時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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最終章 完

 三木は、食卓についた。極めてプライベイトな部屋である。家族が食事をする場所だろう。とても、客を招くようなところではない。

 三木は退職してもう調査官ではないのだが、疑問を感じると探りたくなる職業病からは抜け出していなかった。

 

 狭い食卓で、ハリーと鼻を突き合わせて食事をする。使用人か家族か分からないが猫耳の女性が給仕をする。

 「御家族は?」とハリーがプライベイトな質問をする。

 「いません。」と三木が答える。

 

 三木は幼少の頃に交通事故で両親と死に別れ、孤児院で育ったのだ。優秀だったので子供のいない院長が引き取り、大学卒業まで援助した。国家公務員試験の合格を喜んでくれたその院長夫婦も亡くなり、日本に三木の親類縁者はいない。

 

 「父親の名は?」とハリー。

 (変なことを聞く。ミキーが本名とは思っていないだろうに、本人の名前も尋ねないで、親の名を聞くか。)と思ったが、三木は「ミキ 託郎。」と答えた。

 三木は孤児院の院長から両親の姓名を教えてもらっていた。

 「御両親は?」

 「交通事故で亡くなりました。」

 

 三木はハリーのプライベートな事柄の質問にうんざりしながらも、この集落に住むことができる恩義があり、まじめに答えていた。

 (どうしてこんなことを聞くのか。)と疑問に感じながら。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 三木を離れに案内した後、ハリーは連絡を走らせ、小さき人の集落の長を呼んだ。そして、敷地内の建築予定の場所に案内し、家を建てるよう頼み、細かい注文をつけていた。

 そして、コリーに連絡をとり、ミキ託郎の交通事故について、日本に調べてもらうように指示した。日本政府は食料危機を救ってくれたハリーの申し出を、断るわけにはいかなかったのだ。

 

 離れに案内された三木は、建物は古いが置かれている家具が新しいことに気付き、好待遇な理由を尋ねなかったことを後悔していた。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 レアアースは小笠原諸島の南鳥島沖の海底から採取することで、需要を満たしていたが、レアメタルは都市鉱山からだけで、どうにもならなかった。

 そこで、秘密裏にオーストラリア大陸の開拓に乗り出したのだが、空港ができ、高温の赤道地帯を通過できる貨物船ができた頃には、物資と人の移動が多くなり、マスコミに嗅ぎつけられた。

 

 連日連夜、報道番組は高温の赤道地帯を通過してオーストラリア大陸へ出向くことを取り上げ、この惑星が地球か反地球がを議論していた。まだ、ピラミッドや万里の長城などの映像は表に出ていなかったが、海底の映像が公になっても、政府は反地球論を支持していた。しかし、その論調は弱くなり、地球かもしれないと言い始めていた。

 

 そもそも、反地球というのは地球とそっくりな惑星というわけだから、何が出てきても、地球か反地球かの判断はできない。議論するだけ無駄なのだが、番組はそれが面白いから取り上げる。そして、踊らされているのは視聴者だ。

 

 地球か、反地球か、政府は、もうどちらでも良かった。というのは、地球だと困るのは、アメリカが西方大陸東岸地区はアメリカの領土だから返せと要求されることだけであり、その危惧がなくなったからだ。アメリカは日本の膨大な援助で西方大陸北部の開発がなされ、その地を領土として建国していた。軍事的な影響力も以前の地球とは逆転していた。

 だから、三木が送ったUSBメモリの内容を見ても、驚きはするが、とりたてて秘密にすることでもなくなっていた。

 

 ただ、せっかくなじんだ西方大陸の名称を北アメリカ大陸にするのか、東方海を大西洋にするのかという問題が残っていたが、有識者が勝手に決めてくれればいいと考えていた。

 そして、三木の日本からの逃亡も、身を守るためであれば意味のないことであった。

 

 緑に覆われたユーラシア大陸とアフリカ大陸、そして南アメリカ大陸に町も村もなく人の住んでいないことを確認した日本政府は、もとに戻ろうとしている地球環境にとって、そのままにしておくことが最善であると判断した。

 移転によって職を失った人たちが多くいたが、国内の休耕地の提供や西方大陸東岸地区の開発、他国との交易などで、失業問題もなんとか解決の目途がついてきた。

 変わり果てた地球を嘆くのではなく、重要なのは、この環境で、周りの諸国と協力しながら、生き延びていくことである。幸い、気候も植物のおかげで元の地球に戻りつつあった。

 

 ・・・・・・・・・・・・・

 

 惑星歴499年12月が暮れようとしていた。まもなく惑星歴500年が始まる。

 

 ハリーは自室で、箱の中から写真を取り出し眺めていた。三木がハイクオリティプラと呼んだ箱に大切に保管していた写真である。その写真には、猫耳でも熊耳でもない若者の顔が写っていた。

 その写真を眺め、ハリーは呟いた。

 「よく似ている。古の先祖が500年後に帰ってくるという言い伝えは、本当だったんだ。」

 

 その写真は飾ってある写真の先祖の子、未来託一の写真である。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・

 

 三木は公事館から帰ったコリーから日本の内閣が総辞職したことを聞いた。

 日本の政局が動いていることを知ったが、それはもうどうでもいいことであった。

 

 三木は、真新しいベッドに横になり、タブレットを開いて、USBメモリに記録されていた最後の文章を眺めていた。

 

 「最後に、時空移転装置は高エネルギーで発動させれば、発動するが装置は破壊することを付け加えておく。発動のテストとして、少ないエネルギーで1人の人工的な人を過去の日本に送り込んだ事も。

 熊耳と猫耳の夫婦に最初にできた子供が、不思議なことに猫耳でも熊耳でもなく、我々と同じ耳の子供であった。その子はとても優秀で勇敢であった。ちょうど、その子が成人した時、時空移転装置の発動のテストをすることになり、彼に身に起こることと理由を説明して、テストに参加することを頼んだ。冒険心に富んだ彼は、瞳を輝かせて、「あなたたちの国にいけるのですね。」と言って承諾した。

 そして、1945年の満州国から引き揚げた人々の中に彼を転移させた。未来を託すと言う意味で、姓は未来と書いてみきと読み、名は託一、未来託一という日本人として転移させたことも付け加えておく。」

 

 三木の本名は未来託也である。

 

                   (完)

 

 最後まで、読んでいただいてありがとうございます。




 拙い小説に、ご感想、ご指摘ありがとうございます。ご指摘の戦闘シーン、書き直させていただきます。再度、読み直し訂正、補足等を加えて、最終的な完といたします。なお、「続 時空をこえて」という題で、続編を投稿しております。残された謎も解明する予定です。また、一読願えれば幸いです。
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