こんなラストで気付くことかよ
──よう、エクラ
──……今日にはもう、この街を出るんだってな
──はっ、俺もこうなるとは思ってなかったよ
──ミアロ先生にはずいぶん叱られちまったよ。まったくあの人も、面倒見がいいというか、おせっかいというか
──ああ、そうだな。俺の居場所はここだ
──どうだろうな、お前がいなくなったら、また天災の中に戻っちまうかもな
──……冗談だよ
──……正直なとこ、俺にはまだ未来ってやつは見えねえ。あの時なんでお前の手を取ったのかも、分からねえままだ
──それでも、もうちょっと生きてみるよ。人生、悪いことばっかじゃねえ。お前みたいなやつもいるってわかったしな
──まあ、その、なんだ。達者でな……鉱石病には気をつけろよ……たまには顔見世に戻ってこいよ……
──……エクラ、ありがとうな。俺をここに引き戻してくれて
──ああ。またな
──あっ! ってめえら、のぞき見してんじゃねえぞ! ニヤニヤすんな! いいから武器もて! 訓練の再開だおらぁ!
──エクラ、もう行くのかい?
──……その、アルフォンスたちは──
──そうか。無事ならいいんだ。私の事情に巻き込んでしまって申し訳ない
──君のおかげで、随分と調査も進んだ。まあ、まだ何年かかかるだろうが……いつかはたどり着けるさ
──ああ、弟の件の情報元からは謝られたよ。ま、私としては、好き勝手やる免罪符が増えてよかったってところかな
──そうだエクラ。これを渡しておこう
──ミナトマハイの宝石さ。安物だけど、それには面白い性質があってね。こうして重ねると──
──ほら、色が変わるんだ。これは二つで一つ。他の石とじゃ、絶対にこうはならない。この片割れを、君が持っていてくれ
──君との契約は、私の未来を拓いてくれた。だからこれは、その記念のようなものさ
──ふっふっふ、私がシャアの遺跡を発掘した暁には、君の名前もこのサルゴンの歴史に残してあげるよ
──……うん、いつか君たちが帰ってしまった後も、君のしたことはこのテラの歴史に残り続けるんだ
──君はこの世界で、どんな歴史を紡ぐのかな
──そうか。私は君にはついていくことはできないけど、協力は惜しまない。サルゴンで困ったことがあれば、いつでも私に連絡するんだよ
──エクラ、また会おう
──さて、私も自分のやるべきことをするとしようかな。まずは、この石板の片割れを見つけてあげないとね
──おや? これはこれは、エクラさん。ご機嫌いかがですか?
──しかし、お手柄でしたね。レッドラベル契約を結んだ傭兵たちを一網打尽にするとは。いやはや素晴らしい活躍でした。まあ、肝心のヤムには
──ふっ、お忘れですか? 危機契約機構の理念はより多くを救うこと。そのためなら、多少の罪には目をつぶります。今の彼に、他者を害する気はないでしょう
──すでに彼の討伐を目的とした常設危機契約は取り下げられてます。まあ、メイソンが死んだことでその裏にいた人間を追求することはかなわなくなったそうですが……そこは、我々の領分ではありませんので
──それで、今日はどんなご用件で?
──ほう、なるほど。いえ、私はいつかこうなるだろうと思っていましたよ
この異界とエクラのいた世界は大きく違う。だがそれでも、変わらないものがある。それは人間の営みだ。どこの世界でも、彼らは未来を拓くために必死に今日を生きている。英雄であれ、感染者であれ、そこは変わらない。
だから、エクラがやるべきことも、なにも変わらない。彼らが明日を掴むための手助けをしたい。夜を照らす炎となる。そのための第一歩が、これだ。
──出身不問、種族不問、善悪不問、必要なのは十分な実力のみ──全ては、より多くの命を救うために。我々はあなたを歓迎しますよ、エクラさん
危機契約。己の限界を試す場であり、より高みを目指す場であり、目いっぱい遊ぶための場でもある。
そんな契約に、また新たなるプレイヤーがいざなわれた。
彼はエクラ。異界の召喚師である。
箱舟の夜を照らす炎、それを見つけるために──召喚師は、危機契約に挑む。
完
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。これにて完結になります。
予定では単に一章完結というだけだったのですがですが、思ったよりも執筆に時間がとられてしまい、私生活との両立が難しそうなので、ここで一旦終わりとなります。また時間が取れたら戻ってくるかもしれません。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。またどこかでお会いしましょう。