集落の長ハリーの家に近隣の長たちが集まり、日本との調印式ならぬ契約書に拇印を押していた頃、三木は隣の集落、背の低い人たちの集落にいた。
集落は森の中にあると言ったほうがいい、北側だけが開けて、周りは森だ。開けている北側の遠方に川岸の土手がみえる。この集落には、炭焼き小屋、焼き物の窯、木工所、そして、鉄工所まである。
どの男も、髪が長く、髭も長い。女はさすがに髭はない。熊耳、猫耳の人たちはいない。同じ種族だけの集落のようだ。
(どこかアニメで見たような。そう、ドワーフ。頭に兜でもあれば。男は戦士ドワーフ。
これで魔法でもでてくれば、アニメそっくり。なんとファンタジーな世界か。)
声をかけて、話を聞いた。猫耳、熊耳の人たちと同様、日本語が通じる。
(不思議なことだ。これは本当に不思議なことだ。)
三木は解けない謎のような気がした。
最初は警戒されたが、根気よく丁寧に尋ねて、話してもらえるようになった。
ここの集落のいろいろな技術は、師弟制度で受け継がれていて、だんだん発展してきたという。そして、その基礎は古の民から教わったという伝承が残っているそうだ。
(古の民の伝承?ますます、わからなくなった。そもそも伝承なるものは誰かがつくったもの、事実とは違うものだ。先祖が発展させた技術や遺産が、誰かにより伝承になる。古の民とは自分たちの祖先、そんなところか。見れば日本の江戸時代程度の技術だ。河川の堤防も水路も江戸時代にはつくられていた。)
三木がそんなことを考えていると、無線連絡が入った。使節団の仕事も終わり、護衛艦いずもにもどるとのこと、そして、哨戒ヘリが侵略者らしき兵を発見したとのこと。
三木はハリーやコリーの集落にもどり、コリーに侵略者らしき兵がやってきてることを伝えて、急いで森をぬけ、待機していたヘリに乗った。
三木が帰るとすぐに、隊員が指令室に案内する。そこには、渡辺艦長と佐川一尉が待っている。
テーブルには兵の野営らしきテントの写真が数枚、モニターにはドローンからリアルタイムに送られてくる兵の進軍の様子。騎兵50に150の歩兵。装甲車や自走砲などはない。
「あと3・4時間で森に達すると思われます。」と渡辺艦長。
「200ほどですか。爆撃機で爆弾落として、スペクタクルですね。楽勝だ。」
三木の言葉に、渡辺と佐川は顔を見合わせて苦笑い。
「爆撃機はありません。日本は専守防衛の国でしたから。これからはわかりませんが。」と渡辺。
「F35B戦闘機があるでしょう。この世界に来る前に動画でみましたよ。艦上運用試験のようすを。」と三木。
「それは護衛艦かがでしょう。」と佐川。
「カタパルトというのかな、固定翼機を送り出すシステム。この艦にもあるのでしょう。」と三木。
「あります。無人機射出システムもできてます。でも飛ばすものがない。」と渡辺。
「なら、ヘリでダダダダと一網打尽に。」
「本艦にあるのは、哨戒ヘリと救助・輸送ヘリだけです。」
「SSM装置、Ship to Ship Missile、カッコいいですね。対艦用だけど、ミサイルですから兵の集団にも効きますね。ドカーンといきましょう。」
「ありません。何を言ってるんですか。」渡辺は呆れていた。
「空からもミサイルも無理ですか。で、国は何と。」
「食料の確保が大事、集落を野盗集団から守れと。」佐川が笑いながら答えた。
「野盗集団ですか、国との戦争はできませんからね。で、陸自は1分隊しかいないんですよね。どうします?」
「私を入れて13名。集落の武力兵は何人いてもあてにならないから。200対13ですよ。いかに武器の性能差があっても・・・」
「でも、戦いは数ではなく質でしょ。」と三木。
「部下に殉職者は出せません。」と佐川はきっぱり。
しばらく沈黙。
「何とかしなければ。幸い、対岸まで水深を調べたら意外と深く、艦をもっと近づけることができるから、自衛砲だけど、砲撃ができる。」と渡辺。
「海から攻撃してくれれば、携帯用のロケット砲もあるから、13人でも勝ち目ができる。こちらが1発目のロケット砲を打ち込んだのを合図に、砲撃開始。よろしく。ロケット砲の攻撃が終わると、輸送ヘリに部下を乗せ、2機のヘリで攻撃させるから、砲撃を止めて。壊滅は無理、白旗を上げさせる。では。」
佐川はそう言うと走り出ていった。
ついに戦闘