時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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第3章 5

 護衛艦かがはサンパル皇国の首都ガントの港の沖に停泊し、ヘリでタケル通訳の声で日本の国交使節団の訪問を伝え、小艇で使節団と警護隊を運んだ。

 

 桟橋に降り立つと武装兵がやってきて、港湾事務所の一室に案内される。警護隊は事務所の前で足止め。いつものとおりであった。

 部屋には軍服を着た初老の男が座っていたが、使節団が入るのを見ると立ち上がり敬礼をして、席に着くよう促した。初老の男はアイン海軍大将だと自己紹介をして、外交官が来るまで待つように言った。

 アインの両側には武装兵が立っていた。長い沈黙の時が流れた。

 

 部屋のドアが開いた。アインが席を立って敬礼。日本の使節団も席を立つ。部下を2人引き連れた男がアインのそばまで行くと、立っていた武力兵が椅子を引く。入ってきた3人が席に着くと、アインは日本の使節団に座るよう促し、部屋から出て行った。

 互いに自己紹介をして、サンパル皇国のミドロ外交官が口を開いた。

 タケルが通訳する。

 「貴国は我が国に何を望む。」

 「国交と交易です。」と下野大使。

 「二ホンとか言ったが、国教は?」

 「ありません。信教は自由です。」

 「ない?自由?それでは困るんだが・・・。」と言って、部下に目配せをした。

 1人の部下が1冊の書物を下野の前に置く。タケルが耳打ちをする。

 「経典です。」

 「それを持ち帰って、パルコンの神の教えを広めるように。そして、公用語はポルトガル語にするように。」

 

 「本は遠慮なくいただきますが、国民への宗教の押しつけは禁じられております。それに、貴国との交渉はポルトガル語でいいですが、国の国語は変えられません。」

 「それでは困ると言っているんだ。我が国はサンジー教を広め、言語を統一することを国策としている。」

 「お互いの違いを認め、国交を結べないんでしょうか。」

 「無理だ。とにかく、こちらの要求を持ち帰り出直しなさい。よき返事を期待している。」

 そう言って、ミドロが席を立つ。部下2人も席を立つ。

 

 「ちょっと、待ってください。我々は貴国の捕虜を連れてきてるんです。」

 「捕虜?」と言ってミドロは席に戻る。

 「どういう事だ?」と問う。

 

 日本が租借しているアルミ港湾を攻撃占領したこと、軍艦2隻、輸送船1隻で侵攻してきたことなどを話した。そして、それらを撃退したことなどを話したとき、突如、ミドロ外交官が大きな声で言った。

 「アロル号とメリル号を撃退したのか!」

 「はい、2隻とも沈没しました。」 

 

 「・・・・・・この者らを拘束せよ!」

 両脇にいた武装兵が日本側の席にやってくる。

 バン。相原が上向いて銃を撃つ。驚いて、武装兵が止まる。

 相原は2人の武装兵に右に、左にと銃を向ける。

 使節団がドアのところまで退いたとき、1人の兵が突っ込んでくる。

 バン。兵が倒れる。

 ダダダダダ。ドアの外で自動小銃の打撃音がする。

 相原の合図で警護隊が入ってきたのだ。

 使節団が部屋を出ると警護隊が周りを囲んだ。

 そして、あたりに銃を向けながら、港湾事務所を出て、桟橋へ向かう。

 

 ・・・・・・・・・・・

 

 小艇で護衛艦かがにもどった下野大使は、政府の方針を受け取る。

 「どうでした?」と相原一尉。

 「とどまれ。攻撃されれば反撃もよし、すこし後退するもよし、援軍を送るだって。」

 「えっ、帰還せよではないんですか?」と橋本艦長。

 「大丈夫なんですか、世論と国会?」と相原。

 「憲法改正、国会で審議中だって。我々の心配することではない。」と下野。

 

 「で、アロル号とメリル号の沈没、全く知らなかったみたいですね。」と相原。

 「そうですか。あれからもう何日も経っているんですよ。どうなってるのでしょう。」と橋本。

 「チャコ副総領でしたっけ。あの人の反逆は確実ということです。」と下野。

 「そうですね。捕虜はこちらに返さない方がいいですね。渡せば拷問を受け殺されますよ。」と相原。

 「でしょうね。捕虜たちには私から説明しましょう。向こうでのトラブルを避けるためにも。通訳よろしく。」と下野。

 ・・・・・・・・・・・・

 

 サンパル皇国の執務室でアロル皇帝がトール宰相に尋ねていた。

 「二ホンという国が訪ねてきたそうだが、どうなった?」

 「ミドロ外交官が、いつものように経典を渡し、パルコンの神の教えを広めるよう要求し、あわせて、公用語はポルトガル語にするように申し付けました。ところが、わが海軍のアロル号とメリル号を沈没させたと言ったので、捕えて詳細を白状させようとしたところ、銃を発砲し逃げ去ったそうです。」

 「で、国へ逃げ帰ったのか。」

 「いえ、沖に停泊したままだそうです。」

 「攻撃はしたのかね。」

 「いえ、海軍は、逃げれば追撃し、来れば反撃すると言ってます。」

 「軍務大臣と海軍大将を呼びたまえ。外務大臣も。」

 

 しばらくして、ミステル外務大臣、アレルテ軍務大臣、アイン海軍大将が執務室に入ってきた。

 「ミステル、すぐに二ホンとやらに宣戦布告文をつくりなさい。」

 「はっ。」

 「アレルテ、なぜ攻撃せぬ?」

 アレルテはアインの顔を見る。

 「アイン海軍大将が相手の力が分からないというから。」

 「相手の力などしれている。すぐに攻撃せよ。」

 「はっ。」「はっ。」

 「そうだ、敵の何人かは救助して取り調べよ。」

 「はっ。」「はっ。」

 

 ・・・・・・・・・・・

 

 サンパル皇国の軍艦が動き出したのを見た橋本艦長は、すぐに偵察ドローンを飛ばした。

 指令室のモニターの前で、相原が言った。

 「ものすごい数ですね。30隻以上いる。どうします?」

 「逃げます。」と橋本。

 「砲弾が足りないのですか?」と下野。

 「十分ありますが、逃げます。」

 「橋本艦長は砲撃苦手なんですね。前も他の船に攻撃を命じたし。」と笑いながら相原。

 橋本も笑いながら答えた。

 「はい、私は防大のときから大の苦手で。教官に叱られてばかりでした。」




サンパル皇国交渉ならず
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