相原一尉たち水陸機動団が乗船した護衛艦かがは、再びジュラス東港に向かって航行していた。
サンパル皇国の軍事施設を破壊したはずなのに、ジュラス港とアルミ港が攻撃されたという連絡を受けて、再度、調査のためサンパル皇国に出向くよう指示を受けていた。
途中でアイロン港に立ち寄り、トメリア王国の日本大使下野を乗せた。下野はもうポルトガル語が話せるようになっており、通訳の必要がないので、通訳タケルはいない。ブラジル大使館の職員タケルはスペイン語も話せるので、今度は通訳として護衛艦いずもに派遣されていたのだ。
ジュラス東港に到着した護衛艦かがから下船したのは、相原一尉とその部下数人だけだった。桟橋で待っていたのはジュラス都市国家補佐官サミーであった。相原はサミーと握手をかわし、サミーが用意した軽トラックの荷台に乗り込んだ。軽トラックはもちろん日本製である。
ジュラス港湾の被害を目のあたりにした相原は、戦いが壮烈であったことを理解した。
「軍艦は沈没したんですよね。よくぞ、防衛できましたね。」
「チャコ総領の指示です。上陸兵のいる輸送船をたたけと。」
「そうですか、水兵さんは軍艦では強いが、陸に上がると弱いですからね。」
サンパル皇国が陸路で侵攻してきた場所に案内された相原は、部下に言った。
「この道、戦車通れるよな。」
「はい、大丈夫です。いけます。」
「あとで、通信係に言っといて。戦車などの車両をジュラスに送れと連絡するように。」
「はい、サンパル皇国のつくった道を利用するのですね。」
「そうだ。いずれ、そうなるだろう。船に帰ろう。」
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アイン海軍大将は新たな海軍基地で、トマス提督とストル指令に爆弾ボートの話をした。
「何を言ってるんですか。そんなことできるわけないでしょう。」とトマス。
「それ以外に敵を倒す方法があるかね。」とアイン。
「兵を、民を守るために戦っているんです。パルコンや国のためではない。反対です。」とトマス。
「ボートもすでにできている。これは国の方針で、もう動きだしているのだ。」とアイン。
「他に方法がないのなら、志願者を募ってみましょう。」とストル。
「何を馬鹿なことを言い出すのだ、そんなこと許さぬ。」とトマス。
「トマス、これは陛下の命令だ。」とアイン。
「どんな処罰でも受けます。私はそんな命令は出せません。」とトマス。
ストルが部下たちに爆弾ボートの話をして、それを操縦して突進する兵を募った。攻撃に成功しても失敗しても必ず死ぬ片道切符であることも説明した。残された家族に支払う報酬額も提示した。
その結果、志願兵ができているボートの数以上いた。みんな、国もためでも家族のためでもなく、パルコンの神のためであると言った。
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護衛艦いずもでは、長い船旅にうんざりしながら、渡辺艦長と三木が喋っていた。
「国交使節団の団長は川本外交官ですね、どんな人です。」と渡辺。
「よく知らないですが、英語とドイツ語とフランス語が喋れる人みたいです。それで選んだと聞いています。私のハッタレ言語とは違います。」と言って三木は笑った。
「そんな人なのに通訳がおりましたよね。」
「はい、川本外交官は、ポルトガル語はダメなので、以前、ジュラス都市国家に出向いた時も通訳をつけていました。だから、ブラジル大使館のタケルさんを同行させているのです。彼は、ポルトガル語だけでなくスペイン語も達者だそうです。とにかく、相手の言語が分からないですからね。中国語と韓国語、その他も私がカバー、」と言ってまた笑った。
「使節団の警護の方、日野一尉でしたね。佐川さんは検討もしなかったのですね。すれば退職したことが分かるはず。」
「あは、お見通しですね。佐川さんは偉くなってて、名簿に載っていませんでした。日野さんは旭川駐屯地の第2特科連隊の方です。」
「このいずもを選んだのもあなた?」
「まさか、私ができるのは警護隊長の人選だけです。」
以前の西方大陸への船旅は、未知の大陸とは言え、どこにあるのか分かっていた。しかし、今度の船旅は、場所も分からないのである。目的の国は、違う方向にあるのかもしれない。このまま、東に進んでも到着するかどうか分からない、そんな不安な旅であった。
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一方ジュラス東港では、相原一尉たちがもどり護衛艦かがに乗り込むと、サンパル皇国に向けて出港した。
「どうでした、ジュラスの街は?」と下野大使。
「街は被害が少なかったが、港湾地帯がガタガタで、立て直すのは大変。」と相原。
「隊員から戦車や車両をジュラスにおくるよう要望してくれと言われて、通信室へ連れていかれたが、どういうことです?」と下野。
「すみません。ジュラスからサンパル皇国に通じる道を見つけましてね。いずれ、役に立つだろうと思いまして。」
「そうですか。あなたの部下もよく知っていますね。私を利用すれば、事が運ぶと。連絡しときましたよ。」と笑いながら言った。
「ありがとうございます。」
「こういうことですか。下野大使が乗艦しているわけが分かりました。」と橋本艦長。
「えっ、どういうこと?」と下野。
「今回の目的はサンパル皇国の偵察、それとジュラス都市国家の警護。外交目的ではありません。それなのに、外交官がいる。水陸機動団は分かりますよ。でも、外交官は分からない。不思議に思っていたのです。」と橋本。
「戦車や車両をジュラスにおくるよう要望するために、私を派遣?そんな馬鹿な。」と下野。
「よくわかりませんね。とにかく、任務を果たして帰りましょう。」と相原。
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サンパル皇国の首都ガントの港が目視できる位置で、護衛艦かがから哨戒ヘリが飛び立った。
しばらく、橋本艦長はガントの港の方向を監視していたが、軍艦の動く気配もない。
今回は何事もなく任務が果たせそうと思っていた橋本は、ガントの港ではなく、はるか東方に多数の船を見つける。あわてて、指令室へ戻る。偵察ドローンが飛び、モニターに映像が映る。小さなボートだ。しかも、30隻ほど。
「まずい。哨戒ヘリはまだか。退却の用意。機関砲攻撃の用意。」そう言って、相原に、
「輸送ヘリを2機出します。それに載って、銃撃してください。自爆ボートです。哨戒ヘリが戻ったら、戻ってください。逃げます。」
「自爆ボート!了解。」そう言って相原は指令室から出て行った。
かがから機関砲が火を噴く。バババババ。バババババ。
ボートには弾薬が載っている。当たればドカーン。
ヘリから銃撃。ダダダダダ。ダダダダダ。ドカーン。ドカーン。
バババババ。バババババ。ドカーン。ドカーン。
ダダダダダ。ダダダダダ。ドカーン。ドカーン。
哨戒ヘリが戻ってくる。輸送ヘリ2機も戻る。護衛艦かがが退却し始める。
ドカーン。ボートが衝突。かがが揺れる。
「航行に問題なし、全力で退却。機関砲は攻撃継続。」
バババババ。バババババ。ドカーン。ドカーン。
バババババ。バババババ。ドカーン。ドカーン。
ドカーン。また衝突。また揺れる。
大きな護衛艦かがが逃げる。小さなボートが集団で追う。まるで、逃げる象をハイエナが集団で襲っているようだ。逃げても逃げても追ってくる。時々衝突してかがを揺らす。
(まだ、半数以上もボートが残っている。このままだと危ない。)橋本がそう思っていると、
ドカーン。当たってもいないのにボートが爆発。
ドカーン。ドカーン。ドカーン。ドカーン。
ボートはもう追ってこない。ドカーン。ドカーン。ドカーン。ドカーン。
遠くで自爆が続く。ドカーン。ドカーン。ドカーン。ドカーン。
(燃料が切れたら爆発か。酷いことを。)橋本は爆発の続く海に手を合わせた。
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サンパル皇国の海軍基地で、アイン海軍大将、トマス提督、ストル指令、それにアレルテ軍務大臣まで参加して議論している。
「あんなことをして、みんな無駄死にだ。」とトマス。
「無駄死にではありません。敵艦を撃退させました。」とストル。
「あんなのは撃退ではない。ちょっと退いただけだ。」と、批判するトマス。
「撃退です。もう恐れて来ません。」と、ムスッとしてストル。
アインはメリル教皇の言ったことを思い出していた。
(古の民も、突進して自爆するサンパル人を見て、退却したのかも)と思った。
「わしも、あの艦は来ないと思うよ。それより、気になるのは大きな鉄の羽虫(ヘリ)。」とアイン。
「以前あれが来た後、基地や兵舎が攻撃された。場所を探っているんだ。」とアレルテ。
「わしもそう思う。造船所、兵器工場など、場所を変える必要がある。大臣手配を。」とアイン。