時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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 本作品はフィクションであり、実在する人名、国名、団体名、組織名などが登場するが、それらとは全く関係なく、中傷も賞讃も意図しません。

 挿絵は、海面上昇シミュレータ、ペイント、ChatGPTを使用して描いています。


時空を超えて 第3章 1

 日本全土が奇妙な地震に見舞われてから1年が過ぎた。何とか1年を乗り切ったのだ。まだまだ不足するものも多く、レアメタルなどの金属は都市鉱山(都会にはスマホやパソコンなどの電子機器がたくさんあり、それらに使われている金属の山なのでこう呼ぶ)にたよるしかない。日本はこの惑星のほんの1部しかまだ知らないのだ。

 

 放送メディアは西方大陸東岸地区の集落に興味を持っていたが、集落保護法により日本人の集落への立ち入りが禁じられており、集落の様子が報道されることはなかった。

 しかし、港湾地帯の取材は自由だったので、熊耳の人、猫耳の人、小さき人の存在はほとんどの日本人が報道により知っていた。

 彼らの集落はあまり変わらなかった。電気もガスも拒否し、変化そのものを望んでいないからだ。ただ、草刈り機のような農機具が集落に入り込み、農作業の様子は多少変わっていた。

 

 しかし、港湾地帯や油田のある草原は劇的に変わっていた。

 油田や港湾で働く人に現地の人を雇うことができない。働いて紙幣をもらっても何の価値ないし、草原で兎でも捕まえる方が価値があるからだ。だから、労働力は、魅力ある町をつくって、日本から呼び寄せる以外にない。スーパーもコンビニも娯楽施設さえある町ができあがっていたのである。そして、学校、病院などの施設もできつつあった。

 

 トメリア王国のアニオン鉱山では、熊耳の人たちにプレハブ住宅を与え、労働時間に応じて賃金を払い、自活できるように配慮していた。日本の資金力でできる技であり、トメリア王国の他の所では、相変わらず奴隷の解放に四苦八苦していた。アニオン鉱山のやり方をまねて、解放していたところもあったが。

 アニオン鉱山からアイロン港まで4車線の道路が整備され、鉄鉱石が運び込まれていた。港湾地帯にはアイロン空港もできあがっている。 

 

 バーキー王国の復興は速かった。バーキー人の王子が王になり、それを助ける宰相が猫耳の人であり、建設復興大臣に小さき人、保険厚生大臣に耳の尖った人、治安維持長官に熊耳の人が就任し、全ての人が協力して復興にあたっていた。

 バーキー王国のある島は、北海道よりは大きく、本州よりは小さい島で、北側が開けており南側がジャングルであった。その南側の海岸が港湾に整備され、ジャングルの鉱床と4車線の舗装道路で結ばれ、採掘されたボーキサイトが運ばれていた。日本はこの港をアルミ港と呼んだ。

 ここは西方大陸東岸地区の集落と違い、貨幣の流通のある国なので、現地の労働力を得ることができた。アルミニウムは電気の缶詰と言われるように、精錬に大量の電力を必要とするので、ボーキサイトを日本に運び精錬する以外になかった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 川島軽金属ではアルミ精錬工場を新しく作り、バーキー王国からボーキサイトを運び込んでいた。ところが、バーキー王国のアルミ港が攻撃されたのだ。単なる海賊の攻撃ではない。サンパル皇国海軍と名乗る軍隊の攻撃だった。

 軍艦2隻だけの攻撃だったが、バーキー王国の治安維持組織の警察機構では守ることもできなかった。軍艦2隻アロル号とメリル号は港湾の沖に停泊し、輸送船1隻が港に乗り付けて、兵が上陸し、あっという間に港湾地帯が占領された。

 

 日本の貨物船が出航した後だったので、貨物船に被害はなかったが、港湾事務所や運送会社に勤めていた人の多くが殺害された。

 そのことが報道されたとき、多くの国民が怒り自衛隊の派遣を叫んだが、憲法を改正しない限り派遣できないことを知っても、憲法改正の議論にはならなかった。

 

 それでも日本は貨物船の安全確保の名目で、護衛艦かが、護衛艦あさぎり、そしてミサイル艇はやぶさまで出動していた。

 

 相浦駐屯地にいた佐川三佐は連絡が入ったことを知り、「何でまた、私が。いい加減にしてくれ。ごねた仕返しか。」と思いながら、連絡の電話を受け取った。

 特進して、同じ駐屯地に勤務することは前例がないのだが、ここを最後の勤務地にしてほしいと強く要望し、昇進返納、早期退官まで口に出してごね勝ちをしたのである。自衛隊も人手不足、やめられては困るのである。

 

 連絡の内容は、水陸機動団を派遣してアルミ港を奪還せよという命であった。

 佐川は自分が出向くわけではないので、ほっとした。水陸機動団を指揮する相原一尉を呼んだ。相原はかつて西方大陸の集落に派遣された使節団を警護する分隊の一員であった。

 

 しばらくして、水陸機動団が乗船した輸送船くにさきが佐世保港を出港した。憲法違反の批判を受けても、政府は、貨物船の護衛ではなく、完全にアルミ港を奪還するつもりである。

 

 ・・・・・・・・・・・

 

 上陸兵長サミーは、港湾に積み上げられている赤褐色の土が気になった。部下に命じて少し袋に詰めて持ち帰るように指示した。

 とにかく、意味不明のものがここにはたくさんある。バカでかいキリンの首のような鉄の梯子(クレーン)、車輪の上に載った鉄の箱(トラック)など、首を傾げるものばかりである。

 略奪した食料は上陸兵が多いので不十分であったが、十分な食料は輸送船で持参している。5日ほど港湾地帯の調査と軍事基地の建設に費やし、北に向かって侵攻を開始した。 

 しかし、それより北へはジャングルが邪魔をして侵攻することができなかった。中に入ってみても、右も左も同じジャングルが続き、迷うだけ。時折見えないところから毒矢が飛んできて行く手を阻む。上陸兵とは言え海軍、サンパル皇国はジャングルを北進するのを諦め、占領したアルミ港にわずかの兵を残し、軍艦2隻輸送艦1隻で海路を進み始めた。

 

 ・・・・・・・・・・・

 

 チャコ提督は軍艦アロル号の艦上で北方の島を睨んでいた。島の沖を西にに向かって進んでいる。アロル号の名称はアロル皇帝の名をつけた最新の蒸気艦で、2つの大きな煙突から黒い煙を吐いて進んでいる。隣を進んでいるメリル号はメリル教皇の名をいただいた蒸気艦である。あとに続く輸送船には上陸兵だけでなく、サンジー教の伝道師も多く乗船していた。

 サンジー教というのはサンパル皇国の国教で、パルコンという神をあがめるサンジーという人の開いた宗教である。その伝説がサンジー教の経典に載っている。

 サンパル皇国の戦いはいつもサンジー教の聖戦で、占領するとサンジー教を伝道し勢力を広げてきたのである。

 

 北方の島に見えるのはジャングルの樹木だけで、村も町もなく停泊する場所もない。チャコ提督は手に持っている赤褐色の土を眺めてため息をついた。この赤褐色の土は、占領した港湾地帯に積み上げられていたものを上陸兵が持って帰ったものだった。必要なものに違いないが、何に必要なのか理解できなかった。

 

 島の西の端にさしかかったころ、チャコ提督は軍艦の周りを飛び回る小さな鉄の羽虫(ドローン)を見つけた。得体のしれない奇妙なものに、嫌な予感を抱いていた。




サンパル皇国とは
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