時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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第2章 3

 最初の攻撃から数日でバーキー王国を降伏させたトメリア王国のマッキー将軍は、部下に占領の指揮を任せ、戦勝報告のため戦砲艦ガ二アで帰航していた。

 

 護衛艦かがは、木製でいくつも帆が張ってある船を発見した。その船がトメリア王国の戦砲艦であることが分かると、

 「我々は日本国。敵意はない。国交交渉に来た。案内を頼む。」と英語で呼びかけた。

 

 驚いたのはマッキー将軍。見たこともない鉄の要塞が浮かんでいる。しかも自国語、魔法のような大声で呼びかけられたのである。大砲で攻撃することもできるが、効果のほどは疑問であった。

 (敵意はないという。とにかく近くまで案内して、どうするか、ケイン軍務大臣に聞くしかない。戦勝報告どころではなくなった。)

 

 戦砲艦ガ二アはゆっくり方向をかえて進みだした。距離を置いて、その後をゆっくりついていく護衛艦がが。

 そして、港が目視できる所までくると、かがは停船した。

 

 「失礼します。」と言って、佐川は下野のいる船室に入った。

 年下とはいえ下野は全権大使である。

 「恐れ入りますが、このバンドを腕にしてください。盗聴発信機です。」

 下野は怪訝な顔をする。

 「通信衛星を通じて、政府に繋がっています。録音することもリアルタイムで聴くことも可能です。

 交渉内容によっては、すぐに政府の判断を仰ぐ必要のある事態も考えられます。その場合は指示がかがに届くようになっています。」

 「かがに?」

 「そうです。その場合は、こちらの通信機でかがに問い合わせてください。」

 

 その盗聴発信機は、プラスチック太陽光発電池で光さえあればいつでも作動している発信機である。

 1度取り付ければ外せないようになっており、前の戦いの5人の捕虜の腕にも取り付けられている。

 

 「任務が終われば、この解除キーで取り外しますから、お願いします。安全を確保するためですから。」と言って、解除キーのパネルを見せた。

 

 「わかった。」と言って下野は盗聴発信機を腕に巻いた。

 佐川はそれを確認すると、「では、参りましょう。」と言って、先に船室を出た。

 

 小艇2隻に、外務省の2名、陸上自衛隊の13名が分乗して、港に向かった。戦砲艦ガ二アにあわせて、ゆっくりと。

 

 ・・・・・・・・・・・

 

 日本人15人が桟橋に降り立つと、マッキー将軍がやってきて、「そこで待っておれ。」と言い放つと、人数を数えて、去っていった。

 

 港に人が集まってきた。兵士の格好をした人も、そうでない人も、沖に浮かぶ鉄の要塞、護衛艦かがを指さし、口々に喋っている。時折、日本人と小艇を奇妙なもののように見る。

 

 しばらく桟橋で待っていると、城から使いがきた。日本人15人は2台の馬車に乗り、カバンナ城へと向かった。

 

 そして、馬車は城の門をくぐって、城の入り口で止まった。城に入れるのは、武装していない下野外交官と井上事務官だけ。目立つ武器をもっていない佐川も止められた。他の自衛官と同じ服装なので警護兵とみなされた。

 

 (前の時と同じだ。ここはもっと危険。警護の任を果たさねば。)

 佐川はそう思い、武器を持っていないことを必死にアピール。何とか2人についていくことが許された。実は、内ポケットに拳銃を忍ばせていたのだが。

 

 3人は城に入った。広い、とにかく広い。門をくぐってから入り口まで馬車でかなりあったのだが、ここも広い。室内なのにまるで屋外の広場のようだ。まわりに部屋のドアがいくつもある。

 

 そのうちの1つに案内されて、ドアを開けた。椅子に金髪の男が座っており、その両脇に武装兵が立っている。

 「お連れしました。」といって案内人はドアのところに立つ。しばらく、沈黙が続く。

 

 下野が口を開いた。

 「お会いいただきありがとうございます。日本の外務省の下野と申します。隣は井上です。」

 続いて「自衛隊の佐川です。」と佐川が言うと、「自衛隊?何だそれは。知らんな。」と、金髪の男が口を開いた。

 そして、また沈黙が続いた。

 

 下野が前に出て、「これが我が国の紹介文と交流の願書です。」と言って、書類を渡そうとすると、金髪の男はそれを払いのけ、「国交を結びに来たことは聞いておる。急だったので、口頭で申し渡す。」と言って、国交の条件を述べ始めた。

 

 「1つ、国王、宰相は退位、退任し、全権をトメリア王国から派遣する領事に譲渡すること。

  1つ、亜人の奴隷20人、または金20両を毎年献上すること。

  1つ、全ての軍事施設、設備をトメリア王国が使用するものとすること。」

 「ちょっと待ってください。我が国には国王も、宰相も、亜人の奴隷もいません。」と下野。

 「黙れ!蛮人。

  1つ、全ての技術、仕組みをトメリア王国に公開すること。

  1つ、他のいかなる国とも国交をしないこと。以上!」

 「それでは、属国以下ではないですか。」と下野。

 「何を言うか、日本人の命を助けるだけでもありがたいの思え。」

 

 散らばった書類を拾い集め終えた井上は青くなっていた。下野は佐川の目を見た。佐川は笑ってうなずいた。

 「確認をとります。しばらくお待ちください。」と言って、部屋を出た。

 下野についていこうとした井上を佐川が止めた。金髪の男は、何の確認かわからず、怪訝な顔をしている。

 また長い沈黙。

 

 「こちらは、ちゃんと名乗っているですよ。名前ぐらい教えて下さいよ。」と挑戦的な佐川。

 「蛮人に名乗る名前はない、」と金髪の男ケニー外交官。

 彼は知らなかった。目の前の男が、陸軍がおそれる魔法攻撃の魔人と呼ばれた男であることを。

 

 そこへ下野が戻ってきた。

 「お伝えします。5つの要求、全て拒否します。交渉も無駄、皆さん、帰りましょう。」

 下野がそういうと、「拒否は宣戦布告と同じ。それで滅んだ国があるんだぞ。」とケニー外交官。

 「どうぞ、ご自由に。これですんだね、この国は。」と佐川。

 井上が持参した書類を持ち帰ろうとするのを、「それは置いといて。」と下野。

 そして、3人は城を出た。

 

 資料を見てもらうことを期待した下野の配慮もむなしく、資料はゴミ箱へ捨てられた。




拒否は宣戦布告と同じ、どうする日本
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