ゲヘナ、某所
「どうして、こんな事に……」
紫と緑にペイントされた世界、次々と倒れる生徒たち、倒壊する建物……
きっと、悪い夢に違いない
そう、逃避(に)げたかった。でも、生徒の為にも逃げる訳にはいかない
「先生……逃げて……ください……もう……パンちゃんは止められませ……ん……」
「ジュリ!」
私は世界に同化しつつあったジュリに駆け寄り、不快な感触を気にせず彼女の手を取る
「ごめんなさい……私のせいで……」
「そんな事はない! ジュリのせいなんかじゃない!」
彼女の意識を奪う紫緑色のそれを拭いながら私は必死にジュリに言葉を紡ぐ
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どうしてこうなったのか、アレは半日程前
「先生、おはよう」
「おはよう、ヒナ」
私はヒナに呼ばれてゲヘナ学園へとやってきた
モモトークの内容によると……
「美食研究会と温泉開発部……それとサバゲー部だっけ……」
「うん。アイツらが行動を共にしてるらしく……先生の手を煩わせるまでも無いと思ってたのだけど、アコが『先生を頼りましょう。不服ですけど』って……」
アコが?
当然だが、私は天雨アコと言う生徒を知っている
彼女が私を頼るのは決まって大事だ。ヒナや周りの様子からして緊急事態と言う訳でも無い
風紀委員の実力ならヒナの言う通り、独力でも対応出来る……これまでもそうしてきた
「…………多分、アコはゲヘナの”地下水”が気になっているみたい」
「”地下水”……?」
以前に聞いた事はある。ゲヘナには『凄まじい効果を持つ”地下水”』があると
それ関連でヒナから聞いたのは……
「先生、私も気になる事が一つある」
「気になる事?」
「……
一見あまり関係のない、美食研究会がフウカを拉致した『いつものこと』なのだが…………
「ヒナ、今……
「えぇ。給食部のフウカとジュリ、両方連れて行かれた」
「あぁ……」
点と点が繋がった
ジュリは料理を作ろうとすると”パンちゃん”と言う生き物? になってしまう。製造過程は見ていないが、それによる一連の騒動は覚えている
それより以前にヒナが対処したと言うパンちゃんは例の地下水を利用して作られたらしい
恐らく美食研究会と温泉開発部そしてサバゲー部の目的はそのパンちゃんを出現させる事……
「いや、意図が解らない……」
「……そう言うのを含めてアコは先生を頼ろうとしたのかも」
「うん、私もアコだったら頼ってたかも。何が起きるのかが予想出来ない……うーん、ここで悩んでても仕方ないね。アコ達と話もしたいし……」
「わかった。みんな部室で待ってるから行こう、先生」
ヒナの先導で私は風紀委員の部室に向かう
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「あ〜ヒナ先輩…………と先生だあ!!」
部室の扉前、後ろから元気な声と共にドンッと衝撃が走った
余りの勢いにビックリしたが、相手が誰なのかは判ったので踏み止まる
「イブキ、こんにちは」
私は背中に激突してきたイブキと向かい合い、抱っこする。すると更に嬉しそうな笑みを浮かべる
「先生、こんにちは! ヒナ先輩もこんにちは!」
「うん、こんにちはイブキ。今日も元気ね」
ヒナの質問にイブキは更に瞳をパーッと輝かせて
「だってイブキ、ヒナ先輩と先生を見つけたんだもん!」
身振り手振りで感情を表現する。思わず頭を撫でてしまうがイブキは「むふー」とご機嫌になってくれたので良かった
「そう。それよりイブキ、いま一人なの?」
ヒナがそう言うとイブキは首を横に振り、後ろの柱を指差した。その指先に居たのは……
「マコト……」
名を呼ばれたマコトは柱から出現し、ヒナに近付く
「フン、イブキとの散歩がてら
ヒナの目と鼻の先まで迫り、見下しそう言うと、今度はその鋭い眼光をこちらに向ける
「……それより何故先生がここに?」
「あ、それは……」
「先生」
事情を説明してマコト達
「おや? 先生の邪魔をするとは随分偉くなったモノだな風紀委員長?」
「はぁ。あなたが揚げ足取って先生を困らせるのが目に見えてるからよ……用が無いのならイブキとの散歩を続けるべきだと思うけど」
「キキキキッ……そうさせて貰おう。イブキ、パトロール続行だ!」
「はーいマコトせんぱーい」
マコトはそう言い踵を返す。私は抱っこしていたイブキをゆっくり降ろす
「先生! ヒナ先輩! またねー!」
満面の笑みで両手を振ってマコトの元にとてとて、と走り去るイブキを見て、私とヒナは一時の幸せを感じた
「…………先生、今回の件、
「協力してもらえるかもしれないけど……」
ヒナがこう言う理由は勿論解っている。マコトが知れば今回の事をダシにし、無理難題を言ってくるからだろう
そうなればヒナは勿論風紀委員にも迷惑がかかる
「マコトが無理を吹っかけてくるのは別に良い。最悪私が何とかするから……でも、
「…………ああ、そういう事?」
ヒナは恐らく、マコトが今回の案件を知ってて黙秘してる可能性があると考えたのだろう
そして、「
「取り敢えず、そこも含めてアコ達と話をするべきだと思う」
「…………」
思わず頬が緩んでしまった
「先生?」
案の定、ヒナが疑問符を浮かべながらこちらを見つめる
「ごめんね。ヒナもちゃんと成長したんだなって嬉しくなっちゃって」
「……………………そう」
ヒナはそっぽを向いたままこちらに顔を見せてくれない。だけど、それがどう言う感情なのかは分かる
頭上に浮かぶ黒紫色のヘイローが、いつもよりソワソワとしていたのだ
「⸺⸺先生、先に入ってて」
「うん、わかった」
…………イブキちゃんって可愛いですよね。なんか思わず抱っこしたくなっちゃいますよね(自我)