山小屋に汚いガキがいたので虐待することにした   作:頭畜生

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第2話 少女が見た虐待

 

 

 

 

 

 「お前にはこれから風呂に入ってもらうッ!!」

 

 「─────え?」

 

 ハーッハッハッハ!!あまりにも残酷な事実に言葉も出ねェか!!

 それもそうだろう。なんせお前は遊び盛りのガキ。風呂なんて面倒くさくて入らない日もたくさんあっただろう。

 つまり、そんな面倒くさい風呂に強制的に入らなければならないということ!

 こりゃあもう人権問題だろ!?これには流石に天下の憲兵団様も黙っちゃいないだろうぜ!!

 

 「無論お前に拒否権はない。もう既に満タンに入れたお湯によって湯責めされるがいいわ!!」

 

 俺はコイツを浴槽にまで連れて行き、雨と血と泥が染み込んだ汚らしい服を全部剥がし、浴槽にぶち込んだ。

 中には既に虐待アイテムでいっぱいだ。髪がモコモコになる石鹸、肌を削りに削るボディタオル、そして仕上げの満タン風呂。しかもちょっと鼻につく花の香り付きだァ。

 

 「ククッ、これまでの思い出を全て流してやるよ。お前についた汚れと共になァ!!」

 

 一応目隠しをして準備万端。まず手始めにコイツの長ったらしい髪を虐め抜いてやった。

 髪は女の命とはよく聞くものよ。そんな大事なものに無断で触るだけでなく、終いには乱雑に洗い流すという所業ッ!!さぞ屈辱的だろうなァ!

 

 「流石に体は自分で洗えよ!俺はリビングで待っているからな!」

 「えっ、待って───」

 

 俺はミカサの静止の言葉に耳を貸さず、スタスタとリビングへと足を進めた。

 どうせ俺に対する恨みつらみを吐こうとしたのだろう。そんなものに耳を貸してやるわけがないよなァ?

 

 さて、おそらくミカサが風呂から上がってくるのはおよそ20分前後。

 それまでの時間は何もしない、なんて甘ったれた考えなどしていない。無論準備をするのだ。

 

 そう、次の虐待のための準備をなぁ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あの、その……」

 

 どうやらお出でなすったみたいだ。ククッ、しっかりと俺が準備した服を着てきたな。

 さっきまで真っ白だった顔が今や耳まで真っ赤だ。さぞ湯責めで苦しんできたことを伺わせる。

 

 しかし、それでも心を折ることは出来なかったようだ。

 見ろ、あの俺に対して困惑と警戒の色を混ぜ合わせたような目を。あんな責め苦に遭ってもなおあの様な目が出来るとは……少しお前を侮っていたようだぜ、ミカサ。

 だが、次の虐待を見ても同じ目が出来るかな!?

 

 「ミカサ、こっちに来い。このイスに座り、テーブルにあるものをよく観察しろ」

 

 そう催促すれば大人しく指定されたイスに座り、テーブルにあるものを見てミカサは────絶句した。

 ククッ、いい感じに慄いているな。その顔が見たかったんだ。

 

 「こ、これは……?」

 「見て分からねェか?お前の夕飯だよ」

 

 主食はパンで、汁物にアッツアツのスープを選ばせてもらった!!具材は干し肉とガキが大っ嫌いであろう野菜をふんだんに入れ込んだヘルシースープ!!

 湯責め直後の火照った体にはさぞキツイであろう煉獄のフルコースだぜ!

 さぁ、是非ともたくさん食べてたくさん悶えてくれよッ!

 

 ミカサは恐る恐る震える手でスプーンを持ち、スープを掬い口に運び込む。

 すると─────ミカサは大粒の涙を瞼から流し始めた。

 

 ククッ、ククク……ッ!!

 

 「ハーッハッハッハ!!なに泣いていやがる!!」

 「…………ッ」

 

 素晴らしい!この光景が見たかった!!

 見ろ、あの泣き顔を。恥も外聞も投げ捨てたような、まるで赤ん坊のように泣きじゃくるその顔!余程嫌なんだろうな!吐き出したくなるほど最悪の料理なんだろうなァ!!

 あ〜、ここにワインでも置いてあったら、コイツの泣き顔をツマミに優雅に飲んでいただろう!

 

 両親を殺された日にこんな災難に遭っちまうとは……お前はなんて哀れな奴だ、ミカサ!!

 だが俺は決して慈悲を見せない。何故なら悪人だから。お前の泣き顔が大っ好きな極悪非道だからな!

 まったく、これだから悪人はやめられないぜ!!!ハーッハッハッハ!!!!

 

 

 

 

 

☆★

 

 

 

 

 

 ────あたたかい。

 

 

 急に連れて行かれて、温かいお風呂に入れてくれて、美味しいご飯を作ってくれた人。

 その温かい料理はまるで、作った人の優しさが沁み込んだような味で。

 

 

 ────あたたかい。

 

 

 涙が止まらなかった。止めることなんて不可能だった。

 両親の死を前にしても流れなかった涙が、今ようやく流れてくれたように思えた。

 

 

 ────あたたかい。

 

 

 もう二度と感じることはないと思っていた生きる希望が、空腹と共に満たされていく。

 ずっと前から感じていたものである筈なのに、どうしてこうも懐かしく感じてしまうのだろうか。

 

 「そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名はヴィラ。お前の頭の片隅に生涯に渡ってこべり付く男の名だ。忘れようと思っても嫌でも覚えるから安心しろよ!」

 

 そう言って豪快に笑う恩人───彼はヴィラという名前らしい。

 名前を聞けてよかった。私も助けてくれた人の名前も知らないことに、なんだかもどかしさを感じていたから。

 

 「ヴィラ、助けてくれてありが───」

 

 万感の想いを込めてお礼を告げようとした時、コンコン、と扉がノックされた音が聞こえた。

 ヴィラは気怠そうに『はいはい』と返事をしながら扉の方に向かってしまった。………まだちゃんとお礼を言えていないのに。

 

 彼が扉を開ける。すると、そこには私と同年代らしき男の子と、どこかで見覚えのある眼鏡をかけた優しそうな人が立っていた。

 

 「夜分にすみません。実はとある女の子を探していまして─────」

 

 優しそうな人が硬直した。男の子もまた同じく。多分、私と目が合った瞬間にだったと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「な、なんとお礼を言えば良いのか……!ミカサを救っていただき本当にありがとうございます!!」

 

 それから数分後、突入してきた憲兵団の人たちがヴィラに事情聴取をしたり、眼鏡の人───イェーガー先生と数回会話した後、事件の全貌を掴んだ先生がヴィラに感謝の言葉を告げている。

 

 「ケッ、勘違いすんな。コイツを助けたのもただの憂さ晴らしのついでだ。だから俺に感謝するんじゃあ────」

 「それでもです!本当に、本当にありがとう!!」

 

 我が事のように感謝を告げている先生を見ていると、よく分からないけどなんだか不思議に思えてくる。

 

 彼に頻りに頭を下げた後、少し目尻を下げながら私に顔を向けた。

 

 「ミカサ……覚えているかい?君がまだ小さい頃に何度か会っているんだが……」

 「イェーガー先生……私は……」

 「……あぁ、分かっているとも。無理に話そうとしなくてもいい。ただ、君にどうしても聞きたいことがあってね」

 

 そう言って私と目線を合わせ、静かに問いかける。

 

 

 

 「もし行く宛がないのなら……私たちと一緒に暮らそう」

 

 

 『お前、どっか行く宛でもあんのか?』

 

 

 

 その言葉に硬直する。だって、それはさっき彼にも尋ねられたものだったから。

 

 「辛いことがたくさんあった。君には十分な休息が必要だ……」

 「…………」

 

 すぐには答えることが出来なかったけど、もう気持ちは固まっていたと思う。

 もし、彼が本当に酷いことをしてきたら喜んでイェーガー先生の提案に乗っていただろう。あるいは、彼よりもっと早く出会っていれば。

 

 だけど、今は────

 

 

 「……私は────」

 

 

 「調査兵団なんですか!?えっと、あの!外の世界ってどうなっているんですか!?巨人ってどれくらい大きいの!?」

 「あぁ!?少なくともお前の何十倍はデカいわクソガキ!!」

 

 

 「………私はあの人と───ヴィラと一緒にいたいです」

 

 

 あそこで私と同年代の子と言い争いをしている彼を見ながら、私はそう決断した。

 本当ならイェーガー先生の家に行く方がいいのかもしれない。あまり覚えてないけど、イェーガー先生は幼い頃の私とも何回か会っているみたいだし、ヴィラとは違って初対面じゃない。両親のことも知ってくれている先生の元に着いて行くのが、きっと普通なんだと思う。

 ……でも、だけど、それでも……私はヴィラと一緒にいたいって思った。

 何故かは分からない。だけど、これは紛れもない私の本音だった。

 

 私の言葉を聞いた先生は『そうか』と納得して、彼と少し何かを話した後、一緒に連れてきた男の子───エレンを連れて帰って行った。

 

 「ったく、なんだったんだ、あのガキは……嵐みてェなクソガキだったぜ……」

 「うん。多分ヴィラに憧れを抱いていると思う」

 「ハァ?よしてくれよ、そういうのはキャラじゃねェって」

 

 深いため息を吐いて、私を見る。

 

 「さて、変な邪魔が入ったが虐待の続きだ!まだまだスープはあるからたんと食べろ!!」

 「うん………ヴィラ、ありがとう」

 「ハンッ!テメェも言いたくもない感謝なんか口にしやがって。だが、それはそれとしてなかなか素晴らしい心掛けだ。褒めてやる。ハーッハッハッハ!!」

 

 お代わりで持ってきてくれたスープを、もう一度食べる。

 

 その温かさは、きっとスープの温かさだけのものではないと、そう思った。

 

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