あぁ、沼作品がどんどん増えていく…
それは外が熱気に包まれ、五月蝿い蝉の鳴き声が響き渡る夏の日だった。
「ねぇ、なんでアンタはこんな私に付き合ってくれてんの?」
喫煙所代わりに使っている公園のブランコに2人の不良のような学生が座り、喫煙している
彼は咥えていた煙草を地面へ落とし、靴底ですり潰す。
その話笑いながら次の煙草へと手を伸ばし、人差し指と中指で挟んだ。
「暇潰し、と言うにはもう長い付き合いになってるわな」
「だからだよ、3歳位から今までずっとじゃん。うわ、そう考えるとキショい」
「酷い言い草じゃねぇか、殺すぞ」
「口悪ッ」
何時もの軽口を挟みながら笑い合う2人の生徒、傍から見るとヤンキー同士が喫煙しながら屯しているようにしか見えない。
勿論、言葉通りの状況だ。
だが意外にも2人とも素行は良く、近所の人からの人望も厚く素晴らしい信頼性を保ち続けている。
近所の奥様方からはお裾分けや軽い世間話、近頃の噂や情報を頂いたり、子供からは軽くじゃれ合えるぐらい仲良くなっていた。
なんだかんだいいながら不良の皮を被った善人のような2人なのだ。
さて、そんな事はさて置き、彼は彼女の問いに対して火をつけた煙草を一吸い後に答えた。
「んー、お前の事が好きとか、か?」
「……ふっ、なんで疑問形なんだよ」
「いや、ホントに考えた事あんましなかったからさ、お前と会うのが当たり前でこうやって馬鹿やるのが楽しいから好きだな」
「…ほーん」
彼女は満更でもなかった、と言うか中々にストライクだった。
正直、告白されるという経験は少しはあったが軽く流すぐらいの耐性はあったがこんな不意打ちのような告白に耐性はほぼ0に近かった為かなり堕ちかける。
彼は顔が良く、品行方正だが自分なんかに付き合ってくれて不良になり馬鹿騒ぎ出来る幼馴染なんて漫画の世界でもないのに居るのが奇跡的だ。
というか、こんな優良物件普通は居ないよ?
少し耳を赤くした東雲薫は頬を指で軽くかいて笑いながら安倍暁へ顔を向ける。
「んじゃ、付き合ってみっか私達」
「別に構わないさ、薫」
「…なんか急に名前呼びが恥ずかしく感じるな、暁」
「色々付き合うと意味合い変わっちゃうからな、仕方なし」
彼は揺れていたブランコから立ち上がり、何時もの商店街へ足を運ぶ。東雲はまた何時もの事なのか呆れた顔で後姿の彼に声を掛けた。
「また暁はパチンコかぁ?彼女を置いていくのか!?」
「因みに昨日で15連勝中、着いてくるなら帰り奢るぞ」
「マジで!?行くわ!!」
そんな何時もの日常が、彼等の輝かしい青春だった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「中古のマンションで不労所得だぁ?」
あれから幾年経過し、季節は春。
パチ屋の喫煙所にてアロハシャツに半ズボン、銀縁の眼鏡を掛けたガタイのいい白髪マンバンの男性、確実に裏の本業の人と勘違いされかねない人物になった安倍暁が携帯越しの相手に口を尖らせていた。
「お前、まさか前言ってた7千万の中古マンションじゃねぇよな?」
その中古のマンションの情報を持っていたのか、質問を投げ掛けるとよく分かったな!と驚きと喜びが混じった声が聞こえた。
『そのまさか!いやぁ、バイト漬けの分全部持ってかれたけどある程度住民も入ってきて不労所得あるし何とかなんだろって思ってさ!』
「……おん」
『ん?なんだ急に元気ねぇな、どした?』
「いや…頑張れよ薫って思ってよ」
『なんだぁ、心配してくれてんのか!ありがとうよ暁』
彼は安倍暁、怪異の専門家、流浪の旅人、呼び方は様々だが妖怪や怪異、幽霊のエキスパートである。
安倍晴明の生まれ変わりと呼ばれているが、ぶっちゃけ言うと苗字が安倍の時点でお気付きの方もいるだろうがその家系の子孫で血を思いっきり引いているのだ。
故にそういう噂や除霊の依頼等が真っ先に彼に届く、血ゆえの運命でもある。
その噂の情報の中にこの中古マンションの詳細を知っている彼は頭を抱えつつも、別に薫ならどうにでもなるかと少しだけ楽観的な考えに落ち着く。
「なんかあったら呼べよ、なんなら住民にでもなってやろうか?」
『マジで!?そりゃいいや!頼むぜ暁!』
「おう、頼まれたし取り敢えず早速契約してくるわ」
しかし何かあった時に目を離したらヤバいだろうなぁと肌で感じ取った暁は早急に喫煙所から撤退しスロットでコンプリートした台の出玉を換金して今住んでいる事務所へと向かった。
そんな中、彼が去った後の喫煙所にてこんな会話が続いていた。
「──相変わらずあの人引きやべぇよな」
「ゴトしてんじゃねぇの、それか店長とグル?」
「いや、店長から聞いたけど白だ。己の引きで全部レア役とかフリーズ出してんだってさ、半端じゃねぇ」
「その豪運分けてくんねぇかなぁ…」
「話してみると吸ってる銘柄の煙草とか俺たちに買ってくれてんの優しいよな、俺喫煙所で2回位世間話で関わったらその後めっちゃ飯奢ってくれたし」
「器も懐も広すぎるな暁さん」
そんな会話があったそうな…
あの電話から数日後、彼は不動産屋に来ていた。
「
あれから自分の立ち上げた事務所の後始末の手続きを終え、海月不動産の中古マンションの契約を今から行う彼、安倍暁はちらりとマンションの周囲を見て溜息をこぼした。
「こりゃあ、住民も入らなくなるな」
明らかに幽霊が住み着いており、霊障や祟り、怨霊のオンパレードになっているのが彼の目には見えた。
ちょうど今日の朝薫から連絡があり、住民が出て行きまくって不労所得がァ〜と嘆いていた。
案内担当者が、笑顔で対応しているが内心穏やかでは無いのが雰囲気で判断できる。そらこんな訳ありマンションに入りたいって言う人間はもうほぼ居ないだろう。
「このマンションって喫煙OKなん?」
「はい!大丈夫なんですが…本当に住むんですか?住民の苦情が凄かったマンションなんですが…」
「物件案内するお前がそれでいいのか、もっとPRしろよこのマンションの良さを」
「それぐらい大変だったんですよ…クレームが」
彼は萎んだ顔を見せ、暁は笑った。
これはこれからも大変苦労するだろうと内心同情した。
「ま、取り敢えず礼金?頭金?居るんだっけ?ホレ」
「ええ、有難く受け取…は?」
どさりと茶封筒がパンパンになっているモノが案内人の手に渡る。
「取り敢えず200万、2年は絶対に住むから対応頼むわ。大家と半々で分けてくれ」
「わ、分かりましたっ!」
「そんな緊張する必要ねぇよ、あとなんか愚痴とかありゃあ暇があれば聞いてやる。じゃあな」
彼は本来存在するのか分からない100号室のドアを開け、閉じた。
ここは4階建ての16戸、間違いなく100という号室は存在しない。
コレは、怪異の結界が作り出した部屋である。
「…成程、自殺者の怨霊か」
玄関からドアへ振り向くとソコにはドアノブがないただの壁になっている。
『し、ししししし、死んで、死んで、死んで下さい』
女性の変死体がぐちゃぐちゃに繋ぎ合わされた蜘蛛のような怨霊がこちらを見つめ、身体をちぎろうとしているのか足に糸を巻き付けられる。
「元気いっぱいだねぇ…なんかいい事でもあったのか?」
煙草を咥えつつ腕がフリーだった彼が指を鳴らした瞬間、重たい空気が浄化され、怨霊の表情が無へと代わる。
瞬間、生前の姿なのか灰色の髪色をし、黒いパーカーを着用していた女性へと変貌を遂げた。
『?…???』
「よう、未練残した自殺者、名前聞いてもいいか?」
まさにあっという間の出来事だった、理解ができない理。それを可能にするのが安倍晴明の子孫の血である。
「…荻原里香」
荻原里香と名乗った彼女は首を傾げ、何故これから成仏させようとするであろう私の名前を聞くのか不思議そうに思った。
「じゃあ、リカだな。お前俺の飯作ってくんね?きっと専業主婦だったろうし家事全般出来るだろ?」
成程、私を扱き使う為かと納得した。昔も今も変わらないかと少しだけ気落ちしたが、その後の発言で昔の元彼と全く違うことが分かる。
「……あぁ、するよ。アンタは?」
「部屋掃除しておく、お前さんの血とか残骸はきちんと綺麗にしてやるからよ。あとお前さんがやるのは一応今日だけだ、明日から当番制にするぞ!」
───その時荻原に電流走る。
普通に彼は良い男だった、自分勝手ではなく私と共同で助け合う行動をしてくれる人物に初めて出会った、その彼に遺伝子レベルで惚れた。
荻原里香は生前から元々惚れっぽく、尚且つ優しくしてくれる人には人一倍尽くす人間である。
その結末がホスト狂の水商売行きで自殺という報われない終わりだったが、暁が怨霊から普通の害のない幽霊へと浄化した為、元通りの状態になった。
普通の人間として生きれるため、再度彼と結ばれるように生活しようと里香は奮起していた。
「そっか、ならアンタが唸る程の美味しい料理作ってあげる」
「そりゃ楽しみだ、俺は安倍暁って言うんだ。よろしく頼むぜ」
そして安倍暁は好意に対して関心はなく、友人として接しようとしているのでこの恋はきっと叶わないだろう。
△月□日
本来なら存在するはずのない100号室に無事入居者が入った!!16戸だったのに17戸になってるけど不労所得が増えるのでヨシッ!!
既に頭金や家賃を先払いしている為、私は後でこの入居者である暁にゴマをすっておこうと思う、ゲヘヘ。
何故か入居者が2人になっているので、前言ってた親戚の子かなと思い聞きに行くことにした。
(途中から文字が荒々しく途切れて読めない)
2人目の入居者が知らねぇ幽霊女だった、はぁ?暁は分かるけどその擦り寄ってる幽霊女誰だよ殺すぞ。
(その後罵詈雑言が続く)
…まぁ、私は暁とは別れて友達の関係には戻ってはいるがその彼女面していた幽霊女は気に入らなかった。
ま、いいや。今度暁と一緒に飯でも行くとするかな!
その数日後の事である。
「お、
昼のパチンコ飯休憩中に日下部一門の知り合いに会った安倍暁は煙草を咥えながら彼女の肩をぽんと叩く。
「え?………あ、ああああああああああぁぁぁあべのあきらさまぁあ!!!?」
彼女は暁の姿を見た瞬間顔が青ざめ歯を少しカチカチ鳴らしたあと汗を垂れ流し絶叫した。
「驚きすぎでしょ、ウケる」
それに対し彼は平常運転で話を続けていた。
今の状況を簡単に説明したら、プライベート中に自分の会社の代表取締役に気軽に声を掛けられた平社員のようなものだ。
「ウケないです!!陰陽師の総督で怪異解決の総大将が気軽に外出歩く方が可笑しくないですか!?」
「べっつにぃ〜?普通の事じゃね?」
「普通じゃないですッ!!」
キレる彼女、日下部ツヅミに対して「あ、そういえば」となんにもないかのように暁は爆弾発言をぶん投げた。
「ちなみにお前ん所の管轄の汐マンションなんだけど東雲マンションに名前変わって大家が俺の知り合いだからお前の下に俺が就くことになった。よろしく頼む」
「……………は?」
「気軽に暁でいいぞ、ツヅミ」
彼女は固まった。
この地域担当である私の下に陰陽道総本部の総督であり安倍晴明の子孫である安倍暁が就くという本来有り得ない事象が起きている事に脳が考えるのを停止し身体と顔が硬直した。
「あ、薫からだ…夕飯どうだだぁ?金ねぇ癖に誘うなアホタレめ…『奢ってやるから店選んどけ』っと…」
固まった彼女を放置し東雲薫の飯の約束を了承した彼は5万発のドル箱積んでいたパチンコ台のパチ屋へと向かうのであった。
安倍暁 (あべのあきら)
男性
銀縁眼鏡を掛けたガタイのいい180cmの白髪のマンバンヤニカス陰陽師。
誰に対しても真摯に会話を行う見た目詐欺。
幼少期から東雲薫と幼馴染であり付き合いがとても長い。兄妹と言っても過言では無いと言われるほどだ。(因みに同い年)
ギャンブル好きで生涯で1度しか負けた事がない。まさに豪運である。
6歳から陰陽師としての指導を受け8歳で飛び級、12歳には総督になった為、鬼才の陰陽師と評された。
安倍晴明の血を半分以上受け継いだ子孫である事で政略的なお見合いもあるが普通に好意的て情熱的なお見合いも多くあった。
しかし本人は全く興味が無く、好意を持っていた東雲薫と付き合うが家系のいざこざがあり学校卒業後に5年程同棲していたが別れる。
成人年齢になった後自立して事務所を立ち上げ怪異の解決の為に色々こなす事となった。
現在は東雲マンションの100号室にて生活をしている。
訳アリ心霊マンションに就職活動中ハマりました。
故に書いただけの呪物になります。
ご拝読ありがとうございました。