時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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第5章 3

 三木はやっと反政府集団のアジトにたどり着いたのだ。彼らがスラムに潜んでいる可能性が高いことは、考えてみれば当然であった。そして、三木が政府に追われる立場になって、誘われることも当たり前であった。二ホン人の三木、街に張り出されている手配書にそう書かれている。

 

 三木と握手をした男は反政府集団のリーダーでバーダンといい、リベルテ国の陸軍の元大佐であった。

 ハイル総統の侵略政策に異論を述べただけで非国民と非難され、収賄の無実の罪を着せられたそうだ。逮捕される直前に、腹心の部下をつれて逃亡したと言う。

 

 リベルテ国とプロリ帝国が戦う前に、バーダンはプロリ帝国の軍部の人たちと交流があった。今もその人たちとつながっており、占領下のプロリの情報が入ってきている。

 バーダンによるとリベルテ国の東方侵略に陰りが見えてきていると言う。プロリの反乱勢力の勢いが増し、リベルテ国の軍の被害が大きくなっているそうだ。

 

 西方も二ホンの進撃により後退を余儀なくされているのであるが、リベルテ国のマスコミは、東方も西方も軍隊の快進撃を伝え、プロリの安定とロマスク帝国の降伏が間近であると報じていた。

 企業は占領下の地域にどう参画するかの思案に明け暮れ、国民は勝利の心理的美酒に酔っていた。

 リベルテ国の危機に気付いているのは、軍部のほんの一握りの人たちだけであった。

 

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 元スパン帝国の首都マドラでは、人々の間にスパン帝国の皇太子が強力な兵を引き連れて戻ってくるという噂が流れていた。街の人々は圧政であったスパン帝国の復活を望んではいなかった。

 でも、噂の事情は少し違っていた。若き皇太子は先進的で、リベルテ国を追い払うと、国を一新、立憲君主国にするというのだ。憲法を定め、統治者を国民が国民から選び、君主は統治しないという制度だ。街の人々は理解に苦しんだが、それが本当なら今のリベルテ国の占領下よりずっといいと思い始めていた。

 

 実は、川本外交官の入れ知恵であった。奪還したスパン帝国のサラエの街に入った川本は、街の人たちの敵意のある痛いほどの視線を浴びて、(これではいけない)と思い、ロマスク帝国のアコリ少尉に策を授けたのだった。

 スパン帝国のネント少尉は、自国のことであり策に反対することも考えられ、何よりも街の人たちがマドラ出身の彼を知っている恐れがあったので、他国のアコリに話をしたのだ。

 

 サラエの街とマドラの街は、皇帝の視察のため1つの道でつながっており、途中にいくつかの村があるが、人の交流はなかった。アコリたちロマスク人がサラエの商人として、マドラに行ってもバレルことはないと考えられる。

 オート3輪に缶詰などの加工品を積み込んででかけ、村の手前でオート3輪を止め、商品を持って村に入り、売る。そして、若き皇太子の噂を流す。

 それを、村に着くたびにしながら、マドラの街に入り、同じことをする。マドラに来た時には、アコリたちは兵ではなく一端の商人になっていた。

 

 川本は日本にも連絡を入れ、フランス語が喋れて政治体制の講義ができる人をロマスク帝国にいるスパン帝国の皇太子のもとへ派遣するよう依頼していた。

 

 アコリたちは商品がなくなるとサラエに戻り、商品を仕入れて、行商にでる。それを何度か繰り返した。

 

 マドラでは、若き皇太子の兵によってサラエの街が解放され、次はマドラだという噂が広がっていた。

 イータ大尉は、メイキ中尉やセント砲撃隊長などサラエから退却した兵たちに、敗れたことの口封じをしていた。マドラはサラエと違って、軍港には戦艦や軍艦が停泊しており、本国の空港から戦闘機も飛んでくる位置なので、兵の士気を保てば守り切れると思っていたのだ。

 しかし、その噂が リベルテ国の兵たちに伝わらないはずもなく、兵たちは戦々恐々としていた。

 

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 皇帝のいないサンパル皇国はトール宰相が中心になって、新たな国造りを行っていた。

 破壊された城の跡地には、行政官庁や議会官庁などが建てられ、皇帝一族の居住地域は跡地の片隅に追いやられていた。

 

 アイン海軍大将は海軍を退官し、警察機構のトップとして、国内の治安維持に奔走していた。トマス提督はアインの肝いりで海軍大将を拝命していた。

 

 サンジー教は国教でなくなり、信教の自由が認められたが、人々の信教が変わるわけもなく、国民の大部分はサジー教を信じていた。

 メリル教皇は多くの自爆兵による犠牲の責任をとる形で教皇を退き、教皇の制度そのものが廃止された。これは、日本の要求でもあった。

 

 日本の租借地になったガント港湾地帯は、大型の船も停泊できる港に整備され、日本の港湾事務所や宿泊施設が設置されていて、地質調査などの日本人が多く出入りしていた。

 

 ジュラス都市国家は小さな国だが、日本と親密な関係を保ち、人も物も交流が盛んで、街も軍備も近代化が進んでいた。ジャングルを抜ける道でサンパル皇国との交易も盛んになり、人々の生活も豊かになった。サミー補佐官が軍隊のトップであるせいか、軍備の充実は著しく、サンパル皇国をはじめこの地域一帯を征服できるだけの軍事力になっていた。

 

 ナガア地方は独立をしたもののナガア王国の政治にかかわっていた一族は誰1人残っていなかった。だから、急遽設置した日本領事館と自衛隊で、立て直しに取り組む以外になかった。日本は、遠く離れた国を援助する余裕もなく、できるだけ早く手を引きたかった。

 スリム地方はサンパル皇国に抵抗していた地下組織にスリム王国の関係者が多く残っており、彼らに国の再建を任せることになった。

 

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 サラエの沖合に停泊していた護衛艦いずも、護衛艦まやが北上を開始し、それにあわせてナナヨン戦車、装甲戦闘車、機動戦闘車がサラエの街を出発していた。スパン帝国の車両は少なかったが、ロマスク帝国から多くのオート3輪と燃料、そして兵が補強され、たくさんの車両が続いた。その後に日本のコガタと呼ばれるトラックが3台いた。うち1台には91式携帯地対空誘導弾を発射する隊員たちが乗っていた。 敵の航空機の攻撃を想定していたのだ。最後は輸送防護車、川本外交官が乗っている。

 アコリ少尉の宣伝活動が効いていたのか、通過する村々では皇太子の解放軍と勘違いをして、歓迎されていた。スパン帝国の国旗を掲げて歓迎する村まであった。

 

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 北上していた護衛艦まやの対水上レーダーが潜望鏡のようなものを探知したが、すぐに消えた。護衛艦いずもの対水上レーダーも同様、前方に潜水艦が潜んでいることは確かである。

 潜水した潜水艦探知はプールで針を探すくらい難しいと言われている。

 

 水中で電波探索はできない。電波は水に吸収されるからだ。魚群探知機だって電波を使用しているのではない。音波を利用しているのだ。

 いずもからサラエの南にあるスパン南基地に連絡が入る。スパン南基地の空港からPー3C哨戒機が飛び立ち、まやの前方の海を偵察する。

 

 Pー3C哨戒機から水測ブイを投下して、水温、雑音状況を測定する。そして、音波を受信するパッシブソノブイを大量に投下、スクリュー音やポンプの音を探っているのだ。スクリューを止め、音を出さずに潜んでいれば発見が難しいが、リベルテ国の潜水艦は見つかると思ってないのか大きな音を出している。

すぐに、位置が特定できた。

 静かに潜んでいても、音波を発してその反射音で探索するアクティブソノブイを使えば見つけることができるのだが、その必要もなかった。

 

 Pー3C哨戒機からの情報が護衛艦まやに伝わる。まやにはアスロック装置がある。アスロックとは艦載用対潜ミサイルのことである。まやからミサイルが発射される。

 リベルテ国の潜水艦は何が起こったのか理解できないまま、深海に沈んで行った。

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