【リメイク版】ズッ友宣言してきた子の距離感がおかしい 作:猫好きの餅
リメイクとは言いつつも、前の分がベストな場所が多すぎて難しいんですわ。
「……ア〜」
あれから、どこをどう歩いて帰ってきたかわからない。
気付けば自宅に帰ってきた俺は呆然とした顔で寝床に座り込んだ。流泉の衆の寝床は海が近いせいで湿気が貯まりやすいのでハンモックが座ったまま無の顔でハンモックを揺らしながら、回らない頭でさっき起きた事を思い出した。
『あたし達、ずーっと友達だかんねっ!』
「ああああああああ」
見た人の中にはなんでそんなに落ち込んでるのかと疑問に思う人もいるだろう。……でも、このずっと友達宣言は俺にとって「振られるよりキツい」事なんだよ。
ずっと友達ということは、これ以上関係が進展することはないとの表明。絶対に恋人になることはない。だが友達としては仲良くしよう。そういうことだ。
何が辛いって、まず普通に生殺しな所。これから彼女は俺にも笑顔を向けてくれて、この先ずっと仲良くできるんだろう。一緒に泳ぎの練習をして、一緒にご飯食べて。そんな日常があるにはある。……しかし、恋人には絶対になれない。
いやまず、別に俺はムアラニと付き合うために友達やってる訳じゃない。…だからこそ、余計にしんどい。
そして、向こうは俺の事を友達として思っている。
だから、いつかムアラニに好きな人が出来た時に相談に来るかもしれない。上手くいったら付き合った報告もされるかもしれないし、結婚っ、した時にはぁっ、俺もその場に…よばれて誓いのキスを見うわあああああああああああぁぁぁ(決壊)。
俺は頭を抱えて床を転がり回る。一体、なんの拷問なんだよ?
俺はこれから、ムアラニに対する恋心に必死に蓋をして、それで心の中の嫉妬心と戦い続けなきゃいけないのだ。
ならムアラニと離れればいいと思うじゃん?でもそんなの出来ない。ムアラニからしたら一生の友達っ!とまで言った人が突然いなくなるなんで彼女は絶対に悲しむ。
それに俺もやっぱりできることならムアラニと仲良く接したい。そんな精神が縁切りさえも許さない。
「……いっそッ、………振られた方が何倍も……ッ」
俺は涙を流しながら心臓の位置を手で抑え、ベッドの上で蹲る。
つらい。何が辛いって未来がほぼ閉ざされたのが本当にしんどい。そんで明日は普通にムアラニとの練習だ。俺、どんな顔して会えばいいんだよマジで。
はぁ、マジでしんどい。病みそう。振られたんじゃなくて告白する前にブロックされた感じ。しかも仲は良好のまま。はぁ、しんどい。なんか思考もループしてきたし、そろそろやばいかな?
「……つーか、なんで神の目降りてきてんだよぉ…!」
俺の悩みに拍車をかけているのが今目の前に落ちてる淡い水色のバッヂのようなもの。神に選ばれたものだけが授かる「神の目」だ、これがあるとその色の元素を使えるようになる。なんか神ですら俺の事を哀れに思ってるみたいでなんか嫌だ。はぁ、まじしんどい。
「…くそ、どうすりゃいいんだよ………どうもできないか」
俺に出来ることは2つ。このまま唇噛みながら友達を続けるか、ムアラニから離れるか。
……まぁ、今の時点でムアラニから離れることは無いけどさ。また明日泳ぎ教えてくれるって言うし、それが楽しみでいいじゃんとりあえず。
俺は寝っ転がりながら授かった神の目を手で転がす。一体、ムアラニと友人以上になるにはどうすればいいんだろう。…そもそもムアラニの好みのタイプってどういう男なんだ?
俺は起き上がると鏡で自分の顔を見た。
写ったのは女の子と言われても信じてしまいそうな顔だ。目は無駄にくりっと大きく、小さく通った鼻筋。せめてもの抵抗として鍛えている身体とミスマッチも甚だしくて、自分が嫌になる。これだから昔からからかわれやすいんだよ。
俺はため息を着くと、神の目をぼーっと眺める。淡く輝く氷の神の目は、俺を応援するようにきらりと煌めいた。
翌日
「ウルーっ!」
「…あ、いたいた」
事前に待ち合わせしてた場所に行くと、水着姿のムアラニがもう着いていた。彼女の笑顔を見ると昨日のズッ友宣言を思い出すが顔には出さずに堪える。
手を振るムアラニに駆け寄ると、彼女はじっと俺の顔を見て、ニコッと笑った。あまりの威力に白目剥きそう。
「今日も付き合ってくれてありがとうな」
「いーのいーの!あたし達友達でしょ?いっくらでも頼ってよねっ!」
トモダチッ。
って何いちいちダメージ受けてんだ俺は。いいじゃん友達で。少なくともマイナスじゃないんだから。……プラスもないんだけどね。
考えれば考えるほど心に影が差しそうだが、それを堪えて笑顔を作る。
「よし、じゃあ始めようか」
「おっけー!最初は昨日みたいに水に浸かるところから始めよっ?」
「了解」
言われるがままに砂浜から海へ入る。さふざぶ歩いていく内に水位が俺の胸くらいまで来たけど、昨日に比べてそんなに嫌じゃない。というか、ズッ友に比べたら水の恐怖なんて些細なことにすら思えてくる。
水に浸かっても慌ててない俺を見たムアラニが目をまん丸に見開く。その顔可愛すぎない?
「ウルっ、水大丈夫なの?」
「んー、昨日よりは。って感じ。これもムアラニのおかげだよ。ありがとう」
「…ぅ、…うんっ!よぉし、今日もこの調子で頑張ろ?」
ムアラニは俺を手を取ってもう少し深いところに進む。水位が俺の首位まで行ったところで、脚がつかなくなったムアラニは水に浮かびながら俺の肩に手を置く。
「ひとまず、ここで慣れるまで浸かってよ?…結構顔に水面が近いけど、大丈夫?」
「…なんとか」
というより、肩に手を置いて近寄ってくるムアラニの方に意識を持っていかれてそれどころじゃねぇ。波がちょこちょこ顎にあたるのが怖いけど、背中側に回り込んでほとんど背中に引っ付いてるムアラニが(以下略)。
「…む、ムアラニ?」
「んー、なーに?」
「な、なんか…ムアラニの方がリラックスしてないか?」
「そーかな?…えへへ、ウルと一緒だからかも。…ほら、ウルも力抜いて?」
なんでそう、勘違いするようなことを言うんですかねこの子は。普段なら舞い上がるようなことだけど、今の俺としてはただの痛いボディーブローだ。顔より下が水に沈んだり、ムアラニの身体が当たったりして早鐘を打っていた心が一気にスンと落ち着く。
「…わっ、いい感じに力抜けたね。その調子〜」
「……そういえば、浮き輪ってどうなんだ?個人的にはあれがあった方が安心感あるんだけど。非常時の逃げ場的な感じで」
「…あ〜、浮き輪は却ってダメなんだ。特にウルみたいな水が苦手な人は特に」
「へぇ〜」
ムアラニは俺の後ろからにゅっと顔を出した。俺を回り込むように顔を出したということはそれだけ密着するってことで、俺の左肩になにかとんでもなく柔らかいものが着弾する。
「…あっ、ウルまた力入っちゃった。…ほら、ゆっくり深呼吸して?何かあった時はあたしが絶対助けるから」
「…そ、それはそうなんだけど」
あの、あたってますぅ!!
ムアラニの諭すような優しい口調を耳元に貰い、俺はまた違う意味で力が抜けた。なんだこれ。俺はいくらモラを払えばいいんだ(錯乱)。
「…うん、力抜けたね。じゃああたしは離れるからこのまま───」
「わ、…む、ムアラニっ!」
浸かる準備が出来た俺から、ムアラニが離れる。すると首あたりにあった暖かい感覚が離れ、首元に水の冷たい感覚が這い回る。それに不安になった俺は思わず腕を伸ばした。
「…わわっ…う、ウル?」
とにかくこの冷たい感覚が怖い。俺は半ば無意識でさっきまであった暖かい感覚の元を腕で抱き寄せる。
つまり、…俺はムアラニの腰に腕を回して自分に引きつけるように抱き寄せていた。
さっきまでは当たっていたのが体の一部分だったが、抱き寄せたことによってムアラニと俺の身体が余すところなく密着する。俺は自分か何をしたのかに気が付かず、必死に『暖かいもの』にくっついて不快な感覚を取り除こうとした。
「……ぁ」
俺は目をつぶったまま、ぎゅーっと目の前の暖かい存在に縋りつく。しばらくそのままでいて、冷たさがなくなり安心した俺は目を開いて…。
「う、うる?…だ?大丈夫…?」
「……ッ!?…ご、ごめんっ!!」
俺はようやく自分が何をしているのかに気が付き、慌ててムアラニを離した。お、おれっ、ムアラニに抱きついてたぁ!?
俺が抱き寄せてもムアラニは脚が海底につかないので、肩を支えにしていた彼女の顔が俺の鼻先の数センチ先にあった。ムアラニの表情は驚き半分俺の心配半分って感じで、目をぱちくりさせながらも声をかけてくれる。
慌てて離れた俺なんだけど、今度は身体が冷えることはなかった。いや、実際背筋は凍ってるし、水の冷たさも感じるけど、それよりもムアラニを抱き寄せてしまったことに罪悪感を感じて水の怖さとかどうでもいい。やっぱり心理的な問題ってことか(現実逃避)。
「……ムアラニ、ごめん…、いきなり」
「…んーん、あたしは大丈夫だよ。こっちこそいきなり離れてごめんね…?」
俺が平謝りすると、気にしないでといったムアラニがもう一度肩に手を乗せてくる。今は申し訳なさでいっぱいだけど、身体に触れる彼女の手がやっぱりありがたく感じた。
「……ウル、どきどきしてる…」
「……っ」
俺の背中に手を当てて、俺の爆発しそうな鼓動を感じたムアラニは目を丸くする。実際水よりもムアラニの方に鼓動の加速理由の大部分を持ってかれている俺は、そのまま黙り込むしか無かった。
ムアラニは休憩すると言い岸に上がるウルを見送ると、自分の胸に手を当てる。
「………あれ?」
ムアラニは、水が大好きである。自分の神の目もそうだし、マリンスポーツはどれも好きで毎日欠かさない。だから、水への恐怖心なんて生まれてこの方感じたことがないのだ。
だから、ムアラニは自分の心臓が早鐘を打つ理由がわからなかった。
「…なんで…?」
水の中にいるというのに、何故か体の一部分が熱く感じる。とくとくといつもの1.5倍ほどの速さで打つ心臓から手を離し、ムアラニは熱を持った部分………自分の腰と肩を指で撫でた。
さっき、ウルに抱き寄せられた時、ムアラニはとっても驚いた。
驚いたのは彼の行動ではない。どちらかと言うと、余さず密着したことによって感じたウルの身体の感触に驚いた。
女顔で全体的に線が細いウル。そんな彼にもあんなに力があったのかとムアラニは自分の身体を撫でながらむーっと考える。しかし、どんなに考えても自分までもドキドキしてる理由はわからなかった。
「……あたしも、本当は……水苦手…とか?」
とりあえずここで考えても埒が明かないと、ムアラニは彼を追って砂浜へ上がる。ふと振り返ると、綺麗な水が光を反射させ、水面にムアラニの姿が写る。
───それに写ったムアラニの顔が、朱に染まっていたことに。
まだ彼女は気が付かない。
ムアラニの日焼け後
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健康的ですね
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何アレエッロ