明星ヒマリ男の娘概念   作:めのこん

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04.和泉元エイミと『全知』(2)

 

 

 翌日。今日も蒸し暑い一日だ。

 窓の外に目を向ける。今にも雨が降りそうな程の分厚い雲が立ち込め、じっとりと肌に張り付くような湿度が夏特有の香りを纏って運ばれてくる、そんな天気だった。

 

 クーラーの利いた室内。と言っても私からすれば大分暑い。設定温度に目をやると27℃と表示されている。

 私はリンゴの皮をショリショリと剥きながら、眼の前に横たわる少女に目を移す。

 そこには熱冷ましのシートを額に貼り、少し苦しそうに呼吸をするヒマリの姿があった。

 

 

「はぁ……。部長、本当に何やってるの?」

 

「ふふ……私としたことが、体調を崩してしまったようですね」

 

「長風呂しすぎだよ。のぼせるほど熱いお湯に入っちゃ駄目だって」

 

「ふむ……。ですが、のぼせて紅潮した顔……溢れ出る色香を放つ美少女の姿もまた乙なものだと思いませんか?」

 

「怒るよ、部長」

 

「は、はい……。ごめんなさい、エイミ……」

 

 

 ヒマリは自室のベッドに横になっていた。

 昨日の朝。あの後、ヒマリは体調を崩して学校を休んだ。

 曰く湯当たりしたらしい。

 何度か浴室で注意したにも関わらず、案の定な結果になってしまった事にため息が止まらない。

 

 ヒマリが体調を崩すのは、これまでも時々あったことだ。

 元からこの人は病弱で、ちょっとした季節の変化だとかで身体を壊してしまうことはしばしばあった。

 

 ただ今回は運が悪かったのだろうか。

 もしくは元からの病弱さ故の体調の悪化と、湯当たりによる脱水症状が重なったせいだろうか。

 結果として見事に体調を崩し、翌日には熱を出して倒れ込んでしまった。

 

 ピピピと体温計の音が鳴る。

 特徴的なフォルムのそれはミレニアム製の医療用の体温計だ。

 一瞬で脈拍から体温、呼吸のリズムまで表示できる高性能品である。

 彼女は脇に挟んでいたそれを取り出し、体温を確認した。

 

 

「何℃だったの?」

 

「37℃ですね……。私は元の体温が低めですので、実際は38℃相当でしょうか?」

 

「うーん、そこそこ高いね……」

 

「心配はいりませんよ、エイミ。いつもの体調不良のようなものです。安静にしていれば治りますから……」

 

「まぁ、それならいいんだけど。……やっぱり今日は私も休もうか? 具合悪いんでしょ?」

 

「いえ、エイミは学校に行って下さい。……ただでさえ特異現象捜査部の活動で出席日数に穴が空いてしまうのですから、出席できる時はなるべく出席してほしいのです。リオや私の都合で、あなたが留年するような事になってしまっては、申し訳が立ちませんので……」

 

「留年はしないと思うよ。定期試験はちゃんと合格点出してるし」

 

「ふふ、そうでしたね……。流石私の後輩です」

 

「なら……」

 

「ですが、私の看病は必要ありませんよ、エイミ。いつものことですから、心配しなくても大丈夫です」

 

 

 そう言って部長は目を細めて微笑む。

 顔はまだ赤い。熱を出しているからか、呼吸も少しだけ苦しそうだ。

 それに言葉のキレがない。いつもならスキあらば自画自賛の枕詞が飛び出してくるのに。

 

 

「はぁ……。わかった。一応何かあったら連絡してね。モモトークでも良いから」

 

「えぇ、分かりました」

 

 

 体温計の電源を落とす。

 ヒマリはリンゴを手に取り、小さな口を開いて控えめに食べ始めた。

 ひとまず、最低限の食欲はあるようだ。これならば解熱剤を服用すれば良くなるはず。

 

 

「ふふ、久々に食べましたが、みずみずしくて美味しいですね。甘みがあって、固くもないので食べやすいです。エイミも食べますか?」

 

「え、いいよ。部長が食べなよ」

 

「ええと、全部は食べられそうにないので……。ごめんなさい、せっかくエイミが剥いてくれたのに」

 

「あぁ、そういう……。じゃあ余った分だけもらおうかな」

 

「そうですか。では………。……あ~ん」

 

「―――部長?」

 

 

 部長はフォークにリンゴを刺して、こぼさないように手を添えてこちらに向けてくる。

 私は一瞬呆気に取られて、部長が何をしたいのかが分からなかった。

 

 

「もう、エイミ? あ~んですよ? ほら、あ~ん」

 

「……あ、あーん」

 

 

 パクリ、と一口で食べる。じゅわっとしたりんごの果汁が口の中に広がり、甘みと酸味が調和していて、なるほど、確かにこれは美味しい。

 果実のブランドなどに詳しくないので、一番高かったものを買ってきたのだが、どうやら正解だったようだ。

 

 

「ふふっ……。美味しいですか? エイミ」

 

「うん、美味しい」

 

 

 なんか、今日の部長は様子がおかしいな。

 

 多分熱があるからだろう。いつもの長々とした自画自賛は影を潜め、はきはきと滑舌良く捲し立てる喋り方ではなく、ゆったりと吐息の混じるような口調になっている。

 それに、なんだろう。距離がちょっと近い気がする。

 

 勘違いかもしれないのだが、普段私が部長に触れたり、密着するほど近づいたりすると、どこか避けられている気がしていた。

 それは何となくヒマリ自身がスキンシップがあまり好きではないんだろうな、と勝手に納得していたのだが……。

 

 しかし今のヒマリはそうではない。少なくとも"あ~ん"をしてもらった事は一度もない。だってこんなのは恋人同士がやるようなものだと思っているから。

 今までの部長であればまずしないであろう行動に困惑を隠せない。

 やはり熱があって行動や言動がおかしくなっているのだろうか? この状況に対する理解に努めようとするが、わからない。

 

 体調が悪いだけなのだろうか? それとも……何か別の意味があって?

 

 

「―――ねぇ、エイミ?」

 

「ん……なに? 部長」

 

 

 普段の口調とは全然違う、とろんと蕩けたような声色に、思わずドキッとした。

 

 いつもの早口な喋り方じゃない。まるで子どもみたいに甘えた感じで発された言葉に、思わず目の前に居るのが本当に部長なのかという錯覚すら覚える。

 まるでベッドの横に居る愛しい人に囁くような甘い声。子猫が甘えてくるかのようにじゃれてくるかのような雰囲気。

 

 今までそんな姿を見せてこなかったヒマリの姿を見て、私は胸の鼓動が早くなるのを感じる。

 

 

「エイミは、今が楽しいですか?」

 

「……それって、どういう?」

 

「言葉通りの意味ですよ? エイミには私のお願いばかり聞いてもらっていますから。きちんと楽しく過ごせているのかな、と」

 

「……うん、楽しいよ」

 

「本当に? 実は嫌だったら言っても良いのですよ?」

 

「……私は、嫌だなんて思ったことないよ」

 

「エイミは優しいですね」

 

 

 くすりと笑みを浮かべて、目と目が合う。

 

 

「では、私が"側に居て"とお願いしたら……エイミは側に居てくれますか?」

 

 

 ―――それは、どういう意味で?

 という言葉が口から出かかった。それを慌てて飲み込み、代わりに沈黙で答える。

 

 どういう事だろう。やっぱり今日の部長は何か変だ。

 先ほど部長は看病はいらないと言ったばかりなのに。

 

 やっぱり学校を休んで側で見ているべきなのだろうか? それとも―――。

 

 

「―――ふふ、冗談ですよ、エイミ。エイミを困らせたい訳ではありませんから」

 

「……変なの」

 

 

 くすくすと笑う部長。スマートフォンからアラームが鳴る。午前七時を知らせる合図。

 それはある意味、時間切れの合図だったのかもしれない。

 私が即答できなかったから、彼女がどういう意味でそう問いかけてきたのかを知る機会は失われてしまったようだ。

 

 

「さてと、もうこんな時間ですから。エイミは学校に行って下さいね」

 

「うん、それじゃ部長、また後でね」

 

「えぇ、また」

 

 

 そして私は踵を返して部長の部屋から出ていく。

 カバンを手に取り、オートロックが掛かったのを確認してからセーフハウスを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

(……暇だなー)

 

 

 学校につくまでの間。ハイランダーの通学用の短距離路線電車に揺られる中、私はすることもなくヘッドホンを耳に当ててぼーっと考えごとをしていた。

 

 最近はデカグラマトンの調査に忙しく、中々ミレニアムに通える状態ではなかった。

 それ自体が嫌な訳ではない。むしろ何もすることがないより、ずっと充実した日々だと思っている。

 謎の機械群と戦い、意思を持つAIに襲われ、常に調査を続ける危険かつ多忙な日々。

 仕事に追われてばかりいる、灰色の青春と言われても否定できないワーカーホリックぶりだ。

 だが私にとっては今この時が最も輝いている―――青春だと断言できる。

 

 ヒマリ部長やリオ会長に、私にしか出来ない任務を任されている。

 それを意識するだけで私の自尊心は満たされ、幸福感を覚える。過剰労働だなんて考えたことすらない。

 

 しかし今日のようにヒマリが活動できない日は、基本的に私も活動なしになる。

 こうして自由な時間が生じてしまうと、手持ち無沙汰になってしまうのだ。

 

 事前に何らかの命令を受けていれば、その通りに行動はできる。

 だが私は本質的に"自分で考えて"行動するのが苦手なタイプだと思っていた。

 こんな時に自発的に行動できるような活力もなければ知識もない。基本的に私は命令された事しかやらないから。

 

 ヒマリ部長のように圧倒的な自己肯定感を持っており、それに似合う輝かしい才能を持っているわけでもない。

 リオ会長のように、先を全て見通し問題に対処する、圧倒的な頭脳を持っているわけでもない。

 そこそこの成績、そこそこの技術、そこそこの能力。それが私、和泉元エイミが自分に下した自己評価であった。

 

 彼女達に憧れている訳ではない。私はヒマリ部長やリオ会長のようにはなれない、それは何となく心の奥底で分かっている。

 

 だから私が果たすべき使命とは、彼女たちの命令に従い、役に立つこと。それが最善の道だと思っている。

 今は特異現象捜査部として、ヒマリ部長の手足となり、彼女が自らの才能を活かす場を作ること。

 

 その為に必要なのであれば、私は戦闘だろうが書類仕事であろうが何だってやるつもりだ。

 

 

(……部長大丈夫かな。結構具合悪そうだったけど)

 

 

 ふとセーフハウスに残してきた己が主人の事を思い浮かべる。

 本当なら付きっきりで看病したほうが良いと思ったのだが、今日は当人に断られてしまったので断念した。

 

 

(まぁ本当に具合が悪かったら連絡くれるだろうし、後でモモトークだけ送っておこうかな)

 

 

 ガタガタと揺られて考える。窓の外は未だに曇天だ。

 天気予報のアプリを見たら、このあと雨が降るらしい。湿度が高いのは鬱陶しいが、気温も下がるようなので少しばかり安堵する。

 

 

(そういえば部長に初めて会った時もこんな天気だったっけ)

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『ごきげんよう。あなたが和泉元エイミさんですね?』

 

「あ、うん」

 

『既に聞いているかもしれませんが……。私こそがミレニアムに咲く一輪の花。"天才" "美少女" "病弱" "清楚" そして"全知"の異名を持つ、明星ヒマリと申します。よろしくお願いしますね♪』

 

 

 

 初めてその人に会った時。その人はそう言った。

 流れるような、自画自賛の雨あられ。

 まるで恥ずかしいとすら思っていない、それが当然だと言わんばかりに自己賛辞からの自己紹介。

 最初は"やべー人が来たな"とすら思ってしまった。

 

 

 しかし、同時に私は在る種の衝撃を受けていた。

 

 ―――『綺麗な人だな』と思った。そう感じてしまったのだ。

 

 美しく靡く白い髪。均整の取れた顔立ち。鈴の鳴くような声。

 立ち居振る舞いは優雅で、何も知らない人が見ればトリニティのお嬢様だと言われても全く疑いもしないだろう。

 

 そのような、誰が見ても明らかに美しいと評されるであろう外見に、何より透き通った水晶の如き眼差しに、私は惹かれてしまったのかもしれない。

 私は人生で初めて心の底から"綺麗"だと思えるものに、出会ってしまった。

 

 

 


 

 

 

 私の美的感覚は特筆して優れたものではない。中学の時の美術の成績は常に[3]とか[4]とかだったし、服飾とか芸術に明るい訳でもない。

 周りの人が"あれは格好いい"とか"これは可愛い"とか"これは美しい"とか評価を下して、それを見て私は漠然と『あぁ、これがそういうものなんだな』と理解するふりをしていたに過ぎない。

 

 つまるところ、私……"和泉元エイミ"はそういう風に"何となく"で生きてきた人間だった。

 

 ただ何となく、ちょっとだけ勉強が出来たからミレニアムに推薦されて、特に考えもせずに入学した。

 他の人よりちょっとだけ強かったから、リオ会長にスカウトされて、特殊な部活に所属することになった。

 

 それで誰かが喜んだりするなら、それでいいんじゃないか。

 確固たる信念のない私に、上からの命令に従う生活は性に合っていたようだ。

 自分の上司は最大効率を求める合理主義者だ。私もどうせ何かをするなら効率よくやったほうが面倒が少ないと思う性質なので、そこも馬が合ったのかもしれない。

 

 いくつかの任務をこなし、会長に命じられるがままに敵を倒し、その合間に適当に授業を受けて過ごす。

 

 ―――自分で何かを考えなくてもいい。楽な日々だ。

 

 故に、次の"任務"を受けた時には、少なからずの困惑があった事を思い返す。

 

 

 

『エイミ。私はしばらく特異現象捜査部の活動から離れなければならないわ』

 

「……え、どうして?」

 

『より優先して対処するべき事案が発生したの。特異現象の調査より優先すべき重要なタスクよ』

 

「そうなんだ……。じゃあ、しばらくは活動はお休み?」

 

『いえ……そういう訳にもいかないの。廃墟の機械群がここ数ヶ月の間に活動を活発化しているし、アビドスに定期的に出現するという"大蛇"の動きも気がかりだわ。それに例の遊園地の事もある……。大規模な活動はともかく、特異現象捜査部はそういった事案への調査を欠かすことは出来ない』

 

 

 

 事態が起きてからでは遅いのだから、と会長は付け加えた。

 では、どうすればいいのか。まさか私一人で特異現象に対処しろというのか?

 

 

『あなたが考えていることは分かるわ。一人では難しいでしょうね』

 

「うん。私一人じゃ手に余るよ。少なくとも会長みたいに先回りして対処するのは無理だと思う」

 

『安心して頂戴。あなたの所に優秀な"頭脳"を送るわ。その"頭脳"は私にも匹敵する存在よ。特異現象捜査部でも十二分に活躍できるはず』

 

「会長に匹敵する……?」

 

 

 流石に驚いた。リオ会長はミレニアムにおいて"ビッグシスター"の異名を持ち、あらゆる事態に対して未然に対処、解決できるとまで言われるミレニアムの歴史上最高の頭脳を持つ天才だと聞いている。

 それに匹敵する存在とは一体……?

 

 

『ヴェリタスは知っているかしら?』

 

「うん、聞いたことあるよ。ハッキング専門の部活でしょ?」

 

『正しくは非公認の部活なのだけれど……。今は関係のない事ね。そこの部長が特異現象捜査部に異動するわ。あなたは彼女の指示に従って引き続き活動して頂戴』

 

「ん、分かった。その部長さん、いつ来るの?」

 

『あと3分後には到着する筈よ』

 

「え、今から来るの? ここに?」

 

『えぇ、そうよ』

 

「……まぁ、いいけどさ」

 

 

 そういう事はもっと早めに言ってほしかった。口には出さないけど。

 まあでも別に部室が散らかっているわけでもない。基本的に私は外回りがほとんどだから、この部室に立ち寄るのはこうして会長と通話越しに話す場合がほとんどだからだ。

 

 

『私は暫くこちらのタスクに専念する事になるわ。だから、そちらの状況を把握するのが難しくなる』

 

「うん。でもその"会長に匹敵する頭脳"の人がいれば大丈夫なんでしょ?」

 

『えぇ。彼女の持つ資質は私が保証するわ。間違いなく役目を果たしてくれる。彼女はそういう人間よ。―――だからこそ』

 

 

 リオ会長にしては珍しく口ごもっている。いつも明瞭に話す彼女の姿を見ていたから、そういう事もあるんだ、と内心少し驚いた。

 

 

『エイミ。あなたに"お願い"があるの』

 

「……なに?」

 

 

 お願い―――。今まで一度たりとも彼女が口にしたことのない言葉に、思わず緊張が走る。

 これまでの全てはリオという天才から下される"命令"であり、間違いのない"正しい選択肢"だったからだ。

 

 だが、お願いとなればそのニュアンスは大きく異なる。

 それが正しいのか、間違っているのか。最適解はどれなのか、どこまで最適に近いのか。その全てが不明瞭。

 選択肢が私に委ねられている。これは命令ではなく、お願いなのだから。

 

 私はゴクリと喉を鳴らし、会長の言葉を待つ。

 しかしその内容は、思わず私が呆気にとられてしまうようなものだった。

 

 

『ヒマリを―――。 明星ヒマリを守ってほしいの』

 

「……そのヒマリって人が、これから来る"部長"なんだね」

 

『そうよ。彼女は……体が不自由よ。生まれつき病弱だから、銃撃戦も不得手だわ。拳銃弾が頭に当たっただけで気絶してしまう程の、ね』

 

「それは……確かに病弱かもね」

 

 

 銃撃戦が日常茶飯事のキヴォトスにおいて、銃弾が体に命中するのは珍しい事ではない。

 それでも当たればちょっと痛いくらいで済むし、よほど何発も喰らわない限り気絶する事もなければ、体に痕が残ることもない。

 それがキヴォトスの、ヘイローを持つ民の常識だ。

 

 だが拳銃弾が頭に命中して気絶するということは、それ即ち戦闘行為が大凡不可能であることを意味している。

 威力の低い拳銃弾ですら昏倒してしまうのであれば、より大口径のアサルトライフルやカービンライフルの銃弾は耐えきれないだろう。

 

 より大口径の狙撃銃や分隊支援火器などと言った、高威力の銃弾であれば……当たりどころが悪ければヘイローに致命的な影響が出ないとも限らない。

 そういった人間を守るという行為は、あまりにも責任重大すぎる。

 なぁなぁの生き方しかしてこなかった私には、特に。

 

 

『勿論、あなた一人に全ての責任を負わせる訳にはいかないわ。私の方からも、AMASやドローン類、その他必要なあらゆる機材の提供をする。必要ならセミナーから追加の資金も捻出させるわ』

 

「それは大分太っ腹だね。……会長がそこまでするなんて、そんなに特別なんだ? そのヒマリって人」

 

 

 リオは少しばかり思考する動作をして、告げる。

 

 

『―――えぇ。彼女は私の半身のようなものよ。彼女に何かあったら、私は文字通り体の半分を喪うのと同義。この先キヴォトスの未来を支える為に、彼女は絶対に必要な存在……』

 

 

 だからこそ、とリオは小さく呟いて。

 

 

『エイミ。彼女を守って頂戴。例え"誰が相手だろうと"。必ずヒマリの味方になってあげて』

 

「……うん、分かった。会長からの任務、承ったよ」

 

 

 そうして会長との通話を切る。今度の任務は今までより遥かに難しくなるだろうな、と思いを寄せた。

 

 

 

 

 

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