明星ヒマリ男の娘概念   作:めのこん

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※捏造・独自設定が含まれます。

※オリキャラは出てきません。




第一章 『このままでは私の叡智(デカグラマトン)がバレてしまいます』
01.明星ヒマリの『告白』


 

 皆さん、ごきげんよう。

 

 ミレニアムの叡智を結集した美しき結晶にして、ヴェリタスの清楚なる至宝。病弱ながらも類まれな知性と美貌を併せ持つ―――。

 そう、それがこの私、明星ヒマリです。

 

 これを見ているあなたはきっと私のことをご存知だと思います。

 なにせ私はミレニアムではちょっと名のしれた美少女ですからね。

 

 立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花とはまさに私の為にある言葉だと思いませんか?

 まぁ私はこの病弱な身体ゆえ……立つことも出来なければ歩くことも出来ないのですけれどね、ふふふ。

 天才の小粋なジョークはさておき……。一応、再確認のために"明星ヒマリ"について、簡素ではありますがお伝えしておこうかと思います。

 

 私は"特異現象捜査部"という組織に所属しております。

 元は"ヴェリタス"というホワイトハッカー集団の長として、このミレニアムという花園に楚々と咲く高嶺の花として揺蕩っていたのですが、つい先日、とある友人(リオ)からの頼みで、こちらの部活動に部長として移籍して参りました。

 

 特異現象捜査部とは、科学的に証明しがたい事象の追求、究明を目的とした組織です。オカルトやオーパーツに関わる事象の調査……と言えば伝わるでしょうか?

 とはいえこの組織のソレはあくまで建前です。

 実際はキヴォトスに起きうる危機について事前に調査、対策立案、そして場合によっては積極的排除を試みる、ミレニアムの極秘組織……。

 つまり超絶天才美少女ハッカーたる私に相応しいエリート組織ということです、お分かり頂けましたでしょうか?

 

 最近では神名十文字(デカグラマトン)の予兆を掴み取り、アビドス砂漠に大蛇の伝説として異名を残す、[3番目の預言者ビナー(BINAH)]の撃退作戦に従事したのが記憶に新しいですね。

 勿論、これらの作戦の成功には、この万物を解き明かす“全知”の称号を持ちながら、ハッキングの神域にまで至るこの頭脳、天は二物どころか、十物くらい与えたであろう、この私の天才的手腕によるところも大きいのですが。ふふ。

 

 


 

 

 さて、ここで一つ、私から重大な発表がございます。

 ミレニアムの"知"の象徴であり、ありとあらゆる防衛システムを指先ひとつで無力化できる超天才ハッカーである、この私が態々"重大"な発表を行うと聞いて、もしやキヴォトスを揺るがす大規模な危機が迫っているのかと警戒される方もいらっしゃるかもしれません。

 

 それもその筈。なにせこの私、明星ヒマリが直々に動く事態は、多くが"緊急事態"であったり"危険な特異現象"であったりする事がほとんどでしたからね。

 さぞ重大で危機的で、すぐに手を打たなければならない、のっぴきならない状態を想像してしまうのも無理はないでしょう。

 

 しかし今回に限っては違うのです。知性と美しさが同居し、更には天才的なセンスをも併せ持つこの私ですが、今回に限って言えば明星ヒマリの"個人的な事情"に基づくものなのです。

 さて、少々長々と前置きを述べてしまいましたが、ここで一つ。私から恐るべき事実、隠されていた真実、そしてこれからも秘匿し続けなければならない秘密を、此処に記述致します。

 

 

 願わくば、これを公開することがないよう、願いを込めて―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『明星ヒマリは、生物学上において、男性に相応する存在である』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 ふふ、驚かれましたか? この文章が公開されているという事は、ミレニアム中の叡智を詰め込んだ、灰色の脳細胞を持つこの私に何らかの異常事態が起こった時でしょう。

 少なくとも私が心変わりを起こして自発的に公開するか、もしくは一切の連絡が取れず、この端末が誰かの手に渡ったと仮定して。

 数々のダミーファイルを乗り越え、スーパーコンピューターもかくやという、この私の二十年先を行くであろう技術力で組み上げたセキュリティプログラムを突破しない限り、この文章にはたどり着けないでしょう。

 

 

 えぇ、実はそうなのです。

 私、明星ヒマリは男なのですよ。

 

 

 とてもそうは見えないでしょう? なにせ可憐さと清廉さを併せ持ち、清楚系美少女という言葉がこれ以上ない程にマッチするこの明星ヒマリが、実は男性だったなんて。そんなこと誰も信じないと、そう思われていますね?

 私自身もそう思います。この細い肢体や色白の肌、そして芸術品の如く美しく整った(かんばせ)……。どこからどう見ても非の打ち所のない、完璧な美少女です。

 

 しかし事実として私は男性なのです。生まれた時から今に至るまで、頭のてっぺんから足のつま先まで、この体は男性として作られ、さりとて女性と見紛う容姿を持って育ち、今に至る。それが明星ヒマリの真実なのです。

 

 

 ではなぜ私がミレニアムサイエンススクールに入学出来たか? それが気になる方のほうが圧倒的に多いでしょう。

 なにせここは女子校ですから。いくら私が清楚可憐な天才美少女の容姿を持つとは言え、男が女子校に混じるというのは原則としてあってはならない事です。

 それはなぜか? と問われるといくつかの説明が必要になります。

 

 高校生というのは何かと多感な年頃です。それは異性への意識の芽生えであったり、成長期にある体の変化に戸惑い、子供から大人へと変わっていく事を認識するための大切なプロセスです。

 ですから、私はなるべく生活する上で、彼女たちの尊厳を傷つけないよう……もっと言えば、彼女たちと距離が近くなりすぎないように努めていました。

 

 例を上げますと、更衣室などでの着替えの時はそっとその場を離れたり、少し時間をずらして利用したり、それが出来なければ不自然でないように目を逸らしておりました。

 男性である私が、彼女たちの下着姿などをじっと見るのは、ほぼ犯罪行為と言っても過言ではありませんからね。そういった失礼な行いはなるべくしないよう、心がけておりますとも。

 

 車椅子というのもある意味、私の正体を隠すのに適した物でした。

 ミレニアムの生徒たちは皆さん優しいですから。*1

 

 車椅子に乗っている人の体に不用意に触れたりする生徒が少ないのも助かりましたね。

 常日頃から私は自らを病弱・薄幸・儚いと表現していましたから。おいそれと近づきがたいイメージを持たれているからかもしれません。

 

 ともかく。物理的に触れることがなければ、私の本来の性別に気づく者はいない。それが私の得た結論です。

 

 

 

 

 さて、話を戻しましょうか。

 

 私はスクールでは女性として振る舞っていますし、私を男性だと気づいて接する人は誰一人存在しません。

 ―――いえ、語弊がありましたね。唯一……、一人だけ居ました。

 

 それは私と同じく天才と呼ばれ、ミレニアムのビッグシスターとして唯一私に匹敵するであろう頭脳を持つ人間。

 友人であり、幼馴染であり、同志であり、そして不倶戴天のライバルでもある―――。

 

 

 ミレニアムサイエンススクール セミナー所属 生徒会長 "調月リオ"だけが、私の本当の性別を知っています。

 

 

 それもそのはずです。だって彼女は幼馴染なのですから。

 同じ場所で生まれ、同じ場所で育ち、かつお互い幼い頃から天才、秀才、麒麟児などと持て囃されて育ってきましたからね。

 それもあってか私は大変自己肯定感の高い……いえ、私が天才かつ秀才かつ並び立つ者の居ない至高の才能を持つことは事実なので仕方ありませんね♪

 こほん……。ともかく、そういった育ち方をしてきました。

 

 さて、すくすくと育ち、リオ以外に並び立つ者が存在せず、もはや難関大学の問題すら子供だましに過ぎないと感じてしまうようになり、後は天才として大きく飛躍し後世に偉業と共に名を残すであろうことが確定した私でしたが……。

 ここで一つ問題があったのです。

 

 それは、私の"叡智(ずのう)"を活かす場所がなかったこと。

 いえ、正確に言えば"ミレニアムサイエンススクール"以外にはなかったことでしょうか?

 

 それもそのはず。このキヴォトスにおいて、最も優秀な頭脳が集まる場所。それがミレニアムサイエンススクールですからね。

 歴史は浅いものの、キヴォトス最先端の科学と技術を持ち、潤沢な予算を扱え、しかも生徒は自分の研究に没頭できる……。これ以上ないほど優れた環境です。

 一時期は飛び級で大学に入ってしまおうかと考えて居たのですが、リオから手渡された資料を見て、完全にミレニアムの魅力に誘惑されてしまったのです。

 

 そろそろお気づきかもしれませんが、当然これには問題がありました。

 私は男性ですから。『女子校』であるミレニアムには、私はどうあがいても入れません。

 

 これには落胆しました。なにせ最高の環境と設備が目の前にあるのに、性別のせいでそれが永久に手の届かないものだと知ってしまったのですから。

 そして当時のリオも同じく憤慨していたのを覚えています。

 

 

『ヒマリ。あなたの頭脳を活かせる場所がないのは問題よ。全く合理的ではないわ』

 

 

 そう言って、膨大な金銭を用いて理事長を買収し、無理やり共学校にするというアイデアがリオから発せられた時は流石に"やめなさい"とマジトーンで言ってしまったことを覚えています。

 あの女は時々、最短距離を行こうとして突飛な事を口走りますからね。実際、私が止めなければ本当にやっていたかもしれません。

 犯罪行為の片棒を担ぐ気はありません。そういった倫理観は備えているつもりです。

 

 

 え? それで結局、女子校に男が女子と偽って入学することは犯罪じゃないのか、と?

 

 

 ……これは私としても本当に苦渋の決断だったのですよ?

 

 私は超天才かつあらゆる才覚を持ち、知性と美しさ、気品と可憐さを兼ね備えた奇跡の体現者である事に疑いはありませんが、なにせ私も"子供"でしたからね。

 自分の実力を発揮できる場所がないというのは、悔しく感じる面もありました。

 ライバルであるリオが入学できる条件を満たしている事も、癪に障りましたし。

 

 

 ……まぁともかく。私は結局、最終的には諦めようとしていたのです。それこそ大学に飛び級して研究の時間を確保できれば良いとだけ思っていましたから。

 ただあのリオという女は諦めが悪いことで有名でして……。あの後も一人で企みを働いていたのです。

 

 

 そしてある日、私の元に来た彼女はこう言いました。

 

 

 

『ヒマリ。あなたの進学希望書をミレニアムに提出しておいたわ。私達は特待生として迎えられるそうよ。明日ミレニアムに出発するから、準備しておいて頂戴』

 

「……はい? あの、リオ。いま何と言いました……?」

 

『だから、明日からミレニアムに行くから、準備しておきなさい』

 

「いえ、あの、その、その前です! 何かおかしなことを言いましたよね? 私の聞き間違いでしょうか?」

 

『……? あなたの進学希望書をミレニアムに提出しておいたわ』

 

「いや、何て事をしているんですか!? あなたは!? バカなのですか!? バカなのですよね!? ついに頭の中にまで下水が流れてしまったのですか? そもそもミレニアムは女子校ですから、私は入学出来ないと何度も議論していたでしょう!?」

 

『それについては問題ないわ』

 

「……? それはどういう……?」

 

『あなたは"女子生徒"として申請しておいたわ。大丈夫。理事長や校長は全く気がついていなかったわ。 あなたが常日頃言ってる"超天才清楚系病弱美少女"とやらに感謝ね』

 

「は……!? まさかそんなおかしな話……! ほ、本気でやるつもりなのですか? リオ」

 

『私は本気よ。あなたの叡智を活かせるのはミレニアムしかないと思っているわ。私は非合理的な選択は選ばない。これが今選べる"最善"よ』

 

 

 

 そしてあれよあれよという間に、私はミレニアムに入学することになりました。

 あとは野となれ山となれ。それからは実にうまく行きました。

 ヴェリタスを作り上げ、チーちゃんという得難い友人も得て、順風満帆な日々を過ごしていました。

 私の正体が露見する可能性のある事態が起きなかったのは僥倖と言えるのでしょうね。

 

 

 

 ―――さて、時系列を現在に戻しましょう。

 

 冒頭にて私は特異現象捜査部に異動となったことをお伝えしましたよね?

 この特異現象捜査部という部活ですが、部と言いつつも実は部員が二人しかいないのですよ。

 

 私の他に、和泉元エイミという可愛い可愛い後輩がおりまして。

 

 彼女は元からリオの直属の部下として特異現象の調査を行っていたのですが、リオが暫く活動から離れるとの事で、代わりにこの叡智溢れあらゆる事態を想定して対処できる、超実践派スーパーハッカーである私に白羽の矢が立ったということです。

 

 エイミは実に優秀な子です。リオが彼女を重用するのも分かります。

 その奇抜すぎる格好には思う所もあるのですが……。これは個人の趣向の問題ですし、私がとやかく言うことではありませんので、格好の事については今は追求しないでおきましょう。

 何より私の次に可愛いですからね、エイミは。それだけで全てが許されるというものです。

 

 

 しかし今。―――私は、明星ヒマリは。この優秀すぎる後輩によって、人生の岐路に立たされていると言っても過言ではありません。

 

 暗闇の中に煌々と光る宝石の如く、輝かしい経歴を辿ってきた私ですが、今までの人生の中でこれほど窮地に立たされたことはないでしょう。

 かの神名十文字(デカグラマトン) ビナーの熱線が真横を掠めた時も。

 ミレニアムのサーバーに侵入してセミナーの会計の体重を改ざん(いたずら)し、それに気づいた会計(ユウカ)が激怒してヴェリタスに詰めかけてきた時も。

 

 これほどまでのピンチに陥った事はありません。

 絶体絶命、背水の陣、四面楚歌、退路はなく、前方は火の海、後方は洪水、左は大嵐、右は落雷といった具合です。

 

 もし私がトリニティの方々のように背に翼を持っていたら、そのはためきによってその場を華麗に脱出出来たのかもしれません。

 しかし私は持って生まれた儚さ、病弱さをも自己のアイデンティティと捉えておりますから、この足で力強く立ち上がり、窮地を脱するなんて芸当はできません。

 

 

 さぁ、考えるのです。明星ヒマリ。

 あなたは天才なのですから。その叡智は過去未来現在全ての難題を解き明かし、いずれミレニアムの至上命題"千年難題"すら解き明かすはずなのですから。

 

 

 

 

 

 ――――ですから、このような事態にも、天才はあらゆる対処が出来るはずなのです!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ、部長? お風呂入ってたんだ?」

 

 

「んっ!? えっ!? んんっ!? エ、エイミっ!?

 ど、どうしてお風呂場に入ってきているのですか!?!?」

 

 

 

 

 

 メロンもかくやといわんばかりの、二つの大きな"果実"(デカパイ)が、水晶の如く美しく透き通ったこの眼が捉えて。

 

 

 

 ―――私は死んだ。鼻血も出た。

 

 

 

 

 

 

*1
定期的にどこかの部室や研究室が爆発している事には目を逸らしている。




ヒマリ視点→他視点という流れで進行していく予定です。(長い章は分割します)


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