外務省の下野外交官と井上事務官は、トメリア王国への要望書を持参して、西方大陸東岸地区の航空自衛隊基地で、陸自の車両を待っていた。前は海路でトメリア王国へ行ったが、今度は、航空機でここまできて、陸路でトメリア王国へ行く予定である。
やってきた輸送防護車を見て、下野が「どうして、こんな物々しい車で?」と尋ねた。
「戦闘があるかもしれませんからね。」と返事。外務省の2人は顔を見合わせた。
「大丈夫ですよ。戦車の後ろを、しかも安全を確認して離れて行きますから。」
4台のナナヨン戦車、その後を下野外交官と井上事務官の乗ってる輸送防護車、そして最後尾を1台のナナヨン戦車。列をなして草原を進んで行った。
テールの町に着いた。驚いている門兵を横目に、町の城壁に沿って進行した。町は素通り。攻撃されなければ戦う必要もない。
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カバンナの街は兵で溢れていた。北方での戦いに敗れた陸軍の兵、退却して上陸している海軍の兵。
まるで、兵以外の人はいないかのようだった。
三木はトムと会っていた。
「ジョージ侯爵が牢に監禁されている。」
「何だって!・・・・何でお前が知っているんだ、俺の知らないことを。」
「情報収集能力の高いことを日本で学んだだろう。とにかく、助けるだろう?」
「もちろん。待ってろ。3人を呼んでくる。」
三木はすでにジョージ侯爵が監禁されている牢の場所を調べていた。トムたちを連れてその建物の前まで来ると、連れて出てくるから待っているようにと指示して、1人建物の中に入っていった。
中に入ると、牢獄の入り口に兵が2人。プシュッ、プシュッ。
トムたちを中まで連れてこなかったのは、仲間の兵を殺すのを躊躇すると判断して。
兵が持っていた鍵束をとると、さらに中へ。また、兵がいる。プシュッ。
ジョージ侯爵のいる牢の鍵を探り、牢をあける。
「やはり、あなたは。」とジョージ侯爵。
「そうです、日本人です。外でトムたちが待ってます。」
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護衛艦いずもとミサイル護衛艦きりしまはトメリア王国の戦砲艦隊を退却させた後、トメリア王国に向かってゆっくりと進み、カバンナの街がミサイルの射程距離に入るところで停泊していた。
陸路を進む下野外交官を乗せた陸上自衛隊の車両は、戦うことなく村や町を通過して、カバンナの街の前で停車していた。
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三木はジョージ侯爵を説得していた。
「この国を滅ぼさない方法は、あなたが行動するしかないのです。もう、始まりますよ。
兵舎の兵を全員退避させてください。兵舎が爆発します。」
ジョージ侯爵は兵舎から兵を退避させるようトムに指示した。兵が出たことを確認した三木は、レザーポイントを兵舎に当てる。
ミサイル護衛艦きりしまから誘導ミサイルが発射され、兵舎が大爆発。
それを見たジョージ侯爵はクーデターを決心した。
兵舎が爆発したのを合図に、陸自の戦車が街に入る。ジョージ侯爵はトムと共に兵を引き連れ、カバンナ城へ。それらを確認した三木は港へ急いだ。港には小艇が待っており、それに乗り込み、三木は護衛艦いずもへ。
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カバンナ城では、ジョージ侯爵率いる兵たちが近衛兵を制圧し、執務室でヨーデン3世を拘束していた。王座には誰も座っていない。
そこへ、自動小銃をもった自衛官に守られながら、下野外交官と井上事務官が入ってきた。それを見たジョージ侯爵は、2人を別室に案内し、「私は外交は分かりませんので、外交官を同席させます。」と言った。下野が「ついでに、トムさん他、捕虜だった人も同席させてください。」と言ったので、怪訝な顔をして出て行った。
ジョージ侯爵がカイン外務大臣とケニー外交官やトムらを連れてもどってきた。
「また、お会いしましたね。」と下野。
ケニーは気まずそうな顔をしている。
下野はケニー外交官の顔を見ながら、「我が国は貴国の政治体制について干渉いたしません。」と言って続けた。
「ただ、我が国と友好のある地域の人たちが奴隷になっているので、その解放を要求します。」
そして一呼吸おいて、「それから、占領したバーキー王国から兵を撤退させ、バーキー王国の主権を認めてもらいます。」
「王国は滅亡したのでは。」とケニー外交官。
「王族は生きています。王子と王妃が。」
「どうして、あなたがそんなことを。」とカイン外務大臣。
ジョージ侯爵ら捕虜だった人たちは、日本という国の恐ろしさを噛みしめていた。
「以上です。後は、この要望書をみていただいて、詳細は後程交渉ということになります。」
そう言った下野は、解除キーのパネルを取り出し、
「ジョージ侯爵、トムさんら、こちらへ。」と言って、盗聴発信機のバンドを取り外した。
「これで皆さん、完全に自由です。」と言って笑った。
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「よく出航できましたね。」と護衛艦いずもの指令室で三木。
「防衛出動ですよ。トメリア王国の戦砲艦隊が侵攻してきましたから。」と渡辺艦長。
「そうではなく、よくぞここまで。」
「戦砲艦隊を蹴散らした直後、連絡がありまして。トメリア王国への出動の許可が国会承認を得たと、で、そのまま出動命令です。」
「えっ、国会の承認。よく通りましたね。」
「はい、保護地区の集落から、仲間の奴隷を開放して欲しいと強い要望があって。人道支援ということで。」
「強い要望?本当かな、怪しいですね、彼らは外部に干渉しない。」
「それと日本人の救出。」
「何ですか、それ・・・・。まさか、私の救出ではないでしょうね。」
「そのまさかです。あなたは日本人ですからね。あははは。」
「潜入させて救出。自衛隊出動の理由にする。それじゃあ詐欺だ。」
「国益のためには国民をも騙す。あなたが一番よく知っていることでは。」
「・・・・・・・」
「憲法第9条の縛りで、こんな姑息な手しか使えないんですよ。このままでは、国が滅ぶという時でさえも。」
「・・・・・・・」
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は 武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 ②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
日本はどう進む?