時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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第5章 9

 日本では相変わらずリベルテ国との戦争に反対する声が多く、国会の審議が戦争関係にすり替わり空転することも多かった。マスコミも戦争反対の論調が多く、話題のほとんどが戦争であった。

 

 この惑星のことも分かって来て、マスコミがそれを取り上げることも多かった。

 この惑星の大気圏が調べられ、地表付近の大気の成分の割合は地球と同じで、二酸化炭素濃度も移転前の地球とほぼ同じであった。オゾン層も電離層も同様にあったが高度が少し低かった。ただ、上空のメタンガスの濃度が高いのがこの惑星の特徴であった。

 植物は地球と同じ亜熱帯、熱帯の植物で、動物もその地帯の動物であり大型化していた。地球を水の惑星、昆虫の惑星と称した人がいたが、水も多く、昆虫の種類も数も多かった。

 

 惑星の大きさ、質量、重力加速度、自転周期、自転軸の傾き、公転周期は地球と同じで、地球に多数存在していた人工衛星は皆無であったことは以前から分かっていたが、天体観測から新たに分かったこととして、太陽をまわる惑星もその衛星も、小惑星までもが地球のいた太陽系と同じであった。

 そのことから、量子重力理論を研究している高瀬準教授がテレビ画面に映ることが多かった。

 彼は反地球論を拡張して、反太陽系論を主張していた。彼の主張していたことが、次々と明らかになり、元の地球とは違うこの地球、反地球を決定づける証拠が見つかったのだ。

 

 西方大陸東岸、トメリア王国海岸、バーキー王国周辺の島々、サンパル皇国などの海岸線が、元地球の北アメリカ大陸東海岸、中央・南アメリカ大陸のメキシコ湾・カリブ海側の海岸、大西洋・カリブ海の島々の海水面が80m上昇した時の海岸線と一致したのだ。

 惑星全体は軍事衛星を打ち上げて調べるまで分からないが、一部の地域とは言えこの一致は高瀬準教授の主張を決定づけるものだった。ただ彼の反地球論では、日本列島が大西洋にあることが矛盾であった。日本列島はユーラシア大陸の東の端にある弧状列島である。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 二ホンの自衛隊と反政府集団とプロリ反乱軍は、トスリン宮殿がみえる位置で進行を止めた。コガタトラックに積んでいた自動小銃を反政府集団とプロリ反乱軍に配り、日野がバーダンに身振り手振りで説明する。銃の取り扱いと宮殿制圧の方法の説明だが、通じたかどうか、分からない。日野は川本外交官のいないことを悔やみ、警告の録音が終われば戻るように手配すべきだったと思った。

 

 トスリン宮殿の周りが、リベルテの兵でも近衛兵でもなく、反政府集団とプロリ反乱軍で溢れていることを知った宮殿内の人たちは、逃げ場所を港の艇と勝手に決めて、港への出口で隠れ潜んでいる近衛兵に制止されるのも聞かず、飛び出して行った。港で待ち受けていた戦闘艇は味方ではなかった。

 

 ダダダバン、ダダダバン、ダダダバン。射撃を受けて次々と倒れる。その中にニコルもいた。マイト中尉はニコルを知らなかったが、ほとんどの者が宮殿内の役人の服装なのに、1人だけ近衛兵でもなくリベルテ陸軍の服装だったので、死体を別のところに置いていた。

 

 反政府集団とプロリ反乱軍がトスリン宮殿に入っていく。

 ダダダダダ。ダダダダダ。二ホンから受け取った自動小銃が唸る。近衛兵が反撃する間もなく倒されていく。

 一階を制圧したが、バーダンが探しているハイル総統もニコルもいない。港から逃げることが考えられたので、港への出口に向かう。

 

 ダダダダダ。ダダダダダ。出口にいる近衛兵たちを射撃。

(二ホンの銃はすばらしい。)バーダンはそう思った。

 出てみると、戦闘艇の乗組員たちが死体を片付けていた。バーダンに気付いたマイト中尉が敬礼し、「変わった奴の死体があるので見て下さい。」と言って、ニコルの死体のところに案内した。

 バーダンには一目でニコルと分かった。しばらく眺めていたバーダンは、マイトに尋ねた。

 「ハイルは来なかったのか?」

 「はい、見ていません。」 

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

 ハイル総統は宮殿の地下室にいた。

 「ゴザン、交渉は失敗したようだな。」とハイル

 「降伏しましょう。」とゴザン軍務大臣。

 「もう遅い。スパンでもプロリでも皇帝を処刑、一族まで殺害してきたからな。お前は助かるかもしれない。この部屋から出ていけ。」ハイルはそう言うと、銃を取り出した。

 「早く出ていけ。無様なところを見せたくない、出ていけ。」

 

 ゴザンが地下室から出ると、ズドン。1発の銃声が響いた。

 

 ・・・・・・・・・・・

 

 三木は護衛艦いずもの司令室にいた。西方大陸東岸の地図を見ながら言った。

 「これを見て、北アメリカの東岸だと最初に気付いた人はすごいね。」

 「そうですね。私は言われても分からない。」と笑いながら渡辺艦長。

 「海抜80mが海岸線ですよ。ニューヨークもワシントンも海の底、普通気付かないですよ。」

 「見慣れている地図ではないですからね。」

 

 「反地球とか言ってる人もいるようですが、艦長、どう思います?ここは地球そのものだという気がするのですが。」

 「地球ですか?そうすると他の国はどこへ行ったのでしょう。それに、ニューヨークが海に沈んだとしても、ビルは見えるはずです。エンパイアステートビルはアンテナもいれると443mですから。」

 「そうですよね。」

 

 (まてよ、この惑星の年号の始まり、サンパル皇国ではサンジーが古の民を追い払った時からだった。リベルテ国では東の空が真っ白になり・・・・古の民が宇宙へ旅立ったときか・・・)

 そこまで考えると、三木は渡辺に礼を言って自分の船室に戻った。

 

 三木は、黒いリュックから通信機を取り出すと、地球の北アメリカ東岸とこの惑星の西方大陸東岸の地図を見比べながら、日本と連絡。

 「そう、トメリア王国の南の海、地球で言うと、フロリダのケープ・カナベラルがあったところ、その海底を調査してください。」

 ケープ・カナベラルはNASAのケネディ宇宙センターがあり、ロケットの打ち上げが行われていたところだ。

 

 (ジョンソン宇宙センターのあるヒューストンは海抜15m、当然海の底。ケープ・カナベラルは海抜3m、海水面が急に高くなるわけがない。避難する余裕がある。)

 もう、三木の頭の中は、この惑星が地球であると決めつけている。地球の地図を見ながら、都市の標高の表をチェックしながら、しきりに何かを見つけようとしている。

 (ヒューストンから避難するとしたら、どこだ?)

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

 三木の頭の中で、転移以外の疑問が繋がったのだ。

 

 (リベルテ国の南に高い山並みが見えたが、雪や氷のない山頂だった。この惑星は暖かい。以前の地球では温暖化が懸念されていて、南極の氷が全て溶けると70m以上海面が上昇すると試算されていたが、高い山にある全ての氷河がなくなり、シベリアの凍土もきえてしまったら、80mぐらいは上昇するだろう。シベリアの凍土はメタンガスを封じ込めていたいたはずだから、その温室効果ガスも大気中に出る。それで、ますます暖かくなる。

 

 海岸に砂浜がない。河口が中流のようで砂が少ない。これは海面の上昇が比較的短期間100年程度で起こり、それから何万年もは、年月が経っていないということだ。間違いない、500年程度しか経っていないのだ。我々が未来の地球に移転したとしたら、猫耳や熊耳の人たちの集落の違和感もリベルテ国の違和感も この惑星の不思議さが納得できる。古の民とは未来の地球人なのだ。

 

 人工衛星の謎も、戦争があったと考えれば衛星がなくなることも想像できる。現代戦や未来戦において、軍事衛星の脅威は計り知れない。正確な偵察だけでなく、弾道ミサイルの発射や移動が探知できる。だから、戦いの真っ先に攻撃すべきは軍事衛星なのだ。衛星の軌道は決まっているから攻撃を回避することが困難で、簡単にミサイルの攻撃を受ける。通信衛星も気象衛星もGPSも軍事衛星になるので攻撃を受ける。互いに破壊しあえれば、やがて、すべてスペースデブリになる。

 1967年の宇宙条約で大気圏外の核兵器の使用が制限されたが、世界大戦レベルの戦争でそれが守られるはずもない。)

 三木は自分で勝手に想像して身震いがした。

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