時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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第3章 4

 越智事務官とタケル通訳はトメリア王国に戻り、日本大使館にいた。捕虜の聴取の結果は船艇から日本へ報告済みであった。

 

 渋い顔をした下野大使が、2人のいる部屋に入ってきた。

 「ご苦労様、でも、これからが大変です。お二人は私と一緒に国交使節団としてサンパル皇国に出向いていただきます。」と下野。

 「あなたが出向くと大使館に大使がいなくなるのでは。」と越智。

 「井上事務官に代理をやってもらいます。問題ありません。」

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

 アイロン港に油船YOが停泊し、燃料補給を終えた護衛艦かがに向かって、下野大使らを乗せた小艇が出発していた。

 水陸機動団と捕虜を護衛艦かがに移した輸送艦くにさき、護衛艦あさぎり、ミサイル艇はやぶさは日本へ帰還の予定である。

 国交使節団を護衛艦1隻で送り出したのは、砲艦外交と思われるのを避けたいからであった。でも、護衛艦かが1隻でも十分威圧的である。

 

 アルミ港の沖までは海底地形が調べられているがそれから先は全く不明。小艇で海底地形を調べながら、国交使節団を乗せた護衛艦かがは、ゆっくりと進んで行く。ジュラス港にいる輸送船から発する電波に導かれて、目的地に向かっている。

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

 ジュラス港に停泊している軍艦と輸送船が目視できる位置で、護衛艦かがは錨を降ろした。

 下野大使、越智事務官、通訳のタケルがいる船室に相原一尉が部下6人を連れて入ってきた。

 相原は背広に着替えている。佐川三佐から、交渉の席に同席するために隊員と同じ服装ではマズイと言われていたのだ。

 相原が、「佐川三佐からこれを」と言って盗聴発信機のバンドを下野に渡した。

 下野は苦笑いをしながら、「またですか。」と言って受け取り、腕に巻いた。

 越智とタケルは何のことかわからず、キョトンとしている。

 「では、まいりますか。」と言って相原は部屋を出た。続いて、3人の使節団、6人の隊員が部屋を出る。

 

 ヘリがジュラス港の上空まで飛んでいき、タケルのポルトガル語で大音量の放送。

 「我々は日本の国交使節団。国交と交易のためやってきた。戦意はない。」

 2隻の小艇が使節団と警護隊を乗せてジュラス港へ進んで行った。

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

 チャコ提督は沖にいる痛い目にあった護衛艦を見て、戦えば全滅すると感じていた。彼らを攻撃してはならないと思っていた。

 そして、思った。

(あの国は我が国サンパル皇国よりはるかに強い。あの国の傘下になれば、我が国の制裁から守られる。やがて反逆が知れて、やってくる制裁軍におびえる必要もない。)

 

 チャコ提督は到着した使節団を迎えに行って、港湾の事務所に案内した。隊員は事務所の前で足止めされ、中に入れたのは使節団と相原だった。佐川三佐のアドバイスがきいていた。

 

 部屋には下野大使、タケル通訳、越智事務官、相原一尉が並んで横1列に座り、前には長い机が設けられていた。向かい合ってチャコ提督、サミー上陸兵長が座り、両側に武装した兵が立っていた。

 互いに自己紹介をした後、最初に口を開いたのはチャコであった。チャコは自己紹介で副総領と名乗っていた。サミーが変な顔をしていたが。

 ポルトガル語はタケル通訳が日本語に訳し、大使の日本語もポルトガル語で相手に伝えた。

 

 「外の瓦礫の山を見ていただいたはずですが、御覧の通り、このジュラスの街はサンパル皇国という国から攻撃を受け、守りかねています。国交と言われましても、何もお役に立ちません。」

 その言葉に驚いたのは日本側だけでなく、サミーは唖然としてチャコの顔を見ていた。

 「そんな馬鹿な」と言いかけた相原を制して、下野が口を開いた。

 「この国は何という国で?」

 「国ではありません。ゴントという総領が治めていた街です。」

 「総領?でその方は?お会いできないのですか?」

 「できません。サンパル皇国の攻撃で亡くなりました。」

 サミーは驚きを通り越してあきれていた。自分たちがゴントの一族を殺害したのだ。

 

 「ところで、港にあった軍艦と運搬船はこの街のものですか?」

 「はい、そうです。」

 「大きな船を造る場所、ドッグが見当たらなかったのですが、どこに?」

 「この街は交易で栄えた街です。他国から購入しました。」

 

 この街は漁業で栄えた街、港は漁港であったのだ。軍港にかえたのはサンパル皇国。

 「えっ、他国?どこです?」

 チャコは言葉に詰まった。知ってる国はサンパル皇国しかない。

 「サンパル皇国です。」

 

 下野は初めからチャコの嘘を見抜いていた。そして、この街がすでにサンパル皇国に占領されていたこと、港湾の瓦礫の山が、敗れて帰ってきた罰を避けるための、チャコたちの反逆の跡であることを察していた。

 

 (ずっと騙されていたほうが得策。捕虜の件は言わない方がいい。この街はまだ安定していないようだから、この人に任せておこう。きっと内調の三木さんなら、こうしただろう。)

 下野は内調の三木の顔を思い浮かべていた。

 「で、サンパル皇国はどこにあるのですか?」

 「ずっと東の方です。」

 

 ・・・・・・・・・・・

 

 口約束であったが、ジュラスの港に日本の船の入港と街近辺の調査団の上陸の安全を約束させ、使節団は護衛艦かがに戻っていた。

 

 政府からの指令は、サンパル皇国に出向き、対等な国交と交易の要求であった。

 レアアースにレアメタル。近辺の調査をしているが見つからない。

 米が足りず、西方大陸東岸地区で稲作の試験栽培をしているが、気候のせいか土壌のせいか、うまくいっていない。

 日本は足りないものばかりなのだ。

 

 ・・・・・・・・・・・

 

 西方大陸東岸地区の保護集落では相変わらずゆったりとした時が流れ、港湾地帯や油田地帯では日本からの労働者で溢れ、せわしく時間が過ぎていた。

 陸上自衛隊の東岸地区駐屯地、航空自衛隊の東岸地区基地は、隊員たちの訓練に明け暮れていた。

 

 トメリア王国では、相変わらず奴隷の解放に苦労していたが、徐々に首都や地方の経済活動に活気が出てきた。

 日本大使館は自衛隊の警備をなくし、熊耳の人に武器を持たし警備に雇っていた。これは下野大使の発案であった。

 自衛隊は租借地のアニオン鉱山、アイロン港、アイロン空港の警備にあたっているが、この警備も民間に渡す予定である。

 

 バーキー王国にもモア港湾に日本大使館をおき、ジャングルをぬけてアルミ港とモア港を結ぶ道路の敷設交渉を行っていた。そして二度と港湾が占領されないように、自動小銃などの武器を警備にあたる治安維持部隊に売っていた。アルミ港湾には12式地対艦誘導弾まで配備されていた。




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