護衛艦かがは傷だらけで、ジュラス東港に停泊していた。
下船した相原は哨戒ヘリが撮影したガントの街の写真を持って、ジュラス東空港の空港管理棟の大きなテーブルのある部屋にいた。その部屋にはチャコ総領もいた。
「また、この写真の軍事施設を教えて下さい。」と相原。
「サンパル皇国を去って、一度も行ってないのだから、分かりません。まして、新しいところなんて。」と言いながら、写真を見るチャコ。
そして、写真の一点を指さし、
「ここ、海岸にあるこの建物、こんなものなかった。これ造船所ですね。この隣にある建物もなかった。」と言った。
相原がその場所をマークする。
「このぐらいですか。前の写真と見比べた方が、正確に分かりますよ。でも、この写真、同じようにして撮ったものでしょう。サンパル皇国の海軍大将アインは優秀です。2度目は通用しない。上司だったのでよく分かります。きっと、場所を変えてると思いますよ。」
「そうですか。そのことも報告しときましょう。ところで、サンパル皇国が陸路で侵攻してきたあの道、警戒を厳重にした方がいいですよ。」
「どういうことですか。」
相原は自爆ボートの件を説明すると、チャコは「トマスがそんなことを許すはずがない。」と言って黙り込んだ。
「陸軍でも考えられますから、十分警戒を。要は街に近づけない、はやめに叩くことです。」
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東方海では、護衛艦いずもは水平線しか見えない海を東へ、東へと航行していた。
すると、ブオーン、ブオーンと大きな音をたてながら飛行機がやってきて、艦の上を旋回すると東へ去っていった。
「プロペラ機ですね。目的地も近い。」と三木。
「そうですね。戦闘機です。銃口がありました。交渉ができないと、厳しいですね。」と渡辺艦長。
「この艦、ミサイル防御装置ですか、そんなものがあるのでしょう。」
「ありますが、ミサイルは飛んでこないでしょう。あの飛行機ですから。」
「いえいえ、戦闘機をミサイルに見立てて撃墜するのですよ。」
「あははは、面白いことを考える。無理です。」
しばらくすると、潜水艦がいると報告がくる。
「潜水艦ですか。ヤバくないですか。」と三木。
「魚雷でもくると危ないですね。」といって笑った。
艦には魚雷防御装置もあることを三木は知らない。
やがて、巡視艇であろう、白い船が近づいてきて、大音量で、
「C'est Liberte. Qu'est-ce que tu fais ici?」
三木には何を言っているのか分からない。
すると、いずもから、「Nous sommes Nihon,nous sommes venus pour negocier.」と返答がある。
川本外交官のフランス語である。
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ジュラス東港では、傷だらけの護衛艦かがの修理に帰れるものと思っていた橋本艦長と乗組員は、政府の決定にショックを受けていた。ジュラス東港にとどまれという指示である。そして、日本からかがの修理ができるドッグを建設するための資材や人が送られてくる。政府はサンパル皇国との戦いが長引くと予想して、ジュラス東港に修繕ドッグの建設を決定したのである。表向きは。
実は、傷だらけの護衛艦かがが日本に戻ると、人の目に留まり、ただでさえ反戦論調の多いマスコミが騒ぎ立てることを恐れたのである。
とにかく、橋本艦長と乗組員は、修繕ドッグが完成するまで、そして護衛艦かがの修理が終わるまで、日本に帰れないのである。下野大使と水陸機動団がやってくる船で帰っても。
ジュラスとサンパル皇国とを結ぶ道路に防御の壁を造ろうとしていたのを、相原は止めた。戦車が通れなくなるからだ。壁を造らないと防衛できないというチャコの主張に、道以外の所から侵入できるから無意味だと反対したのだ。
結局、街はずれから1キロ先の道路の両脇に監視と狙撃ができる建物を建て、道を開けて周りに壁を築くことになった。
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東方海では、白い巡視艇のあとを護衛艦いずもがついて行く。やがて、軍艦が数隻停泊している港が見えると、いずもは停船して、小艇で港に向かった。三木が桟橋に降りると、武装兵がやってきて、川本外交官と何か話している。日野一尉はその武装兵を注意深く眺めている。
話を終えた川本は、「艦に戻ります。」といって、その武装兵と一緒に小艇に乗り込んだ。三木らは訳も分からないまま、川本に続いた。
(言葉が分からないということは、状況も分からないということか。)三木は自嘲気味に心の中で呟いた。
小艇に乗り込んだ三木は、川本に尋ねた。
「どういうことですか?」
「交渉は首都でやってくれということ、ここは首都でないそうだ。」
「そうですか。港しか見なかったが、大きな街の港のようでしたが。」
「三木さん、さすがですね。あそこは元首都。詳しいことは後で。とにかく、首都へ案内してくれるそうですから。」と言って、川本は見知らぬ武装兵と話始めた。
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護衛艦いずもに戻った三木は、日野に尋ねた。
「乗り込んできたあの兵、どう思う?」
「只者ではありませんね。敵の中に1人ですよ。私には無理です。」と日野。
「詳しいことは川本さんに聞いてみないと分からないが、相当な自信だよ。」
「持ってる武器を見ましたが、連発銃。兵の武器としては時代遅れ。」
「そうですね、国に対する自信かもしれません。」と三木。
護衛艦いずもは白い巡視艇に導かれて、未知なる国の首都に向かう。
やがて、河口にたどり着く。
「わあ、すごい。戦艦ですよ。ロマンですよ。」と三木。
「日本は戦艦を造らないのですか。日野さん。」とはしゃぐ三木。
(私に聞かれても。この人には、ついていけない。)日野はそう思ったが、黙って苦笑い。
川本がやってきて、「ここからは小艇で川を上るそうですよ。」と言った。
「川を上る?」と三木が聞き返すと、
「そう、首都はこの川のずっと上流にあるそうです。」と答えた。