言ったのは嘘だったのか?俺の恋心を知っていたくせに……

 

「うぅ……」

 

 涙が止まらない。

 

「ちくしょう……」

 

 ベッドの上で丸まって泣き続けた。自分が惨めで情けなくて仕方がなかった。あんなに努力して「停止の縄」の力を身につけたのに、それすら悠斗と比べれば些細なものに思えてくる。

 

「くそ……くそ……」

 

 枕を殴りつけても何も変わらない。現実は残酷だった。俺の恋は始まる前に終わってしまったのだ。しかも一番醜い形で。

 

「うわぁぁぁ!」

 

 抑えきれずに大声を上げて泣いた。

 こんなはずじゃなかった。異世界に転生して、新しい人生をスタートさせるはずだった。なのに現実は何一つ思い通りにならない。

 悠斗が羨ましい。妬ましい。憎らしい。でも同時に友人としての絆もある。それが余計に辛かった。

 しばらく泣き続け、涙が枯れ果てた頃には夜が明け始めていた。窓の外から鳥のさえずりが聞こえてくる。

 顔は涙でぐしゃぐしゃだったが、もう動く気力もなかった。ただベッドに横たわり、天井を見上げることしかできない。

 

「ああ……最低だ……」

 

 こんな姿を誰にも見られたくない。でも明日からどんな顔でみんなと接すればいいんだろう?悠斗には?エルシリア姫には?

 答えは見つからないまま、俺の意識は深い闇の中に沈んでいった。

 

 ◇

 

「見てしまったのかい?」

 

 翌朝、食事の席で悠斗が突然そう切り出した。俺は食べかけていたパンを喉に詰まらせそうになりながら顔を上げた。

 悠斗の表情は冷静だったが、どこか重苦しい雰囲気を纏っている。周囲を見回すと、エルシリア姫、シルヴィア、アリシアもこちらを見つめていた。三人とも気まずそうに視線を逸らす。

 

「あ……いや……」

 

 言葉に詰まる。正直に言うべきか、誤魔化すべきか。

 

「見たんだね」

 

 悠斗の声は静かだったが、どこか諦めたような響きがあった。

 

「今さら君に隠しても仕方ないよね」

 

 沈黙が流れる。

 周りの宿泊客の喧騒が遠くから聞こえるだけ。

 

「すまん……見てしまった」

 

 俺は小声で言った。

 悠斗は長い間黙っていた。やがて重い口を開く。

 

「君にだけは知られたくなかった」

 

 彼の声には悲しみが混じっていた。

 

「友達として、君には誠実でいたかった」

 

 それ以上、俺は尋ねることができなかった。

 

 

 それ以降、ばれた少女たちはもう隠すつもりもないようだった。宿の廊下ですれ違った時にエルシリア姫が悠斗の腕に自然と手を絡ませるのを見た時は胸が締め付けられる思いがした。

 

「健太様、次の町への道筋ですが……」

 

 彼女が話しかけてくる。普段と変わらない優雅な振る舞い。でもその指には悠斗との秘め事の証が刻まれているのだと思うと、複雑な気持ちになる。

 夜になると、隣室からの声が壁越しに漏れ聞こえるようになった。

 

「あぁ……悠斗様……」

 

 エルシリア姫の甘い声。時折混じるアリシアの甲高い嬌声。シルヴィアの抑えきれない吐息。

 それらの声を聞きながら、俺は一人でベッドに横たわっていた。最初は耐えられなくて耳を塞いだり布団に潜り込んだりしたが、やがてその行為自体が逆効果だと気づいた。

 

「くそっ……」

 

 暗闇の中で手を伸ばす。自分でも情けないと分かっている。でも止められない。彼らの声を聞きながら自分を慰めるという行為が、どれほど惨めで滑稽か。

 

「うぅ……」

 

 声を押し殺し、涙を流しながら。かつては純粋に憧れていたエルシリア姫の名前を呼ぶこともできない。

 

「ちくしょう……」

 

 翌朝、何事もなかったかのように全員が食堂に集まる。エルシリア姫は美しく澄ました顔で食事をしている。アリシアは元気に笑いながら悠斗と話している。シルヴィアはいつものクールな表情だが、その目には時折甘い色が浮かぶ。

 そして悠斗は——まるで何もなかったかのように俺に話しかけてくる。

 

「健太、今日の予定だけど……」

「ああ……分かった」

 

 表面上は以前と変わらない。でも二人の間には見えない亀裂がある。それは俺だけが感じているのだろうか。

 

 旅は続く。失恋の痛手を胸に抱えたまま。

 ある日、小さな村を襲うオークの群れと遭遇した。彼らは女子供を攫い、男や老人を虐殺していた。

 

「許せない!」

 

 アリシアが叫ぶ。

 悠斗が剣を抜き、 シルヴィアが前に出て盾を構える。

 エルシリア姫が魔法の詠唱を始める。

 俺は……

 

「停止の縄!」

 

 集中して投げた縄が複数のオークに絡みつき、彼らの動きを封じる。その隙に仲間たちが攻撃を加え、次々と敵を倒していく。

 戦闘が終わった後、悠斗とエルシリア姫が駆け寄ってきた。

 

「さすがだよ、健太!君の力は本当に頼りになるね」

「健太様のおかげで被害を最小限に抑えられました」

「ああ、はい……」

 

 言葉少なく答える

 アリシアが抱きついてくる。

 

「すごかったよ!ありがとう!」

 

 シルヴィアも無言で頷く。

 ああ、彼らは良い奴らだ。それは変わらない。悠斗とそのハーレムメンバーの三人の美少女は、俺を省くわけでもなく、以前と変わらず友人として接してくれる。でも俺の心の中には常に影が差している。この感情をどこに持っていけばいいのか分からない。

 

 

 翌日の夜、とうとう耐えきれなくなった。俺は再び勇者の部屋の前に立っていた。扉に耳を当てると、昨日とは違う種類の嬌声が聞こえてくる。

 

「んっ……悠斗さま……そこ……」

「もっと……もっと激しく……」

「あぁっ……そんな奥まで……」

 

 好奇心と恐怖が入り混じった感情で、俺は少しだけ扉を開けた。隙間から見える光景に目を疑った。

 ベッドの上で悠斗が四つん這いになっている。背後からエルシリア姫が彼に覆いかぶさり、激しく腰を打ちつけていた。その横ではシルヴィアが悠斗の前に跪き、別の穴を犯している。アリシアは悠斗の腕を使って、小さな身体で腰を上下させている。

 

「へ?」

 

 思わず声が漏れた。悠斗は確かに美しい顔立ちをしているが、男だ。そしてエルシリア姫たちも全員女性のはず。だがいや、正確には……

 

 

 そこで俺は重大なことに気づいた。

 

 

 悠斗の尻にはナニが刺さっていた。そしてそれはエルシリア姫たち三人の美少女の股間から……

 

 

「まさか……」

 

 この世界では全員が、両性具有……つまり、ふたなりなのか?

 つまり女性でありながら男のナニも持つ存在。俺の常識ではありえない事実に頭が混乱する。

 

「んんっ……もっと……もっとしてぇ!♡」

 

 悠斗の声が今まで聞いたことのないような艶っぽいものに変わる。エルシリア姫が満足そうに微笑みながらさらに激しく体を上下させる。

 

「ああっ!エルシリア様っ!シルヴィアさんっ!アリシアっ!♡♡」

「悠斗様……素敵ですわ……」

「いつもより感じているようだな」

「ボクも一緒にイキたい!」

 

 信じられない光景だった。俺が憧れて、妬んでいた対象である勇者が、少女たちの「肉穴」となっていた。

 

 同時に別の思考が浮かんだ。

 

 この世界ではこれが普通なのかもしれない。だからこそ彼女たちは平然と関係を持っているのだ。俺だけが取り残されている。

 混乱の中、俺は部屋を後にした。頭の中は整理がつかない。でも一つだけ確かなことがある。この世界は俺が思っていたのとは全く違う形をしているということだ。

 

 部屋に戻りベッドに倒れ込む。頭の中を様々な考えが巡る。

 

「まさかふたなりしかいない世界なんて……」

 

 これまで出会った人々を思い返す。確かに皆魅力的な女性ばかりだった。だが俺と悠斗以外、誰一人として男はいなかった。

 

「つまり……」

 

 この世界では男役と女役が両立できるのだ。そしてその関係性は俺の世界の概念とは大きく異なる。

 

「悠斗……」

 

 複雑な感情も湧き上がってくる。俺も同じ立場になる可能性があるのではないか?エルシリア姫に愛される未来も……

 でもそれには大きな障害がある。俺自身の固定観念だ。元の世界の常識に囚われたままではこの世界で生き残れない。

 

「くそっ……」

 

 枕に顔を埋めて考え込む。これからどうすればいい?この新たな世界観を受け入れるのか?それとも今まで通りの価値観で生き続けるのか?でも一つだけ確かなことがある。

 

「逃げるわけにはいかない」

 

 俺はこの世界で生きるしかない。そしてこの状況を理解し、受け入れなければならない。それが俺の生存戦略だ。

 

 いや、でも、やっぱりケツを掘られたくないでござる。

 

 

 ◇

 

 そして魔王城。

 

 魔王城の廊下は不気味なほど静かだった。石畳の床を踏む足音だけが響く。通常なら侵入者を阻むはずの魔物たちの姿はどこにも見当たらない。

 

「不気味ね」

「罠かもしれない」

 

 エルシリア姫が呟き、シルヴィアが警戒しながら周囲を見渡す。アリシアは弓を構えたまま言った。

 

「でも魔王が待ち構えているなら、この静けさも理解できるかも」

 

 緊張しているのか、顔色が少し悪い悠斗が俺の肩に手を置いた。

 

「健太、大丈夫?」

「ああ……問題ない」

 

 そう言いながらも、俺の心は落ち着かなかった。あの夜以来、俺たちの関係は前以上に微妙なものになっている。表面上は以前と同じように接しているが、以前のような親密さはなくなっていた。

 というか、コイツ、勇者らしいカッコいい態度を見せてても掘られてメス堕ちしてるんだよな、と思うとなんとも言えない気持ちになるのだ。

 

 長い廊下を抜け、重厚な扉の前に立つ。この向こうに魔王がいる。

 

「準備はいい?」

 

 悠斗が全員を見渡した。

 エルシリア姫が魔法杖を構える。シルヴィアが盾をしっかりと握りしめる。アリシアが矢をつがえた。

 そして俺も深呼吸して、「停止の縄」を手に取った。この武器がどれほど役に立つのか分からないが、今はこれしか頼るものがない。

 

「行くよ!」

 

 悠斗の号令と共に扉が開かれる。

 

 中は予想以上に広く、天井が高い。中央に玉座があり、そこに魔王と思しき姿があった。しかし……

 

「なんだ……あれは?」

 

 俺は思わず呟いた。

 そこに座していたのは、想像していたような禍々しい怪物ではなかった。

 魔王は玉座に座っていたが、その姿は想像とは全く違っていた。

 骸骨を模した不気味な仮面をつけ、ボロボロに破れた黒いローブを纏っている。その体は異様に小さく、まるで子供のようだった。仮面からは細い腕が伸びており、玉座の肘掛けに寄りかかっている。

 威圧感なんてみじんもない、いっそ貧相とまで思えた。

 

「これが……魔王?」

 

 アリシアが疑わしげに目を細める。

 シルヴィアも俺と同じことを感じたのか、眉をひそめ。

 

「どういうことだ。魔王といえば巨大で恐ろしい存在のはずだが……」

 

 魔王はゆっくりと立ち上がり、かすれた声で言った。

 

「よく来たな……勇者たち」

 

 仮面越しに聞こえる声は女性的だった。まさか魔王までが女性……いや、ふたなりか?

 

 

 いざ戦いが始まろうという、その時。

 

「お、お尻が……」

 

 突然、悠斗が膝をついた。彼の表情は苦痛に歪み、冷や汗が額から流れ落ちている。そして俺は見てしまった。

 

 悠斗の尻から真っ赤な血が滲んでいるのを。

 

「お、おい、悠斗!大丈夫か?魔王の攻撃を受けたのか⁉」

 

 慌てて駆け寄るが、悠斗は歯を食いしばったまま首を振る。

 

「ち、違うんだ……健太……」

 

 彼の声は震えていた。

 

「これは……その、昨夜の……」

 

 あっ、と察し、俺が思わず振り返ったその瞬間、エルシリア姫、シルヴィア、アリシアの三人が同時に視線を逸らした。

 俺は言葉を失う。

 

 魔王はその光景を興味深そうに眺めていた。

 

「……戦う勇気が欲しかったのです」

 

 エルシリア姫が静かに口を開いた。その声には隠しきれない羞恥が滲んでいた。

 シルヴィアが頷く。

 

「そうだ……これが最後かもしれなかったから」

 

 アリシアは小さな声で呟いた。

 

「勇者様と……一つになりたかったんだ。後悔を残したくなかった」

 

 俺は頭が混乱していた。

 

「つまり……みんなで昨晩、ハッスルしたってことか?」

 

 三人は赤面し同時に顔を手で隠した。

 悠斗も顔を赤らめて頷いた。

 

「ごめん、ごめんよ健太……許してくれ……」

「許すも何もさ……」

 

 俺は言葉に詰まった。

 この状況で何を言えばいいのか、どういうリアクション返せばいいのか分からない。

 笑えばいいのかな?いや、笑えねーよ‼

 

 

 

 そして冒頭に戻る。

 

 

 

 悠斗たちを逃がした後、魔王と俺は静かに対峙していた。魔王の小さな体が震え、縄の拘束から逃れようと必死にもがいている。

 

「くそっ……こんな縄ごときに……」

 

 魔王が歯ぎしりする音が聞こえた。

 俺は、魔王の一挙手一投足に注意を払う。気を抜けば一瞬で拘束は解かれる……これが最後の戦いになるだろう、そう思いながら呼吸を整えた。

 

 その時だった。

 

 魔王が突然激しく体を揺さぶった。その勢いで魔王がきていたぼろぼろのローブがずれ、中から白い肌が露わになる。

 

「!?」

 

 なぜロープの下が全裸なのか疑問にも思わなかった。

 その雪のような白肌に、思わず見惚れ息を呑んだからだ。魔王のローブの下には女性らしい曲線美があった。特に目を引いたのは、大きさは普通だが形の良い乳房だった。緊迫した状況にもかかわらず、俺の視線はそこに釘付けになった。

 

「くっ……」

 

 魔王が苦しそうに呻く。彼女の仮面の下から漏れる声には女性特有の柔らかさがあった。

 これが魔王なのか?この世界の支配者は、こんな美しい女……いや、ふたなりだったか?

 

「おい!」

 

 魔王が声を荒げる。

 慌てて目を逸らすが遅かった。心臓が激しく鼓動している。童貞の俺にとって、こんな状況は刺激が強すぎた。

 

「貴様……その俗物な視線は……」

 

 魔王が怒りと羞恥の入り混じった声で言った。

 彼女の体から再び黒い霧が立ち上り始めた。魔王が激しく身を捩らせる。そして—

 

 パリン!

 

 高い音と共に仮面が落ちた。

 

 俺は思わず息を呑んだ。

 

 そこに現れたのは、白銀色の長い髪を持ち、ルビーのような赤い瞳をした少女の顔だった。まるで高級な人形師が作り上げたような完璧な美貌。年齢は十代半ばだろうか。幼さと妖艶さが同居する不思議な魅力があった。

 

「な……」

 

 言葉が出なかった。

 これまで魔王という存在は禍々しい巨悪と想像していた。それが目の前にいるのは、美しくも儚げな少女だった。

 

「余の素顔を見たか」

 

 魔王の声が部屋に響く。怒りと恥じらいが混じった複雑な響き。

 

「人間風情が……殺す‼」

 

 赤い瞳が俺を鋭く睨みつける。

 そして……俺の視線はゆっくりと下に移動した。

 無理やり縄の拘束を解こうとした魔王のローブが引っ張られ破れ、露出した腰の下には確かに「それ」があった。しかし想像していたような凶悪なものではない。小さく、控えめで……まるで彼女の外見に見合ったかのような存在だった。

 

「くうぉおおおおお!」

 

 俺のなんとも言えない視線を察したのか魔王が叫んだ。その声には先ほどまでの威厳はなく、むしろ恥じらいが混じっていた。

 

 縄がギシギシと音を立て、今にも引きちぎれそうになっている。魔王の体から放たれる黒い霧はますます濃くなり、部屋全体が暗闇に包まれていく。

 

「くそっ……」

 

 俺は歯を食いしばって手にもつ縄に力をこめる。この状況で何ができる?童貞の俺がこんな化け物……いや、美しい少女を相手に?

 魔王の瞳が赤く輝きを増す。その光が俺の目を射抜いた瞬間、体が硬直した。

 頭の中が真っ白になりそうだった。

 

(待てよ……これ本当に魔王か?)

 

 目の前には確かに「魔王」と呼ばれる存在がいる。だが、そこにいるのは白銀の髪と赤い瞳を持つ美しい少女だ。普通の女の子……いや、普通以上の美少女じゃないか?

 

(つーかこれ……ふたなりでも普通の女の子よりはるかに可愛いよね?)

 

 勇者パーティーの女の子たちだって十分可愛かった。エルシリア姫は王女としての気品があるし、シルヴィアは凛々しくて格好良いし、アリシアは天真爛漫で元気いっぱいだ。でも、目の前の少女は……まるで別格だ。完璧な造形美とでも言うべきか。

 

(ってか、なんで俺がこんな状況で魔王と一対一になってんの?)

 

 勇者は尻から血を流して退却したし、エルシリア姫たちは「戦う勇気が欲しかった」とか言って夜中にハッスルしてたらしい。その結果がこれかよ……

 

(俺、まだ童貞ぞ?)

 

 なんでこんな綺麗な女の子(しかも魔王)に殺されなきゃならないんだ?いや、完全に女の子ってわけじゃないけど……股間には確かに「あれ」があるけど……

 

(掘られたくないよマジで!)

 

 魔王を拘束している縄は今にも引きちぎられそうだ。黒い霧が濃くなり、部屋全体が不気味に歪んで見える。

 

(どうする?どうすれば生き延びられる?)

 

 頭の中で理性と欲望が火花を散らした。命の危機に直面して本能が暴走しているのか、童貞としての最後の望みが叫んでいるのか——区別がつかない。

 

(どうせ死ぬなら……)

 

 最後に何か思い出が欲しい。この世で最も美しい魔王と……

 

(やべぇ……何考えている。でも!)

 

 股間が熱くなる感覚。死を目前にした最後の反抗として、生きようとする生物の本能が勃起という形になって表れている。

 

(どうせ死ぬなら……最後にこの美少女と……)

 

 思考が単純化していく。リスクとリターンを計算する理性が溶けていく。

 

「うおおおおおっ!」

 

 叫びながら床を蹴った。魔王に向かって一直線に突進する。まるで映画のルパンが華麗に宝物に飛びつくようなダイブだ。実際はただの無謀な突撃だが。

 

「なっ……!?」

 

 魔王の驚いた表情。黒い霧が揺れる。彼女の赤い瞳が見開かれた。

 

「貴様、何をする気だ!」

「ナニをするんだよぅ‼」

 

 俺は叫び構わず前進する。縄はほとんど千切れかけているが、まだ魔王を完全に解放していない。そして魔王の体からは白い肌が露出しており、その美しさは俺の理性を消し去るのに十分だった。

 

(あと少し……!)

 

 心臓が爆発しそうなほど鼓動する。視界が狭まり、魔王の白い首筋と柔らかそうなおっぱいだけが見える。この瞬間だけは勇者でもなんでもない、ただの欲求不満のオスだった。

 

(俺が欲しいものは一つ!)

 

 そしてついに手が届く距離まで来た。俺は両手で魔王の太ももを掴んで開いた。

 

「おおおおっ!」

 

 パイルダーオンした。

 初めてなのに、奇跡的と思えるほどすんなりパイルダーオンできた。

 魔王の身体はまるで俺のためだけに作られたかのように完璧にフィットした。彼女の内部は熱く、柔らかく、そして驚くほど繊細だった。まるで俺の全てを理解し、受け入れてくれるかのように。

 

「あ、あっ!な、なにこれぇ……!」

 

 魔王の声が震えている。彼女の赤い瞳が大きく見開かれ、無表情に近かった顔に初めて明確な感情が宿った。それは快楽に溺れる少女の表情だった。

 

「くっ……こんなの……初めて……!」

 

 黒い霧が薄れていき、部屋を覆っていた邪悪な気配が和らいでいく。

 

(何が起きている……?)

 

 混乱しながらも腰の動きを止められない。何度も言うが魔王の中は俺のために作られたかのように完璧だった。まるで「家電のコンセントと差込口レベル」のやべぇ適合率だった。お互いの身体が吸い寄せられるように絡み合い、元々一つだったのではないかと勘違いしそうになるほどだ。

 

 魔王の顔が変化していく。完璧な美少女の表情が崩れ、口がだらしなく開き、目がうつろになって——それはまさしく「エロ漫画のやばいアヘ顔」だった。

 

 魔王の体が痙攣し始めた。彼女の声が切なく響く。

 

「あっ!く、もう……ダメぇっ!」

 

 彼女の腕と足が俺の背中と腰に回り、爪を立てて逃がさなとばかりに強く抱きしめられる。白銀の髪が乱れ、汗で額に張り付いている。

 

「お前……なんて名前だ?」

「レイナ……」

 

彼女は苦しそうに答えた。

 

「魔王レイナ……」

 

 その瞬間、彼女の内側が、まるで俺の全てを飲み込もうとするかのようにうごめいた。

 

「くっ……!俺の名前は健太だ!俺はお前が好きだ‼」

 

 俺の言葉に反応するように、レイナの表情がさらに蕩ける。

 

「私も健太がすき‼♡」

 

 その叫びと共に、彼女の瞳から涙が溢れ出した。人形のように完璧だった美貌が今や快楽に染まり、淫らに乱れている。

 

「私……初めて……こんな気持ち……!」

 

 俺の頭の中で何かが弾けた。理性も羞恥心も全て吹き飛んでいく。ただ目の前の少女を愛したいという衝動だけが残った。

 

「レイナ結婚しよう!!」

 

 自分の口から出たとんでもない言葉に驚く。でももう止められない。この瞬間を永遠にしたいと思った。

 

「健太だいちゅき!!♡」

 

 レイナの表情がさらに蕩けていく。今の俺にはそれが世界で一番美しく見える。

 

「やきうちーむが作れるほど致そう!!」

 

 意味不明なことを叫びながら、俺は全力で腰を動かした。レイナの体が跳ね上がる。

 

「あはっ!健太……健太ぁ‼」

 

 彼女の声が切なく響く。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 魔王城の謁見の間は静寂に包まれていた。かつて禍々しい気配に満ちていた空間は、今や温かな光に照らされている。

 俺、佐藤健太は魔王レイナの隣に立ち、集まった魔族と人族の代表者たちを見渡した。

 

「本日は我らの結婚式だけではなく、新たな時代の始まりの日でもある」

 

 レイナが凛とした声で宣言する。かつての無表情な人形のような美貌は、今や慈愛に満ちた微笑みに変わっていた。

 

「魔族と人族は長きにわたり争ってきたが、今日この日を境に平和の道を共に歩もう」

 

 俺は隣のレイナを見つめた。純白のドレスに身を包み、白銀の髪を結い上げた彼女は、まさに人形のように美しい。でも今は温かさに溢れていた。

 

「健太様!」

 

 エルシリア姫が花束を持って近づいてくる。

 

「ご結婚おめでとうございます」

「ありがとう」

「でも……魔王様がこんなに変わられるとは驚きましたわ」

 

 レイナがエルシリア姫に笑いかける。

 

「健太のおかげよ。彼が私を変えたの」

 

 会場からは温かい拍手が起こる。かつての敵同士だった魔族と人族が、今や一緒になって祝福してくれている。

(まさか魔王と結婚するとはなぁ……)

 思い返せば長い旅だった。勇者悠斗との奇妙な出会い。大森林や死の砂漠での冒険。そしてあの運命の夜—縄で拘束された魔王と戦い、その体を知ってから全てが変わった。

 まあ、魔王と結婚するまでにも色々とあって大変だったけどさ。

 

「健太」

 

 レイナの声で我に返る。彼女が俺の手を握りしめていた。

 

「これからが本当の始まりよ。一緒にこの世界をより良いものにしていきましょう」

「ああ」

 

 俺はレイナの手を握り返した。彼女の柔らかな指先が俺の手を包み込む。あの夜感じた完璧なフィット感を思い出した。

 

「ふふ」

 

 レイナが微笑む。

 

「結婚初夜はどうするの?」

「え?」

 

思わず声が裏返った。

 

「もちろん……やきうちーむが作れるほど致すのでしょう♡」

 

 彼女の目が怪しく光る。人形のような完璧な美貌に淫らな笑みが浮かんだ。

 

 

 

 

 

 ◇ それから百年後

 

 

 世界は平和に包まれていた。かつての魔族と人族の国境は、今や観光地として賑わっている。

 

 俺、佐藤健太は窓辺に立ち、遠くに見える二つの国の境界線を眺めていた。かつて禍々しい瘴気で覆われていた魔族領も、今や緑豊かな大地へと変わっている。

 

「お父様、紅茶をどうぞ」

 

 声をかけてきたのは次女ルシア。レイナにそっくりな白銀の髪と赤い瞳を持ち、魔族としてはまだ若年層だが既に才覚を示している。

 

「ありがとう」

 

 カップを受け取りながら、ふと思い出す。あの夜の出来事が全てを変えたのだ。

 

 魔王レイナと結ばれた時、彼女の魔力が俺の体に流れ込んだ。最初は単なる肉体的な結合と思っていたが、それは「運命の契約」とでも呼ぶべきものだった。レイナの寿命は無限に近く、俺も彼女と一つになったことで不老となった。それでも時間の流れに抗えるだけで、完全な不死ではないのだが。

 

「勇者悠斗か……」

 

 エルシリア女王が先月亡くなったという知らせは世界を駆け巡った。あの偉大な女傑も100歳を超えていたからな。シルヴィアとアリシア、そして勇者悠斗はそれよりも前に天に召されていた。悠斗は今や伝説の存在だ。百八人ものハーレムを作ったと聞いているが、驚くべきことに誰一人として妊娠しなかったらしい。神が「勇者の血筋」をこの世界に残すこと認めなかったのか、それとも悠斗は受け尻……いや、これ以上は愚考にすぎない、よそう……。

 

「父上?」

 

 長女のカイヤが書類の束を持って入ってきた。黒髪だが瞳は赤い。レイナによく似た鋭い視線で俺を見つめている。

 

「ああ、カイヤ。書類はそこに置いといてくれ」

「分かりました」

 

 彼女は無言でテーブルに書類を置き、一礼して去っていく。あまり口数は多くないが賢く強い子だ。いずれは魔王としてこの国を治める立場になるだろう。

 窓の外では末娘のリリアが庭で遊んでいる。まだ五歳だが既に魔力の片鱗を見せ始めている。彼女の姿はまるで天使のようだ。

 

「健太……」

 

 振り返るとレイナが立っていた。いつもの黒いドレスではなく、今日は淡い桃色のドレスを着ている。彼女の美しさは100年経っても全く衰えない。むしろ深みを増したと言えるだろう。

 

「お疲れさま」

 

彼女は優しく微笑む。

 

「今日はもう休んでいいわよ」

「いや、まだ仕事が……」

「いいの」

 

 彼女は俺の手を取り、優しく撫でる。

 

「あなたが健康のほうがとても大事」

 

 その言葉に胸が熱くなる。レイナはいつも俺の体を気にかけてくれる。

 

「なあ……レイナ」

「何?」

「俺の……その……ケツはまだ必要ないか?」

 

 彼女は一瞬驚いた表情を見せた後、クスクスと笑い始めた。その笑顔は少女のようで、100年前の出会いを思い起こさせる。

 

「もう、あなたったら……」

 

 彼女は俺の頬に手を添える。

 

「必要ないわ。だって今のあなたが……私の全てだから」

 

 その言葉に全身が熱くなる。100年前のあの夜、縄で拘束された魔王と出会ったことが全ての始まりだった。でも今は俺たちは家族だ。9人もの子供に恵まれ、共に築き上げたこの平和な世界が俺たちの全てだ。

 

「健太……」

 

 彼女の唇が近づいてくる。100年経っても変わらない甘い香りが鼻をくすぐる。

 

「お母様!お父様!」

 

 リリアの声が庭から聞こえてくる。その無邪気な声に思わず笑みがこぼれる。

 

「続きはまた後でね」

 

 レイナが囁く。

 

 彼女と共に庭へ向かう。100年前には想像もできなかった平和

 

 

 

 

 ◇エピローグ・ ある朝、目覚めると……

 

 

 朝の光がカーテンの隙間から差し込んでいた。いつものように目を覚まし、伸びをしようとして違和感に気づいた。

 

「……あれ?」

 

 ベッドから起き上がろうとして、自分の体が妙に軽いことに気づく。それに胸元に感じる重み。

 

 恐る恐る布団をめくりあげると……ない。股間にあったはずのアレがない。代わりに柔らかな丘陵が二つ。慌てて立ち上がり鏡の前に立つと、そこには見知らぬ美女の姿が映っていた。

 

 優しげな垂れ目と泣き黒子、色気を帯びた口元、そして母性的な大きい胸。くびれた腰と丸みを帯びた臀部。これは……俺?

 

「健太?どうされました?」

 

 ドアを開けて入ってきたのはレイナ。魔王としての威厳を保ちつつも、俺に対してだけは柔らかな表情を見せる彼女が、鏡の前で固まっている俺を見て目を見開いた。

 

「健太……あなた……」

 

 レイナは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑みを浮かべた。その笑みにはどこか満足げな色が含まれていた。

 

「ようやく完成したわね。私の計画通りに」

「計画……?」

「ええ。あなたの魂は男性のままだけど、肉体だけを女性に変えてみたの。私の力でね」

 

 レイナの瞳が怪しく輝く。彼女の魔力がこの現象を引き起こしたのか。

 

「なぜこんなことを……」

 

 困惑する俺を前に、レイナは嬉しそうに続けた。

 

「ずっと夢見ていたの。私の初めて(・・・)は女になったあなたに捧げたかったのよ」

 

 その言葉に俺の顔は真っ赤になった。女性化したことで感度まで高まったのか、彼女の言葉の意味が直球でお腹に響いてくる。

 

「えっと……それって……つまり……」

 

 レイナは何も言わず、ただ微笑んだ。その表情には100年の時を経ても変わらない純粋な欲望が宿っていた。




ちなみに、健太に「俺の……その……ケツはまだ必要ないか?」と聞かれた時、魔王のナニは勃起してました。

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