時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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第2章 8

 カバンナの港の近くにプレハブの大使館を建て、そこに下野外交官と井上事務官が勤務して、トメリア王国と交渉していた。

 ヨーデン3世は退位して後を幼少の長男が継ぎ、ヨーデン4世を名乗った。日本はジョージ侯爵が政治の実権を握ることを強く望んだが、彼は王の退位だけで体制を変えることを望まなかった。軍の敗退で首が飛びそうだったケインも軍務大臣のままだった。

 

 ジョージ侯爵は知っていたのだ。日本は簡単に奴隷の解放を要求してきたが、それがいかに至難の業かを。それだけでも大変なのに、政治体制の改革など無茶な話だと思っていた。

 奴隷を持っているのは主に貴族、そして商人。その人たちの意識改革などは問題ではない。意識改革などしなくても、強制的に奴隷を取りあげればすむことだ。問題なのはそんなことではなく、解放された奴隷たちが生きていけるかということだった。

 奴隷であれば不自由だが飯は食える。「自由です、勝手にしなさい。」と放り出された人は食べていくすべをもたない。トメリア王国には把握できないほど多くの奴隷がいるのだ。生きるために暴徒になる可能性もある。

 

 日本の1番の要求が奴隷の解放、言葉では当然で簡単。でも、実際は最も難しい要求だったのだ。2番目の要求はバーキー王国の独立。これは簡単。島から兵を引き上げればいいだけだ。あとは、バーキー王国が好きにすればいい。

 

 何もない海岸に港を工事する許可とそことアニオン鉱山を結ぶ道路の工事の許可、そして5年間のアニオン鉱山の採掘権と借り上げが、交渉で要求されたが、占領されても拒否できないと考えていたトメリア王国側にとって、すぐに容認できる要求であった。そして、カバンナの港を貿易のために貨物船が停泊できるように改修する件は、工事は日本、使用権はトメリア王国ということで文句のないことであった。

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

 カバンナの日本大使館に、港湾工事とアニオン鉱山とその港を結ぶ道路工事の責任者がきていた。

 下野は港湾工事の設計図を見て、「港の名前はアイロン港。それから、ここに滑走路、空港を作ってください。」と言った。

 「えっ、そんなこと、聞いていません。」と港湾工事の責任者。

 「滑走路、造れますよね。」と道路工事の責任者に問う。

 「造れないことはないけど、許可は?」

 「とってません。とれません、飛行機を知らない国ですよ。空港と言っても無理です。でも、必要です。道路を滑走路にと考えもしたのですが、鉄鉱石を輸送する車が多くなることを考えると。やっぱり、別に空港が必要なんです。許可は、問題ありません。港湾設備の一環として空港を造ればいいんです。土地はいくらでもありますから。名前はアイロン空港、いいですね。」

 「わかりました。造りましょう。空港設備の専門家も呼び寄せましょう。」

 「ありがとうございます。ついでにもう1つ。道路は4車線にしてください。西方大陸東岸地区の道路は狭すぎます。よろしく。」

 

 2人が去った後、今度はJスティールの社員がやってきた。

 下野が「どうでした?」と尋ねると、

 「上質の鉄鉱石です。手掘りできるぐらい簡単に掘り出せます。」

 「そうですか、よかったですね。」

 「はい、我々は手掘りではなく、もっと効率的に、機械でダダダダっと。」

 「そうですね。」

 「それに、トロッコを押して運んでたようですが、それも機械で。」

 「そうですか。ところで、働いている人たちは?」

 「ほとんど、熊耳の人たち、奴隷でした。」

 「その人たちをどうするおつもりで?」

 「もう、必要ないし、解放しなければいけないし。解放します。」

 「それでは困ります。全員雇ってください。チャンと賃金を払って。それが、おたくの会社に採掘権をお渡しする条件です。」

 「・・・・上のものと相談してきます。」

 

 ・・・・・・・・・・

 

 護衛艦いずもの三木に連絡がはいった。古の民の遺跡調査団が出発したから、案内人としてトメリア王国の日本大使館で待てという指示である。

 小艇で三木をカバンナの港に運んだあと、護衛艦いずもとミサイル護衛艦きりしまは帰路についた。

 

 ・・・・・・・・・

 

 三木はトメリア王国の日本大使館の応接室で下野を待っていた。

 「お待たせ」と言って入ってきた下野は、「お待ちしていました。連絡を受けています。内調の方ですよね。」と言って、ソファーをすすめた。

 

 三木は、(見違えるように立派になって。水は方円の器に随うか。大使だもんな。)とそう思った。

 (しかも、自分の正体まで知りえる立場になってるとは。)と驚いていた。

 「はい、ここで合流するように指示を受けているんですが、実は、いくつかお願いがありまして。」

 「何でしょう。」

 「耳の尖った人、以前、あなたが説明して下さった森の妖精ですが、ここに集めて欲しいのです。」

 「なぜ?」下野は怪訝な顔をする。

 「それは言えません。」

 「そうですか、それで?」

 「その人たちのうち、バーキー王国から連れてこられた人たちを、船を手配して送り返して欲しいのです。私と一緒に。私は調査団をバーキー王国で待ちます。調査団にはそう伝えてください。」

 

 下野はにっこり笑って、「何を計画しているかわかりませんが、いいでしょう、明日までお待ちください、すぐ手配します。泊る部屋を用意しますので、しばらく、お待ちください。」と言って出て行った。

 しばらくすると、案内の人がきた。猫耳。

 

 トメリア王国への要望書にバーキー王国の独立を入れたのはまずかったと下野は思っていた。ボーキサイトの鉱床も古の民の遺跡も、トメリア王国の領土のままの方が調査しやすい。独立すると最初から交渉しなければならないからだ。

 

 下野は政府に届いたこの地域の情報をすべて知りえる立場にいたのだ。

 

 バーキー王国がバーキー人と亜人が共に暮らす王国だったという情報を得たとき、下野は(どうやって?)と興味が湧いた。そして、(もう一度バーキー人に王国を再建してもらって、参考にしよう。王国のモデルになるかも。)と前向きに考えるようになった。

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 翌日、耳の尖った人たちが26人、不安な顔をして集まっている。男6人女20人、全員バーキー王国から連れてこられた人たちだという。

 「街の南にある森の中の集落の長の奥さん、います?」と三木。

 みんなが1人の女性の方を向く。その女性が手を挙げる。三木はその女性のそばへ寄り、「2人のお子さんが探していましたよ。集落へ帰りましょう。」と囁いた。その女性は不思議な顔をして三木を見る。三木は頷いてみせた。

 

 トムたちトメリア兵の警護で港まで来ると、海軍の輸送船が待っていた。26人の耳の尖った人たちは、ここへ連れてこられた船をを見て恐れ、乗船をためらっていたが、それで帰ることを説明されてやっと乗船した。

 耳の尖った人たちが乗船すると、三木は、集落の長の妻に、バーキー王国で自分が体験した一部始終を話し、長にバーキー王国が解放されたことを伝えて欲しいと頼んだ。今もジャングルの中に潜んでいて、情報が伝わっていない可能性があったからだ。そして、ジャングルの案内人を港までよこすようお願いした。




古の民の遺跡とは
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