三木と耳の尖った人たちを乗せた輸送船がバーキー王国のモア港に近づくと、港に集まっていた漁船は逃げるように出航した。このモア港は元々漁港だった。トメリア王国が占領して戦砲艦が停泊できるように補強された港である。
トメリア王国の輸送船が街の人たちに見えるようになると、街にいた熊耳、猫耳の人たちは街から逃げ出していた。捕まると奴隷にされるからである。バーキー人も家の中や物陰に隠れ、街に外に出ている人がいなくなった。
輸送船から耳の尖った人たちだけが下船し、トメリア王国の兵が1人も降りないで出航、去っていくと、1人、2人と人が出てきた。
街の人たちはトメリア王国の兵がなぜいなくなったのかを知らなかった。下船した耳の尖った人たちにしきりに事情を聞いている。時々、驚きの声で「二ホン」という言葉が飛び出していた。
街のはずれにあるサトウキビ畑から熊耳、猫耳の人たちが出てくる。トメリア王国の脅威がなくなったことを知った人たちから歓声があがる。情報はゆっくりと確実に伝わっていく。
三木は長の妻の口添えで、港近くの民家を宿にして調査団を待つことになった。
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バーキー王国の王子と王妃がキュバ城に帰還した。どこから出てきたのか、熊耳、猫耳の人で溢れ、瞬く間に瓦礫がかたずけられ、街は活気に溢れていた。
三木はモア港で調査団と合流した。調査団は、団長の中川調査官、反惑星説の高瀬準教授、先端技術研究の大山準教授、川島軽金属の社員2人の構成で、耳の尖ったジャングルの案内人に驚いていた。
案内人に連れられてジャングルに入る。右へ左へさまよう様にジャングルを進む。進めど進めど同じ景色。ついていく調査団が不安になるころ、「つきましたよ。」と洞窟を指さす。
調査団の5人が洞窟の中に入っていく。案内人は外に待機。三木も1度調査しているので外で待機、というよりも別に気になることがあったので、外で周辺を調べていた。
以前調べたとき、明り取りの穴があり、穴があるのに床が湿っていないことが気になっていた。ガラスのような透明なもので穴の蓋をしていると考えられたからである。
そして、穴を見つけ蓋をしているものを見たとき、三木は(ガラスなんかではない。もっと透明度が高く丈夫なアクリル樹脂だ。)と驚いた。水族館の巨大水槽などに使用されているアクリル樹脂のようにみえた。
調査団が洞窟から出てきた。洞窟から持ち出したものは、レーザー銃とパワードスーツらしきものの2種類だけだった。川島軽金属の社員たちが赤い土を採取して容器に入れながら、「間違いなくボーキサイト、でもわが社で還元できるかどうか。」などと話し合っていた。
川島軽金属はアルミチップを輸入し、それをアルミサッシやアルミホイルなどの製品に加工していたのだ。日本にボーキサイトをアルミナに、そしてアルミニウムに還元できる会社や設備は1つもない。今やアルミチップの輸入もできないのだから、リサイクルに頼るしかない。アルミ製品の高騰は当然であった。
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日本政府は帰る国のない在日外国人の問題に頭を悩ましていた。出入国在留管理庁によると、在日外国人の数は約360万。永住者90万、技能実習生42万、技術・専門・業務従事者39万、留学生37万。各大使館へ日本国籍をとり日本人として生きていくように勧めるようお願いしていた。
といっても、簡単に割り切れることができず、新大陸に自分たちの国家を築く主張も根強かった。特に84万人もいる中国人はそれを望んでいたが、日本政府が「どうぞご自由に」と言っても、交通手段もなく、日本の援助もなく、どうにもならなかった。
基地のあるアメリカは自国の船で新大陸の北部へ上陸したが、そこで生活するには狩猟生活以外はあり得ない。そんな環境で、その地に日本の援助なしに建国などは夢のまた夢であった。アメリカ軍の強力な戦力も、日本が沈没すれば終わり。船を動かす油も、兵の食料も、日本に頼る以外になかったのだ。
日本政府観光局によると、日本を訪れる観光客は毎月400万。日本に残された観光客が困り果てて大使館と連絡をとるはずだから、その人たちにも日本国籍をとって、定住するように勧めるよう各大使館にお願いしていた。
帰るところがないのだから、そうする以外にないのだが、割り切れないのも確かなのだ。そして、各大使館も自国からの援助もないのだから、日本政府の言うとおりにする以外なかった。
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三木は調査団と一緒に日本に戻っていた。そして、自室に引きこもって、書類と睨めっこをしていた。
(ふーん、西方大陸東岸地区の集落の小さき人たちを除いた人数か。熊耳男390、女395、猫耳男1118、女2005。3対1だ。雑種第2代の分離比だったっけ。猫耳が優性。そうそう、遺伝の法則、今は優性の法則と言わないんだ。形質に優劣はないから、顕性、潜性と。まあ遺伝はほとんど不完全、何とも言えないが。いずれにせよ、古の民の伝承、実験をした可能性もあるかな。
そういえば、クローン技術で最初のクローン羊が誕生したのは1996年だったっけ。確か研究の一部は規制されていたはずだが。)
三木は、亜人たちが古の民によって造られたという伝承は、単なる伝承ではなく事実であろうと思うようになった。
(西方大陸東岸地区の5つの集落にも暦がある。やっぱり。耳の尖った人たちの暦と同じ、495年7月か。トメリア王国もバーキー王国も495年7月だったな。この異世界の暦はどこも同じで、日本の暦と2か月ずれているわけだ。この異世界は、1年の始まりを春にしている、極めて自然か。地球でもキリスト教の影響以前は、1年の始まりは春だった。495年?何だ、この意味は?)
そして、古の民の遺跡踏査団の報告書をみる。
(わけのわからなかった大掛かりな機械は、立体映像を投射する装置だって。レーザー銃やパワードスーツのようなものは壊れていて、しかも理解を超えている構造で、解析は進まないって。学者さんよ、しっかりしろ。
でも、レーザーポイントじゃあないんだから、エネルギーが高くないと攻撃にはならない。だから、多くの電力が必要で装置も大きくなる。携帯用であんなに小さい棒の電源は・・・考えただけで頭が痛い。)
報告書は、今の日本の科学技術より50年100年進んだ先の技術だと断じていた。
(えーと、パワードスーツの入っていた木箱の作成年代は?報告があったな。500年前?ん??500年!まてよ、500年後に戻ってくると言ってたな。もしその伝承が、単なる伝承でなく事実なら、古の民は宇宙へ、そして帰還。
この世界の年が旅立った時から始まっているとしたら、495年。まさか、あと5年で戻ってくる?古の民との兵力差は歴然、トメリア王国との差どころではない。
日本は従わされるか滅亡するかどちらか。あと5年でみんなの知恵を絞って、活路を見出さなければ。)
三木の思いとは関係なく、政府は古の民の伝承と遺跡の件を国民に知らせなかった。国益にもならないし、判断を仰ぐことでもなかったからだ。とにかく、日本はこの惑星の1部しか知らない。古の民は500年前にはこの惑星にいた。高度な科学技術を持った民が滅んだとは思えない。この惑星のどこかにいるかもしれないのだ。
第2章 (完)
第3章日本はどこへ