護衛艦かがはゆっくりと逃げる。サンパル皇国の軍艦の方が速く、距離がだんだん縮まる。
ドン、ドン。
サンパル皇国の軍艦の砲撃が始まる。砲弾はかがの後方に落ちる。
ドン、ドン。ドン、ドン。
ドーン。かがの砲撃。サンパル皇国の軍艦の砲弾に命中。
「えっ、ウソ―オ。飛んでくる砲弾に当てた。」と相原。
「砲撃するのは私ではないからね。相手の射程距離も分かったから、距離を取りましょう。」
といった橋本は、通信室から連絡が入り、部屋を出て行った。
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ジュラス港の沖に輸送艦くにさきと護衛艦たかなみが到着した。くにさきからエアクッション艇が出て、ジュラス港に向かっている。
副総領と偽ったチャコ提督は桟橋でサミー上陸兵長に話しかけた。
「とにかく、我々の生きる道は、あの国の傘下に入ること。何があっても敵対するなよ。」
「わかっています。あの国の強さは体験済みですから。ウソがばれても従いましょう。」
桟橋に着いたエアクッション艇から川本外交官と通訳のブラジル大使館職員と3人の自衛隊員が降りてきた。
チャコは5人を港湾事務所に案内し、サミーと2人で対談した。
日本の要求は、海岸の適当な場所に港をつくること、港のそばに空港をつくること、街の周辺の森の地質調査、以上3つの許可とできた港湾地区と空港地域の5年間の租借。費用はすべて日本持ちで、5年後には返却交渉をする。
日本から何を言われても承諾するつもりでいたチャコにとって、何の不満もなかった。
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橋本艦長が指令室へ戻ってきた。
「何だったんですか?」と相原一佐。
「ジュラス港の沖までゆっくり退却。そこに護衛艦たかなみが待機してるって。」と橋本。
「たかなみ?」と下野大使。
「そう、ヘリ搭載、魚雷もSSM(対艦ミサイル)もあるやつ。」と橋本。
「政府は本気ですね。攻撃はそれに任すのでしょう、艦長。」と笑う相原。
「当然です。砲撃は苦手です。」と笑って返す。
護衛艦かがはゆっくりと退却。射程外の距離は縮まらず、サンパル皇国の軍艦も砲撃してこない。
しばらくすると、ドカーン。
たかなみからのミサイルで、サンパル皇国の軍艦が爆発する。
軍艦ガント号で艦隊の指揮をしているトマス司令は驚いた。突如、横を進んでいた艦が爆発したのだ。
(事故ではない、明らかに攻撃された。でも、逃げてる前の敵艦からの攻撃ではない。では、どこから?)
そう思っていると、また、ドカーン。別の艦が爆発する。
トマス司令は見えない敵からの攻撃に、退却の選択肢を考えたが、アイン海軍大将の言葉を思い出した。
(必ず、敵艦を撃沈し、乗組員の何人かを救助し、1隻で連れ帰ること。そして、残りの艦はそのまま二ホンへ侵攻し、宣戦布告文を届けること。そのために、ミドロ外交官が乗っている。)と。
だから、逃げ帰るわけにはいかなかった。
(二ホンがどこにあるかもわからないのに、無茶なことを。)と思いながらも。
ドカーン。また艦が爆発する。
護衛艦たかなみの姿がトマス司令の目に入り、そこから攻撃されていると知る。しかも、逃げる敵艦の向こうにいる。
ドカーン。トマスが(もう退却しかない。)と思っていると、逃げていた敵艦から砲撃が始まる。
「おっ、攻撃しましたね。しかも全て命中。」と相原。
「私じゃないからね。指示はしましたが。 」と橋本。
何もすることができない距離で、あっという間にサンパル皇国の軍艦が10隻近く沈んだので、逃げ始める艦が出てきた。
トマスは30対2でも太刀打ちできないと悟る。
日本は攻撃をやめ、ヘリが飛ぶ。
ポルトガル語で「沈んだ艦の乗組員を救助して引き返せ。攻撃はしない。」と大音量で繰り返した。
トマス司令が救助を命じ、サンパル皇国の軍艦が救助を開始する。そしてしばらくして、退却していった。
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サンパル皇国と日本の30対2の戦いの様子を、チャコとサミーは港湾事務所の屋上からみていた。そして、互いに顔を見合わせ、うなずいた。自分たちの判断が間違っていなかったことを確信した。
護衛艦かがから出た小艇がジュラス港に入った。小艇から降りたのは、下野大使と相原一佐と通訳タケル。 3人は港湾事務所に入ると、タケルの通訳付きでチャコらと会談した。
チャコ提督の嘘は最初から分かっていたこと、捕虜たちは状況の説明からチャコ提督の側につく意思があること、チャコ提督はチャコ総領としてジュラスの街を治めることに日本は干渉しないこと、輸送艦には工事関係者が乗っており、許可のあった工事をすぐ取り掛かることを伝え、捕虜たちを引き渡すから桟橋まで引き取りに来るように言った。会談というよりも言い渡しであった。
この間に、小艇でサミーの部下であった捕虜たちは桟橋に運ばれていた。
まだまだサンパル皇国との戦いが続く