ゲヘナ学園風紀委員長の空崎ヒナからの連絡でゲヘナ学園へと向かった先生
部室で話をしようとした矢先に議長である羽沼マコトと邂逅する
出会ってから少しずつ成長するヒナを嬉しく思いながら、先生は風紀委員会の部室へ足を踏み入れる
風紀委員会 部室
一足先に部屋に入った私
「お帰りなさいヒナ委員ち…………」
待ち望んでいた主の帰還、恐らく目の前に居るこの青髪の少女はきっと私を望んではいない
「ただいま、アコ」
「あ、はい。おはようございます先生」
歓喜に煌めいていたアコの薄花色の眼は瞬く間に死魚の様に淀み、極めて淡白な返答と共にコッソリと溜め息を吐かれた
「ヒナじゃなくてごめんね。でも、アコが私を頼るように言ってくれたんだよね?」
「ええ? まあ? 何だかんだヒナ委員長やイオリ達も頼りにしてますし? その、私だって別に? ……
相変わらず面白い子だ。だが、ここで揶揄うと狂犬の様に噛み付いてくるのでここはヒナに任せて後ろに居る生徒たちにも挨拶をする
「イオリ、チナツ、こんにちは」
「こんにちは。来て早々アコちゃんに睨まれて災難だったな、先生」
励ましに見せかけて面白い物を見たと言わんばかりにニヤニヤとしているイオリ。少し疲弊している様にも見えるが……
「こんにちは先生、お会い出来て嬉しいです」
一方のチナツは私とアコの一連の事を気にしていないかの様に微笑み、挨拶をしてくれる
彼女も少し疲れている様子
「風紀委員の皆、揃ってるみたいだね」
「ああ。今回は事が事だからな」
美食研究会、温泉開発部、サバゲー部が
やはり大事なのだろう……しかし、私は気になる事が一つだけある
「所でイオリ」
「ん? なんだ?」
ここまでの会話で一切気にしてなかったけれど、改めて思うと気になってしまった事がある
「サバゲー部って?」
「そう言えば先生は知らなかったんだっけか」
サバゲー部、聞いたことはある。ゲヘナの一般生徒やスケバンらに喧嘩を売る部活……その認識があるだけでそれ以上の情報は持ち合わせていない
ただ、
「それなら……」
「イオリ、大丈夫。私から後で先生に説明しとく」
ヒナがそう言いイオリを制すると「ヒナ委員長がそう言うなら……」と彼女に譲った
「先に言っとくと、サバゲー部は温泉開発部とつるんでる……イオリはそれぞれの部長の
ヒナの補足のお陰でサバゲー部がどの様な物なのか、少しだけ分かった気がする
あのカスミと一緒に煽るくらいに仲良しなら、それはもうイオリの天敵でもあるだろう……
「さて……アコ」
「はい」
ヒナは本題に入ろうとアコの方を振り向く。すっかり普段のアコに戻っており、私に一瞥もくれないまま話を進行する
「まず、給食部の拉致についてですが、こちらは三時間前、朝の七時頃」
「朝飯前か……」
「……お陰で朝から暴動の鎮圧をさせられた」
イオリは心底呆れたと言わんばかりの表情で軽めの愚痴を言い放つ
「大変だったんだね。お疲れさま」
「べ、別に褒められる程の事じゃないし。これくらいはゲヘナじゃ当たり前だ!」
「……続き、いいですか?」
照れるイオリをアコは牽制する様に次の話題を振ってきた
確かに、こんな事をしている場合じゃない
「──拉致から三十分後、温泉開発部が間欠泉を発生させ、風紀委員会でそれの鎮圧」
「あの温泉開発部をよく止められたね……アコが頑張ったのかな?」
「先生、その」
アコが不自然な咳払いをする。一体どうしたのだろう?
「今は大事な話をしているんですよ! 変な事言うのやめてもらっていいですか!?」
「えぇ…………」
顔を真っ赤にしたアコに怒られてしまった
「はあ……人が折角…………まあ、いいです。温泉開発部を止めた直後、背後からサバゲー部の襲撃がありましたが、彼女らは最低限の戦闘行為のみで、温泉開発部の部員の回収しすぐに逃走しました」
「追わなかったの?」
「えぇ。朝から暴動があって体力も削られていましたし……それと怪我人も出ていましたので……」
朝から大変だ……幾らゲヘナとは言えこれは災難だ
「そんな中で怪我人の対応をしたチナツが頑張ってくれた訳だね」
「……すぐに来て下さったセナ部長と救急医学部の皆さんのお陰です」
チナツは僅かに顔を紅潮させている。熱でもあるのだろうか?
「こほん」
チナツを少し心配しようとした矢先にアコが不自然な咳払いをした。本題から逸れるのもアレなので私はそのままアコの方を向いた
「それで、すぐにヒナ委員長を呼ぼうとしましたが……」
「その時既にサバゲー部は行方を眩ませた。一応先生を待ってる間も探してたのだけど」
見つからなかった、と
しかし、疲弊と被害への対処があったとは言え風紀委員が行方を失うとは……
しかし、色々とタイミングが悪い
給食部の二人が拉致されて無ければ、暴動も起きず、サバゲー部の逃亡先も割り出せたかもしれない
「更にその後、ゲヘナの料理店が爆破……恐らくは美食研究会の黒館ハルナさんでしょう。こちらも既に逃亡を完了しており……」
「ボロボロだ……」
私は思わず口にしてしまった
アコとイオリが同時に私を淀んだ目で睨み
「言っときますけど! 別に私達が─────が居なかったらとかそう言うのではないので! えぇ!」
「言っとくけど! 別に─────からとかそういう訳では無いからな! 先生!」
同時に口を開く。何を言ってるか正確には分からないが恐らくどっちも同じ事を言っている
「いや、これは流石に風紀委員会がどうのこうのじゃなくて、向こうが周到な作戦を考えての上だと思うよ? でなきゃこんなタイミング良く……」
「うん。私もそう思ってる。この感じ、マコトがやっぱり怪しい」
ヒナが補足する。さっきの件も本人の言うとおりイブキの散歩ついでに視察を兼ねている可能性もある
「だけど一体何の為に……?」
「いつもの嫌がらせだろうけど、マコトがタダで温泉開発部や美食研究会に協力するとは思えない」
勿論ゼロでは無いけど、と補足するヒナ
みんなが頷く中、私は一つ疑問が生まれた
「そう言えばヒナ」
「ん? なに?」
「以前にパンちゃんと戦った時、ヒナは一瞬で倒したの?」
「速やかに倒しはしたけど、一瞬かと言われるとそうでもない。一分くらいは掛かった」
……例えばヒナが一般生徒一人を倒すに五秒も要らないとする
そんなヒナが一分掛ける様な相手になるのなら……
「……マコトがその事を知っていたら、下手な方法よりずっとヒナを疲弊させられるって考えるんじゃないかなって……」
「……
「わかりました。兵器は……」
「……………………。」
ヒナは沈黙した。恐らく彼女の中で、不測の事態に備えて大型兵器を運用するかを悩んでいる
マコトにイチャモンを付けられる隙になりうるし、何より被害の事もある
「ヒナ、それとアコ……責任は
「……ありがと」
「ありがとうございます」
ヒナに続きアコも小さな声で何かを呟き礼をしてくる
その為の
「イオリも、大変だと思うけど頑張ってね」
「せ、先生に言われなくても判って! でも、まあ……ありがとう」
「チナツも救急医学部との協力や風紀委員としての支援で疲れると思うけど……私も出来る限りで協力するから」
「……ありがとうございます。それでは沢山頼りにしますね」
イオリはすぐに風紀委員会の部員達を纏め、部室を後にする
チナツも一礼の後に部室から出ていく。今からセナの所に行くみたいだ……現場でちゃんとセナにも挨拶しておかないとね
「それでは、私は
「あはは……お手柔らかにね」
アコが邪悪な笑みを浮かべるが、まあ、彼女が楽しそうなので良いだろう
「…………」
アコも部室から出ていき、他に誰も居なくなった部室で、袖を弱々しく引っ張られる感覚がした
「ヒナ?」
「……先生、私にも何か言う事ある?」
部室に残っていたヒナは少し照れ臭そうに私を見つめ、甘えた様な声で何かを訴え掛ける
勿論、ヒナの要求は聞くまでもないし私だって最初から言うつもりだ
「私もヒナの事を頼りにするけど、ヒナも頼ってね! 一緒に、頑張っていこう!」
「…………うん」
私の言葉に対し、ヒナは私の顔を見てはにかんだ表情を見せ、そのまま机に掛けてあった武器を持ち、部室から出ていく。安心してくれて何よりだ
その姿はいつも以上に元気で頼もしい姿で私も彼女と頑張ろうと思った
「でも、その前にやるべき事はある」
風紀委員会の皆には出来なくて私に出来る事
私は戦闘が出来ない代わりに彼女達の影として支えなければいけない
──────────────────────────
十分後
「…………で? 私を呼んだと」
「ごめんね、イロハ」
「……まあ、先生に呼ばれたなら仕方ありません。ただし後日、私の要件に付き合って貰いますからね」
ヒナ達と離れた後、私は万魔殿で状況を知ってて私ともしっかり話してくれそうな子としてイロハを呼び出した
「先生が仰る通りですよ。あの人、以前発生した化け物の話を聞き付けて給食部の牛牧ジュリに化け物を作らせろ、なんて無茶な命令をしてきました。結局はマコト先輩が自分から温泉開発部と美食研究会に話をしに行き、今の結果になりましたけどね」
「そこまでするのか……」
「えぇ、何せ先輩は風紀委員長への嫌がらせの他に
「外から?」
イロハの言葉を疑う様に思わず聞き返してしまった
エデン条約は破談となり、ゲヘナと嘗て敵対関係にあったトリニティはその時のいざこざで今は内部を整えるので手一杯だ
そんな中で、侵攻への対処と言う決断を急ぐのか?
「流石にそれに関しては私も知りませんね。少なくともマコト先輩本人がそう言ってただけです……風紀委員会に嫌がらせをする為の建前な可能性もありますが」
「マコトに直接訊いてもダメだよね……」
「その場合、先生は先輩があの手この手を使って万魔殿の味方にさせられます。イブキが喜ぶので私も楽になるんでそれも良いですけど……」
「いや、流石に風紀委員会を捨て置けない。イロハ、ごめんね本当に」
よく判らない。しかし私の中ではとある可能性が浮上しつつあった
「いいえ、先生のお役に立てたならそれで充分です……勿論、さっきの
「イロハからデートのお誘いなら、喜んで」
「そんな面倒くさい事する訳ないじゃないですか。一緒にサボるだけです…………そろそろ戻らないと先輩がうるさそうなので戻りますね」
「うん、ありがとう!」
立ち去るイロハに手を振って見送る
それを見てか僅かに微笑むイロハ
私もそろそろ風紀委員会の所に戻らないと
「…………マコトのもう一つの理由、
確信を得た。その理由を私は知っている
アビドスで対策委員会の子達を助けていた時、私はヒナから聞かされた事がある
「……”雷帝の遺産”」
列車砲シェマタ、もし、あの時スオウが利用した様に同規格の兵器が他者に渡れば
それがもし、ゲヘナに牙を向けたら
恐らくマコトの中には最悪の
……結局はマコト本人から答えを訊く必要はあるが、現状で考えうる事はそう言った不確定要素だ
「一応、ヒナにも話しておこうか」
私は、アビドスで起きた事を思い出しながら、現場に向かったヒナの元に戻るのだった
・空崎ヒナ:先生を頼る事に対して「迷惑かも……」と躊躇していたが、アコの言葉もあり、先生が頼ってくれたのなら今度は私が頼らないと……と思い切って頼ったらすぐ来てくれてかなり喜んでる
・羽沼マコト:今回の事を裏で手を引いてる?生徒
ただ、ハルナが店を爆破した事に関しては予想外で風紀委員に押し付ける裏で店に対して補填をしている
また、イブキのプリンアラモードを食べてしまった事でイブキを怒らせてしまい、そのお詫びとして「パンちゃんを見せてやる!」と宣言する
ご機嫌になったイブキと一週間ぶりの散歩の途中でヒナの気配がしたので柱に隠れてた