時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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未知の大陸に上陸した使節団は何を見る?


2話

 数日後、未知の陸地の沖合に停船した護衛艦いずもの甲板で、佐川はもどってくるヘリをまっていた。

 待機しているヘリには使節団の2人が乗っていた。

 

 佐川の隣にいる三木は黒い長方形のリュックを背負っている。

 「あとの自衛官の方は?」

 三木が声をかける。

 「もう、上陸しているはずです。」

 

 もどってきたヘリに2人が乗り込むと、2機のヘリは新天地へ飛び去っていった。

 

 ・・・・・・・・・・・

 

 「わあ、すごい。見渡す限り草原だ。あっ、あの森の向こうに集落が見える。

 何、草原にHの文字が見えてきた。ヘリポートだよね。

 自衛隊はすごい、こんなところにヘリポートができている。」

 

 (うるさい男だ。)佐川はそう思った。

 

 草を刈ってHの文字ができている場所が2か所、それらの場所で、それぞれ自衛官が誘導している。

 残り1人の男は銃を構えてあたりを警戒している。 

 

 その様子を見て、(警護に佐川小隊をあてたのは正解だった。)と三木は思った。

 佐川一等陸尉が警護隊長になったのは、彼が相浦駐屯地に勤務していたからではない。

 詳しく経歴を調べて、三木が選んだ。警護の人選だけは彼にまかされていたのだ。

 

 「あの銃を構えている隊員、カッコいいですね 。誰です。」

 (何がカッコいいだ。)と佐川は思ったが、

 「相原二尉か、部隊の指揮を任せている。」と答えた。

 

 使節団が異界の草原に降り立った。

 西方を見るとずっと草原。空と大地が触れ合う線が、円形に見える。

 遠近の判断ができない距離がすべて等距離に見えるという知覚の常識が、

 実感できる場所である。

 

 北の方向にはすぐ近くに森がある。あの森をぬければ、目的の集落だ。

 

 草刈り機をヘリに積み込もうとしている自衛官を見て、

 「ちょっと、待って。」と三木が止めた。

 そして、背負っていた黒い長方形のリュックのサイドポケットから、

 細いチューブをとりだすと、草刈り機の油タンクに差し込み、

 「これを持ち上げていて」と言って、草むらに横になり、チューブの端を吸い始めた。

 適当なところでそれを止め、もう一つの草刈り機の油タンクに差し込んだ。

 

 「空になった草刈り機はヘリに、この草刈り機は悪いが、集落まで運んで。」

 そう言って、リュックを背負い森に向かって歩き始めた。 

 

 (やはり、只者ではない。)佐川はそう思った。

 理屈では、チューブで簡単に油を移動することができる。でも、理屈と実際とは違う。

 実際にそれをするのは難しいのである。

 (彼は、内庁、背広組なんかではない。)佐川は確信した。 

 

 使節団と警護の7人の上陸部隊は、うっそうと茂る森の中を歩いていた。

 獣道もない森の中だが、迷うことなくまっすぐ北へ進んでいた。

 

 ・・・・・・・・・

 

 佐川は、三木と顔を見合わせた。

 「囲まれているようですね。」

 

 突如、前方の大樹の陰から一人の男が出てきた。木製か、奇妙な面をかぶっている。

 手には槍。先端の金属が輝いている。 

 

 自衛隊員が銃を構えたが、三木はそれを制してその男の前に進み出た。

 (交渉に来たのだ。身振り手振りでも、意思疎通を図らねば。)

 

 そう思った時、仮面の男が口を開いた。

 「どこから来た?何しに来た?」

 

 (えっ、日本語?どうなっているんだ。)誰しもがそう驚いた。

 「我々は日本の国交使節団。交渉に来た。敵意はない。この国は何という国ですか?」と三木。

 

 敵意はないという言葉を理解したのか、男は、

 「国?何だそれは?そんなものはない。」と言いながら、後頭部の紐をほどき、仮面をはずした。 

 

 その顔を見て、全員がもっと驚いた。耳が頭についているのだ。

 顔は日本人とよく似ているが、熊の耳。そう、ツキノワグマと同じ耳をしている。 

 

 「では、村長、でないか、酋長。長老でもないか。とにかく代表の方と話がしたい。」と言って、手をさしだした。

 相手が仮面をはずしたときから、危害を与えるつもりがないことを、三木は悟っていた。

 

 男は戸惑いながらその手をにぎった。

 「案内する、ついてこい。」

 そう言うと、まわりを取り囲んでいた槍を持つ男たちが、

 仮面をつけたまま樹の陰から出てきた。

 

 使節団は熊耳の男の後をついていった。

 先頭を熊耳の男、そのあとを使節団。そして、そのうしろが仮面をつけた男たち。

 

 突然、「ビッグベアだ」と後方の仮面の男が叫ぶ。でかい。体色はヒグマに似ている。

 それが、こちらに向かってやってくる。

 三木はそれを見ると、背中のリュックをおろし、黒い筒のようなものを組み立てる。 

 

 ダダダダダ、ダダダダダ。

 自衛官たちが一斉に射撃する。真っ赤な血が飛び散っているが、倒れない。

 ダダダダダ、ダダダダダ。

 地球での最大種はホッキョクグマだが、それでも、体長2mから2m30。

 この熊もどきは、4m以上あるのだ。

 

 5m近くまでやってきて、ガオーと吠え、後肢で二足直立。前肢の鉤爪は鋭い。

 

 ドカン!

 熊もどきの頭が爆発した。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 「ロケット弾の威力はすさまじいですね。初めて使ったのですが、これほどとは。」

 そう言いながら、三木は使ったロケット砲を分解していた。 

 

 (初めて?まさか。すばやく組み立てて、的確に命中させる。うちの隊員でも無理だ。初めて?嘘ついている。)

 佐川はそう思いながら、今度は三木に恐れを抱いた。 

 

 恐れおののいて青くなっていたのは、熊耳の男だった。

 集落に案内していいのか迷っていたが、決心したのか、「どうぞ、こちらへ」と歩き始めた。




次は集落へ、そこで見るものは?
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