時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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最終章 9 

「久しぶり、只者でない日本人がまた来たか。」笑いながらそう言って、コリーは三木を自宅に招いた。玄関に槍と薙刀はもう飾っていない。代わりに弓と網が飾ってある。ダブルリョウシ、猟師と漁師の飾りである。

 

 「ところで、何の用でこちらへ?」コリーが尋ねる。

 「しばらく、この集落に住もうと思ってね。どこか、家でも借りれるといいのだが。」と三木。

 「住みたい?何の冗談だ。無理、無理。」

 「電気もガスもないことを承知している。その覚悟もある。」

 「そんなことではない、長が許可しない。」

 「長が・・・・それなら、説得して欲しい。」

 

 「無理だ。以前、南の集落が攻撃されて、そこの人たちが逃げ込んできたとき、追い返そうとしたんだ。よそ者は絶対ダメだと。

 狩りで南の集落の世話になっていたから、助けたかった。だから、長を説得した。説得も大変だった。いずれ出て行ってもらう条件で、かくまったんだ。今もよそ者を入れていない。家が増えているが、それはこの集落の若者と他の集落の娘との夫婦の家だ。とにかく、長は、よそ者の定住を認めない。」

 「話すだけでいいから、伝えてくれ。名前はミキー。ダメなら、近くの森に住む。」

 コリーは三木の熱意に負けて、長ハリーの家へ三木の定住許可を願いに行った。

 

 三木はコリーの家を出て、あたりを眺めた。雪はもう止んでいて、青空がのぞいている。北西に目をやると、遠方の雲の上に白い山々が見える。

 

 (あの山脈はアパラチア山脈だ。雪を被っている。以前は白くなかった、気候がもとに戻りつつあるのかな。以前来た時よりも家が増えている。どの家の前にも、日本製の農機具。変わったにはそのくらいで、のどかさは以前のままだ。以前は違和感を感じていた向こうの川岸の土手も、よくできた水路も、古の民、いや、日本人がつくったものなのだ。 )

 

 三木がそんなことを考えながら集落を歩いていると、「こんなところにいたのか、探したぞ。」と言いながら、コリーがやってくる。

 「住んでもいいって。家までも用意するだと、どうなってるんだ。とにかく、帰ろう。」

 コリーは三木を促すようにして、自宅に向かって歩き出した。

 

 三木を連れて自宅に戻ったコリーは、自家製の紅茶を飲みながら説明する。

 

 「住みたい日本人がいるので許可が欲しいと言ったら、案の定反対したよ。ところが、以前、交渉に来た使節団の1人で、同じ種族かとかいろいろ質問した男だと言うと、手のひらを返したように、いいと言う。しかも、長の家の敷地内に新築して家を提供するってさ。それまでの住まいとして、長の家の離れを住めるように整理するから、昼まで待てだって。ほんと、どうなっているんだ。そうそう、昼食は長の家で用意するから、その時間に来てくれと言ってた。意味が分かんねえよ。」

 意味が分からないのは三木も同じだった。三木は、しばらく、この集落に滞在すればいい、近くの森に住んでもいいと思っていた。

 

 「悪いが、これを日本の公事館に届けてくれ。」と、三木は封筒をコリーに差し出した。USBメモリとDVDと材質不明の箱の入った封筒である。

 日本人は港湾地区と集落の行き来ができないが、集落の人は自由にできる。コリーは集落と日本とのパイプ役で、何度も公事館に出入りしていた。

 コリーは行動がはやい。

 「了解。」と言って、早速出かけて行った。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・

 

 三木はしばらく集落を散策した後、昼時になったので長ハリーの家に行った。昼食に誘われるいわれも、まして敷地内に家を建ててもらう道理もないので、三木は半信半疑でやって来たのだ。

 

 使用人か家族か分からないが熊耳の若い男に、以前会見した部屋に案内された。その時見た額縁の写真を眺める。熊耳の男と猫耳の女の古い写真だ。

 (やはり、思い違いではなかった。あの額縁の材質はハイクオリティプラ、USBメモリとDVDの入っていた箱と同じものだ。前面はガラスではない、古の民の遺跡の明り取りに使っていた反射光のないクリアな合成樹脂。あの写真は古の民、日本人が撮ったものだ。)

 

 そんなことを考えながら、2枚の写真を眺めていると、ハリーがやって来て、

 「どうぞ、こちらへ。」と奥へ案内する。

 「ちょっと、すみません。あの写真の方は?」と三木は写真を指さして尋ねた。

 「この集落をつくったご先祖様だと、先代から聞いております。」そうハリーが答えた。

 

 (ん?500年前の写真?そんなに保存できるものか、秘密は額縁の材質にあるってことか。)

 三木は、日本に送るよう手配した箱の材質を、日本が調べた結果に興味が湧いたが、今となっては知る由もなかった。

 (まあ、調べても分からないだろうが。)そう思いながら、ハリーの後をついて行った。

 

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