「陛下、宣戦布告を撤回してください。それさえしていただければ、日本は攻撃しません。国交はそちらがその気になった時でかまいません。」と下野。
アロル皇帝は何も言わない。
「返答は明日でいいです。陸軍が帰るのを待っているのでしょう。帰ってからでいいですよ。よく相談をして。返答は文書で、港湾事務所に届けてください。返答のない場合、撤回をしていただけない場合は、総攻撃をします。もう私はここへは来ません。では。」
相原はポルトガル語がサッパリで、下野が何を言っているか分からない。下野が日本語で「帰ります。」と言った時も、なぜ帰るのか分からなかった。相原の質問がシツコかったので、下野は会話の一部始終を説明した。
下野を載せた輸送防護車は、港まで戻り、桟橋から下野がボートに乗ろうとすると、相原が声をかけた。
「大使はもう出向いてこなくていいですよ。返事はここで私が受け取ります。」
「ポルトガル語、読めないでしょう。また、出向いてきます。」
「大丈夫です。チャコ総領に読んでもらいますから。」
「そうですか、でも出向いてきます。私の仕事ですから。」
そういうと、下野はボートに乗り込んだ。
ナナヨン戦車もトラックも港湾地帯まで退却し、隊員たちは食事の準備に取り掛かり、明日に備えることになった。
ジュラス東空港には2機の改造Cー2と2機の戦闘機Fー35Bが待機していた。
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翌日、下野は港湾事務所でアイン海軍大将とトマス提督と会っていた。
「ダメでしたか。仕方がないですね。アセス城ですか、あの城を攻撃します。」
「そんなことを、無理です。まもなく、陸軍がこちらに攻めてきます。」
「大丈夫です。それより、城に帰って、皆に城から出て避難するように言って下さい。アロル皇帝とトール宰相の避難場所はつかんでおいてくださいね。攻撃が終われば拘束しますので。あなた方はここへ避難してください。ここは攻撃しません。4時間後に攻撃が始まります。急いでください。」
アインとトマスが城へ引き返してから、しばらくすると、マルト司令が率いる陸軍がやってきた。3台の自走砲と歩兵200、進行は遅い。ナガア地方から帰ったばかり、疲れ果てて士気は低い。下野はすでに護衛艦たかなみに帰っていた。
ドン、ドン。自走砲からの攻撃が始まる。
ドカーン、ドカーン。ナナヨン戦車の105mm戦車砲の砲撃で、3台の自走砲が爆発する。
3連発の銃剣をもって突進してくる兵に向かって、ダダダダダ。機関銃が火を噴く。半数が倒れマルト司令も倒れると、残りの半数は逃げ出した。
たった2台の戦車、その圧倒的な強さにチャコ総領は驚愕していた。トラックにいる人たちは何もしていない。そして、もっと驚くべきことが、その3時間後に起こった。
ドカドカドカドカーン。
改造Cー2の爆撃によって、アセス城が爆発する。静寂が戻ったときには、アセス城は跡かたもなかった。
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拘束されたアロル皇帝とトール宰相は、護衛艦たかなみの船室にいた。その船室にアイン海軍大将とトマス提督もついて来ていた。
「宣戦布告を撤回する。」とアロル皇帝。
「結構です。これを見てください。」と下野大使が要求文を見せる。
それを読んだアロル皇帝の顔が見る見るうちに青くなる。
皇帝から渡された要求文を読んだトール宰相が言った。
「こんなことは承服できぬ。」
「できなくても、してもらいます。要望ではなく要求です。トール宰相の手腕、期待してます。皇帝は日本を見学、いいですね。」と下野。
ジュラス都市国家の独立、ナガア地方の独立、スリム地方の独立を認めること、ガント港湾地帯を5年間の日本の租借地とすること、国内の地質調査と発掘を認めることなど、占領こそしないが、敗戦国に求める要求文であった。
要求の詳細を下野から聞いた相原は、
「昨日の今日、昨夜一晩で要求文を作成したのですか?」と尋ねた。
「いえいえ、要求文は日本から持ってきたものですよ。」と言って片目をつぶった。
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戦艦2隻、軍艦2隻、輸送船1隻の艦隊でやってきたリベルテ国は、南鳥島に上陸、占領していた。
日本はその島から撤退していて、戦うことなく上陸したリベルテ国のマイト中尉は首を傾げていた。
見たこともない機材が並ぶ建物、整備された滑走路。部下たちが破壊しようとしていたのを止め、とんでもない国を相手にしていることを感じていた。
部下たちは簡単に占領できたから、次の島を攻略しようと士気も高かったが、マイトはいやな予感がして、南鳥島から出ようとはしなかった。部下には、食料などが届くまでは待たないと、侵攻しても食料切れになると説明したが、部下たちは、食料など現地調達すればいいと主張するばかりだった。
「どうしたのかね。」
その声に振り返ったマイトは、敬礼をして、「どうしてここに?」と言った。
そこにいたのは、艦隊の指揮をしているゲイン少佐であった。
「いや、いつまでたっても戻ってこないから、様子を見に来たのだよ。」
「少佐、ちょっと、一緒に来てください。」
マイトはゲインを見たこともない機材が並ぶ建物へ案内する。建物の中に入ったゲインは、「これは。」と言って顔を曇らせる。
そして「マイト君、我々は今まで、一方的な勝利の戦いしか、してこなかった。兵の練度ではない。圧倒的な兵器の差でだ。今度はそうはいかないかも。いや、今までと逆になる可能性もある。」
「少佐、私もそう思います。侵攻は見合わせた方が。」
「そうもいかないのだよ。オイド外交官が司令室へやってきて、侵攻しろと矢の催促、それで、ここへきたのだよ。そうそう、待望の航空母艦が完成し、戦闘機を載せて、こちらに向かっているそうだ。それを待って、侵攻しよう。」
と、そのとき、沖に停泊している戦艦や軍艦に水柱が上がる。
バカーーン。バカーーン。
戦艦や軍艦が爆発する。
ドカーン、ドカーン。
潜水艦うずしおからの魚雷と護衛艦まやからの対艦ミサイルの攻撃だった。戦艦2隻と軍艦2隻が傾いていく。
上空にヘリが飛んできて、大音量のフランス語で、
「上陸兵は、ただちに引き返せ。2時間後に総攻撃をする。ボート、輸送船は攻撃しない。乗組員を救助して引き返せ。繰り返す。上陸兵は、ただちに引き返せ。2時間後に総攻撃をする。ボート、輸送船は攻撃しない。乗組員を救助して引き返せ。」
ゲイン少佐とマイト中尉は顔を見合わせて頷いた。
マイト中尉が叫ぶ。「退却、全員退却、ボートに乗れ!」
「少佐もはやく。」「わしは最後でいい。お前こそはやく。」
「私はこの隊の指揮をする任務があります。最後にします。」
「じゃあ、2人で最後だ。」
数隻のボートで上陸兵が輸送船に帰る。途中で沈んだ戦艦や軍艦の泳いでいる乗組員を助けながら。
輸送船からもボートが出て救助している。引き返してきたボートに、自分たちが最後であることを確認して、ゲイン少佐とマイト中尉が乗り込む。途中、浮遊物にすがりついているオイド外交官を見つける。
「無視しよう。」とゲイン。「それはいけません。」とマイト。
「本心だが、冗談だよ。」と笑いながらゲイン。
オイド外交官を救助して輸送船に向かっていると、東方に航空母艦がやってくるのが見えた。
ゲインは、ボートを操縦している兵に、「あちらに見える艦に向かってくれ」と指示。