古の民のことは日本政府の秘密事項であった。バーキー王国にある古の民の遺跡調査を日本の調査隊が実施したのは、まだ事の重大さに気付いていなかったからである。
今の日本の科学技術よりも50年、100年、いや1000年かも知れないほど先に進んだ国の存在が、公になると大混乱が起こる。だから、重要な秘密事項になったのだ。その調査に日本の自衛隊や調査隊を使わないのも、秘密を守るためだった。
三木がその場所のジャングルに目をつけたのは、海水面が上昇してアメリカの宇宙センターが移転するとしたらどこかと考えた結果である。施設設備は移転できなくても、人や資料は移転できる。
そして、洞窟だと考えたのは、バーキー王国にある古の民の遺跡が、洞窟であったことと、長い年月が経っても地下であれば残っていると思ったからである。
「誤魔化して申し訳ない。本当の理由は訳あって言えません。人工的なもの、人が造った形跡がある洞窟を見つけてください。お願いします。」三木はそういって頭を下げた。
あるか、ないか分からないものを探せというのだ。頭を下げる以外になかった。
下野大使にも古の民のことは知らされていなかった。
外務省から内調の者が行くから協力するようにと指示されていただけだった。しかし、下野は三木が調査しているということだけで、重要なことだと感じていた。
「まあ、お2人は知り合いでしょう。せっかくですから、席を用意しています。一杯やりましょう。」
下野はそう言って、2人を宴会場へ案内した。
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日本の報道番組では、海底の様子を隠していた政府を批判していた。政府は海底の様子が公になっても、隠していたわけではない、発表しなかっただけと言い訳し、反地球論のままであった。
この惑星が地球であると主張するコメンテイターは、反地球論の高瀬教授を、体制にしっぽを振る政府の犬とまで言っていた。
高瀬は純粋に反地球論を信じており、信じてもいないのに都合がいいというだけで、それに乗っかったのが政府である。
地球だと主張したコメンテイターも、他の国がどこへ行ったかという疑問で地球だとは思っていなかった。話を面白くする番組の意向に沿って主張しただけである。
報道番組は報道という名の番組であり、バラエティーなのである。
政府への批判と共に、雲で覆われた未知の赤道付近の推測と、その探索の必要性の議論もさかんであった。
緯度が南北5度以内の地域が衛星からの映像では、地形も分からない。まるで金星の様に雲が晴れない。調査隊を派遣して調べる以外にないと言う声が多かった。しかし、政府は調査隊を派遣する気はなかった。
実は政府には、地形も分かっていたのである。80m海面が上昇した地球の地形であると。
上空の対流圏を飛行することは上昇気流が激しくて難しいが、成層圏ならば問題なく飛行できる。地表の表面温度を赤外線の測定で推定し、陸地と海との区別ができるのだ。
しかも、その地域がとんでもない温度であることも分かっていた。しかし、衛星からの映像だけを公表して、そのことは公表しなかったのだ。
元の太陽系で最も温度の高い惑星は、太陽に一番近い水星ではなく、金星であった。厚い硫酸の雲に覆われていて、大気のほとんどが二酸化炭素である金星は温室効果も高く、夜の放熱も少なくて、地表の気温は460℃と推定されていた。
この惑星の赤道付近は雲で覆われているが、それは水滴であり、金星のようなことはない。しかし、地表の気温が50℃~60℃と高く、とても生き物の住める世界ではないと推定され、調査隊を派遣できるような環境ではなかった。高温でも生きていけるバクテリアや植物は生存可能かもしれないが。
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三木はトメリア王国の日本大使館にいた。当初、街中の宿で待機していたのだが、洞窟調査が長引き、結局、大使館で宿泊のお世話になっていた。
トムに会ってから1週間以上経っていて、洞窟発見の連絡はあったが、どれも自然の洞窟で人の手が加えられているものはなかった。
三木の持っているB5版のタブレットにメールが入った。日本からである。
今までは、日本国内でインターネットが使用できたが、海外では無理だった。やっと通信衛星によって、海外でも使用できるようになった。多数の低軌道衛星ではないので、通信速度は速くないが。
メールの内容は、偵察衛星によるこの惑星の人の住んでいる場所の報告てある。すでに判明している国や集落以外に人の存在する反応がないということであった。広大なユーラシア大陸もアフリカ大陸もオーストラリア大陸もである。この惑星の人類は少なく、昆虫と動物の天国である。
(古の民、未来の地球人と思っていたが、間違っていたのかもしれない。ここが地球だとすると、人類は滅んだ。今いる人たちは、わずかに残った人たちなのだ。
サンジー教の経典に、北の空が真っ白になりそして空全体が真っ黒になって後に、やってきた古の民とあった。宇宙からやって来たのだ。宇宙人に滅ぼされた、古の民とは宇宙人かもしれない。としたら、古の民を探すのは無駄かもしれない。宇宙に去っている。)
三木は悩んだ。読みが正しければ、1週間も探せば見つかるだろうと思っていた。1国の軍隊が探しているのである。ところが、見つからない。
無駄も調査のうちと諦めて、調査の打ち切りを指示しようとした時、発見の報告が入った。しかも、地下に通ずる階段があると言う。
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西方大陸東岸地区の集落は、相変わらず、ガスも電気もない生活で貨幣も存在しない状態であった。しかし、農作物などと日本の農機具などとの交換で、畑の開墾が進み、ますます多くの農作物が収穫できるようになっていた。
小さき人たちの集落も、日本の工具で作業能率が上がり、森の南側の草原に3つの集落が復活したことで、南側の仕事が増え、森の南側にもう1つの集落ができていた。
猫耳、熊耳の人たちの集落が森の北側に4つ、南側に3つ、そしてその周りの広大な農地、小さき人たちの集落が森の北側と南側に2つ、その周りの森が、住民以外は立ち入れない保護区になっていた。住民たちは、油田地域、空港地域、港湾地域などに自由に出入り出来て、日本のものを交換していた。
西方大陸東岸地区の返還を求めていたアメリカは、日本の拒否に抵抗できずに、西方大陸北部の開拓に力を注いでいた。アメリカ軍の隊員たちは、戦車の代わりに重機を操作して、国土の開発にあたっていた。日本に頼らない独立の国家を目指して。高緯度の地域とはいえ、暖かいこの惑星では雪なども降らず、温暖で過ごしやすい気候であった。
日本政府は、どうしても不足するレアメタルを求めて、未知のオーストラリア大陸を開拓することを決定していた。かつての世界ではオーストラリアはレアメタルの産出国だったのだ。中国も産出国だったが、産出地域を知らされていなかったので、採掘調査ができない。オーストラリアの産出地域は分かっていた。
ただ、問題なのは赤道を越えずに南半球には行けないという事であった。気温が50℃~60℃と推定される南北緯度5度の範囲をどうやって越えるのか。航空機ならば、成層圏を通過すれば、難なく南半球へ行ける。しかし、降りる空港がない。
オーストラリア大陸の開拓を決定したものの計画の立てようがなく、具体的な手段は自衛隊に丸投げされた。