時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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 本作品はフィクションであり、実在する人名、国名、団体名、組織名などが登場するが、それらとは全く関係なく、中傷も賞讃も意図しません。

 挿絵は、海面上昇シミュレータ、ペイント、ChatGPTを使用して描いています。


時空を超えて 第5章 1

 この惑星の暦で498年、8月。日本の暦で言えば10月なのに、真夏の様に暑い。

 日本はだいたい北緯35度から45度の間にある。北緯35度は正確には屋久島より南、奄美大島より北であり、北緯45度は稚内より南であるが。

 

 地球であったときは、地球温暖化で暖かくなったとはいえ、冬には北陸や東北に雪が降り、四季の顕著な温帯気候であった。

 この3年間の気象の統計から、緯度は変わらないのに、温帯ではなく亜熱帯気候に変わっていた。緯度が40度の西方大陸東岸地区の集落でサトウキビが栽培されているのだから、当然と言えば当然である。

 そして、北緯20度ちかくのバーキー王国に熱帯雨林気候のジャングルがあるのだから、赤道直下がどんな気候であるか想像もつかなかった。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・

 

 日本はロマスク帝国の国境よりも10km北側の海岸を整備し大きな港をつくり、その港湾近くに空港もつくって、一帯を軍事基地にし、スパン南基地と呼んでいた。

 

 ロマスク帝国のアコリ少尉は、自走砲6台と日本の自動小銃で武装した兵を載せたオート3輪10台を率いて、ロマスク帝国の国境まで来ていた。北方からコガタという愛称の日本のトラックがやって来て、アコリ少尉の率いる隊を案内する。案内された場所は、短期間で完成された日本の軍事基地であった。

 整備された港湾には、いろいろな形の船舶が停泊している。港湾近くの空港には、見たこともない航空機が並んでいる。

 

 建物の中に案内されたアコリ少尉は、待っていた川本外交官と握手をすると、「すごいですね。」と言った。「そうですね。まあ、こちらへ。」と川本が指令室へ案内する。その部屋には日野一尉と何人かの自衛隊員がいた。

 川本が日野にアコリを紹介する。「私は通訳ですね。」と笑いながら、アコリに日野を紹介する。アコリはただ驚くだけだった。部屋の中にある設備は理解できないものばかり。特にモニターに映し出されている映像が気になった。

 

 「あれは?」と川本に尋ねる。

 「あれですか、ドローンで撮影している敵の陣地の様子です。日がたつにつれて兵も装備も増えていますよ。どれだけ増えるのでしょう。」と川本。

 アコリは茂みに潜んでいた時に飛んできた鉄の羽虫(ドローン)を思い出していた。そして、この国の恐ろしさを感じていた。

 

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 リベルテ国のメイキ中尉は、ロマスク帝国の国境よりも60km北側にあるサラエの街まで退き、態勢を整えて攻撃すべきか、防御に徹するべきか、迷っていた。この街の南の端にリベルテ国の軍事基地を築いていたのだ。

 そんなとき、戦車5台、軽トラ10台に兵70人を乗せた隊が到着した。

 メイキ中尉は、その隊の軽トラの助手席から降りた男を出迎えた。

 「イータ大尉殿、お疲れ様です。」と言って、メイキが敬礼する。

 イータは黙って返礼する。

 

 基地の司令室に案内されたイータは、部屋を見渡し、口を開いた。

 「まだ、ロマスクを倒せないのかね。こんな所で油を売って。」

 「申し訳ありません。侵攻したのですが二ホンが出てきて。」

 「二ホン?やってきたけど、逃げ帰ったのでは?海軍がそう言ってたぞ。」

 「二ホンです。あの攻撃はロマスクではありません。」

 「どちらにせよ、はやく降伏させろという命令だ。どうせ、二ホンも攻める予定、ついでに叩けばいい。明日、侵攻するぞ。」

 

 翌朝、戦車5台、イータ大尉の乗った軽トラ10台、それに続いてメイキ中尉とセント砲撃隊長が乗った軽トラ1台が、自分たちが切り開いた森林の中の真っ直ぐに南へ向かう道を進行していた。

 

 メイキの部下やそれまでに補充された兵たちは、基地の整備と守りの名目で基地に残した。イータは自分たちだけで侵攻できると自信を持っており、多くの兵が待機することに異論はなかった。メイキは何もしないわけにいかなかったので、セントと部下5人だけでついて行くことにした。

 

 (説明しても分かってもらえない。)そう思っていたメイキは、鉄の羽虫(ドローン)の飛来から二ホンの攻撃を予測していた。そして、攻撃されれば逃げる気でいて、それを運転手に指示していた。

 森林を抜けると、急に視界が広がる。はっきりと目視できる位置に二ホンの基地の建物が現れる。

 

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 ロマスク帝国の兵たちが休んでいる建物のアコリ少尉の部屋に川本が現れた。川本は外交官のする仕事ではないと思いながらも、言葉が通じるのは自分しかいないと諦めていた。

 「ついに、敵さんが動き出しましたよ。」と言ったので、迎え撃つ準備をと、兵に指令を出そうとする。すると「いえいえ、そのままで。アコリさん、ついて来てください。」と川本はアコリを指令室へ案内する。アコリは怪訝な顔をしてついて行く。

 

 指令室では日野たち隊員がモニターを観ていた。モニターには森林から出てきたリベルテ国の軍隊が映っていた。

 

 ドカーン。ナナヨン戦車の砲撃。リベルテ国の戦車が爆発。

 ドン、ドン。16式機動戦闘車の射撃で軽トラが破壊。

 軽トラから兵が飛び出す。

 ダダダダダ。銃撃ドローンからの射撃。兵たちが倒れていく。

 

 モニターの映像を観ていたアコリの顔が真っ青になる。

 さらに追い打ちをかけるように、川本が説明をする。

 

 「あのドローン、隣の部屋で操作の訓練をしてるんですって。」

 それを聞いたアコリは開いた口が塞がらなかった。

 

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 二ホンの攻撃を予測していたメイキ中尉は、最後尾を行進していたため、1発目の砲撃ですぐに森林の中に引き返すことができ、軽トラも隊員も無事だった。

 イータ大尉は、敵の戦車と機動戦闘車を目視していたが、攻撃される距離だとは思わなかった。突然の砲撃に、指示を出すこともできないほど混乱した。幸いなのは、助手席から飛び出した後、乗っていた軽トラが爆発したので、森林の中に逃げ込むことができ、命が助かったことぐらいであった。

 一方的に攻撃されて隊は壊滅状態、戦車は全滅、軽トラが3台無事だっただけ。退却する以外に方法はなかった。

 

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 動いている敵がいなくなり、ドローンの銃撃も止まると、モニターを観ていた川本外交官が日野一尉に言った。

 「ちょっと、マズかったですね。」

 「えっ、どういうことですか。」と日野。

 「森林へ逃げ込んだ兵がかなりいましたね。もう少し進行させてから攻撃すれば、逃げ込めれなかったのにと思いまして。」と川本。

 

 「あは、川本さんも隊員になりましたね。攻撃にケチをつける。」と笑いながら言って、「甲斐の武田の軍学書に甲陽軍鑑というのがあります。知ってます?」

 知ってるわけないだろうと川本が首をふる。

 「それに、勝ちは5・6分で上と書いてあるそうです。読んだことはないですが。あはは、ちょっとカッコつけすぎですね。」とおどけて、日野は続けた。 

 

「実は、作戦通りなんですよ。逃げてもらわないと困る、逃げて相手の強さを伝えてもらい、戦う意欲をそぐのが狙いなのです。壊滅させるなどというのは、やってはいけないことです。もう、動いてますよ。敵の基地の奪還に向けて。」

 

 日野はそう言うと、窓の外を指さした。港に停泊していた護衛艦いずもと護衛艦まやが出航していた。川本が窓の外を眺めていると、隊員が入って来て日野に耳打ち。

 「川本さん、一緒に来てください。」と言って日野が指令室から出ていく。

 

 指令室のある建物の 入り口付近が騒がしい。日野と川本が外に出てみると、隊員が入ってこようとしている男を止めている。川本がフランス語で話しかけると、その男もフランス語で答える。日野はその様子を眺めているが、何のことか分からない。

 

 「日野さん、アコリ少尉たちのいる建物は、あの向こうの建物でしたね。この人たちはスパン帝国の人たちです。詳しいことは後で。」そう言うと、川本はその男にフランス語で向こうの建物にロマスク帝国の人たちがいることを伝え、そちらへ行くように言った。

 その男はやってきたオート3輪に乗り、3台のオート3輪で移動していった。

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