時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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第5章 10

 ハイル総統は地下室で自害し、二ホンの自衛隊と反政府集団とプロリ反乱軍がトスリン宮殿を制圧した。バーダンは、制圧はしたものの後のことを考えていなくて、しきりに日野に話しかける。しかし、日野には言葉が通じない。

 

 日野は、宮殿制圧を護衛艦かがに連絡し、川本外交官に事情を話し、宮殿にきてくれるようお願いした。川本はお願いされなくても、戦いが終われば、宮殿に行くつもりであった。戦後のリベルテ国との交渉を指示されていたのだ。

 

 しばらくすると、輸送ヘリで川本が到着した。日野とバーダンの間に川本が入り、やっと通訳付きの会話が成立する。しかし、実行されるのは、川本の指示であった。

 

 まず、バーダンの集団の名称をリベルテ解放軍とし、リベルテ解放軍の勝利宣言をし、反抗している兵を投降させ、避難している市民を呼び戻すこと。日本は、リベルテ国の復興に干渉も関与もしない。

 

 プロリ反乱軍も名称をプロリ独立軍と改め、すぐにプロリに勝利の伝令を走らせ、堂々と凱旋行進をして帰国すること。日本は、プロリの再興に干渉も関与もしない。

 

 「それでは、二ホンの利が全くないではないか。」とバーダン。

 バーダンだけでなく、プロリの将校たちもハイル総統の政権を倒したのは、二ホンだと思っていた。領土を1部取り上げられてもしかたがないとさえ考えていた。

 

 「いえいえ、ちゃんと交易さえできるようになれば、お互いの利になります。あとは対等の交渉と言うことになります。」

 対等の交渉と言ったが、言った川本もバーダンもそんな綺麗ごとの交渉などないことを知っていた。

 

 「お願いですが、リベルテ国の復興のために、力をお借りしたいのですが、三木さんと言いましたか、あの方は?」とバーダン。

 「三木?いったいどういう事でしょう。」

 「この国で一緒に働いて欲しいのです。」

 「そうですか、残念ですが、三木はもう日本に向かって出発しています。会う機会があれば、そう言ってたとお伝えしましょう。」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 護衛艦かがだけがトイヤ港沖に残り、護衛艦いずも、まや、もがみ、あぶくま、そして輸送艦しもきたは帰路についていた。日本では港湾工事や空港工事の民間の船やプロリ、スパン、ロマスクと交渉を行う外交官たちの乗った船などが東方に向かって出発していた。

 

 三木は護衛艦いずもの指令室にいた。

 「三木さん、これが最後の船旅になりそうです。」

 「えっ、どういうことです?」

 「私も若くないですから。」

 「自衛官は退官がはやいと聞いていましたが 、そういえば佐川さんもはやかった。」

 「佐川さんは有能でしたから仕事がありましたが、海しか能のない私は・・」

 「いえいえ、その能があれば、しがみつけばいいのですよ。」

 「あはははは、面白いことを。」

 そんな話をしていると、通信員がやってきて、「至急、いつもの定時連絡を入れるように。」というメモを三木は受け取った。

 

 三木は船室に戻り、黒いリュックから受信機を取り出し、日本と通信。

 「どうしたんですか、至急とは?」

 「海底調査の結果、ありました、宇宙センター。ロケットの発射台が沈んでいました。」

 「そうですか、やっぱり。」

 「で、箝口令です。政府に衝撃が走りましたが、ここは反地球。それが政府見解です。」

 「どういうことですか。」

 「いくら地球と似ていても、地球でないから外国人は国に帰るとは言わない。でも、ここが地球だと分かったら、もとの国土に帰ると言い出す。」

 「好都合ではないですか、在日外国人の問題が一気に解決ですよ。帰っても何にもないが。」

 

 「察しのいいあなたらしくないですね。でも、アメリカは違う。ここが地球だと分かったら、西方大陸の東岸地帯、油田地帯など日本の手によって開発された地域を返せということになります。日本が生き延びたのはこの地域の食料と石油のおかげ、手放すわけにはいかない。下手をしたら日本列島もアメリカの領海内の島ってことにも。そうなれば、在日アメリカ軍と戦争、これは非常にまずい。

 そこで、文部科学省が新惑星科学賞をつくり、反地球論の高瀬准教授を受賞候補に、そして彼を教授に推薦することになりました。」

 

 「分かりました、室長。でも、マスコミはかぎつけますよ。」

 「だぶんそうでしょう。でも、何が見つかろうと、反地球で押し切るつもり、いや覚悟でいます。」

 「そうですね。私はこのまま古の民の調査を続けていいのでしょうか。」

 「それも重要なこと、だが口外しないように、古の民の件も秘密事項です。必要なものは用意するから、調査を続けてください。新たな任務が生じたら連絡します。以上。」

 

 ・・・・・・・・・・・

 

 リベルテ国のトイヤ港湾地帯を日本の租借地とし、海軍基地の建物が仮の日本大使館となり、川本が大使として着任した。

 今までの租借地は5年間の期限付きの契約であったが、5年ごとに契約をし直す形になった。

 日本大使館の建物も、首都カンナに建設中で、海軍基地の建物はそれまでの臨時大使館であった。交渉で未開発の地域の日本の地質調査が認められ、発見された鉱床の採掘権を日本が得ていた。

 

 トイヤ港湾は日本の港湾工事がなされ、大型の船舶も接岸できるようになっていた。多くの日本の船がトイヤ港にやってきており、商談や調査がなされていた。

 

 スパン帝国は国名をスパン王国に改め、皇太子がスパン国王になり、国王は君臨すれど統治せずという立憲君主制の国家に変わっていた。

 ロマスク帝国に亡命していた皇太子に立憲君主制をたきつけたのは他ならぬ日本であった。スパン王国も首都マドラに日本大使館を建設中である。

 

 スパン南基地には軍事上の機密があるもので取り外しのできないものが多く、港湾、空港を含め、現状以上に広げないという条件で日本の領土と認めてもらった。元々何もない国境近くの未開の地だったことも幸いした。基地にはリベルテ国に行っていた76式戦車など戦闘車両も戻っており、護衛艦かがも停泊していた。

 

 ロマスク帝国も首都カーペに、プロリ共和国も首都ポンリに日本大使館を建設中であった。日本と東方大陸の4か国との交易も始まり、日本国内には多くの課題が残っていたが、国家間の状況は落ち着いてきた。

 

 そして、惑星歴498年が暮れ、499年が始まった。伝承によると、古の民の帰還まで後1年。日本より50年も100年も、もしかすると1000年も先の科学技術があると考えられる古の民。この惑星のどこかにいるのか、宇宙にいるのか、この惑星の実像を知るべく、日本は偵察衛星を多数打ち上げた。

 

                第5章 (完)

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