時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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最終章 2

 三木はバーキー王国在日大使の接待を受けた5日後には、トメリア王国の日本大使館にいた。

 

 成田空港からトメリア王国のアイロン空港までの航空便が1日往復2便運航していた。異変があってから航空会社は海外の航路が断たれ、国内だけの運航で青息吐息であった。観光客はまだいないが、ビジネスで利用する客が多く、軍事用につくられた空港を民間に譲り渡していた。三木はビジネスの客と一緒にトメリア王国に入国したのだ。

 

 「バーキー王国のシルビアという女性に私のことを教えたのはあなたですね。」と三木。

 「そうですよ。美しい女性には弱いのでね。でも、所属だけですよ。それ以外は私も知りません。」

 下野大使がそう答えたとき、猫耳の女性が入って来て、2人の前に紅茶を置いた。三木と下野は紅茶を飲んで1息いれた。

 

 「日本にやって来て、私のいるところまで来ましたよ。」

 「それは、すごい。執念ですね。私は無理だと思ったのですが。だって、三木は本名ではないのでしょう。偽名なのに会えたのですか、信じられない。」と下野。

 

 確かに迂闊であった。以前の世界では日本に帰るたびに、新しい任務に就くたびに、三木は名前を変えていたのだが、異変があってからずっと三木のままだった。暗号通信の必要もない世界で、名前を変える必要もないと思っていたのだ。

 

 「外務大臣に会ったそうです。外務大臣から官房長官に紹介されて。」

 「外務大臣ですか、外務省の私ですら挨拶を聞くだけで、面識もないというのに。」

 「相手は大使ですから、会おうと思えば会えるでしょう。」

 「そうですね。私も、この国の外務大臣に会おうと思えば会えますね。」

 「あはは、そんなことを言いに、ここへ来たのではないのです。実はお願いがありまして。」

 三木はそう言って、1枚のプリントを下野に渡した。

 

 そのプリントを1読した下野は、「わかりました。トメリア王国に要望してみます。で、どうします?宿泊の部屋を用意しましょうか?」と言った。

 「いえ、街に宿を予約していますので、2日後に伺います。手配のほどよろしく。」

 そう言って三木は、紅茶を飲み干すと、黒い長方形のリュックを背負って部屋から出て行った。

 

 ・・・・・・・・・・・・・

 

 三木は、宿に立ち寄り部屋を確認したのち、黒いリュックを背負ったまま、トメリア王国の首都カバンナの街を散策していた。

 

 以前来た時と街の様子ががらりと変わっていた。行き交う人の中に猫耳や熊耳の人たちがいなければ、日本と勘違いするほど、街並みは日本と似ている。違うのは、カバンナ城がそびえていることだけだ。

 街の人たちの言語は英語か日本語、両方が混ざっている。この街では言葉で苦労することはない。そして、驚くべきことに、通貨が変わっており、トメリア円。日本の通貨がそのまま使える。

 

 (ここはまるで仮装した若者が溢れる渋谷のようだな。猫耳、熊耳、尖った耳で溢れている。以前は奴隷だったせいで、建物の中に押し込められるか、農場で働かされるかで、自由に街を闊歩できなかった。今は生き生きと買い物をしている。ん、以前はいなかった日本人もかなりいる。まてよ、なぜ、あの黄色人種が日本人と言える?)

 

 三木は重要なことに気が付いた。この惑星には、日本列島に取り残された人たち以外に黄色人種はいない。中国人も朝鮮人もモンゴル人もいない。黄色人種がいるとしたら、猫耳、熊耳の人たちだけだ。

 (絶滅したんだ。この地球で何が起こった。核戦争か。古の民、お前たちは何をしたんだ。どこにいるんだ。)

 

 ・・・・・・・・・・・

 

 日本ではマスコミが騒いでいた。秘密にしていたケネディ宇宙センターのロケット発射台やニューヨークのビルの瓦礫などの海底の映像が表に出てしまったのだ。政府の後押しでこの惑星の名称をアンチアースと決定した矢先であった。反地球を英訳しただけの名称であるが、正式名称にしたのである。

 

 映像は厳重に保管されていたはずである。しかし、デジタルデータとしての映像が外に漏れないなどというのは幻想でしかない。完璧なセキュリティなどというのはあり得ないのである。海外からのサイバー攻撃はなくなったが、国内からはあり得る。疑えば、職員のコピーの持ち出しだって考えられる。ネットでの拡散も速かった。

 

 ともかく、公表されてしまったのである。政府は何があってもアンチアースの一点張りであった。もし地球なら、ほかの国はどこへ行ったんだと反論して。

 

 真っ先に国に帰ると言い出したのは、在日中国人である。「どうぞ、ご自由に」と以前からの対応をするが、帰っても何もない。広大な国土であるが、焼き畑農業から始めなければ、何も作物ができないのである。それに、移動する手段もない。他の国も同じであった。帰りたくても帰れない。

 

 だが、アメリカは違った。国土は開発され、しかも多くの人が住んでいる。当然、アメリカの土地だと主張する。日本は、この惑星はアンチアースで、アメリカの土地ではない、西方大陸北部に国土をもっているはずと主張する。ケネディ宇宙センターのロケット発射台やニューヨークのビルの瓦礫などは海底ではあるが、確実にアメリカのものであるので納得しない。

 

 平行線の対話が続く中で、トメリア王国はすでに国家があるので、侵略行為になるからとアメリカが諦めた。しかし、西方大陸東岸地区の油田や集落は日本が管理しているのだから、譲れと強く迫る。日本もこの場所が生命線である。譲るわけにはいかない。

 

 日本は強気に出た。在日アメリカ軍の基地は全て西方大陸北部の開発と引き換えに返還してもらってるし、基地の備品や弾薬などの在庫も日本が買い上げていた。持ち込みが禁止されていた核弾頭も日本の管理下にある。

 西方大陸北部のアメリカの港に軍艦などが揃っていても、打つべき弾は日本が握っている。それに、憲法改正、自衛隊とは名ばかりで、民間の企業もミサイルなどを量産し、軍事大国になっていることをアメリカは知っていた。西方大陸北部の開発をする以外にないのである。

 

 ・・・・・・・・・・・・・

 

 三木は再び日本大使館に来ていた。

 「要望の通り、手配しましたよ。日本の外務大臣に会うのは余程のことがないと無理ですが、この国の外務大臣には簡単に会えますからね。あはは、先日どこかで言ったですね。で、軍務大臣を紹介してもらいまして、担当の責任者が来てます。隣の部屋で待ってます。」

 隣の部屋には、かつて、日本で捕虜として過ごした鉄砲隊の隊長トム、三木とはジョージ侯爵の救出で一緒だったトムがいた。

 

 「どういうことです。ジャングルの中の洞窟を見つけよとは。ケイン軍務大臣から指示されて探していますが、大使に尋ねたら、知らない、あなたに聞けと言うし、理由を教えて下さい。」と、挨拶もそこそこトムが尋ねた。

 

 「ええ、理由ですか。何か面白いものでも、見つからないかと・・・・。」三木は返答に困る。

 「何ですって、日本からの依頼だから我々は探していますが、そんなことに命はかけられません。」

 

 ジャングルの調査は命がけなのである。人を襲う猛獣がたくさんいるし、毒蛇もたくさんいる。それに、樹木で空が覆われて薄暗く、景色はどこも同じで、迷い込んだら出ることができない。そんな中に入っていくのは自殺行為である。

 

 樹木を切り倒し、火炎砲、ガスバーナーの筒を大きくしたもので焼き払いながら、少しずつ進んで行くしかないのである。だから、軍隊なのだ。

 日本の調査隊もいろいろな場所で地質調査を行ってきたが、ジャングルだけは避けていた。バーキー王国だけジャングルの調査ができたのは、そこに住んでいる人たちがいて、その人たちの案内があったからである。その人たちも木の上に住んでいる。

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