時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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第2章 5

 佐川三佐は北富士駐屯地の一室で待っていた。

 「失礼する。」上手な日本語である。

 ジョージ侯爵は部屋に入り、自分を呼んだ人物が、佐川であることを知ると、笑顔になり、「あのときはありがとう。」といって、握手を求めてきた。

 実は、降伏して捕虜になったとき、仲間を殺された恨みを持つ集落の武力兵たちに殺されそうになったのである。それを止めたのが佐川だった。

 

 佐川が「実は」と言って、英文で書かれたトメリア王国の5つの要求文をジョージに渡した。それを読んだジョージは、

 「当然でしょうね。どこの国に対しても同じです。」と顔を曇らせて答えた。

 そして「どうするのですか、日本は?」と尋ねた。

 「全て拒否。宣戦布告だと言っていましたよ。」といって佐川は笑った。

 

 「トメリア王国を滅ぼすのは簡単なんですが、戦争はしたくない。(本当はできない。)そこで、お願いなんです。あなたに国へ帰っていただいて、我が国のことを報告していただきたい。戦っても敵わないと、対等の国交を結ぶようにと、説得して欲しいのです。」

 ジョージは佐川の言う通り、戦えば簡単に負けると思っていた。

 国を救うには説得しかないと思った。

 「いいですよ。で、これは除けてくれるのでしょうか。」と腕をみせた。盗聴発信機である。

 「いいえ、国に帰ってもあなたはまだ捕虜です。すべてが終われば外します。」

 もちろん彼はそれが盗聴発信機であることを知らない、捕虜の印だと思っている。

 

 佐川はトム鉄砲隊長はじめ他の捕虜たちにも、それぞれの立場で同じように宣伝するようにお願いして、捕虜たちを連れ、北富士駐屯地を去った。

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

 三木は西方大陸東岸地区の航空自衛隊基地のトラックの荷台でミニバイクと一緒に待っていた。またトメリア王国に潜入する指令を受けていたのだ。

 そこへ捕虜たちと一緒に佐川がやってきた。捕虜たちは三木を知らない、面識はないのだ。

 佐川は、ジョージに三木を指さして、

 「まず、この人を占領した島に送るよう手配してから、城に入るようにしてください。」と言って、

 助手席に乗り込んだ。そして、草原をトラックが走り出した。

 捕虜5人と三木は荷台だった。捕虜たちがじろじろと三木を見る。三木は愛想笑いをする。

 (どうも私の腕のバンドを気にしているようだ。捕虜と勘違いしているのかな。)

 もちろん、三木は腕のバンドが盗聴発信機であることを知っている。

 

 トラックは、テールの町が見えるところで止まった。佐川は三木たちが降りたことを確認すると、そのまま帰っていった。

 三木はまたミニバイクを目印を付けた場所に隠し、捕虜たちと町に向かって歩き始めた。

 

 街に入る門に門番の兵がいた。その兵はジョージの顔を見ると、直立不動の敬礼をした。町に入ると逃げ去った兵たちがいた。どの兵もジョージを見ると最敬礼。

 その様子を見ていた三木は、

 (以前送ったジョージ侯爵の情報、間違いじゃあなかった。陸軍での知名度の高さ。)と思った。

 三木は、以前の潜入の時、ジョージ侯爵は次期軍務大臣と目されるほどの人物と情報を送っていた。

 すぐに、馬車が手配され、兵の警護付きで都カバンナに向かった。

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

 ヨーデン3世は、また軍務大臣ケインと外務大臣カインを執政の間に呼びつけていた。

 「カイン、要求を拒否した日本という蛮国をどうするつもりだ。」

 カインはケインを見て、

 「海軍を派遣して降伏させるしかないですね。」

 「そうだな。ケイン、すぐに手配せよ。ところで・・・・ケイン。

 北方平定の陸軍、また逃げ帰ったそうだな。どうする?」

 「はあ、指揮官を交代させ、立て直すしか・・・・・。」

 「もっと骨のあるやつにしろ。わが軍に敗北はない。3度目はケイン、お前の首が飛ぶ。」

 

 ・・・・・・・・・・・・・

 

 三木は、カバンナの港から旧バーキー王国に向かうトメリア王国海軍の船に乗っていた。

 (さすがジョージ侯爵、海軍にも顔がきく。私の行き先から捕虜でないと感づいたみたいだが。)

 乗った船が戦闘用の艦ではなく、物資などを運ぶ船であることにがっかりしていた。

 (大砲がいくつも並ぶ戦砲艦、男のロマン、乗ってみたかった。)

 船内で、海軍が日本の討伐のため艦隊を組んで出航したという情報を得たとき、

(説得は間に合わなかったか、たくさん沈むぞ。)と思った。

 その情報を日本に伝えたことは勿論である。

 

 旧バーキー王国の港、モア港についた三木は、街を散策。トメリア王国が占領してから、かなり日が経つのに、まるで戦闘直後のよう。城が壊れたままなのはわかるが、道路も瓦礫の山、いや、山にすらなっていない。戦闘の後、そのままなのである。

 (嫌な感じ、占領後、兵は略奪と殺戮を繰り返したわけか。)

 三木は、街の人から敵意の視線を痛いほど浴びる。

 

 森の近くの街のはずれまで来たとき、

 「キャア、イヤー!」という女性の声に、三木は振り返った。建物から2人の女性が飛び出し、2人の兵が追いかけている。

 プシュッ。プシュッ。

 追いかけていた兵が倒れる。2人の女性は、何が起こったのか理解できず、立ちすくんでいる。

 2人の女性の耳は尖っていて、まるでアニメのエルフのよう。それに美人。たしかに妖精だ。

 (これで彼女らが魔法を使い、魔族でもいるようならファンタジーの世界だ。)

 三木はそう思いながら、「大丈夫ですか。」と英語で話し、近づいていく。

 「来るな!」

 (えっ!日本語!どういうこと?)

 「何もしません。安心して。」と日本語で言うと、今度は相手が驚いている。

 

 三木は、トメリア人でもバーキー人でもなく、日本という遠くの国から来たことを説明し、2人の事情を聞いた。

 2人は姉妹で、姉がシルビア、妹がカルビアと名乗った。トメリア王国が攻め込む前にこの街に来ていた母が帰らない。兵に見つかると捕まえられるので、戦いが収まってしばらくしてから、探しにきたという。そろそろ兵がいなくなるころだと思ったらしい。

 

 2人の住む集落は森の中にあるということを聞き、三木は連れて行ってもらうことにした。捕まえようとした2人の兵を倒したこと、自分たちと同じ言語を話すことなどが、姉妹の信用を得た理由のようだ。

 

 森と言っても、中は熱帯雨林のジャングルである。道などない。姉妹は手際よく歩けるところを見つけ進んでいく。周りの景色はすべて同じ、空も見えない。迷わない方がおかしい。右や左へ不規則に進んでいくと、弓を持った男たちが現れた。みんな耳が尖っている。しかも美男子。

 姉の方だろう、背の高い女性が走って行って耳打ち。男たちはいなくなった。

 しばらく歩くと着いたという。周りを見渡しても何もない。姉妹は上を指さす。ある、ある。木の上に家がいくつもある。蔓でつくった梯子を上っていくと、家の玄関につく。

 

 姉妹はこの集落の長の娘たちだった。三木は、その長から娘たちを助けた礼に奇妙なものをもらった。

 短い棒に宝石のようなものがちりばめられている。何に使うのか分からない、美しいから持っていたという。三木は、この形状に心当たりがあった。棒の先端、丸い部分をのぞき込む。

 (レンズだ。レーザー銃?まさか。とんでもない世界にきたものだ。)

 

 この集落の長の話によると、バーキー人はどの種族も差別しなかったという。バーキー王国の城はキュバ城といい、城にも奴隷はいなかった。熊耳の人も猫耳の人も、小さき人も、そして、耳の尖った人も、いろんな人が住んでいたので、トメリア王国からみれば奴隷の宝庫であった。

 長は知っていた。自分たちが森の妖精としてトメリア王国に狙われていることを。そして、どう守るべきか頭を悩ましていると告白した。

 そして、とんでもない話をした。伝承によると、自分たちは古の民に創られたのだと。熊耳の人も猫耳の人も小さき人も。

 その古の民の遺跡が近くにあるという。

 (古の民、どこかで聞いた。そうだ、小さき人が技術を教わったという伝承だ。)

「その遺跡に案内してくれますか。」

「いいよ、若い者に案内させよう。」と言って、出て行った。




古の民の遺跡とは
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