【リメイク版】ズッ友宣言してきた子の距離感がおかしい 作:猫好きの餅
※付き合ってません。
ある日の流泉の衆。
桟橋を歩いていると、ざぶざぶと浜の方で音がした。見ると、ムアラニが海から上がってきていた。
「うわっ、ムアラニ?」
「あっ、ウルー!なにしてんの?」
「結構こっちのセリフだぞそれ。ムアラニこそどうしたんだよ。水着も着ないで」
「いやー、自分が水着着てるって勘違いして飛び込んじゃって…。このとおりっ」
ムアラニは髪までぐしょ濡れだ。いつものアホ毛もしなぁって垂れて、三つ編みからもぽたぽたと雫が落ちている。
「着替えないとな。体も冷えてるし」
「ぴゃっ」
なんとなしに肩を触ると、ムアラニが俺をばっと見た。なんかあわあわしてる。
「ぅ、うんっ、そうだね。温泉入ってこようかなあ…」
そういうムアラニに、俺はなんとなしに。
「俺もいい?入っても」
「はぇ!?」
何を驚いてんだろう。前はムアラニから入ってきたのに。氷元素の修行から帰ってきてから、ムアラニが何か変だ。話しかけるといつもビクビクしてるし、話しててもすごい目が泳ぐ。
素っ頓狂な声を出したムアラニに、首を傾げる。
「……あー、嫌ならいいけど……ごめん」
さすがに踏み込みすぎたかと焦って、俺は踵を返した。しかし、俺の背中に暖かいものがぶつかる。
「や、やだっ!…はいろ?…ね、一緒に入ろ?」
ふむぐっ!?
背中ハグ+耳に囁かれるのは効いた。ホント効いた。俺が熱い顔でこくこく頷くと、ムアラニは不安な顔から一気に花が咲く。
「わるい、突然」
「ううん、…その、うれしい」
「…そ、そう?」
「うんっ」
俺たちは、お互いの手を握り、クスクス笑いあう。そこで俺の服の状態に気がついた。
ずぶ濡れの人に抱きつかれたら、そりゃ。
「……どの道、着替えないとな」
「わぁ!…ご、ごめんっ!」
俺たちは、人工の温泉に入った。別にこっちじゃなくてもいいんだけど、……なんか、人がいないじゃないですか。
「人工の方で良かったのか?」
「うん、…こっちの方がいいでしょ?」
「……そう、だね」
なにがいいのかは、言わないでおいた。
ずぶ濡れのムアラニは、ペタリと岩面に女の子座りする。直行で来たので水着には着替えてない。
「……ね、どっちがいい?」
ムアラニは、2種類の水着を見せてくる。片方はいつも着てる上下一体型のやつと、日焼けする時に使うビキニ。しかも下は結構際どいやつだ。
「身体、あっためるだけだよな?」
「……うん」
「な、なら。身体が出てる方がいいんじゃない?」
「そっちの方が好き?」
「……はい」
俺が正直に返事すると、ムアラニは外ではしない種類の笑みを浮かべた。
「ふふっ、…こっちの方が好きなんだね?」
なんだろう、なんていえばいいかわからないけど、しっとりした笑み。…天真爛漫のムアラニがこういう顔をすると、なんかこう、来るものがある。
お互い背中合わせで着替える。いいよと言われて振り向くと、水色と白のビキニを来たムアラニが髪を下ろして立っていた。
髪を下ろして印象が変わるランキングがあったら、ムアラニは1位で違いない(他の人見たことないけど)。日焼けした肌と白い髪とのコントラストが最高で、一気に女の子らしい印象になる。
「…どう?」
「よく…お似合いです」
「あははっ、なんでそんな畏まってるの?」
はいろ?と手を引いてくるムアラニ。バシャバシャと温泉に脚を突っ込み、共に浸かる。
「…あ〜……あったかぁい」
「うん、やっぱ人工の方が好きだなぁ」
やっぱこっちの方が温度が低くて長く浸かりやすい。
「身体、温まった?」
「うん、気持ちいいね〜」
ムアラニは勢いよく伸びをする。その時に自己主張したムアラニのプクフグフロートは見ないようにして、俺も温泉に浸かる。
「……ね」
「ん…ムアラニさん!?」
ムアラニが、俺の膝の上に乗っかってきた。
「…ハグ、しよ?」
「……うん」
もう、こうなったらどうしようもねぇんですよ。自分でも誰だかわからんことを考えながら、ムアラニを抱きしめる。
友達。友達なんだよ俺たち。そうは言っても、毎回この子とのハグは友達のそれでは無くて。
「…ん、…ウルぅ…えへへ」
「…うん、暖かい」
やばい。する度思うけど毎回ハグやばい。ここに帰ってきてから、割と毎日やってる友達(?)ハグ。普通にちょっとハグするならわかるんだけど、毎回、ムアラニが「しよ?」って言ってこうゆっくりと抱きつかれると変な気持ちになりそうだ。
ムアラニは、俺の首筋に顔を埋めて、すーはー息を吸ってるのが聞こえる。その耳が真っ赤。照れてるのか、温泉熱いのか。
俺はムアラニの纏められた髪を撫でる。
「今回は、まとめてるんだ」
「…綺麗って言ってくれたでしょ?」
「……うん」
ムアラニは、甘えるようにすりすりと頬擦りする。普段着よりも露出した小麦色の肌が俺の上裸の肌に当たってとんでもないことになってる。
ムアラニは、熱に浮かされたような顔をして俺の顔をじっと見る。
「…のぼせた?」
「ふぇ?…あっ、……うん、そうかも…?」
ムアラニが我に返って俺から離れる。下ろした髪をタオルで拭いているのを見て、ちょっとやってみたくなった。
「俺がふいてもいいか?」
「…ぇ、…うん。……ふいて?」
いちいち可愛いなこの子は。髪を下ろしたことで威力3割増。よく見ると、髪が1本1本きめ細やかで、触ってみると柔らかい。丁寧にタオルで拭きながら、ムアラニの顔を見る。
「……な、なに?」
「…いや、……その」
「…もう、なに?…いってよ」
「…かわいいなって」
「ふぇ!?」
だから言い淀んだのに。ムアラニの顔が真っ赤に染まる。
「や、やめてよ…そんなこと言われたら…」
「……ご、ごめん」
「……あたし、我慢……」
「え?」
「なんでもないっ」
髪を吹き終わり、そのまま三つ編みにする。
「え、ウルできるの?」
「うん、いつも見てたし」
左を編み終わり、右の髪を取る時に見えた耳が真っ赤だった。なんかちょっと嬉しい。
「はい、できた」
「ありがと。……じょーずだね。これから毎日頼もっかな?」
「毎日は無理じゃない?」
「毎朝ウルんち行くもんっ。……いい?」
「いいけど、俺起きてないかもよ?」
「その時は起こしたげる!…それで…」
「それで?」
「んーん、…ないしょ!」
次の日、布団の中にムアラニが入ってた。
※友達です。