申し訳ございません、本日は皆様にこの天才美少女が是とする、素晴らしく、瀟洒で、優雅な挨拶をすることが出来ません。
それほどまでに余裕がなく、急いでいるのです。
向かう先はミレニアムサイエンススクール。快速を誇るミレニアム製のヘリコプターから窓下を眺めます。
エリドゥのセントラルタワー屋上から飛び立って、およそ10分。既に要塞都市の姿は影も形もなく、いかにこのヘリコプターが高速で移動しているのかが分かります。
「ヒマリ様。そう身を乗り出しては危険ですので、控えていただけると」
「っ! ごめんなさい、私としたことが」
運転手の方に怒られてしまいました。車椅子ごと座席に固定していますが、バランスを崩して倒れないとも限りません。
そうなってしまっては、私は自らの力で起き上がることもできませんから、余計な手間を掛けさせてしまうでしょう。
「いえ、万が一怪我などをされますとリオ様が悲しみますので。それに、まだ病み上がりだと伺っております。ご自愛頂ければ」
運転手の方は私より上背のある、すらっとした方でした。
切れ長の瞳はシャープな印象を抱かせ、所作が整っていて、例えるならば瀟洒な執事といった感じ。
しかし、執事と呼ぶには似つかわしくない装い。むしろその逆、いえある意味では同じ出自なのかもしれません。
膝丈のロングスカートにエプロン。胴体に取り付けられたハーネスからは、彼女の持つ装備が多数装着されています。
長い袖の先にはカフスがあり、白と黒のコントラストと適度に装飾されたフリル、そして纏められた髪を束ねるヘッドドレス。
どこか中世から飛び出してきた人物なのではないか、と思いそうになってしまいます。
私も当然こういった装いについての知識は持っています。
誰がどう見ても"メイド服"です。ヘリコプターの操縦席に座る人間の装いとしては、かなりミスマッチなのではないでしょうか?
「ええと、トキさん。で合っていますよね?」
「はい。
ヘリコプターを操縦しながら、ペコリと頭を下げる彼女。
飛鳥馬トキ。ミレニアムサイエンススクール一年生で、リオの直属の部下であり、エージェント。
この方と話すのは初めてでした。存在自体は知っていたのですが、何ぶんエイミ以上に特殊な任務に就くことの多い立場にある生徒です。
これまで目的が別々だったので、任務等で同行することもありませんでした。ですから、彼女については全くの未知数なのです。
「えぇ、よろしくお願い致します。トキさん」
「呼び捨てで結構です。一年生ですから」
「そうですか? では……トキ。ありがとうございます。ミレニアム近郊での調査を行っていたエージェントとは、あなたのことですね?」
「はい。リオ様の命令に従い、付近に出現した機械類の破壊の任務に就いていました」
「ごめんなさい、トキ。エリドゥに帰ってきたばかりなのに。疲れているでしょう?」
「問題ありません。より過酷で長期間の任務にも就いたことがありますので、この程度であれば朝飯前です。お気になさらないで下さい」
「そうですか。リオの部下だけあって、優秀なのですね」
「お褒めに与り光栄です。ですが、ヒマリ様には遠く及びません」
「私……ですか?」
「リオ様は貴女のことを非常に高く評価してますから」
「……そうなのでしょうか?」
「はい」
イマイチ、ピンと来ませんでした。
いえ、私がミレニアムにおける『全知』の称号を持ち、あらゆる才能、才覚、そして美貌を兼ね備えたスーパーハッカーであることに疑いはありませんが。
それとは別にして、リオが私のことをどう思っているかは、この灰色の脳細胞をもってしても理解の及ばない部分があると言わざるを得ません。
「この護送ミッションも絶対に失敗が無いよう、あらゆる武装の使用許可を出されています。もし仮に道中でヘルメット団やテロリスト達に遭遇した場合は、全ての火器の使用を許可されています。このステルスヘリにはミサイル16機、ガトリング2機、誘導ミサイル2機が搭載されていますから、万が一武装組織に襲撃されても一網打尽に出来ます」
「そ、それは少々やりすぎなのではありませんか?」
一体どこに殴り込みに行くつもりなのでしょう? これほどの重火器を持つヘリコプターですから、お値段も相当するはずです。
ユウカが見たらまたもや白目を剥いてしまうかもしれません。
「ヒマリ様はリオ様の幼馴染だと伺っております。でしたら、会長の性格もご存知なのではありませんか?」
「……まぁ、そうですね。あの女ならそうすることも厭わないでしょうね」
合理主義の塊ですからね。1%の失敗のリスクでも病的なまでに執着する女です。
それをゼロにするためならば多大なコストを支払ってでも構わないという、偏執的なまでの合理主義。
思えば小学生の頃に作った例の
ただ一つのミスすら許容せず、完璧を求める姿。
リオ、あなたはあの頃から一切変わっていないのですね。……それが良いことなのか、悪いことなのかはともかくとして。
「ヒマリ様。大変不躾ながら、私の方から一つだけお願いをさせてもらってもよろしいでしょうか?」
「はい、なんでしょうか?」
「少しだけで構いません。リオ様に優しくして頂けませんか?」
「……えっと、それはつまり」
「気分を悪くされたら大変申し訳ございません。失礼ながら、貴女がリオ様を悪し様に言っているのを通信先で聞いてしまいまして」
「なるほど。……それは本当にごめんなさい。リオ相手だと、つい口から良くないことが出てしまって」
「リオ様も恐らくヒマリ様が本心から言っているのではないと理解していると思います。ですが」
トキはそこで一度言葉を区切りました。
「最近のリオ様は激務に追われ、睡眠も満足に取れていません。なんとか隠しているつもりのようですが、心身共に疲労が溜まっていると。そう感じます」
「……リオが、ですか?」
何をそんな、と一笑に付すわけにはいきませんでした。
先日のリオの姿を思い出します。態度こそ普段通りでしたが、化粧で隠しきれないほどの隈を目の下に作っていたのは事実です。
その原因の一端は間違いなく私でしょう。一日中看病させてしまったのですから、リオに余計な苦労を強いてしまいました。
そんな彼女に対し、私が口悪く罵ってしまったこと。それはあまり人として褒められたものではなく、例え古くからの友人だとしても最低限の礼儀を持って接するべきだったと。私は今更ながらに後悔の念が積もりました。
(……リオ。私達がこうなってしまったのは、いつからだったでしょうね。昔は何の気兼ねもなく接することができる、ただ一人の友人だった筈なのに)
反省しなくてはなりません。仮にも命の恩人と言っても過言ではない
それを伝えてくれたトキにも感謝をしなくてはいけませんね。きっと言いづらいことだったでしょうに。
「分かりました。これからは気をつけます。……トキ、ありがとうございます。言いづらいことを言わせてしまいましたね」
「いえ、差し出がましいことを申し上げたと反省しております」
「そんなことはありませんよ。こうして意見を言ってくれる部下は、上司としてはとてもありがたいものです。リオも良い部下を持ちましたね」
「恐縮です。それと、できればこの件は内密に。リオ様が知られたら余計な詮索を招きかねません」
「えぇ、分かっていますよ」
トキはそれだけ短く告げると、再びヘリコプターの操縦に集中していました。
「まもなくミレニアムサイエンススクール屋上に着陸します。着陸後ですが、車椅子の固定器具を外しますので、以降はお一人で移動をお願いします」
「かしこまりました。……トキはこれからどちらに?」
「リオ様の元へ向かいます。次の任務がありますので」
「分かりました。……トキ、気をつけて下さい。今回の"不可解な軍隊"の件には不明な点が多いです。恐らくリオも対応に奔走しているでしょう。未知こそ最も危険な相手です。くれぐれも身の回りの機械類には注意を払うよう」
「ありがとうございます、ヒマリ様」
そしてヘリポートへ着陸すると、固定器具のロックが外されました。
車椅子を手動操縦モードに切り替え、ヘリコプターから降ります。
「では、トキ。また」
「はい、それでは」
トキは軽く会釈をするとヘリコプターを颯爽と飛ばして去っていきました。
方向から察するに、エリドゥへ戻るようです。
「ひとまず、エイミのところに急がなくては……!」
ここは既に勝手知ったるミレニアムです。自動操縦モードではなく、速度制限を緩和できる手動モードにて保健室へと急ぎます。
「エイミッ!!」
校舎内を車椅子で駆け抜け、勢い良く保健室の扉を開きました。
ベッドには上半身を起こしてこちらを見つめるエイミの姿が。
「エイミ!? 大丈夫ですか!? ……あうっ!」
勢い余って車椅子がベッドの角に激突してしまいます、
そこまで強い衝撃ではありませんでしたが、意識外からの衝撃に思わず転倒しそうになり、慌てて体勢を立て直しました。
「……部長のほうこそ大丈夫? 車椅子ぶつけるくらいスピード出したら危ないよ?」
「ご、ごめんなさいエイミ……」
良かった。もう意識が戻っているのですね。
いつものエイミのジト目がやけに懐かしく感じます。たった数日離れていただけなのに、もう何年も離れ離れになっていたような錯覚すら抱かせました。
「……ってそんなことを言っている場合ではなくてっ! エイミ! 大丈夫なのですか? 具合が悪いのですか? 身体はどこも痛くありませんか!? 傷は、傷口はどうなって……!」
「お、落ち着いて部長。私は大丈夫だから」
「で、ですが……あんなに血がいっぱい出て……。そ、それにっ! 先ほど通話の際に倒れていたではないですか! これで落ち着けという方が無理ですよ!」
「それは……そうなんだけど……。どこも怪我してないし、倒れたのは軽い熱中症のせいだよ……。熱中症も休んだからか、ほとんど良くなったし」
「そ、そうなのですか……? ですが、あの血の量は一体……?」
「う゛……。あれは……その……。暑くて鼻血が出て。で、止まらなくて……みたいな感じ」
「確かに体温が上がると血管が拡張し粘膜の血管が破れて出血してしまうことはありますが……。あの出血量は……」
「多分だけど……私の体質のせいじゃないかな? 元の体温が高いから、他の人と比べてたくさん血が出ちゃうとか」
「その可能性はありますね……。ですが、ひとまずエイミが無事そうで良かったです。……本当に、良かった……」
心の底から安堵しました。ひとまず外傷もなく、何らかの悪い症状もなく、こうして無事にエイミが生きていてくれているのですから。
カメラの映像が傾き、エイミが倒れ伏す光景。何度呼びかけても返事が来ず、ひたすらに叫び続けたあの時。
本当に生きた心地がしませんでした。悪い夢なら覚めて下さいと、何度も祈りました。
エイミを喪ったら、私はどうやって生きていけば良いのでしょう。
認めましょう。私は……弱くなってしまいました。
かつては一人で出来ていたことが、できなくなってしまったのです。
エイミが居てくれないと……やることなすこと全てが色褪せたもののように感じてしまって。
一度味わってしまった色鮮やかな日々に、きっと毒されてしまったのでしょうね。
エイミに朝ごはんを作ってもらって、一緒に食べたり。
部活動のほんの合間の時間。他愛ない話をしたり。流行りの曲をエイミに勧めてみては、微妙な顔をされてしまったり。
眠る前に、"おやすみなさい"を言って、"おやすみ、部長"って返してもらったり。
そんな当たり前だったことが、二度と出来なくなるかもしれない。
私は恐怖に打ちひしがれました。あのような身も凍るような恐怖は、二度と味わいたくありません。
「心配したのですよ……? 音声通話をしたら、いきなり血まみれのエイミが映って、倒れて……。これほど背筋が凍ったことはいまだかつてありません」
「ごめん、部長……。心配かけて」
しょんぼりと。そんな音が聞こえてくるかのように、エイミが深く俯きました。
……あぁ、いけません。私はエイミに怒っているわけではないのです。
ただ心配だったと。無事で居てくれて良かったと、そう伝えたいだけなのです。
「あ、いえっ。エイミを責めたいのではないのです。むしろ、無事で居てくれたことが何より嬉しいです」
なにはともあれ、良かった……。外傷もなく、病状も見た所では軽そうです。
血まみれの衝撃的な様相はすでになく、いつも通りのエイミそのもの。
心の底から安堵しました。高まっていた緊張感がじわじわとほぐれていくのが分かります。
あぁ、良かった。ほっと一息。
「……本当に、良かっ―――!?」
ふと、今まで全く気にしていなかった事実に気が付きました。
エイミが無事だった。そのことに意識が集中しすぎていたのでしょう。私は彼女の格好に今更ながら視線を向けます。
上半身は下着だけ。ちらりと見える保健室用の薄い布団からは、スカートが見えています。
いつもの改造制服の上着は影も形もありません。完全に上半身は下着だけで、彼女の豊満すぎる胸がこれでもかと自己主張をしています。
身動ぎをする度に、たゆんと揺れる
普段から肌面積の多い格好をしているとはいえ、これは流石に露出しすぎです。
普段であれば目を逸らして、淑女たる姿勢を崩さないよう務める私ですが、この日は違いました。
(……エ、エッロ……! いえ、言葉遣いが悪かったですね。……
お風呂でエイミの裸を見たことがあるはずなのに、なぜでしょう。
全部出されているより、適度に隠されているほうが"ダメージ"が大きいです。
それに、シチュエーションがまずかったかもしれません。
保健室、二人きり、ベッドの上、下着姿の彼女……。こういったシチュエーションに憧れるのは、男性ならば当然なのではないでしょうか?
というか、そういうビデオで見たことがあります、この
当時は「なるほど、こういうのもあるのですね」程度に思っていたそれですが、実際に体験すると破壊力が違いすぎました。
未だ少し暑いのでしょう、エイミの火照った頬。そして誰も居ない空間で、私だけがエイミのその柔肌のすぐ側に居るという事実……。
手を伸ばせば触れられる距離。きっと触れてしまえば二度と引き返せない禁断の果実。
非常に
下腹部に違和感を感じました。それの意味を瞬時に理解し、反射的に前かがみになります。
……こ、これは、私の
な、なんでこのようなタイミングで!? 普段であれば大人しく出来る子でしょう、貴方はっ!
なんとか自分を律しようと、他の事に意識を集中するべく……私はエイミに問いかけました。
「あの、エイミ……。その、服は……?」
「血が付いちゃったからチヒロ先輩がクリーニングに出してくれたみたい。予備の学園指定制服があるから、とりあえずこれ着てって」
「そ、そうですか。ん゛んっ! では、エイミが着替えるまで、私は外で待っているとします。着替えが終わったら呼んで下さい」
「え、なんで?」
なんで? と聞かれましても。私のほうがなんで? と問いかけたいのですが!?
「えっ? その、エイミは着替えを見られても恥ずかしくないのですか……?」
「私は全然気にしないけど……。っていうか、前に一緒にお風呂に入ったじゃん」
そ、それは確かにそうですけれど……!
「あ、あああああれはっ! 事故、事故で……っ! ……いえっ! なんでもありませんっ!」
「……? 変な部長」
あ、あの時は事故のようなものでしょう?
だって、まさかエイミが裸でお風呂に入ってくるなんて……私には……。
ふと、あの時の光景を思い出します。
健康的な肢体。女性的な丸みのあるプロポーション。だというのに締まる所はキュっと締まっていて。
私より背が高くて、頼りがいのある身体ですから、包みこまれたらきっととても気持ち良いのだろうな、と想像してしまって。
そして何より、私が欲してやまない……、私の性癖を狂わせた元凶である、二つの大きな
いくら彼女のことを慰みものにしたくない、私で汚したくないと思っていても、体の芯から発する欲望には抗えません。
想像の中のソレと、いままさに目の前にあるソレ。私がどれだけ自分を律していても、究極的には太古の昔より存在する男女という性差、人間の持つ本能の前には無力なのです。
(…………まさか、あの薬が悪さをしてるのですか!? 体が熱いのですがっ!?)
これ以上、エイミのことを見ていたら頭が沸騰しそうでした。心臓が早鐘の如く鳴り響きます。
ですから、私は手で目を覆って、彼女の姿を見ないよう努めるほかありません。
そんな私の考えもつゆ知らず。エイミは私の目の前で着替えを続行していきます。
靴下を一つずつ脱いで、履き直し。
スカートのチャックを開いて、ぱさりと落ちて。
ジジジーっと2つ目のスカートに履き直して。
最後に指定制服のシャツを着直して。パツパツになった胸部。ボタンさんが圧力に耐えようと必死にもがいているのがわかります。
……私はというもの、その一つ一つの動作を見まいと努力していました。
だって、後輩の生着替えが目の前で行われているのです。人として、男性として、これを凝視することは許されません。
だというのに……。目を覆っている手は私の意思に反してチラリと開いては閉じ、チラリと開いては閉じを繰り返してしまいます。
主である私の言う事を手が聞いてくれないのです。これはとんだ不忠義者の手だと言わざるを得ないでしょう。
全ての着替えが完了したと同時に、エイミはベッドから降り、靴を履いて立ち上がりました。
先程まで倒れていた病人とは思えないほど、しっかりした動作です。
とはいえ、私は少々心配になりました。いくらエイミが強い体を持っているにせよ、先程まで倒れていたのは事実なのです。
できればもう少しだけ休養を取って欲しい。そう思いました。
「エイミ?」
「とりあえず私はもう大丈夫。起きれるし動ける。部長の言ってた任務を続行するよ」
「え……? エイミ、病み上がりなのですから、無理はしなくても良いのですよ?」
「病み上がりなのは部長も一緒だよ。……入院先から抜け出して来たんでしょ?」
「それは……そうなんですけども」
入院先ではなく、エリドゥからヘリコプターで駆けつけてきました。とは言えません。
リオを説得するのには骨が折れましたが、私の鬼気迫る様子を見て納得したのでしょう。
ちょうどエリドゥに帰着したトキを使って、私をここまで送り届けてくれました。
……やはり、リオには感謝を述べないといけません。
色々と無茶を言い過ぎました。それに、私の看病までさせてしまって。
この問題が片付いたら、改めてお礼をしましょう。
トキに言われたように、私も彼女に歩み寄る時期が来たのかもしれません。
「大丈夫。もし無理だと思ったらすぐに切り上げて休むから」
「……ですが」
「一刻を争う事態なんでしょ。私も特異現象捜査部として、ここで動かないわけには行かないから」
キリっとしたエイミの表情。その眼には覚悟が滲み、纏う雰囲気はエージェントそのもの。
……私は、エイミのこういう顔に弱いです。
彼女の持つ"誇り"や"信念"を感じさせる、その顔つきが。
守るべき後輩だというのに、守られたくなってしまう。
一人の人間として、彼女の透き通った善性が私を照らし、導いてくれる気がして。
普段はぼーっとしてるのに、仕事のときはすごく格好良くて、
そういうギャップのある姿に、やられてしまったんでしょうね、私は。
「……分かりました。では任務を続行しましょう」
私は彼女のそういった想いを邪魔できません。
「保健室の人が戻ってきたら、すぐにエンジニア部に向かうよ。まずはアリスの持ってる武装の調査、だよね?」
「はい。それでしたら、私も同行します。エンジニア部、それとヴェリタスに通達しなければならないことがありますので」
「了解。じゃあ作戦開始、だね」
お互いを見つめ合って、頷きました。
きっと考えていることは同じはずです。
特異現象捜査部としての義務を全うする。それが私達に求められていることなのですから。