宣戦布告文を受け取った日本政府は、西方大陸東岸地区基地にいる改造Cー2に出動を命じた。サンパル皇国に航空機も、ましてや対空砲もないことを知っていながら、2機の改造Cー2に2機の戦闘機Fー35Bを警護につけて基地を飛び立った。まるで、実戦訓練である。
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またも敗れて帰国したトマス司令は、その一部始終をアイン海軍大将に報告していた。
「領土に侵攻すれば攻撃は当然だ。でも、攻撃しなければ攻撃はないことは事実か。」とアイン。
「はい。でも、ジュラスが日本に占領されたのならわかりますが、都市国家とは。」とトマス。
「うーん、偵察に外交使節を派遣する必要があるな。陛下に話してみよう。」
「その節は私を使節の一員に。」
「考えておこう。で、宣戦布告文を相手に突きつけたのは見事であった。陛下も喜ぶ。」
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ジュラス東空港に2機の改造Cー2と2機の戦闘機Fー35Bが到着していた。相原一尉と一緒に空港に来ていたチャコ総領は初めて見る航空機に驚いていた。
日本語が理解できるようになっているチャコに、相原が説明をするが、全く理解できない。そもそも機械が空を飛ぶことが摩訶不思議なのだ。
空港管理棟の一室に改造Cー2と戦闘機Fー35Bの乗組員たちが大きなテーブルの前に座っていた。その部屋へ相原一尉とチャコ総領が入ると、乗組員たちが一斉に立って敬礼をした。
相原が乗組員たちに席につくように言い、テーブルに写真を広げて言った。
「これはかがの哨戒ヘリから撮った写真です。チャコ総領、軍事基地などを教えて下さい。」
チャコ総領はサンパル皇国の首都ガントの海岸線が鮮明に映っている写真に驚いた。そして、チャコの示す基地、兵舎、軍港などに相原がマークをつけていく。
海岸線部分の写真しか撮っていなかったのは、護衛艦で攻撃するつもりで、航空機の想定をしていなかったからである。それでも、陸軍兵舎まで入っており、ガントの軍事基地がほとんど映っていた。
「これで、目標がわかりましたね。目標に落とせますね。」と相原。
「初めてですから、自信はありません。」と改造Cー2の乗組員の1人。
「救援物資などを落としたことがあるでしょう。」と相原。
「それはパラシュートをつけて。それに少々ずれてもかまわない。」とその乗組員。
「とにかく、訓練です。期待しないでください。」と笑いながら別の乗組員。
「訓練で落とされたんでは、落とされる方はたまりませんね。」と笑いながら相原。
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ミドロ外交官を団長とするサンパル皇国使節団をジュラスに派遣するため、軍艦ガント号が出航していた。交渉内容はサンパル皇国領にもどること、交渉の余地なし、拒否すれば攻撃。宣戦布告文を用意していた。軍艦ガント号の指揮をするためトマス司令も乗船しており、上陸の際には使節団と同行する予定であった。
軍艦ガント号がジュラス東港を目視できるところまで達して、トマス司令が停泊している護衛艦を眺めていると、ヘリが飛んできて、タケルのポルトガル語が大音量で放送される。
「ここはジュラス都市国家の領海である。すぐに引き返せ。さもないと攻撃する。」
トマス司令はすぐに白旗をあげさせ、ヘリから見える位置に看板を掲げさす。
「サンパル皇国の外交使節団が乗船、戦意はない」と掲げている。
ヘリに乗っているタケルはそれを読み、下野大使に連絡。ヘリは去っていった。
(看板を理解したのであろう。領海内でも攻撃がない。)トマスはそう思った。
軍艦ガント号がゆっくりとジュラス東港の沖を航行していく。何もなかったところにできているおおきな港や意味不明の施設、理解不能の物体を眺めたトマスは、人を寄せ付けない恐怖を感じ、とてもその港に入港しようとは思わなかった。
軍艦ガント号はかつてトマスが入港したことのあるジュラス港へと航行し、港に入った。港にはトマスの見覚えのある軍艦と輸送船が停泊している。
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サンパル皇国使節団はミドロ外交官と外務省の部下3人、護衛の武装兵5人とトマス司令の10人。
桟橋に降り立つと、思わずトマスが反射的に敬礼。出迎えにチャコ提督がいたからだ。
「提督、どうして?」
それには答えず、「どうぞこちらへ」とチャコは使節団を港湾事務所に案内した。
「申し訳ないが、警護の方はこちらで休んでください。安全は保証します。」と港湾事務所の別棟を指さした。チャコは職員に護衛の武装兵5人を案内するよう指示した。
使節団とトマスは港湾事務所の中に入り、応接室とポルトガル語で書かれた部屋に案内された。
「そこで、しばらくお待ちください。会議室の準備が終わっているか見てきます。」
トマスは港湾事務所が以前やって来た時のままであることを確認していた。掲示物もすべてポルトガル語である。サンパル皇国の領土の時と同じである。
しばらくしてチャコが応接室にもどり、「どうぞ、こちらへ。」と使節団を会議室へ案内した。
会議室の入り口で待っていたサミーを見て「おまえは、上陸兵長!」とトマス。
「はい。」とサミーはにっこり笑って、会議室のドアを開ける。
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使節団とトマスの5人とジュラス都市国家側のチャコとサミーの2人が向かい合って座っている。
自己紹介もしていないのに、最初にトマスが口を開いた。
「どういうことなのですか?チャコ提督。説明してください。」
「提督ではありません。ジュラス都市国家総領です。ここはサンパル皇国領ではありません。」
「そういうことではなく、どうしてあなたがこういうことになったのか教えて欲しいのです。」
「話せば長くなります。それにそれは交渉と何の関係もないので、説明しません。」
「ジュラス都市国家ですか、サンパル皇国領に戻る気は?」とミドロ外交官。
「ありません。」とチャコ。
「我が国が攻撃しますよ。」
「・・・・・・・・・」
「サンパル皇国は状況を理解していないようですね。」とサミーが口を開く。
「どういうことかね。」とミドロ。
「南の港を見たでしょう。攻撃などできません。攻撃したければどうぞ。」とサミー。
「とにかく、サンパル皇国領に戻ることを拒否します。」とチャコ。そして続けて、
「貴国と同じ言語、同じ文化の都市国家なので、仲良く交流、交易できることを望んでいます。」
「それはできない。」ミドロはそう言って、宣戦布告文を取り出し、部下にチャコに渡すよう指示した。
チャコはそれを受け取って読むと、「仕方がないですね。後悔しますよ。」と言って、サミーに合図。
サミーが立ち上がり「どうぞ、おひきとりを」と言って会議室のドアを開けた。
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下野大使と相原一尉と通訳タケルは港湾事務所の会議室の隣の部屋にいた。
「大丈夫でしょうか、彼らに任せて。交渉に参加した方が。」と相原。
「大丈夫。それに日本との交渉ではない。」と下野。
「もとは同じ仲間ですよ。タケルさんがいるから、盗聴でも仕掛けておいた方が。」
「必要ないですよ。彼らは現実を把握している。利口ですよ。」
そんな話をしながら、隣の交渉が終わるのを待っていると、チャコが入ってきた。
「どうでした。」と下野。
「宣戦布告文をいただきました。」とそれを見せながら笑った。
下野は「失礼。」と言って、席を離れ、受話器でどこかと連絡をとってる。
相原は下野が交渉結果を報告しているのだと思った。
「相原さん、誘導弾と発射装置、対舟艇とか対戦車とかそういったもの、ありましたよね。」と下野。
「79式ですか。2組持ってきてますが。」と相原
「それ、使ってないでしょう。2組ともジュラス都市国家に寄贈してください。」
「そんなことできません。そんな権限ありません。」
「でしょうね。これで、佐川さんに連絡してみてください。」と言って下野は、衛星通信で佐川とつながっている受話器を相原に渡した。
「はい・・・・はい・・・・・はい・・・・。」
受話器を下野に返して、相原が言った。
「防衛省から連絡があって、79式を渡すようにって。どんな手を使った。」
「私は使節団の全権大使ですよ。手はいっぱいあります。」と下野は笑った。
「ということで、チャコさん、誘導弾と発射装置2組お譲りします。使用法を水陸機動団が教えてくれますので、後ほど、物覚えのいい砲撃兵を4人ほど手配してください。」
ジュラス港の警護に79式対舟艇対戦車誘導弾及び発射装置が加わった。
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トマス司令はアイン海軍大将にジュラス都市国家の様子を報告していた。
「チャコ提督が国家代表の総領で、サミー上陸兵長が補佐官というわけかね。」
「はい、それに職員には見たことのある海軍の兵たちがたくさんいました。」
「反逆、確実に反逆罪だな。制裁の兵を送る必要がある。」
「はい、でも、二ホンがついていますよ。」
「どういうことだ。」
「ジュラスの街の東のはずれに、大きな港ができていて、そこに二ホンの艦が停泊していました。」
「そうか、やっかいだな。」
「それから、ジュラス都市国家の布教に我慢がならないと言って、亡命してきた伝道師がいました。亡命といっても元々我が国の伝道師ですが。3人います。」
「そうか。貴重な情報源だ。しっかり取り調べよ。ところで、アレルテ軍務大臣から聞いた話だが、軍備局で射程距離が20パーどころか50パー伸びた大砲が完成、量産に入るそうだ。工場を新たな場所につくったそうだ。すぐにガント号の砲はすべてそれに替える。あとは順次替えていく。」
続けてアインは言う。
「取り外した古い砲は車両に取り付け、陸軍の自走砲にするという。それから、造船局では造船所を新たにつくり、新しい軍艦にはすべて新しい砲にするそうだ。j
「そうですか。とりあえずはジュラスの攻撃ですね。」とトマス。
「そうだ。そして戦いには相手の技術をさぐるため、軍備局と造船局の技師を連れて行くことになる。 これは陛下の命令だ。」
サンパル皇国との戦い、どうなる