航空母艦には4機の戦闘機が載っていた。
「こんなに早く、よく出航できましたね。」とゲイン大佐。
「命令ですからね。」と航空母艦のヘリ―艦長。
「そういうことではなく、離着陸の訓練も必要でしょうに。」とゲイン。
「飛行機乗りを舐めないでください。」口をはさんだのは若い航空隊長。
「あはは、失礼。ところで、艦長、すぐに退却してください。」
「退却?命令違反ですよ。」
「責任は私がとる。とにかく、退却してください。」
「何を馬鹿なことを言っている。」次に口をはさんだのはオイド外交官。
「こちらには戦闘機がある。敵のあの艦を攻撃しろ。」
海に放り出されたのに威勢のいいオイド。
「攻撃か退却かを決めるのは私です。外交官様」と言って、ゲインが「退却、これは命令だ。」と叫んだ。
「申し訳ないが、この艦は少佐の艦隊ではありません。私は攻撃の出航命令に従うだけです。隊長、攻撃の準備を。準備出来次第、攻撃してください。」
航空隊長は艦長に敬礼をして、走っていった。
航空母艦から戦闘機が次々と離陸していく。そして、護衛艦まやに向かって飛んで行った。
戦闘機がまやに近づくと次々と爆発していく。対空ミサイルで攻撃されたのだ。
それを見たヘリ―艦長は青くなってゲイン少佐の命に従った。
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ニコルに占領地に連れていかれた三木は、そこでの情報の収穫はなかったが、ニコルの正体が見えてきた。
最初、1人で二ホンの船に乗り込んだのは二ホンを探るため、自分と同じ諜報員かなと思ったが、自国で武装兵に変装は無理な気がしていた。軍隊での階級は分からないが、彼は宣伝部隊の隊員なのだ。宣伝部隊とは占領した地域で自国の都合がいいように住民を洗脳する役割をもっている部隊である。そんな部隊の隊員で、三木の監視役もしているところをみると、相当なやり手であろう。
三木は片言ではあるがフランス語が話せるようになり、酒場で働くようになった。三木が破壊工作をしていないと判断したニコルは、監視の手を緩め、1人で占領地へ行くことが多くなった。最近、東方を占領したので、そちらへ行ったきり帰らない日が何日もあった。
酒場は情報の巣である。ビールを運びながら聞き耳を立てる。理解できる片言の単語で内容を推測する。今まで長い間やってきた仕事だ。でも、日仏辞書は欠かせない。
三木はアパートの部屋で、今日も、1日の情報を整理する。
(秘密警察、通常の警察ではない。反戦主義者を取り締まるところみたい。どこの国でも反戦を唱える者はいるものだ。どこを探しても反政府の影さえ見えなかったのは、徹底的に取り締まっているからだろう。
軍隊への期待も志願も多いな。役所もマスコミも勝ち戦しか伝えない、被害ゼロ。戦争で被害ゼロなんてあり得ないのだが。
この国の景気の良さは軍需景気か。軍需景気は戦っていない国が享受するものというのが鉄則だが、この景気を持続するには侵略し続ける以外に方法はない。日本がターゲットになるのは当然か。
ここの暦も西方大陸東岸地区の集落、トメリア王国などと同じ。この惑星はどこも同じ暦なのか。498年。転移してからもう3年たった。
この国も占領地も、会った外交官のように浅黒い顔の人が多いな。浅黒い顔でないニコルが例外だ。以前、潜入したトメリア王国の人たちと似ている。何か、意味があるのだろうか。
元スパン帝国の行商人の話によると、このリベルテ国のずっと南にロマスクという帝国があるみたい。高い山がさえぎってリベルテ国からはいけないが、元スパン帝国からはいけるそうだ。そして、そのロマスク帝国にスパン帝国の皇太子などが逃げ込んでいて、リベルテ国と戦争中だという。その国に行くことも考えないと。
この国の言語はフランス語、スパン帝国もフランス語、おそらくロマスクもフランス語だろう。苦手で、まだよく分からないが。でも、不思議だな。言葉というものは地域によって違うもののはずだ。まして、国が違えばなおさら。民族は同じか。同じ民族で対立することはよくあることだ。
外見からすれば、リベルテ人もスパン人もトメリア人もバーキー人もみな同じ。見ていないが、ロマスク人もサンパル人も同じだろう。地球では外見の違う人種がいろいろいたのに。)
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カンナ川河口近くにあるトイヤ港の港湾地帯に、リベルテ国の海軍基地がある。その建物の1室で、ゲイン少佐とヘリ―艦長は、レアル大佐に戦いの報告をしていた。
「2隻の戦艦と2隻の軍艦がなすすべもなく沈んだというのかね。」とレアル。
「はい、1つはわが軍にもある潜水艦による魚雷攻撃かと、もう1つは砲弾のようなものが敵艦から飛んできて、でも砲撃にしてはあまりにも遠すぎて。とにかく、兵器が違いすぎる。」とゲイン。
「爆撃機4機とも撃墜したわけは?」
「分かりません。敵艦に近づくと爆発して。砲撃かと思われます。」とヘリ―。
「飛んでいる航空機に当てたというわけかね。」
「そうとしか思えません。」
ゲイン少佐もヘリ―艦長も、そしてレアル大佐もミサイルや誘導弾を知らない。
「機体は造ればいいが、優秀なパイロットは痛いな。離着陸の訓練からやらないといけない。」
「申し訳ありません。」
「とにかく、二ホンとの戦争は危険です。やめるように言って下さい。」とゲイン少佐。
「それは、無理だ。政界も財界も、マスコミまでもが二ホン占領へ動き出している。ロマスク帝国との戦争が終われば、二ホン侵攻が本格化する。」
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ロマスク帝国との戦争が終わるまで二ホンは待ってはくれなかった。元スパン帝国の都マドラの沖合に、護衛艦いずも、護衛艦まや、そして、輸送艦しもきたが現れ、停泊していた。
リベルテ国はマドラの港の前に軍艦を並べる。1隻2隻……8隻。距離はリベルテ国の軍艦の砲の射程距離かどうかは分からないが、日本の護衛艦の射程距離内であった。
護衛艦いずもから、三木に連絡が入る。
「三木さん、生きてましたか。」外交官川本であった。
「まあ、何とか。またやって来たのですね。」
「はい、三木さんに情報をお伝えしようと思いましてね。もちろん、それだけではないですけど。」
「情報?」「はい、実はリベルテ国との戦いが避けられなくなって、どうしても、ここと日本との通信が必要ということで、偵察衛星が後回しになって、通信衛星が打ち上げられたのです。ここと日本を結ぶための。もう、情報は直接日本へ送れますから、送ってください。その情報によって、こちらにも、そちらにも指示があると思います。では、また。」
日本政府はこの惑星の全容を知るために偵察衛星の打ち上げを計画していたが、目前の危機を回避するために通信衛星に変更していたのだ。
三木からの情報が日本に届く。日本からの指示と情報が三木に届く。指示は「リベルテ国に滞在、情報収集、扇動工作。」だった。そして、興味ある情報が届いた。それは、サンパル皇国のサンジー教の経典が翻訳されたということとその内容だった。そのなかに、古の民のことがあったのだ。
(古の民、これで3度目。もう単なる伝承ではない。史実なのだ。500年か1000年前に、この惑星に今の日本よりも遥かに科学技術の進んだ民がいた。今戦えば日本は負ける。古の民が滅ぼされるはずもない。今はどこにいるのか、どこに行ったのか。)
三木はリベルテ国との戦いは何の心配もしていなかった。気になるのは古の民の情報だった。
護衛艦いずもにも指示が来ていた。航路を西にとり、陸地に沿って進み、ロマスク帝国まで進行せよと言う指示だった。ちょうどそのとき、東の方からリベルテ国の戦艦が3隻やってきた。
護衛艦いずもが西に進んで行くと、護衛艦まやと輸送艦しもきたもそれに続いた。
マドラの港を守っていた軍艦の艦長たちは、ホッとすると同時に、勘違いをした。8対3、いや11対3だから勝ち目はないと判断して、敵は西へ逃げ帰ったと。
護衛艦いずもが西へ進んでいると、やがて海岸線が南に向く。今度は陸に沿って南へ進む。
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ロマスク帝国に侵攻しているリベルテ国のメイキ中尉は砲撃隊長セントに尋ねていた。
「砲弾、弾薬がなくなったと聞いたが、本当か。」
「はい。残り少なくなっています。今、攻撃されるとマズいことに。」
「そうか。催促の伝令を走らせよう。進撃はここで止めよ。防御を厳重にして。」
「はっ」敬礼をしてセントが去る。
(ロマスク帝国の兵はシツコイな。逃げたかと思えば攻撃してくる。戦車や自走砲に被害はないが、歩兵に死傷者がかなり出ている。戦車や自走砲を前線に、その遥か後ろに歩兵を配置すれば、その歩兵が狙われる。敵の指揮者は侮れない。これは苦戦するかも。)メイキがそう思った時、テントを設営している兵が狙われた。バン、バン、バン。
バババン、バババン、バババン。反撃して敵を追っ払う。
(敵は茂みの中や木の陰から攻撃してくる。敵に戦車も自走砲もない。銃の性能も格段にこちらが上。大きな戦闘は圧倒的勝利、だから侵攻してきた。しかし、地の利は向こうにある。こうして、小さな戦いで削られる。キツイな。)メイキの気は重い。