山小屋に汚いガキがいたので虐待することにした   作:頭畜生

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第3話 夕暮れの道

 

 

 

 

 

 グッモーニング〜エブリワン!

 世界の巨悪ことヴィラ様のお目覚めだぜ〜!!

 

 今日のお天気は快晴。空を見上げればお日様が燦々と輝いているぜ!

 地獄みたいな世界なのに、こんなにも清々しい朝がやってきていいものか!……いいんじゃないかな!それぐらいは!

 

 しかし、今日の朝はいつもと少し違う。

 何故か?そんなモン決まってらァ!

 

 「……おはよう、ヴィラ」

 「ハーッハッハッハ!!おはようだぜ、ミカサ!!」

 

 そう!何故ならミカサ(虐待サンドバック)が家にいるのだからなァ!!!

 

 

 

 

 

 「早速だがお前にはウチの業務というものを覚えてもらう。いいな?」

 

 俺は大樹がある丘で、さもご高弁を垂れるようにミカサに語り出した。

 そもそもなんでこんな丘にいるのかだって?無論、意味はある。だが、それはまた後だ。

 

 それにしても、なんて素晴らしい相槌なんだ。『うんうん』と高速に頭を縦に振るっておるぞ。

 

 「お前には薪拾いを手伝ってもらう。ここ(壁内)では薪無くしては生活できないからな。その点、ここには大樹があるお陰でいい薪が手に入りやすい。覚えておくといい」

 「分かった」

 

 そう言ってそそくさと薪を拾い始めるミカサを尻目に、俺も作業に取り掛かる。

 ぶっちゃけ今ある薪だけで事足りているが、虐待において抜かりない俺がミカサに何もさせないわけもなく。

 この体を酷使しながらも地味な作業をやらされるという、およそ肉体的にも精神的にも辛い薪拾いを享受させない手はなかった。

 

 ククッ、その無表情の顔面がいつ崩れるか、楽しみで仕方がないぜェ……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ミカサの奴、だいぶしぶといな……」

 

 あれから数十分は経過したというのに、ミカサはその手を止めることなく続々と薪を拾っていた。

 こんな作業飽きない筈がないのに、淡々と薪を拾い上げている様子には少しビビっちまったぜ。ほんの少しだけどな?

 

 「ハァ〜……飽きた!」

 

 背中に背負っている背負子を下ろし、そのまま大の字で寝っ転がる。

 ククッ、まさかミカサより先に俺の方が飽きちまうとは……ミイラ取りがミイラになる現象と同じではないか。

 流石はミカサ、そう簡単に屈してはくれないというわけか。だが、それでこそ虐待のしがいがあるってモンよな!

 

 「…………いい天気だぜ」

 

 やはりというべきか、今日はここ最近でも一番と言えるほどに天気がいい。

 暖かな日差しが大樹の葉を通して緩和され、長閑な風が俺の頬を伝うのだ。呑気に欠伸をしても許されるだろう。

 

 そんな時、俺を上から覗き見る一つの影が。

 

 「何してるの?」

 「ん?おお、丁度いい時に来たな、ミカサ」

 「……?」

 

 『何が?』とでも言いたげな表情をするミカサだが、その危機感の無さが命取りになることを知らないようだ。

 なんせお前がノコノコとやって来てしまった場所はなァ────これからお前に降りかかる虐待が待ち受けている場所なんだからよォ!!

 

 「ミカサ、お前に命令する。俺の隣で横になれ」

 「………え?」

 「ククッ、聞こえなかったのか?俺の隣で寝っ転がれと言ったのだ」

 

 ミカサは困惑しながらも、俺への恐怖心故か、大人しく俺の隣に寝っ転がった。

 さて、そんな純情なガキに一つ、悪い大人の知恵を叩き込んでやるとしますか。

 

 「この世界で最も幸福な時間はなんだと思う?」

 「……薪を拾うこと?」

 「それはさっきやっただろうが」

 

 どんだけ薪拾いが好きなんだ、コイツは。

 ハッ!?まさか俺への当てつけか!?『お前ができないことを私はできている(ドヤ)』とでも言いたげに、俺に対して何か一つでも勝ろうとしているというのか!?

 ククッ、流石はミカサ。その反骨心は褒めてやりたいところだ。

 

 「いいか?この世界で最も幸福な時間とはな………」

 「…………」

 

 沈黙が満ちる。

 その沈黙が妙に気まずいので、さっさと言うことにした。

 

 「それはな…………ズバリお昼寝タイムだ!!」

 「……お昼寝?」

 

 ククッ、理解できていないようだなァ。

 いいだろう、教えてやる。

 

 「昼寝ほど気持ちのいいものはない。特にこの丘で寝る昼寝は格別だ。まるで世界の中心にたった一人で寝ているような気分になれる」

 

 この大樹は目立つがあまり人は来ない。たまにガキが来るぐらいだが、基本的に人は来ない。そのお陰で悠々と昼寝をかませるのだ。

 あとなんか空が近くて素晴らしい。やはり人類は空に憧れるモンだよなァ。

 

 「………私はそう思わない」

 「ほう?何故だ?」

 「だって、ここにはヴィラがいるから。だからあなたは一人じゃないし、私も一人じゃない」

 

 ふむふむ。つまりあれか?『私たちは二人で寝っ転がっているから一人じゃないね残念でした〜笑』とでも言いたいのか?

 …………ケッ!!それはそうだがそうじゃねェんだわ!人の言葉を揚げ足取りやがって……!

 

 「私は二人がいい。一人はもう嫌だ。だから………嬉しい」

 

 そう言って徐々に肩をにじり寄せるミカサ。

 何を企んでいるのかは知らんが、先手を打たせてもらうぜ!

 

 「なら、このまま寝ようぜ」

 「一緒に?」

 「あぁ、一緒にだ」

 

 ククッ、確かに外で昼寝は素晴らしいものだが、そこには一つ致命的な欠点が存在している。

 それは相手に寝顔を見られてしまうということだァ!!

 俺はコイツに寝顔を見られてもなんとも思わんが……ミカサ、お前はどうだろうなァ?

 そういうのを気にするお年頃であることを加味して、きっと果てしないほどの羞恥を覚えるに違いない!

 

 さぁ、さっさと寝て悶えてくれよ!

 お前の可愛らしい寝顔を網膜に灼きつけてやるからよォ!!

 

 「………ゴツゴツして寝づらい」

 「あぁ?しょうがねぇな……ほら、腕枕」

 「ありがとう」

 

 こりゃあ目覚めたら腕が痺れているかもしれねぇな。だが、これがないとコイツの寝顔を見るという大望が叶わない。

 まぁ、これも必要経費だと思って甘んじて受け入れますか!ハーッハッハッハ!!!

 

 

 

 

 

☆★

 

 

 

 

 

 時刻はもうすっかり夕暮れ時。騒がしかった街中は徐々に鳴りを潜めていき、ほんの少しだけ涼しい風が頬を撫でた。

 

 「おっちゃん!アレとコレとソレ10個くれ!」

 「あいよ!」

 

 現在、俺たちは木材集めを終えて、夕食の食材を買いに八百屋の屋台まで来ていた。

 ククッ、しっかりと熟睡をかましたお陰で元気ピンピンだぜ!おまけにミカサの可愛らしい寝顔も見れたことだからなァ!

 

 ちなみにミカサはここにはいない。俺の調達が終わるまでちょっと離れた所で待機を命じておいたからな。

 

 「ククッ、こんなにも野菜を買ったのはいつ以来か」

 

 今日も野菜たっぷりのスープにしようと思っているぜ!

 ガキなんてもれなく全員野菜が大っ嫌いだろ?ソースは俺な。

 世間では“自分がされて嫌なことは他人にしないように”……なんて格言が生み出されているが、そんな道徳心はお母さんの中に置いてきた俺にとっちゃあどうでもいいことよ!

 自分がされて嫌なことは何倍にして他人に振り翳す!それが俺のモットーだ!

 

 「オイ、ミカサ!買い出し終わったぞ〜───っと、なに見てんだ?」

 

 今日の夕飯の地獄絵図を想像しながらスキップランラン♪とミカサの元へ向かえば、ミカサが何かを注視していることに気づく。

 気づかれないようにコイツの視線の先を辿っていくと─────

 

 「お母さ〜ん!お父さ〜ん!お手て繋ご!」

 「もちろんいいぞ〜」

 「ふふっ、はい、お手て繋ぎましょうね〜」

 「やった〜!」

 

 そこには仲睦まじそうに歩く三人の家族がいた。

 ククッ、なるほど、差し詰めあの家族を見て自身の家族を思い出してしまったということか。

 もしかしたら、あのガキのように手を繋いで帰路に着いていたなんてこともあったのかもしれない。

 在りし日の輝かしい記憶(思い出)というのは失って初めて気づく。コイツは今、それを真っ正面から体感していることだろう。

 

 だ〜〜が?そんな感傷に浸らせる程、俺は優しくないんだぜ!

 

 「ククッ、なるほどなるほど〜」

 「ッ!?いつの間に……」

 

 コイツ、無表情のくせして一々反応が面白いんだよな。

 無表情にもいろんな種類があるというのはミカサを通じて学んだことだ。

 

 ……そういや、コイツが表情を動かしたのなんて、昨日の夕食に泣かした時以来見ていないな。

 感情が顔に出ないタイプなのか、それともそもそも感情に乏しいのかは知らんが、なんだか負けているような気がしてならねぇ。

 だってコイツは泣くことができるのは立証済みであり、きっともっと色んな表情がある筈なんだ。例えば苦しむ表情だったり、号泣だったり、恨みの籠った視線だったりよ。

 それらの感情を引き出せていない……それ即ち俺の虐待が劣っている!?そんなことはない筈だが、そう言われても文句言えないのが難点よ……

 

 しかし!たった今、コイツの表情を動かす手段を思いついた!

 これで貴様もおしまいだァァァァァァ!!!!

 

 「ほら、行くぞ」

 

 俺はミカサの小さな手を握り締め、歩き出す。

 ククッ、お前の困惑が手に取るように分かるぜ。背後から「え?」って声も聞き逃していないからなァ?

 

 お前はあの家族のお手て繋ぎを見て羨んだのだろう。過去の幸せだった自分を思い浮かべてしまったのだろう。

 あぁ、さぞ幸せな情景だったのだろうなぁ………だが、現実はこうして俺に手を繋がれているわけだ。極悪人で、お前を虐待している男と、だ。

 

 あ〜あ!!思い出が穢れちゃいましたねぇ!!!!

 せっかくの思い出が!両親との淡くも輝かしい幸せの思い出が!!たった一人の悪人によって上書きされちゃった気分はどうよ!!!

 

 

 

 「早く帰ろうぜ、()()()()()に」

 

 「ッ」

 

 

 

 あっ!泣いちゃった!とうとうミカサが泣いたぞ!!

 マフラーで必死に隠そうとしているがもう既に遅い。お前の泣き顔は俺の網膜にバッチし灼かれたからなァ!!

 やはり鬼畜ッ!!俺以上の悪魔はそうはいないだろう!!

 

 結局その日の帰路は手を繋いだままだったな!

 いや、流石に途中で離してやろうと思ったんだが、ミカサがちっとも離してくれなくて、そのまま流れで家に着いてしまったと言った方が正しいか……

 まぁ、ほんの些細な抵抗と思えば可愛いものよ!

 

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