召喚師が危機契約に挑む話   作:暇人のアキ

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危機契約機構

「──アスク王国の諸君! サルゴンへようこそ! ここがロングスプリングだよ」

 

 翌日、一行はサルゴンの都市の1つ、ロングスプリングに降り立っていた。

 なお、飛空城は目視できない程の高さの雲の中に隠してあり、地上に降りる際の扉は町から遠く離れたところに開いていた。

 

「わあー、すっごく広いですね! お店も沢山あって、楽しそうです!」

「荒野の中にあるはずなのに、かなり栄えているんだね」

「いろんな種族の人がいるなー。あれはラグズかな? それともタグエル?」

 

 三者三様の反応を見せるエクラたちに、ペペはどこか自慢げだ。自国に対する新鮮な反応が嬉しいのだろう。

 

「あっちはクランタで、向こうはフェリーンだよ。ちなみに私もフェリーンだ」

「へえ、やっぱり変身できるの? 獣石は?」

「へ、変身……?」

 

 獣人と言えば獣石を使って変身するもの、という認識のあるエクラたちだったが、どうやらこの世界ではそうでもないようだ。

 

「この異界は今までのよりも遠い、という話だったが、どうやらこれまで見てきた異界とはずいぶんと違う世界のようだね」

「まあ、樹がいた世界もそんな感じだったし。そういうこともあるでしょ」

 

 街並みや種族、魔術の違いに獣石の有無。やはり、これまでの異界とは大きく違うようだ。

 

「今日のところは、私がこの街を案内しよう。こちらの一般常識もある程度は教えないといけないからね」

 

 現状、帰還する手段が分からない以上、この世界でしばらく生活していくことも目途に入れる必要がある。そのため、この世界のことをペペにレクチャーしてもらおうという話になっていた。

 

「おっと、その前にこれを渡しておこう。私の予備の携帯端末だ」

「これは?」

「……あー。つまり、遠方の相手とも連絡が取れる道具だ。使い方はあとで教えるよ」

「へえ! すごい道具なんですね!」

「まるでヤクシの石みたいだね」

 

 ペペは携帯端末を取り出すと、それをエクラに渡した。

 

「いいのかい? それなりに高そうなものだが……」

「いいさ。依頼の前払いだと思って、受け取ってくれ」

 

 アルフォンスからすれば見たことが無いものだが、そんな機能があるのなら高級品だろうと予測して、断ろうとした。しかし、依頼の報酬だと言われてしまえば断れなかった。

 

「さて、まずはどこから回ろうか」

 

 携帯端末を受け取ってもらえたペペは、考えを巡らせる。まずは屋台で軽食でもつまむか、なじみの店で遺跡探索用の道具を補充するか、あるいは色々なアーツユニットを見せるのも良い。

 そんなことを考えていた矢先だった。

 

「──おや?」

 

 前方から、声がした。ねばつくような、やけに耳に残る声だ。

 その声の主は、飄々とした男だった。少し心配になるほどのやせ形で、背が高いのでまるで案山子のようだ。

 ペペはその男のことを知っているようで、顔を見たとたんに眉をしかめた。

 

「君は……」

「これはどうも、シュナペカペ殿。いえ、今は考古学者のペペ殿でしたか。随分とお早いお帰りで」

「サイ……危機契約機構がなんの用かな?」

 

 サイ、と呼んだ男のことを、ペペは少し警戒しているようだ。彼女の警戒につられて、エクラたちにも緊張感が走っていた。

 サイは後ろのエクラたちを一瞥だけすると、すぐにペペに視線を戻す。

 

「いえ、用というほどのものでも。ただ、我々の間で噂になっていましてね。あなたが天災多発地域を超えるために、天災トランスポーターを探している、と。まあ、この付近にあそこを訪れるような命知らずはいなかったようですが」

「その件ならもう終わった話だ。君たちに迷惑をかけるようなことはないよ」

「いえ、そうではなく。我々が気にしているのは“レッドラベル”の件なのです」

 

 彼らの会話は、エクラたちにとっては知らない用語ばかりだ。ゆえに、その意味をかみ砕いて咀嚼するのに精いっぱいだった。なお、シャロンはすでに理解を諦めていた。

 

「サルゴンに住んでいるもので、あの地域に近づこうとする者はいないでしょう。しかし、クルビア人であれば?」

「……リグス工業か」

「ええ。どうやら、あなたが天災トランスポーターを求めて騒いだおかげで、彼らの目についてしまったようで。クルビア人は貪欲ですから。かの王の宝物庫などという単語を聞いて、彼らがじっとしていられるはずもない」

「……ことの重要さを分かってほしくてある程度の情報を流したんだけどね。失策だったかな」

「かの企業はあなたを狙うためにレッドラベル契約を結びました。レッドラベルは、天災に潜み、天災を利用し、天災を食い物にする者たち。我々天災トランスポーターにとっては、不倶戴天の敵です」

 

 そこまで話したところで、サイの目線は再びエクラたちに移った。

 

「ところで、見慣れぬ服装の方々と一緒にいるようですが」

「彼らは私の友人だ。普段は外国に住んでいるが、サルゴンに旅行に来るというから、案内していたんだ」

「ほう? それはそれは、楽しい旅行に水を差してしまって申し訳ない。それでは、邪魔者は去るとしましょう」

 

 サイはわざとらしいほどに恭しくお辞儀をすると、背を向けて立ち去る。数歩だけ歩き、ふと振り返った。

 

「おっと、友人殿にもご挨拶を。──我々は危機契約機構。出身不問、種族不問、善悪不問、必要なのは十分な実力のみ。全ては、より多くの命を救うために。天災に立ち向かう気概があるのであれば、ぜひ我々のもとへ」

 

 それだけ言い残すと、サイは今度こそ去っていった。

 一同に流れていた緊張感がとれ、ほっと息を吐く。

 

「……なんだか怪しげな人でしたね」

「あいつはサイ。危機契約機構の職員で……まあ、その通りの怪しい男さ」

 

 ペペは苦々しい顔で同意する。どうやら彼のことはあまり信用していないようだ。

 

「天災っていうのはあの砂嵐みたいなやつのことだったよね。危機契約機構はあれと戦ってるの?」

「そうだね。危機契約は、天災からより多くの人々を救うための仕組みさ。天災の被害を受けた人が依頼して、危機契約機構が最も成果の残せそうな企業や個人に依頼を回す」

「へえ。じゃあ良い人たちなんだね」

「……そうだね」

 

 危機契約機構。天災に抵抗し、より多くの人々を救うための組織。たしかにそこに属する者たちは、他者を救おうとする高潔な人なのだろう。

 しかし、それは危機契約機構の一面に過ぎない。ペペはそれをよく知っていた。

 

 とはいえ、わざわざここで言うようなことでもない話だ。危機契約機構の話はここで打ち切って、まずは軽く食事とすることになった。




召喚の儀

 召喚士のみが執り行える、英雄を召喚するための儀式。要するに、ガチャ。
 異界の英雄と会うこと自体は召喚の儀をせずとも可能だが、自由に呼び出せるのは召喚士だけ。
 異界の英雄はいずれも強力であり、傷付いて倒れても再び召喚することでいくらでも復活する。チートかな?原作では敵も似たようなチート能力を使うことでバランスをとっていたが、本作ではリソースの不足という形でバランスをとる。
 なお、原作では召喚の儀の詳細設定は不明なので、そこら辺の設定はオリジナルの物が多い。一応、原作との矛盾はない……はず。
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