護衛艦いずもを先頭に護衛艦まやと輸送艦しもきたが続いて航行している。いずもの指令室のモニターには偵察ドローンからの映像が映し出されている。
「あれはリベルテ国の軍隊ですね。戦車や自走砲があります。侵攻していないのは物資待ちですか。」と川本外交官。
「そうですね。あっ、あそこ。兵が潜んでいますよ。ロマスク帝国の兵ですよ。」と渡辺艦長。
「リベルテの軍を叩いて、ロマスク支援ですね。どうします、日野さん?」と川本。
「静観、静観!様子を見ます!」と日野一尉。
「我が国の目的は、ロマスクと接触することです。リベルテを叩けば・・・チャンスですよ。」と川本。
「しかたがない、やりますか。」
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リベルテ国のメイキ中尉は、上空を飛び回る見たこともない鉄の羽虫(ドローン)が何をしているか理解できなかった。攻撃もしてこないから、撃ち落とす指示をしなかったが、沖に大きな船が3隻航行しているのを見つけると、偵察だと悟って、撃ち落とす指示をした。しかし、そのときは遅く鉄の羽虫(ドローン)は飛び去っていた。
ゲリラ攻撃を指揮していたロマスク帝国のアコリ少尉も鉄の羽虫(ドローン)を目撃していた。彼はそれをリベルテ国の偵察機と考え、潜む位置を変えるように指示した。
護衛艦まやと輸送艦しもきたが陸に近づいていく。この場所も海岸に砂浜がないが、土地の低い場所があり上陸できそうなので、輸送艦しもきたからエアクッション艇が出て、車両を運んでいく。
と同時に、上陸を援護すべく、護衛艦まやの62口径砲が火を噴く。ドカーン。
リベルテ国のメイキ中尉は、もう一つの敵国二ホンの艦からの砲撃だと理解していた。しかし、陸軍の彼は、二ホンの兵器が自分たちよりも優れていることを、海軍ほどは認識していなかった。見える艦の外観から、自国の戦艦のようなものがいないことから、少し甘く考えていた。
(海軍は海では強いが、陸にあがれば弱い。上陸兵とて知れている。こちらには、戦車がある。海からの砲撃は、散って広がれば避けられる。)
そう思ったメイキは、迎え撃つことを決心した。
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エアクッション艇2隻で往復し、上陸した車両は、74式戦車(愛称ナナヨン戦車)2台、16式機動戦闘車2台、89式装甲戦闘車2台、輸送防護車1台であった。
輸送防護車は上陸地点にとどまり、ナナヨン戦車を先頭に6台の戦闘車両が進行していった。
ドカーン。ナナヨン戦車105mm戦車砲の正確で迅速な射撃でリベルテ国の戦車に命中。
ドン、ドン。16式機動戦闘車の直接照準射撃で自走砲を破壊。
ダダダダダ。89式装甲戦闘車の銃眼孔から小銃射撃。兵たちが倒れていく。
リベルテ国の戦車や自走砲は全滅。軽トラを運転するセント砲撃隊長がメイキ中尉に声をかける。
「乗ってください、無理です。逃げます。」
荷台に何人か乗っている。メイキは助手席に乗った。生き残った歩兵も逃げていく。
砲や銃の攻撃音が止み、あたりに静寂がもどる。
戦闘の様子を見ていたロマスク帝国のアコリ少尉は、瞬く間に敵リベルテ国の軍を壊滅状態にしてしまった6台の戦闘車両を、驚きと恐れの入り混じった複雑な心境で眺めていた。
(リベルテ国の軍を攻撃したのだから敵ではない。このまま潜んでいる理由もない。しかし、どこの国かも分からない。)
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護衛艦いずもからの小艇が、輸送防護車のある上陸地点で、川本外交官と部下の事務官、そして日野一尉たち警護の隊員を降ろす。そして、降りた川本たちは輸送防護車で戦闘のあったところへ向かう。
輸送防護車が戦闘車両の集まっているところまで来ると、戦闘車両から隊員たちが出てくる。川本と日野の2人が輸送防護車から降りると敬礼で迎える。
ちょうどそのとき、茂みの中から武装兵が何か言いながら出てくる。日野たちが銃を構える。
「ロマスクの兵です。」と川本が日野らを制する。川本はロマスクの兵のフランス語が分かったのだ。
日野はやって来た兵が川本と話をするのを聞いていた。言語は理解できないが、2人の表情から話の内容を読み取ろうとしていた。
2人は笑顔で握手を交わすと、ロマスクの兵は走って茂みの中へ消えて行った。日野が川本に話の内容を目で催促する。
「ロマスク帝国のアコリ少尉だそうです。こちらの国は二ホンだと伝えました。首都はカーペと言ってここから50キロ先にあるようです。外交官との交渉は伝手がないので、カーペにある基地の上官を紹介するそうです。案内の車をよこすからついていけばいいと。彼は先に報告にいくそうです。そうそう、ロマスク帝国と旧スパン帝国との国境を教えてくれる兵をよこすとも言ってました。」
しばらくするとオート3輪がやってくる。1人の兵が降りて、川本と話をする。川本はその兵を戦闘車両のところに連れて行き、89式装甲戦闘車に乗せる。そして戻ると、日野に「後は、トラックと機材がきますので、そちらをよろしく。」と言って輸送防護車に乗り込む。日野の代わりに警護の隊員が1人、輸送防護車に乗る。
ロマスク帝国のオート3輪の後を輸送防護車がついて行く。
日野はそれを見送り、89式装甲戦闘車に乗り込む。トラックが来ると89式装甲戦闘車を先頭に戦闘車両とトラックは輸送防護車と反対方向へ進んで行く。
護衛艦いずもの渡辺艦長はドローンから送られてくる映像で、戦闘車両とトラックが北に進むのを確認すると、停泊している輸送艦しもきたにエアクッション艇を回収してから北に引き返すよう指示した。
(こんな作戦を考えた人の気が知れない。多分、三木さんだろう。)と渡辺は思った。
護衛艦いずもとまやはゆっくりと旋回し北に向かって動き出した。
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ロマスクの兵の身振り手振りから、ロマスク帝国と旧スパン帝国との国境に着いたと理解した日野は、戦闘車両とトラックを止め、下車してあたりを見渡した。国境らしきものは何もない。
ロマスクの兵の仕草によると、遥か東の高い山から西の海岸までが国境で南側がロマスク帝国、北側がスパン帝国だったらしい。
(何と曖昧な国境だろう。陸続きなのに、城壁どころか塀も柵もない。検問所らしき建物もない。集落もなく人の住んでる気配もない、ただの草原、はるか北に森林が見える。それに、敵もいない。)
戦闘車両とトラックが国境まで来る間、リベルテ国からの反撃がなかったのは、退却したメイキ中尉が、後からやってくるリベルテ国の輸送隊や警備兵に退却を命じ、国境よりも後ろに退いていたからだ。
そして、国境が曖昧なのは、ロマスク帝国とスパン帝国の間に争いがなく、領土の取り合いなどをするほど人口が多くなかったからだ。土地は、未開の地が自国に有り余るほどある。
戦闘車両とトラックは国境を越え、少し進行したところで海岸へ向かい、海岸で止まる。トラックから調査隊員が降り、海岸を調査する。
北上していた護衛艦いずもの渡辺艦長は、停止している戦闘車両とトラックを目視すると、その沖合に停泊し、二ホンと連絡をとり現状を報告する。
後続の護衛艦まやも輸送艦しもきたも同様に停泊する。